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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
37章 頑張っている人たちを応援しよう

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568話 季節戦隊 春夏秋冬

 チキンブロイラーは空からの一撃にてダメージを負いよろめくが、素早くベホマンドリンクを飲み干し回復させると空を見上げる。少しのダメージでも素早く完全回復するボス。さすがチキンなだけはある。ウェスたちヌスッターズが揃っていても倒すのは難しかったに違いない。


「ふしゅるるる〜、何者だ!」


 傷つけられたことに怒りの声をあげて、チキンブロイラーは空を見渡すと、フヨフヨと空飛ぶサーフボードに何者かが乗りながら勢いよく風を切りながら降りてきた。


 その数は三人。一枚だけ誰も乗っていないサーフボードが千春の所にやってきたので、とうっ、と慣れた風に飛び乗る。


 そうして四人、笹船と呼ばれる空中サーフボードを操って、ふわりと背の高いキノコの上に降り立つ。


 残りの三人と合わせて、千春は大きく叫ぶ。


「季節変化!」

「季節変化!」

「季節変幻!」

「千秋ちゃん、掛け声違うよ……」


 ちょっと間違えちゃったと、ペロリと舌を出して、もう一度千秋と呼ばれた少女が季節変化と叫び直し、最後の一人は聞こえないぐらいの小さな声で言っていた。どうやら恥ずかしいらしい。


 ピカリと四人が輝き眩しさにコケーとチキンブロイラーが目を細める。その中で笹舟が謎の変形をして、パワーアーマーとなり四人にカションカションと装着された。


 そうしてキラリと光るなんだか戦隊ヒーロー物みたいな銀色のパワーアーマーを着込んだ千春がバッと両手をあげて、素早くポーズをとっちゃう。


「季節の始まり、春の訪れ、戦隊リーダー千春!」


 次にロングヘアーの少女がビシリと腕を伸ばして


「元気一番の季節、夏の訪れ、戦隊キャプテン千夏!」

 

 縦巻きロールの少女が頬に手をあてて、高笑い。


「過ごしやすい季節、秋の訪れ、戦隊隊長千秋ですわ!」


 最後の一人は丸まって恥ずかしがり、ポソリと呟く。


「うぅ、朧姉さんの馬鹿……。恥ずかしいです、千冬」


 千冬だけは、特撮ヒーロー物を広めた朧姉さんに文句を言いたい模様。


「私がリーダー!」

「だからキャプテンで私は良いって」

「隊長で満足しておきますわ」

「敵をたおそうよぅ」


 ポーズも名乗りもめちゃくちゃなのは幼女なので仕方ない。皆リーダーをやりたいのだ。特撮ヒーロー物を広めた朧が悪い。


「とりあえず、季節戦隊春夏秋冬参上!」


 そこだけ声を揃えて名乗りをあげるぐだぐだ戦隊である。


「コケー! ハンターたちか! 援軍に来ても無駄だ!」


 チキンブロイラーはチキンブロイラーで鳥頭なので、まったく春夏秋冬の名乗りを聞かないで、聞き流してハンター扱いしてきた。


 まぁ、戦うので問題はないだろう。たぶん。


「千夏ちゃんたち、助けに来てくれたんだね。ありがとーっ」


 千春の言葉に、へへっと鼻をかくと照れ笑い。


「これは無理ぽいと、パパしゃんが送り込んで来たんだよ」


「そうですわ。戦隊モノのテンプレをしようって」


「うん……ピンチな仲間を助けに行くのはテンプレだって」


 千秋と千冬も話に加わり、おっさんの悪ノリを言葉にするが、すぐにチキンブロイラーへと向き直り身構える。


「チキンスラッガー!」


 チキンブロイラーは装甲車の装甲を簡単に切り裂いた鶏冠を投げてきた。さすがにもう話が終わるのを待たなかった。


 高速回転で迫りくるチキンスラッガーに、不敵に笑い千夏が一歩前に出る。


「ライトニングチャクラム!」


 腰に吊り下げたチャクラムを素早く投擲すると、雷光を纏い空気を焦がしながら、チキンスラッガーとぶつかり合い、火花を散らす。


 たが、スパンとライトニングチャクラムは押し負けて斬られちゃったので、ありゃまと慌てて、両手にチャクラムを握り投擲を再度する千夏。


 さすがに追加の二つのチャクラムには押し負けてチキンスラッガーは力を失くしチキンブロイラーの頭に戻っていく。


「へ、へん! そんな攻撃はあたしには効かないぜ!」


 ちょっと声が震えて、冷や汗をかいているようにも見える千夏だが、可哀想なので千春たちは見なかったことにした。


「ふしゅるるる〜。ならばこれならどうだ! チキンバーナーマックス!」


 チキンブロイラーは押し負けてしまったスラッガーに悔しそうにして、両手を四人に向けて火炎を放つ。


 まるで鶏の嘴のように高温の炎が噴き出して、四人を覆いつくす。威力を高めて放った火炎放射は今までと違い、鶏舎をも包み込む程の巨大な炎であった。チキンなチキンブロイラーは同じ技と見せかけて、敵が強いと悟ると火力を強化したのだ。


 四人組がなすすべもなく炎に包まれたので、チキンブロイラーは勝利の雄叫びをあげようとするが


「え、と、アイスウォール」


 小さな呟きと共に四人組を包み込んでいた炎が弾け消えて、薄っすらと青い氷の壁が現れていた。


「私のアイスウォールは破れないです。ごめんなさい」


 シールドビットにエンチャントアイスして、炎を防いだ千冬が気弱そうにペコリと頭を下げる。よく見れば何重にも氷の壁が張られていて、千夏の失敗を参考にしているのがわかる。なにげにちゃっかりしている千冬である。


「オホホホ、次はわたくしですわね! エネルギーミサ〜イルですわ!」


 肩に備え付けられたミサイルポッドを千秋が発射する。多連装ミサイルがチキンブロイラーを包み込むように噴煙をたなびかせて襲うが余裕の笑みを鶏は浮かべて、ムンと鳩胸を張った。


「どんなに多いミサイルでも俺様には効かぬ! レーザーカセット!」


 チキンブロイラーの鳩胸につけられている首飾りから、幾条もの光線が発射されてミサイルを貫く。


 ミサイルは爆発してしまうかと思われたが、外殻が壊れたあとにエネルギー弾が現れてチキンブロイラーへと襲いかかる。さらに幾条もの光線が発射されるが、エネルギー弾を貫いても多少揺らぐだけで、その軌道は変わらない。


「うぉぉぉ!」


 チキンブロイラーは油断しており、エネルギー弾と変わったミサイルの群れの直撃を受けてしまうのだった。


「オホホホ! フォトンミサイルですわ! エネルギーミサイルはレーザーでは迎撃できませんことよ!」


 オホホホ少女が高笑いをして、光の爆発に包まれるチキンブロイラーへと、得意げに語る。ちゃんと対抗装備をしてきた幼女たちなのだ。パンチやキックだけのどこかの戦士とは一味違う。


 爆発の中からよろけながら出てくるチキンブロイラー。自慢の白い羽毛が燃えて、鶏が焼ける良い匂いがしちゃう。


「やるなハンターたち! ベホマンドリーンク!」


 しかしながら、その手にはまたも回復ドリンクを持っており、すぐさま回復させて、つやつやの白い羽毛に包まれた状態へと戻ってしまう。


「けっ! それなら回復の時間も与えないぜ!」


 瞬歩を使い相手の死角から棍を千夏が振るう。地を這うように身体を屈めての攻撃は鶏の軟な足首を狙う。


「チッ」


 チキンブロイラーはその体格に見合わぬ軽い動きで、トンと軽やかに地を蹴り宙に浮き、その攻撃を回避する。


 その身体が浮いたのを見て、千秋と千夏が隙と見て、頭を狙い同時にバネに弾かれたようにジャンプをして側頭蹴りを放つ。


「チキントルネード!」


 躱せぬとわかったチキンブロイラーは羽根を硬質化させて、カミソリのような鋭さをもたせると、竜巻を作り出すように回転する。


「あらら」


「キャッ」


 二人は鋭さを持った羽根をくらわないように、慌てて足のスラスターを噴射させて回避する。


 回避しながらも二人はアイコンタクトで、なにかを手繰り寄せるように手を動かす。キラリと糸が光り竜巻と化していたチキンブロイラーへと向かう。回転系にはよく効く技。銀糸にて絡め取るのだ。


「チキンウイング!」


 だがチキンな用心深さを持つチキンブロイラーはすぐに気づいて、回転を止めて羽毛をその羽根から舞い散らす。


「散らばっていては、先程のように防げまい! チキンバーナー!」


 辺り一帯が羽毛に塗れる中で、すぐに次なる一撃を放たんとバーナーから炎を吐き出させようとする。


 バーナーから炎の破片が顔を見せるが、バーナーを構えた瞬間


「超技 降魔の太刀ニ式凍!」


 三メートル程の太刀へと姿を変えさせて、千春が大きく振りかぶり、チキンブロイラーに肉薄する。


「うぬっ!」


 炎の攻撃を取りやめて、唸りながらも回避しようとするチキンブロイラー。舞い散る羽毛にて敵の太刀を覆い鋭さをなくそうとするが、不思議なことに羽毛に包まれることはない。よくよくみると、青い光りに覆われて敵の持つ太刀の刀身は羽毛を弾いていた。


 その太刀の威容はもしかしたら自分を一太刀で斬り伏せるかもしれないと焦るチキンブロイラーは、コケコッコーと羽根をバッサバッサとはためかせて、敵の振り下ろしの軌道からなんとか逃れる。


 光の軌跡が走り羽根があっさりと斬られるが、一撃死だけ逃れれば良いとチキンブロイラーは嗤い、またもやベホマンドリンクを手に生み出した。


 太刀を振り切り、地面へと着地した敵を見て嘲るチキンブロイラー。


「ふしゅるるる、残念だったな! 俺様は無敵なのだ」


 ほれほれと手の内にあるベホマンドリンクを見せつけて、グイッと一息で飲むチキンブロイラーであるが、千春はその様子を見て、ムフフと笑って見せた。


「私の降魔の太刀ニ式凍を本当に躱せたのかなぁ? 鶏さんのボンベは大丈夫?」


「ボンベだと? なにいっ!」


 チキンブロイラーは驚き、背中に背負っていたボンベを見ると、装甲は捲れあがり、刀傷が斜めに入っていた。シューシューとガスが吹き出しており、なにか煌めくものが見えた。


「ファイアブリッツだぜ」


 小さなおててに炎を生み出して、千夏がサイドスローでチキンブロイラーへと投げつけると、動揺していたために回避しきれずにガスに着火されてしまう。


 あっと言う間にガスに包まれて、チキンブロイラーは火だるまになるが


「炎が俺様に効くかぁ! すぐに修理して……何だコケ?」


 炎無効である身体は羽毛一枚燃えないと、愚かな敵を嘲笑おうとして驚く。炎になぜか白い粒子がついており、燃えない身体を動けなくしていく。


「いったいなにが? こ、氷だと」 


 動きを封じる白き粒子。その粒子は羽毛を凍らせ、肉を冷凍物に変えていくのだ。炎に氷だとと驚くチキンブロイラーに千春が可愛らしくおててをこめかみにつけてポーズをとり、ウインクをする。


「鶏さんのボンベから出るガスにエンチャントアイスをかけてあげたんだ。燃えぬ炎に凍れる氷の味はどうかな?」


 降魔の太刀ニ式凍にて、敵のガスボンベのガスにエンチャントアイスをかけたのである。吹き出るガスは炎と化して、追加ダメージは氷なので、強大な炎に巻かれたチキンブロイラーは氷による継続追加ダメージを食らっていた。


「うぉぉぉ! 冷凍パックにされてたまるかぁ!」


 叫びながら炎をはたき落とそうとチキンブロイラーは慌てるが、どんどん身体は凍っていき、首飾りすらも凍ってしまう。


「チャンスだよ! 皆フォーメーションファイナルバズーカ!」


 にゅっと大きな土管みたいな無駄に無数のライトがデコられているバズーカを千春が空から取り出す。無論一人で撃てる武器ではない。四人の力を注いで発射する必殺技だ。


 とうっ、と他の三人がバズーカを持ち、ESPパワーをこめていく。千春は手を掲げてチキンブロイラーに狙いを定めて、ダイナミックなアクションをする。


「今、みんなの」


「えいっ」


 バズーカから銀に輝く砲弾が発射され、空間を裂き地面をえぐり、膨大な力を伴いチキンブロイラーへと命中し


「コケー!」


 チキンブロイラーは爆発して、一撃で粉々の鶏肉となり消滅するのであった。


「え〜! なんで撃っちゃうの? 千冬ちゃん酷いよ!」


 爆炎が周囲を燃やす中で、千春は涙目になっちゃう。せっかく練習を皆でやってきたのにと。


「え、と、あと数秒であの鶏さんは氷から脱出していたから、皆のセリフを言う暇はなかったよ?」


 おずおずとしながらも、引き金を無情にも弾いた千冬の冷静極まる解析の言葉に千春は千夏たちへと振り返るが、そのとおりでつねと同意して頷いていた。


「うぅ、現実は練習どおりにはいかないのかぁ〜」


 ガックリと膝を落として悲しむ千春。それをどう慰めようかと三人が困った表情になるが


 なんにしてもチキンブロイラーは季節戦隊に倒され平和が戻ったのであった。


 チャンチャン。

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結お疲れ様です。 毎日の日課として楽しませていただきました。 ありがとうございました。 次回作も楽しみにしています。
[一言] チキンブロイラーは頑張った!感動した! おっさんがドライに甘々でなければ結構な被害が出ていたでしょうね。 鶏だけに。ケッコー。
[良い点] 必殺台詞を味方に妨害されるのは新しいw [一言] 練習と本番は違うから、しゃーなし。
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