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大魔王、弟子入りする

「司令、余は決めたぞ!」


 「おおっ!大魔王様!ついに決意されたのですね!・・・で、何を?」


 ずこっ!こいつ余が1時間前に言ったことをすっかり忘れてるな。


 司令のもの忘れが本格的にヤバくなっていることが不安だが他に余の後を託せる者もいないし、こいつに任せるしかないのだ。


 「余は強くなるために修行の旅に出るつもりだと言っただろう」


 「・・・ん?ああっ!覚えておりますとも!そうですか、ついに決心されたのですね!」


 そのセリフ2回目だぞ。司令。


 「しかし、大魔王様。修行の旅に出ると言っても大魔王様の修行の相手になるような者がいるでしょうか?」


 司令にしてはまともな意見を言うが余はニヤリと笑って答える。


 「いるではないか。強さだけが取り柄の規格外の者たちが」


 「まさか・・・あの、化け物どもに?」


 「そうだ。あの化け物勇者どもに弟子入りするのだ!虎穴に入らずんば虎子を得ず!余はあの化け物どもに取り入ってあの強さの秘密を手に入れてくるのだ!」


 「大魔王様、思い切ったことを考えられましたなあ。しかし、わが身の危険を顧みないその勇気は立派ですぞ!もう、大魔王様は立派な勇者です!」


 「いや、別に余は勇者になるつもりはないんだが・・・。だが、勇気の面で言えば司令も大したものだぞ。何しろ余の代わりをするのだからな?」


 「え・・・?」


 司令は困惑した表情で固まる。


 「大魔王様が魔王城に不在では困るだろう。だから司令が余がいない間は大魔王として君臨するのだ」


 「え・・・?しかし・・・」


 「大丈夫だ。いつかは魔王城には戻ってくるようにするから」


 「え・・・?え・・・?」


 司令はだいぶ混乱してきているようだ。ちょっと涙目になってきている。


 「だあーいじょうーぶだって。余は絶対戻ってくるから!余を信用しろ!余が信用できないって言うのか!」


 「そ、それは・・・」


 なおも何か言いたげな司令に、


 「まあーまあまあ。この本でも読んで待ってろ」


 余は魔族に伝わる友情物語『走ってろ、メーロス』を今にも泣きそうな司令にそっと手渡して魔王城を後にしたのだった。


 すまんな。司令。お前の尊い犠牲は忘れないぞ!




                        *

 

 「俺たちのパーティーに入りたい?」


 戦士の言葉に余はしっかりと頷く。


 「俺は別にいいけどな。他の連中がなんていうかな」


 余は人間の少年に変身してまずは戦士に近づいていた。こいつが一番単純そうだからな。


 戦士にあこがれていた少年という設定で、小一時間ほど戦士を褒め上げた後でパーティー入りを志願したのだ。


 案の定、単純なこいつは簡単に余にパーティー入りの許可をくれたのだ。


 そして戦士が許可したとなれば、次は魔法使いと僧侶だ。


 「戦士さんが許可したなら・・・」


 この二人は戦士に惚れてるのは調査済みだ。その戦士から許可得たと言えば拒むわけがないのだ。


 こうなると勇者は簡単だ。勇者は魔法使いと僧侶を二人ともモノにしてやろうとしているゲス野郎だから魔法使いと僧侶が賛成なら反対しない。


 こうして余は勇者パーティに入ることになったのだが、勇者が神妙な顔で余にきいてくる。


 「ところでお前は何ができるんだ?」


 「一応、魔法と剣が使えます」


 余は隠さないで本当のことを言う。こう言っておけば魔法と剣と両方修行させてもらえるだろう。


「俺とかぶってんな」


 まあ、お前ほど非常識な威力はだせないけどな。


 「じゃあ、お前はこれから魔法戦士だな」


 このパーティでは仲間を職業で呼ぶ事に決まっているのか勇者はそんな事を言ってくるので 「わかりました!よろしくお願いします!」と余は素直に受け入れる。


 こうして余は勇者パーティの魔法戦士になった。



                       *

 




 一緒に旅するようになってわかったんだが、勇者はこの化け物パーティの中でもかなりの問題児だった。


 戦士や魔法使いや僧侶はチートではあるものの、元々この世界の住人だから無茶苦茶をしていてもそれなりに世界に対するダメージを考えて行動しているが勇者は違う。


 この世界に対して遠慮がないのだ。


 魔物さえ殺せれば周りの町や村が巻き混んで壊滅しても「いやあ、つい、うっかり」で済ませている。


 そのたびに僧侶や魔法使いが頑張って再生させている。


 「勇者さん、少しは周りの事を考えて行動しましょうよ。この世界にかなりにダメージを与えてますよ!」


 余が見かねてそう言うが、


 「大丈夫だって。ここでなら少々無茶しても僧侶や魔法使いがいれば治したり、生き返ったりさせられるだろ。いざとなったら俺も魔法で生き返らせることもできるから」


 勇者はまったく気にも留めていない様子だ。以前は戦士達も勇者に注意をしてそうだがあまりに勇者が言うことをきかないのであきらめたらしい。


 「生き返らせても一度は死んでいるんですよ!それとも勇者さんの世界では殺しても生き返らせたら罪にならないんですか?」


 「俺の世界では生き返らせることができないからな。ここほど死が軽くないのだ」


他人の世界の死が軽いと言い切るとは余よりもこいつの方がよっぽど大魔王にふさわしいんじゃないだろうか。

 余は勇者パーティで旅を続けるうちにそう思うようになっていた。




                          *


 「ついにここまで来たな。勇者」


 「はい。皆さんのおかげです」


 戦士に感慨深げに言われた余は素直に礼を言う。


 ここは懐かしき魔王城だ。


 余は元の勇者に代わってこのパーティの勇者に推戴されていた。


 そしてこの魔王城の主は・・・元の勇者・・・ではない。


 元勇者は余の辛抱強く続けた注意と説得によってある程度改心したので今はこのパーティの魔法戦士になっているのだ。


 そして勇者パーティではもっとも弱いが一番常識的な考え(正義感)を持っているということで余が勇者になったのだ。こうなるまでいろいろあったがそれはまた別の話なのでここでは割愛させてもらおう。


 何しろ今は、


「ふっふっふ、勇者一行よ!よく来たな!」


 どこかで聞いたことのある声の『大魔王』と対峙しているのだ。


 余は念話で『余だぞ?大魔王だぞ!わからんか、司令』と呼びかけるが『なんのことだ?大魔王はわしだ!』と司令の老化現象は進行していた。


 うーん、余がいない間は脳トレをさせる者がいなかったからなあ。


 仕方ない。司令には悪いが少し痛い目を見てもらおう。



                             *



 そして余たちは・・・負けた。


 司令は記憶と共にいろんな制約が抜け落ちたせいなのか、めちゃくちゃ強くなっていた。魔法も無茶苦茶な規模て使うし、なんか時を止めるなんていう不思議な技まで使っていたのだ。


 元勇者と言い非常識な者が強くなるのかこの世界は。


 なんとか逃げ帰った余たちは宿で一息ついていた。


 「さすがはラスボスだな!全く歯がたたなかったな」


 「でも、私たちもまだ生きています!もっと強くなって必ず再戦しましょう!」


 「ええ!私たちならきっとできるはずです!」


 「そうだ!あのラスボスに勝てるように頑張ろう!・・・ん?どうした勇者、複雑な顔して」


 「いや・・・ラスボスらしいラスボスでよかったなあと思って・・・」


 「何言ってんだ?」


 妙に満足したような余のつぶやきの意味がわらかないのか魔法戦士(元勇者)は怪訝な顔をしたのだった。

なんか変な終わり方ですがなんとか終わりました。

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