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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
7章 組織を作ろう
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72話 おっさんの新築祝い

 陽光がアスファルトを焼き、陽炎が揺らめく季節に一軒の豪邸がある。庭付き、ガレージ付き、家庭菜園付きのレンガ風のおしゃれな豪邸である。その家のホームパーティーが行えるほどの広さをもつリビングルームにて3人の人間が集まっていた。


 銀色の美しい髪をセミロングに伸ばしていて、切れ長の目をしており、仕草が上品な所作のクールに見える美女サクヤ。


 金髪ツインテールをしており、ぱっちりお目目の小柄な体で私頑張りますといつも健気に頑張っている可愛いらしいナイン。


 二人とも上品なクラッシックなメイド服をきており、染み一つ汚れ一つないエプロンを付けている。


 この豪邸の主が誇る戦闘用サポートキャラのサクヤとクラフト用サポートキャラのナインである。


 その主は今はいない。いないことにしておこう。美少女ぼてぃになっていないので。


 その三人は宴を開こうとしていた。特に真ん中のおっさんが喜色満面な表情をしており、その年齢にそぐわないはしゃぎようである。


 おっさんぼでぃの時にはしゃぐと、常に寝ている間にイベントが終わってしまうのだが、今回は既にイベントを終わらせているので安心してはしゃいでいた。


「ふふふ。これで私も一国一城の主だな」


 にやにやしながら、いい歳をしたおっさんである遥は笑っていた。なぜ笑っていたのかというと拠点拡張をしたのである。


 そして遂に清水の舞台から飛び降りるつもりで建設lv4を取ったのである。スキルコアも全て使いポイント化したので、残りのポイントは4である。そのうち1は計画がうまくいけば使う予定でもある。


 おっさんにあるまじき浪費っぷりである。いつものケチなおっさんはどこにいったのであろうか?


「え~と、新築祝いってことでいいのかな?」


 首を捻りながら疑問形で忠実かもしれないメイドたちに話しかける。基地の拡張なので新築祝いというわけではないが、自分の力で拠点の拡張をしたので祝いたいのだ。いつもは寝ている間に終わっていたからして。


「いいと思いますよ。マスター。お祝いをしましょう」


 ニコリと可愛い顔を笑顔に変えて、いつもの甘やかしてくれるナインが答える。


「うむ。それなら建前? なんだっけ、家を建てたらお菓子とかをばらまくやつ。あれやりたいね」


 新築をたてたらやってみたかったのである。建前は子供の頃にしか見たことが無い。もう廃れた因習かと思ったら、田舎の友人がまだこの周辺ではやっているよと教えてくれて、珍しいなぁと思っていたのだ。


 それを思い出して自分もやりたくなった、常に童心を忘れないおっさんである。


「でも、三人しかいないしなぁ。どうしよう?」


 アインやツヴァイも入れる? しかしドロイドだし、やったらなんか周りがめちゃくちゃになりそうで怖いと思う遥。手加減という言葉を彼女たちは知らないのである。彼女たちは意外と自己主張が強いのだ。


「わかりました。不肖忠実なるメイドのサクヤが行いましょう!」


 クールなメイドだと紹介してやったのに、それをすぐに打ち消すメイドのサクヤである。


 ガラとリビングから庭につながる大きなガラスドアを開けて、スタスタっと忍者みたいに屋根に登っていく。


 おいおい、私がやりたいんだよと慌てて追いかける遥。


 外にでると、屋根の上で仁王立ちしているサクヤがいた。なんか両手に写真を持っている。


「焼いておいた私のコレクションです! これを撒きます! それ、お祝いですよ~」


 パラパラと写真を撒くサクヤ。空中をふよふよとばらまかれていく写真。


 落ちてくる写真を掴んで見てみる遥。なんだろう、この写真? ろくでもないことは間違いないと確信はしている。


「ぶっ、なんじゃこりゃ!」


 写真にはパンチラしているレキが映っていた。


「ご主人様、これは私が一生懸命に撮影しましたレキ様の痴態1巻から厳選した写真です。お祝いのためにばらまきますね! 元データは持っていますし問題ありません。そぉ~れ~」


またもや、パラパラとまるで節分の豆の如く撒き始める銀髪メイド。


「レキ様の胸チラ、パンチラ、パンモロです。存分に受け取ってください!」


「うぉぉ~、外に飛んでいったらどうするんだ! やめろサクヤ~」


 慌ててツヴァイにも命じて、バタバタと走り回り写真を回収しようとする遥。


「お祝いなので仕方ないのです。ご主人様! まだまだありますよ~。てやぁ~」


 手品師のように、両手からドンドン写真を取り出しては、ばら撒くサクヤ。うぉぃ~、やめろ~と走り回る遥。うろうろと命令に従い拾い集めるツヴァイたち。


「どうやら新築祝いの建前は十分みたいですね」


 はぁと溜息をつき呆れ顔になり、一番年下のナインは台所にお祝いのご馳走を作りに行くのであった。




 あれからようやくすべての写真を回収して、しばらくカメラドローンの使用を禁止するとサクヤに命令して涙目になり土下座をしてきたので、簡単に許すおっさんという場面があったが、それらも終わりリビングルームに戻ってきた三人である。


「おぉ~。今回もご馳走ですね。ありがとうナイン」


 美味しそうだと、ナインのいつ撫でても艶やかで触り心地の良い髪をしている頭をナデナデする遥。おっさんぼでぃの時は遠慮して恐る恐る撫でる条例が怖いおっさんである。


「いえ、大したことはありませんよ。マスター。クラフト担当として当たり前のことをしたまでです」


 猫のように気持ちよさそうに目を幸せに閉じて撫でられながら答えるナイン。


 戦闘用サポートキャラも欲しいなぁと銀髪メイドを忘れて、この可愛い子を愛でる遥だった。


 大きなテーブルには北海道系で今回は作った料理の数々がある。蟹にエビ、ホタテにサザエ、イクラとウニ丼がドデンと大きなどんぶりに大盛で入っている。それにじゃがバターとジンギスカン鍋である。勿論日本酒完備である。


「どうぞ、マスター。あ~ん」


 ナインが横にぴったりとくっつき、スプーンにイクラとウニをごはんと一緒に乗せて食べてくださいと笑顔で勧めてくる。サクヤはパクパクとご馳走を食べている。


「あ、待った。ナイン」


 珍しく押しとどめる遥。不満でもあるのだろうか? おっさんがこの状況に不満を持つなど夢の中でも許されない状況である。


「イクラとウニ丼は3人分に小分けしておこう。食べきれないし」


 やっぱりけち臭いおっさんであった。イクラとウニ丼は見かけが良いので北海道に行くときは頼んでしまうが半分も食べられないうちに食べ飽きて残してしまう経験を持つので、最初から小分けしておこうという遥であった。


 はい、わかりました。とちっこいおててで他のお皿を用意して小分けをしていくナインを見ながら、横目に拠点拡張をした結果を窓から覗いてみる遥。


「やっぱり広すぎるよなぁ。1でもステータスが変わると大幅に性能が変わる仕様を甘くみていたな」


 ちょっと疲れた表情をみせて、軽く溜息をつく遥である。


 何しろ、外には豪邸を中心とした半径5キロの広さを持つ基地が存在しているのであった。





「甘くみてたよ。本当に甘く見てたよ。このゲーム仕様」


 外を見ながら、うんうんと頷く遥。レベル4の拠点が半径400メートルだから、次は500メートルだと思っていたのである。


 しかし、よくよく考えてみればレベル3の豪邸から4に上がったことにより広い基地へと変貌したのだ。それが5になれば少しばかり広がるという、やわな性能向上のあるはずでなかった。


 できたときは呆然として、開いた口が塞がらない状態のおっさんである、かなり間抜けな姿であった。


 こんな広大な基地なら、新市庁舎の拠点と重なるんじゃない?とナインに聞いたところ、


「大丈夫です、マスター。レベル5からは空間が歪曲した場所内に拠点が作られる仕様です。敵のダンジョン作成と同じ性能ですね」


 と、答えてきた。なるほど、ネットゲームでマイホームを数万人が持っていても、なぜかその街には1軒分家の広さがあるだけと同じ仕様である。納得した遥である。そこで納得することがゲーム仕様にどっぷりと慣れてしまったことにおっさんは気づいていない。


 それならばもっと拠点のレベルを上げるとどうなるんだろうと空恐ろしい遥である。なんか、街とかになるんではなかろうか。


 だが、この拠点拡張は必要だったのだ。その後、施設を大量に建設した遥である。結局こうなった。


拠点:マイホーム 拠点lv5

維持コスト:0

防衛力:25

防衛兵:50機 内訳、戦闘用20機、車両操作用10機、農業10機、装備作成10機

スキル:拠点聖域化

施設:戦略支援指令センター、広域レーダー施設、武器工廠、大型機動兵器作成工廠、調薬研究所、軍専用車両用大型ガレージ、マシンドロイド専用兵舎

車両:給水車、軍用輸送トラック10台、軍用歩兵輸送トラック10台、全対応超電導強襲揚陸艦、超電導戦闘ヘリ2機、戦闘支援及び大型車両輸送用超電導機動ヘリ1機



 一気にレキぼでぃ支援のために、高価な施設をマテリアルの限界まで建てたのだ。もはやマテリアルはすっからかんである。


 戦略支援指令センターは、マシンドロイドに軍隊行動を細かく命令できて、レーダ施設と連動してレキぼでぃの支援要請を受けヘリや車両の輸送を行う施設である。中に入るとよくある大きいテーブルがモニタ画面の代わりにあり、そこに映し出された3Dの立体映像を見ながら作戦を練ることができる。周りにはオペレーターが座り各地の兵に指示を行うためのモニタ設置机と椅子が多数設置されている。


 まぁ、誰もいないので、がらんとしており、たまにナインが掃除するぐらいであるが。支援要請はステータスボードの支援コマンドを押下すれば、欲しい支援が来るので完全な飾りである。でも支援要請コマンドをアンロックするには必要なのだった。それにちゃんと使おうと思えば使えるのだ。人手がいないので飾りとなっているのだが。

 

 広域レーダー施設は、偵察による敵の発見や支援のためのマッピング、味方の車両の位置など様々な支援を行えるレーダー施設とは名ばかりの高性能な補佐用施設である。偵察用の兵がいないので、支援のためにしか存在していない飾りだが。人手が足りないのがいけないのである。


 武器工廠、大型機動兵器作成工廠はその名の通りである。今までのぼろい机で装備作成から、一気に工廠にアップさせたのだ。大型機動兵器作成時に成功率や性能アップが発生する大型機動兵器作成工廠もついでに作成した。その中はやはり施設を利用した武器を作成などができるがコマンドでポチッとな、のおっさんにとっては飾りである。


 ちゃんと使用すればボタン押下より良い性能が作成できるが、残念ながらちゃんと使用するという行動を取れない残念なおっさんなので仕方ない。多分ちゃんと使用すると本来の性能以下の装備を作成してしまうだろう。


 調薬研究所は装備作成と同じく調合スキルのボーナスがつくためである。調合レベルを上げていないので飾りである。


 軍専用車両用大型ガレージはそのまんま500台までの車両を格納できる。みかけからは絶対に500台も入らないが、勿論ゲーム仕様であるのでデータ表記となる。


 マシンドロイド専用兵舎だけは飾りではなく、マシンドロイドが寛ぐことできる施設らしい。施設らしいというのは、普通の人間が住む兵舎とあんまり変わりが見られないためである。ベッドがカプセルになっているぐらいであろうか。よくわからないが、マスキングされた好感度があると信じている遥は、アインとツヴァイのために作成したのだ。


 ほとんど飾りである残念な施設群であった。まぁ、ゲーム仕様だとこうなるよねと遥は納得していたが。


 車両群は燃料消費が低いコストパフォーマンスの良さそうな超電導シリーズを作成したおっさんである。性能は名前通りなので省略する。そして超電導とついており、エンジンは超電導を使用しており…とか説明用のテキストには記載してあったが、絶対に超電導など使っていないだろうと思われる。超電導は青い光を纏う粒子をエンジンから噴射しないだろうからである。


 これもよくあるゲーム仕様。なんちゃらシステムと頭に書いてあれば、それが仰々しくなればなるほど性能アップするだろうとおっさんは考えている。


 アインとツヴァイの装備も一新したのだ。そして機械操作lv1を付けたツヴァイも10機追加した。車両運転に必要であったのだ。装備はこんな感じである。


アイン

装備:超電導アサルトライフル

   合金製強化外骨格装甲改(防御力30)、光学迷彩

   超電導パワードアーマー(防御力80)


ツヴァイ

装備:量産型超電導アサルトライフル

   簡易強化外骨格装甲改(防御力20)、光学迷彩

   量産型超電導パワードアーマー(防御力60)


 なんでも超電導つけとけばいいよねという考えから作成しました。後悔はないおっさん。


 超電導だとコストパフォーマンスがすごい良かったのだ。仕方ない。そして何気にレキぼでぃの装備している防具よりも良い装備である。まだレキぼでぃはパワードアーマーを作成していないのである。使用時の燃料消費がもったいないおっさんである。レキぼでぃが反乱した場合はおっさんは、はりつけの刑であろう。


 命がけの戦闘という名前はおっさん脳の辞書には無い可能性がある。


 まぁ、車両もパワードアーマーも使う予定はあんまりない。無いというか使う気が無いのだ。


 せっかくできたピカピカな車両である。シートのビニールを剥がすのがもったいなかったが仕方ない。びりびりと剥がして新品のシートに座り運転はツヴァイに任せて見せびらかすためだけに、新市庁舎のコミュニティに乗っていったのだ。かっこいいでしょう? うちの新車。という自慢しいしいおっさんであった。


 豪族にも完全に安全な小拠点を作成する依頼が通ったし、あちらも通貨ではなく報酬としてもらえるからウィンウィンで喜んでいるでしょうと満足な交渉ができたと自画自賛な遥。


 因みに豪族に名乗った名称は、“寄らば大樹の陰”からとった。そして財団とかつけておけば、なんかそれらしく聞こえるでしょうという適当なネーミングなのであった。


 なにはともあれ、強敵がいるであろう新エリアへの下準備が終了した遥である。


 メイドたちにお酌をされながら、宴を楽しんだおっさんであった。






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