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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
7章 組織を作ろう
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78話 おっさん少女は軍団を指揮する

 都内につながる国道を放置してある車両を押しのけ力強い駆動音をたてながら、鉄の威容を誇る戦車群が通っていく。上空には静かに飛翔している戦闘ヘリが敵を警戒している。


 すでに生者がいない国道であり、たまに戦車の通行に気づいたゾンビが駆け寄ってくるが、戦車の屋根に座っていたツヴァイがすぐに気づいて銃を撃ち瞬殺する。


 全対応超電導強襲揚陸艦、超電導戦闘ヘリ2機、超電導重機関砲搭載戦車10台にて只今都内に進軍中の遥である。この間の失敗を経験に新たに戦車を作成したのだ。基地のマシンドロイド全てを連れてきている気合いの入れようだ。


 強襲揚陸艦内にはツヴァイたちが複数椅子に座っており、指揮管制から火力管制まで全てを行っている。司令席でお誕生日椅子宜しく、可愛くちょこんと座っているレキぼでぃである。


 数十万の敵を撃退するにはソロでは無理であるとようやく考えを変えて、軍隊行動をしているおっさん少女。行軍指揮など、スキルとっていないので無理ですと、暇そうに座って目的地まで到着するのを待っているのだ。


 行軍指揮はサクヤ、ナインが行っている。部隊長はアインである。マスコット枠でレキぼでぃ。いらないおっさん枠遥である。


「ご主人様、そろそろ上野周辺に到着予定です」


 サクヤがきりりと真面目な表情でそろそろ目標地点だと伝えてくる。


「ふわっ、はい、寝てませんよ? 皆が頑張っている中ですからね? 当然目をつぶって考えていたのです」

 

 声をかけられて、ビクッとなり今起きましたという慌てるおっさん少女。


 口元に多少よだれが見えるレキぼでぃを微笑ましい笑顔でサクヤがうんうんと頷く。わかっております。寝ていませんよね? でも、さっきまでの寝姿はしっかりとコレクション入りしました。凄い可愛かったです。ふふふと口元を綻ばせながら返答をしてくる。


 だって暇だったのだ。何もすることが無かったのである。こんなことなら漫画でも持ってくればよかったと行軍中の司令席で思うおっさん少女である。暇で車にゆられている感触がするとすぐ寝ちゃうのだ。電車も同様な遥なのだ。


「司令、付近の敵の排除に成功。排除中に予想地点からの急速な敵の移動を確認しています」


 硬い口調で真面目なツヴァイが告げてくる。計画通りとなっているらしい。


「こちらアイン。戦車隊は目標地点へ到達したよっ。いつでも戦闘OKだ」


 モニタ越しに勢いよく好戦的な性格っぽいアインが告げてくる。戦車はゲーム仕様よろしく一人で戦闘も運転もできるチート仕様である。アインは部隊長なのでツヴァイと一緒に搭乗している二人乗りだ。


「ツヴァイ41及び42も準備OKです。ヘリは支援位置に到達しました」


 戦闘ヘリ部隊も問題ない旨連絡してくる。


「よし!全車攻撃態勢、強襲揚陸艦の艦砲射撃後、一斉に攻撃だ!」


 椅子から立ち上がり、ビシッと気合の入った遥が可愛いレキぼでぃの声で命令する。ちっちゃい子供が軍隊ごっこをしているみたいである。


「了解、艦砲射撃開始します」


 遥の命令に従い、ツヴァイ達が火力管制を始める。


 強襲揚陸艦の巨大な砲が敵が集合している位置に目標を決めて、発射される。超電導砲4門がシュォォ~という音がして青く光り輝き、シュドッと砲弾を青い光に染めて発射される。


 目前のモニタには雲霞の如く湧き出るかのように集まってくるグールやオスクネーがある。放置されている錆びた車両を乗り越えて次から次へとやってくる。呻き声の合唱が周辺に鳴り響いている。


 その集団の真ん中に着弾して爆発する砲弾。砲弾を受けた敵は跡形もなく吹き飛ぶ。しかし一瞬空き地が生まれるがすぐに敵で埋まってしまう。まるで波のような速さで埋まるのである。物凄い多さである。多少の攻撃は効果がない。


 だが、それはこの間の失敗で見た遥である。そのために火力を充実させてきたのだ。


「アイン隊、全車攻撃開始だよっ!」


 モニタ内で、戦車に乗っているアインが腕を振り上げて叫んでいるのが映し出されている。他の戦車から了解の返答をツヴァイ達がする。


 上野付近に集まっている津波の如しグール群に対して、戦車砲を外して、機関砲を取り付けまくった超電導戦車。前面に4門✕3門の計12門を取り付けてあるハリネズミのような現実には存在しない雑魚殲滅用戦車である。


 配置された10台の戦車全てが超電導機関砲の青い光を放ちながら、シュドドドドと撃ちまくり波のように押し寄せてくるグールを打ち砕いていく。


 戦闘ヘリも戦車の前に敵がくるように誘導しながら攻撃している。


 あっという間に敵が減っていく。戦車の機関砲ならばグールのしょぼい障壁など相手ではないのだ。


 雨あられと青い銃弾がグールを砕き、オスクネーにダメージを与えて倒していく。波が止まり死骸が積み重なり堤防のようになっていく。


「各車後退しながら、敵の死骸が積み重ならないように戦闘を続行してください」


 ナインが同じくウィンドウ越しに各戦車に命令している。了解とツヴァイたちが頷き、戦車を後退させながら攻撃を継続していく。


 あれだけレキぼでぃが苦戦したグール群は戦車の壁の前に次々と倒されていく。


 それを見ながら、することはない遥は超電導って青い銃弾になるんだね。相変わらず超電導という名の怪しい武器だねと戦闘とは別のことを考えていた。


 揚陸艦のフカフカな司令席に座り、戦況を確認するが敵は戦車隊の攻撃を押しのけるほどではない。あれだけいたのに、バタバタとドミノのように倒れていく。機関砲の恐ろしい威力であった。揚陸艦からの艦砲射撃も続いており、敵を吹き飛ばしていく。歩兵隊のツヴァイたちも超電導アサルトライフルを構えて敵の取り零しが発生したら、それらを狙い撃ち倒していく。


 うずうずする遥。これを見て言いたいことがあるのだ。でも言ったら反撃とか意外なことが起きるかもしれないとためらってしまう。


 でも、言いたいのだと心に決めて、やっぱり小心者の遥はボソッと小声で誰にも聞こえないように呟いた。


「わが軍は圧倒的ではないか」


 言いたかったのである。後悔はない。だが、ハッと後ろを振り向くと、その姿をカメラドローンが撮影していることに気づいた。目の前でフヨフヨと撮影していたのだ。


 ぐはぅと、可愛いおててで頭を抱えて座り込み羞恥心で真っ赤になるレキぼでぃ。ウィンドウでニヨニヨと笑っているサクヤが見える。


 その二人を見て、はぁ~と溜息をするナイン。この二人は必ずコントをしないといけないのだろうかと考えてしまう。


「司令。機関砲の効果が薄いと思われる敵が接近中。戦闘ヘリの攻撃も効果が出ないとのことです」


 ツヴァイが遥に伝えてくる内容に正気に戻る。


 どうやらレキぼでぃの出動の時間みたいである。




 外に出てみると、なるほど機関砲では倒せないだろうなぁという巨大な敵が迫ってきていた。20メートルはあるだろうそれは恐竜であった。いわゆるティラノサウルスというやつだろう。頭を前傾にノッソノッソと歩いており戦闘ヘリの機銃が効いている様子は無い。


「ご主人様! あいつの名前はティラノサウルスと名付けました!」


 遂にまんまな名前をパクるサクヤである。もう絶滅したはずだからいいですよね? というやつだろうか。


 放射能ブレスは無さそうである。博物館から逃げ出したのかなという感じである。地上にも他にラプトルらしき恐竜がヒョコヒョコ歩いているが、あれは機関砲の相手にならないだろう。


 ティラノサウルスをよく見てみると機関砲が当たる寸前に勢いを無くし、小石のような威力になっている。見たことがある効果である。


「ティラノサウルスは銃無効の概念を体に纏っている模様です」


 困った特性を持っているみたいだ。そうだよね。恐竜には防衛隊の重火器が効かないのは当たり前である。防衛隊は常に敗退する運命なのだ。


 仕方ないので、さて倒すかなと揚陸艦の甲板から降りて敵を倒すべく脚に力を込めたら叫び声が聞こえた。


「アイン、出るぜっ!」


 なんだ誰だと、見てみたら戦車からアインが飛び出してきてパワードスーツをご丁寧に装備をした状態でティラノサウルスまでブースト飛翔で接近しようとしていた。


 おいおいパワードスーツでの戦闘はレキぼでぃもしたことが無いんだけど、それに指揮はどうしたの?この少女はと、びっくりして見ていたらアインは銃が効かないため、ティラノサウルスに近づきざま、飛び蹴りをかましていた。

 

 ブーストの青い光を噴射させながらティラノサウルスに突撃である。重装甲な金属の塊が陽光を照り返しブースト移動するのは凄い格好いい。


 ティラノサウルスも接近してくるアインに気づいて噛み砕こうと、ぱっくり口を開けてアインに襲いかかる。


 しかしブースト噴射で軌道を変えて、アインはティラノサウルスの噛みつきを回避すると、そのままパワードスーツの重厚そうな金属の手で頭に殴りかかる。


 ズドンと軽く皮膚がヘコんでティラノサウルスがよろめく。だが直ぐに体勢を立て直し噛みつき攻撃を繰り返すティラノサウルス。


「ハハッ、当たらねえよ! このデカブツが!」


 アインは叫んでブースト噴射で軌道を複雑に変えて回避しまくる。


 おぉ凄いと遥は感心した。リモコン操作では絶対に無理な行動である。


 おっさんならリモコン操作でなくても無理な行動である。3D酔いしたとか言って画面から目を離すはずである。


 以降もペシペシ殴り続けるアイン。その度にティラノサウルスはよろめくが倒すには至らない。純粋に火力が足りないのだ。いくらパワードスーツの力でも殴り倒すには超技が必要であろう巨大さである。


 これ以上はパワードスーツのエネルギーが勿体無いし、アインが攻撃を受けても嫌なので遥は自分で倒すことに決めた。


 勿論レキぼでぃにお任せであるおっさん少女。ヘイ、タッチである。たまにはタッチを回避してもバチはレキぼでぃに当たらないであろう。


 眠たそうな目でレキぼでぃが言う。


「各機攻撃を続けてくださいね」


 アインと違い、ブースト噴射で空中を飛翔できないレキぼでぃ。地上は現在も機関砲やら艦砲射撃が続いている状態だ。


 いかにフレンドリファイア無効でも弾丸の嵐の中に入れば痛そうだ。


 戸惑ったツヴァイたちに、全く問題は無いですよとレキぼでぃは脚を踏み込み走り出した。


 青い光をなびかせて飛んでいく弾丸の嵐を見やり呟く。


「地上に降りなくても踏み台はたくさんありますしね」


 トンッと軽くジャンプするレキぼでぃ。いや本人には軽くなのだろう。周囲から見たら一瞬で消えたように見えた。


 その高速移動で飛んでいる弾丸に脚をそっと乗せて、弾丸の勢いを衰えさせずに次の弾丸へと脚を運ばせる。


 高性能レキぼでぃは体術のレベルアップで更に人外へとなった模様。ヒョイヒョイと短距離テレポートでもしてるかのように高速移動をして弾丸を踏み台にティラノサウルスへ接近していく。


「退いてください、アイン」


 緊張感の無い声でアインに命令するレキぼでぃ。


 悔しそうな声で了解と返答するアインを尻目にティラノサウルスにレキぼでぃは近づいた。


 退いていくアインをみやり、ティラノサウルスは近付いてきたレキぼでぃに気づく。


「ぐぉぉ」


 吠えて超能力を発動させるティラノサウルス。アインよりも強敵と感じたのだろうか?その行動に躊躇いはない。


 ティラノサウルスの眼光に光が集まり、ピカッと光りビームらしきものが飛んでくる。


「どうして目からビームなんだ?」


 ティラノサウルスなのにと遥は首を傾げる。常に余裕溢れるおっさん少女である。全てはレキぼでぃの赴くままなのだ。


 光る目からビームが飛んでくるのに対して、レキぼでぃはヒョイと右腕を上げる。


「獅子の手甲展開」


 掲げた右腕にカチャカチャと黄金の手甲が展開される。壊れた右腕のブースト装甲の代わりである。黄金の爪を使用した新防具、獅子の手甲である。


 ようやくユニーク武器みたいな装備が作れた遥。できたときは小柄で可愛いレキぼでぃで小躍りしたのだ。キャッホーと可愛い踊りだったそうな。


 その手甲にてビームを受け止めるレキぼでぃ。ジュワッと装甲にビームが当たるがそれだけである。ただ弾かれる光の粒子がキラキラと輝いていたのみであった。


「ふ、レオの装甲を砕くことなど不可能なのだ」


 その防御力にご満悦なおっさん少女は、カメラドローンが飛んでいるのにまたいらんことを言って、黒歴史を紡いでしまう。


 ビームが途絶えたところで、すかさず反撃するレキぼでぃ。右腕に力を込めるとエンチャントをしていないのに手甲に黄金の輝きが集まっていく。


 獅子の手甲の付与能力。エンチャントが無くとも超技が発動できるのだ。さすがユニーク武器である。


「受けよ! 獅子の牙を!」


 ノリノリの遥さん。遂に聖なる闘士になった模様。後で羞恥の戦死もするであろう。


 レキぼでぃは右腕を繰り出し、ティラノサウルスに拳を放つ。拳からは黄金の矢のような一撃が空気を裂いて飛んでいく。


 ティラノサウルスはその攻撃を見て、この高速の攻撃に動く暇もなく頭を貫かれて死ぬのであった。


「何か牙と言うより矢だよね?」


 と、おっさん少女の不満そうな声と共にズズンとその巨大な身体を地に伏せるのであった。




 その後、数時間で敵を殲滅した少女の軍団は上野に小拠点を作成できることになったのである。


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[一言] >ぐはぅと、可愛いおててで頭を抱えて座り込み羞恥心で真っ赤になるレキぼでぃ。 カリスマガード?うー!と言わないと。
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