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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
6章 お侍と遊ぼう
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69話 おっさん少女は海で泳ぐ

 日差しがすっかり強くなり、アスファルトからは陽炎が見える季節に入った。


 この季節ならば海の家には多くのお客がぼったくりの値段な料理に舌鼓をうち、浜辺は夏の暑さを避けたいとばかりに芋を洗うが如く人々が海に入り、ひと夏のバケーションを楽しまんとナンパや出会いを期待する若人が海岸を彷徨いている。


 今ではその喧騒は過去のものとなり、静かなものであった。たまに海岸をうろうろ徘徊しているゾンビを見るだけである。


 そんな海岸から少し離れた海上にレキはプカプカと気持ち良さそうに浮いていた。子猫を思わせる小柄なぼでぃはゆっくりと波の動きに合わせて移動している。


 青色のセパレートタイプの水着を着ており、健康的な未成熟な肢体が水に濡れて太陽の日差しを受けてキラキラ輝いている。その肢体を撮影せんと、音も立てずにカメラドローンが周りを旋回していた。


 冷たい水の感触が心地良くプカプカと泳がずに浮いていたレキは今日も快晴だなぁとぼんやりと思っていた。


 腕を伸ばすと海水が肌から弾け飛んでいった。子供の肌は本当に水を弾くのだなぁと、その様子を何度も見るために、パシャパシャと腕を海水につけて遊んでみる。弾く水滴を見て楽しむレキ。そこには海で楽しく遊ぶ無邪気な子供がいたのであった。


 おっさん表記だと不満しか出ないので、省略をしています。




 しばらくして、遥は浜辺に戻ってきた。砂浜の感触を足に感じながらテクテクと歩いて、元は海の家だったのだろうか? 今年はシーズンに入る前に世界が崩壊したのでわからないが、ドアが壊れている店らしき中に入る。ゾンビが襲ってくるのをサクサクと倒して窓らしき雨戸で塞がれていた場所をぶち抜いた。


 相変わらずの見かけと違う怪力を持つレキぼでぃである。


 よいしょと座敷席に座って、アイテムポーチからご飯を取り出す。今日は焼きそばである。具の無い焼きそばは食べたくなかったので、ちゃんと肉たっぷり、野菜マシマシな焼きそばである。


 割り箸をパチンと割って、いただきまーすと呟いて、レキぼでぃの小さなお口で食べ始める。


 レキぼでぃの弱点は、大きな口を開けて食べられないところもあるなと思いながら、劣化防止があるため熱々の焼きそばをパクパクと口に運んでいく。


 おっさんは大きく口を開けて一気にガツガツ食べるのが好きだが、それをレキぼでぃで行ったら、メイドたちが不満な表情を見せて、チクチクと注意をしてきそうなので、できなくて正解である。


 そうしてしばらくしてから、段々と身体が乾いてきており海水のまとわりつくような感触が始まった頃にポツリとつまらなそうな表情で呟いた。


「一人だとつまらないんですけど? 周りも誰もいないし寂しくなるだけなんだけど?」


 左右のウィンドウに映るメイドたちに口を尖らせて愚痴を呟いた。


 最初はようやく海に到着したし、十年以上も海には来ていなかった。来たとしても仕事とかであり、海を横目にすぐに移動していたおっさんである。


 ヒャッホーと軽くジャンプをして、海だ〜と、叫んでその叫びに引き寄せられたゾンビを片付けた後に、作成した水着を着て泳ぎ始めてレキぼでぃを十分に愛でて楽しんだのである。後で撮影したところもサクヤに見せてもらうつもり満々な、相変わらずのレキぼでぃの時はゲーム感覚なおっさん少女であった。



 だが、十分に遊んで、ご飯を食べてゆっくりと休んだ後に不満が出てきたのだ。やっぱり一人だと寂しいのである。


「ねぇ、サクヤたちは拠点外にまだ出られないの?」


 拠点もレベル4になったのだ。マイホームはマイベースとなり広くもなった。まぁ、更地だらけで畑が少しあるから基地とは誰も思わないだろうが。


「残念ながら、まだまだレベルが足りません。私とデートするためにも頑張ってくださいね。マスター」


 デートなんて嬉しい語句を使いながら、金髪ツインテールのナインがはにかむような照れて少し頬を赤く染めて伝えてくる。


「私も勿論レキ様とデートをしたいので、頑張ってくださいね。ご主人様」

 

 中の人を無視する怒っても良いだろう語句を使いながら、銀髪メイドのサクヤが下心満載な目をしながら、かなり頬を赤く染めながら伝えてくる。


「早くナインとデートするためにも頑張らないとね」


 と、レキぼでぃは可愛く小首を傾げながら口を綻ばせるように小さな笑顔をして返答した。


 銀髪メイドとの格差が生み出されている様子である。


 そうしてあっさりと帰宅をしたおっさん少女であった。




 帰宅してお風呂で海水のベトベトしたレキぼでぃの身体を洗い流した遥は、和室の冷たい畳の上にグデーンと体を伸ばし寝そべりながら、そばに控えていたメイド二人に頭を持ち上げて話しかけた。


「さて、それでは今後の活動を検討したいと思います」


 ちょっとだけ真面目な表情になるが、たくさん泳いだこともあり眠たそうなレキぼでぃである。底しれない体力を持ってはいるがなんとなく疲れたのだ。多分海で泳いだら疲れて寝るものというイメージが精神を引っ張っているのかも知れない。


 そのイメージはおっさん脳からくるので、常に足を引っ張るおっさんという図式が完成してしまう可能性が高い。やはりパッシブでマスキングされたおっさん脳というマイナススキルがあるのかもしれない。


 レキぼでぃのまま、グータラしている遥。紅葉のようなちっこくて可愛いお手手を広げて、うーんと触るとプニプニしそうな見かけは筋肉がまるで感じられないか弱い腕を寝そべりながら伸ばす。コンパスの短い、されど傷一つない綺麗な足も同じくうーんと伸ばして大の字である。


 サクヤは添い寝せんと、タオルケットと枕を持ちながらレキぼでぃが寝るのを待っており、遥の言葉をちゃんと受けたのはナインだけであった。


「これからですか?」


 今まで通りいきあたりばったりで、活動していくつもりなのでは?と不思議そうな疑問を持った表情で、ちょこんと女座りをしながら聞いてくる。


「そうそう、最近思ったんだけどレベルの高い敵は少しばかり組織的な行動をするよね?」


 最近どころか、当初から組織的な行動が見えていたのだが優しいナインはそれに触れずに小さく微笑みながら、眠そうなレキぼでぃの目を見つめながら返答してきた。


「そうですね。エリアもしくはダンジョンを形成できるオリジナルは多少の知恵を持ち活動をすることが多いですね。それが何か?」


「やっぱり人手が足りないと思うんだよね。この間の零細大名ぐらいなら大丈夫だけど、そろそろ支援が欲しいんだよ。できるだけ安く」


 余計な一言を加えて尋ねる遥。下請けを虐める嫌味な営業マンみたいなおっさんである。取り敢えず安くは常套手段だが、それをやって安かろう悪かろうになる可能性を考えない遥。しかもサラリーマンなら仕事に失敗しても大丈夫だが、今は命懸けの活動であるのだ。


 それを聞いて佇まいを真面目な雰囲気に変えるナイン。正座に座り方を変えて、真っ直ぐに遥を見つめてくる。


 ヤバイ、さすがのナインも怒ったかと慌てて寝そべるのをやめて正座に座り直すおっさん少女。グータラレキ様も可愛かったのにと残念そうな不満そうな表情のサクヤ。銀髪メイドはどうでも良い。


「マスター。最近の戦闘でマテリアルは溢れ、たくさんの素材があります。ここは惜しみなくマテリアルを使い一気にバージョンアップをしましょう。最初の投資が後から効いてくるのです」


 真面目な表情でぐいぐいと顔を迫らせて提案してくるナインに、遥も真面目な表情になる。ちっこくて可愛いお手手を顎にあてて、ふむと思考する。仕事をやるように珍しく考えるおっさんである。


 確かにナインの提案はもっともだ。戦略シミュレーションでも金を貯めて初期の建設は一気にデカイ施設を立てたほうが後々有利になるのである。安いのは簡単に買えることができる車両や装備のみで、施設は自分が使えるマテリアルの限界ぎりぎりまで使用した方が良いだろう。


 仕事モードで、コストパフォーマンスを考え始めた遥。これでもサラリーマンだったのだ。真面目に考えると建設的な意見を採用するのである。


 ならばいつも真面目にやれよと言われると、ゲーム仕様なのでゲームらしく遊びます。仕事では無いのでと返答するだろうおっさんであった。


 まぁ、戦略シミュレーションゲームではその戦法を取るためにぎりぎりまで施設を建てずにいて、建てたからこれからは攻勢に出るぞと思ったらあっさりと敵の策略で建設した施設を破壊されたおっさんである。



「では、この間倒した零細大名から手に入れたレギオンマテリアルを使います。しっかりとした軍基地に拠点を拡張しましょう」


 可愛く微笑むナインが提案してきた意外な内容である。レギオンマテリアルは部下を作る能力に長けた零細大名が落としたマテリアルである。


「拠点拡張!やりましょう、作りましょう!」


 正座の状態からピョンと可愛い小柄なレキぼでぃの身体を飛び上がらせて喜色満面な遥。今までは寝ていたら拠点拡張されており脇役なおっさんだったのだ。


 今でも脇役なおっさんぼでぃだが、それは教えないほうが本人のためである。まぁ、教えられてもそんなもんでしょと気にしない可能性は高いが。


 ポチリポチリと空中に手をやり、作成コマンドを使用する遥。立ち上がり最後の確定ボタンを押下する前に、テッテケと可愛い両腕を振りながらスキップする勢いで庭に移動である。拠点拡張のイベントを見逃したくないのだ。


 両手を腰にあてて、ふんふんと可愛く興奮しながら頬を紅潮させ叫んでボタンを押下した。


「拠点かくとうっ!」


 せっかくのイベントを噛んでしまう残念なおっさん少女。


 そして拠点全体が輝きに包まれていく。幻想的な光が生みだされていき、周りに拡がっていくのを見ながらわくわくして結果を確認するおっさん少女であった。


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