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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
35章 色々と考えよう

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544話 機械神対戦闘民族な美少女

 デウスエクスマキナはその巨腕を振りかざして、ちいさく脆弱なパワーしかもたない少女へと襲い掛かる。


 その機械の腕は関節がなく鞭のように、六匹の大蛇のようにレキへとしなり、うねりながら迫りくる。


 高速でしかもレキへと全方向から回避できないように包囲しながらの攻撃であった。


 デウスエクスマキナ。即ち超常の機械でできている老人は油断なく抜け目なくパワーの差を活かして少女を倒そうとしていた。目の前の少女は驚愕の技の冴えを見せるが、それは限界まで刃を薄くした刀のようなものだ。


 ほんの少し叩けば折れてしまう儚げな武器。パワーの差を覆すためとはいえ、無謀すぎる。こちらとしては致命的なダメージを負わないように戦えば良い。


 迫りくる巨腕を高速移動で回避していく少女。その両脚にパワーを集めて黄金の粒子を纏わせて限界を超えた速度で躱しているのが見える。


「こちらへ攻撃する余裕はあるまい! 貴様の弱点その一、高速攻撃に対抗するために、速さに全ての力を集めなければいけないということ!」


 しなる巨腕は馬鹿な蛇のように少女に躱され続けても、絡んだりする間抜けなことはしない。正確に敵の逃げ道を塞ぎながら追い詰めるのみ。


 レキは迫る巨腕を蹴り、その反動も含めて加速して次にくる巨腕の横を通過する。両側から押し潰すために手のひらを広げて挟もうとする攻撃も見てとり、空気を壁としてさらに加速して躱す。


 バチンと後ろで敵の両手が外れたために手のひらを合わせて叩く音が響く。


「グフフ、まだまだまだまだ〜! 神技 六連精霊爪!」


 六本の手からレキの背丈と変わらぬ長さの爪が伸びて、それぞれ燃え盛る炎、全てを斬り裂く風、凍りつかせる氷、触れれば痺れて動けなくなる雷、殴打となる金剛石、敵を押し潰す黒き重力を纏う超常の爪となる。


「脚で蹴り抜けることは無理になったな! 触れたら最後、脚を残して貴様は消滅となるだろう。弱点その二、範囲攻撃に弱い!」


「常に敵の弱点を突くとは、戦い甲斐があります。もしかして受け答えができるほど、頭の良いAIだったのでしょうか」


 レキは敵の六腕が全て超常の力で覆われたことを確認したのを見て、それでも恐怖の色を見せずにデウスエクスマキナへと言う。


「その挑発も今の貴様では負け犬の遠吠えだなぁ〜! 死ねぇ!」


 せせら笑いデウスエクスマキナは今度は六腕の横を通り過ぎてもエンチャントされた超常の力で少女がダメージを負うだろうことを確信しながら攻撃をする。


「たしかに今の私では脚以外の耐久力は激減していますが……まさか、この技の弱点を私が考えたことがないと思っているのですか?」


 レキは呼気をして、ゆっくりと構えをとり


「秘技 一点突破!」


 炎逆巻く腕へと蹴りを繰り出す。見えぬ程の速さで右脚を槍のように繰り出すと、脚を覆っていた黄金の粒子が槍のように噴出して、炎の腕へと突き刺さり貫く。


「ぬっ?」


 貫かれたが小さき穴にすぎないと思ったデウスエクスマキナだか、まるで地割れのように亀裂が入り、バラバラに砕かれたしまった手のひらを見て驚く。


「秘技 連続突破」


 あんまりネーミングセンスのないのはおっさんと同じなレキはすぐさま他の腕へと蹴りを連続で繰り出す。同じように黄金の槍が作り出され次々と腕を砕いていく。


「粒子を使った遠隔攻撃か! だが!」


 デウスエクスマキナは腕を砕かれても動揺せず、レキは腕が壊れたのを確認して再度脚に力を集めて、空を蹴りデウスエクスマキナへと迫る。


「神技 精霊の盾!」


 超常の力がデウスエクスマキナの声と共にその機械の身体を覆う虹色のバリアとなり


「秘技 一点突破」


 バリアをものともせずに、レキは蹴り抜こうと攻撃をする。


「むぅ……」


 黄金の槍がデウスエクスマキナへ命中するが虹色のバリアがその攻撃を防ぎ粒子へと戻し吹き散らす。


 レキがその様子に小さく唸るとデウスエクスマキナは高笑いをして砕けた六腕を掲げながら言う。


「残念だったなぁぁぁ! 私は愚かな貴様とは違い、普通に強力なフィールドを構成できる。貴様の一点に集めたパワーでの攻撃をあっさりと防ぎきるぐらいなぁ!」


 六腕をゆらゆらとレキへと見せつけて


「さらにぃぃ、再生能力も高ぁぁい! パワーの差は哀れだなぁ!」


 壊れた腕の先から機械の骨や筋肉繊維、皮膚が生まれてあっという間に直ってしまう。


「なるほど。ですが、まだまだ私は戦えますよ? 貴方をスクラップにするまでは」


 小さき少女は淡々とデウスエクスマキナへと告げて身構える。


「ならば再開といこうか!」


 精霊爪を大蛇の牙のように少女へと突き立てるべくデウスエクスマキナは攻撃を再開して、レキは再び砕かんと脚に力を集めていく。


 先程の焼き直しになるだろうとデウスエクスマキナは予測して、ニヤリと嘲笑う。


「次はこの攻撃も追加といこうか! ホーミングレーザー!」


 肩と脇腹からオーブのようなものがいくつも現れて、淡く光るとレーザーが発射されて、ねじ曲がりながらレキへと飛んでいく。


 まるで光で構成された雨のごとく向かってくるのを、薄く笑みを浮かべてレキは迎え撃つのであった。




 レキは掠るどころか、その傍を通り過ぎるだけで死んでしまうような敵の各属性を籠めた機械の巨腕から両足に力を集めて、限界を超えた速度で大きく回避しつつ、敵がこちらの逃げ場所を防ぐために全周囲から攻撃してきたホーミングレーザーを見て嬉しそうにちいさく口元を笑みへと変える。


「詰みというわけですね。たしかに強い。こちらの力を見て冷静に対応を考えている………。サクヤが作った眷属はたとえ仮初めの命でもこれだけの力を持っているのですね」


 サクヤとの戦いは避けられないとレキは悟っている。どんな終わり方をするかは旦那様次第だが、それでも戦う事になるだろう。


 戦いの前にサクヤの力の一部を知れて良かったとレキは思いながら笑みへと変えていた口元をキュッと引き締める。


「ですが、その時に私は傍観者でいたくないのです。旦那様の手伝いをする。戦闘のために生まれた私は傍観者でいるわけにはいかないのです。だからこの戦いを試金石にさせてもらいます!」


 強い決意と共に両手を胸の前に持ち上げて、身構えて呟く。


「そろそろこの技に慣れてきました。私の新たなステージに至る姿を見せてあげましょう。デウスエクスマキナ、サクヤ。………そしてナイン」


 さらに体内から黄金の粒子を生み出してレキはそろそろ戦いを終わらすことにするのであった。





 デウスエクスマキナは困惑していた。目の前の少女が限界を超えた速度で無理やり身体を動かしているのはわかっていた。


 諦め悪くさらに速度をあげてレキは六腕の攻撃を回避していったのだが、とどめのホーミングレーザーを撃ち放ったのに、未だに健在であり倒せていない。


 腕の攻撃を回避したあとに両手に力を集め直してレーザーをまさしく光速の拳で受け流していくのを見て計算と違うと。


「こ、こちらの攻撃の間が空くのを待っているのならば無駄だ! 私は疲れの無い機械の身体! 腕の攻撃もレーザーの攻撃も終わることはない! 諦めるのだな少女よ!」


 もはや倒すのは時間の問題だ。敵はこちらよりパワーがない。消耗して倒せるだろうとデウスエクスマキナは眺めるが嫌な予感が止まらない。


 なぜだか、敵の動きが速くなっていないか? 段々と洗練された動きになっていくような………。


 レキが一瞬空で止まる。遂に諦めたかと期待の目で見つめるデウスエクスマキナであったが、予想をその少女は覆してきた。


 炎の腕が肉薄した瞬間にふいっと足を動かしたのだ。いや、黄金の槍と化した攻撃を再び繰り出して炎の腕をあっさりと破壊した。


 だが、その光景にデウスエクスマキナは勝利の笑みを浮かべる。


「焦ったな! それでは回避に力をまわせまい!」


 少女が回避だけで攻撃できないことに苛立ち、遂に無理をして反撃に移ったのだとデウスエクスマキナは歓声をあげるが


「違います」


 レキは軽く否定の言葉を口にすると、蹴り足をぶれるように繰り出す。五本の黄金の槍が繰り出されて、他の腕を次々と破壊していく。


 腕が破壊されてもデウスエクスマキナは気にしない。再生すれば良い。そして少女が完全に判断を間違えたと考える。


「おしまいだ! 威力の落ちるホーミングレーザーでも、貴様の落ち切った他の身体部位を切り裂く!」


 勝利宣言をしてやろうと高笑いをして少女がレーザーで焼かれて死ぬ姿を予想する。あれだけ脚に攻撃のための力を集めていればもはや回避もできずに終わるだろうと。


「違います」


 だが、少女は両手を掲げて美しい舞のようにレーザーを撃ち落として………いや、受け流して次に迫るレーザーへと当てていく。


 デウスエクスマキナはその様子を見て驚愕で目を見張って叫ぶ。


「馬鹿な! もう両手に力を集めた………いや、回避と攻撃を同時に行っている?」


 焦りと共に腕を再生させて再び攻撃に加えるが、回避のために足で空を蹴ると共に黄金の槍が生まれて腕を破壊していく。そうして隙ができたとレーザーが襲い掛かるが、手をそっと突き出してレーザーを他のレーザーへと受け流すと同時に当てていく。


「は、速すぎる………。力の移動が速すぎる!」


 機械の目にして神の目は少女の力の動きを見抜いていた。だが、その動きは速すぎた。溜めもなく一瞬で脚に自壊するほどの力を集めたかと思えば、次の瞬間には手にその力は集まっている。


 凝集した力を身体部位に移動させる時間が一瞬すぎて、まるで体内全体にそのパワーが満ち溢れているかのように輝いていた。


「まっ、まずい! 化け物かっ! くらぇぇい、超重力爆縮砲!」


 デウスエクスマキナはレキの力の移動の速さ。攻撃への対応力の速さを見て、このままでは負けると焦り、必殺の攻撃を出すことにした。


 金属の胸が大きく開き、巨大なオーブが現れて黒き闇にすら見える力が集まっていく。敵を圧壊させて倒すデウスエクスマキナの最終兵器にして範囲が広大のため、目の前の少女も回避できぬと確信して。


 オーブに闇の光が集まり臨海を迎え、発射させようとした僅かコンマの間。


「溜め攻撃を待っていました。秘技 凝集反射脚」


 淡々と呟くようにデウスエクスマキナへと告げながら、オーブに一瞬の間に接近したレキは黄金の粒子で輝く脚を思い切り突き出す。


 臨界を迎えていた闇の光はレキの最後の後押しで、レキに向かうのではなくデウスエクスマキナの体内へと発射させる。


「ばばばばかなぁぁぁ!」


 デウスエクスマキナはその攻撃に再び驚愕する。敵の溜めたエネルギーを自分の力として使うとはと。発射寸前、こちらのエネルギーへの制御が薄れた瞬間を狙い少女は攻撃してきたのだ。攻撃が防がれるなら、相手の力を利用するという狙いの技だったのだ。


 黒き光は体内で全てを圧壊させながら突き進み、圧壊に耐え切れずにデウスエクスマキナはその強力極まる勝利は確実のはずであったはずの機械の身体を砕かせて大爆発を起こす。


 爆風と衝撃波が空間を流れていき、その艶やかな髪をバサバサとなびかせる中でフフッとレキは笑う。


「隔絶したパワーの持ち主と戦う技。ありがとうございました、デウスエクスマキナ。貴方は良い練習台でした。さすがは木偶人形と言ったところですか」


 嬉し気に野花のような淡い笑みを浮かべて、自分の戦い方の方向が見えてきたと思いながら、レキは翼を展開させて自宅へと帰還をするのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] レキにはやはり戦いが似合うなー。そしてサクヤおばさんに前座感が出てきた…
[良い点] レキさん大勝利〜! [一言] マジで伊達じゃないレキの権能「成長」 ところで、おっさんとキノ(を使ってる四季)は、この騒動をどう収めるんだろう? 次代大樹代表は誰か!? 楽しみです(おっ…
[良い点] 奥さん強い!さすが〈成長〉担当。アクナはサクヤの眷属とは思いがたいほどネーミングセンスがあった!スパ○ボのネオグラン○ン戦が思い描けました(≧∀≦) [気になる点] 超重力爆縮砲は発射して…
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