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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
33章 人々の今の生活を見よう
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506話 キノたんの午後

 本物の本部。即ち惑星みたいに大きくなったのに、珍しい食べ物が採れるようにしただけの神域。簡単に言えば田畑と牧場があるくたびれたおっさんの家である。神域と呼ぶのもおこがましいかもしれない。


 木野はのんびりと車に乗り込み、今日の運転手役のドライに声をかける。


「若木シティの家を経由してくれたまえ」


「あいあい、了解でーつ」


「そろそろ変身しておかないと、まずいでつよ」


 木野は運転手の幼女に注意しておく。アタチがスーツ姿なのに、ズルいでつ。


 運転手役の幼女はアクセルに足も届かないちっこい足だが、普通に運転している神秘を見せていたりした。どう見ても、子供が運転もできないのに、ブーブー遊びをしているようにしか見えないが。


「しょうがないでつね。運転手役はお爺さんと決まっているから面白みがないんでつが、仕方ないでつね」


 変身と呟くと、どこかの狐みたいにポフンと煙に覆われて幼女はお爺さんな運転手へと変わった。それを見て木野は驚く。


「煙がでまちた! かっこいい! どうしたんでつ、それ?」


 今まで変身は瞬時に変身して味気なかったのに、煙が出たのである! なにそれかっこいいでつ! 幼女の琴線に凄い触れていまつ!


 えっへんと、お爺さんは得意げな顔になる。お爺さんの得意げな顔は需要はまったくないと思われるが、中身が幼女なので仕方がない。


「朧おねーちゃんが作ってくれたアイテムの力でつよ。魔法少女バージョンとか色々ありまつ」


「え〜! 知らなかったでつ、スケジュール表に入れておくでつ」


 バングル型端末を叩いて、スケジュール表をだす。そこに重要とタグをつけて、朧たんに変身アイテムを貰うと書き込んでおく。木野はスケジュール管理バッチリなのだ。最重要、重要、どうでも良いとタグを分けてもいるできる幼女なのだからして。


 どうでも良いに、若木シティの会議が入っていたり、おやつの時間が最重要に入っていたりもするが、幼女なのだからして当然の振り分けであろう。


「そんじゃ、若木木野邸宅に行きまつ」


「あ〜い。おまかせでつ」


 傍から見ると、中年の男性とお爺さんが幼女言葉を使うというシュールな光景であったが、誰もその光景は見たことがないので問題なかった。




 若木シティは今や世界が崩壊した後だとは思えない程に復興している。


 周辺をみれば、廃墟やうち捨てられた車などが目に入るが、中心部は都市計画に基づいた六車線の道路。外からくる鉄道が通り、ビルも清掃員が窓ガラスを拭き綺麗であり、住宅地も一軒家が建ち並び、子供たちは学校へと元気に登校して、大人たちは忙しそうに出勤していた。


 即ち、崩壊前と変わらない光景となっていた。大人たちはスーツ姿と作業着の姿の人が半々なところが違うかもしれない。中心部でこれだから、周辺ではスーツ姿はほとんどいない。


 その中でも豪邸がある。ナナシは支店経由だから家はないが、木野は豪邸を作ったのだ。……まぁ、四季たちの都合だけれども。


 豪邸といったらどでかい鹿鳴館みたいな洋館に、正面玄関の先には噴水のある庭。屋内プールも備わり、庭木も庭師により整えられた、屋敷の内装も嫌みでない程度に豪華であり、なんと西洋鎧まで飾ってあり、どこかのおっさんのジャグジー付きの家よりもお金持ちな家である。


 どこかのおっさん的には庭は勝っているよ、でっかい盆栽もあるし海まであると言い張るかもしれない。庭に海がある点でおかしいが。


「ジャンジャカジャー、ジャンジャカジャー」


 その中の屋内プール、そのプールが二つに分かれて車が中からせり出してきた。もちろん木野の乗る車である。


「何回やっても、これは楽しいでつね」


 木野たちは車から降りてきて、楽しい楽しいと喜んでいた。無駄に家の出入りをこっそりと行うために作ったギミックなのだ。


 地下鉄がないので、地下に移動できる地下道をドライたちは秘密基地でつねと、悪ノリして作ったのだった。


 そそくさと自分の寝室にやっぱり秘密の通路から移動して、誰もいないことを確認して移動。速やかに書斎に移り、椅子に座って忙しそうに見せるために、紙を机の上にばら撒く。


 なにか色々陳情やらなにやらが書いているらしい。幼女には落書きにしか見えないけど、ママさんが持っておいてねと指示をだしてきたので、預かっているのだ。幼女には落書き用の紙切れだけど。


 設定では木野は朝食をほとんど食べないで、お仕事をするらしい。信じられないことでつと、キノは自分のことながら、朝食を食べないなんてと、ゾッとしちゃう。


 だが、別に自分は朝食を食べているので問題はない。いい具合に紙切れをばら撒けたかなと確認すると、椅子に座り置いてあるベルを鳴らす。


 チリンチリンと音が鳴るが、ただのポーズである。実際は電子機器なので、メイドさんルームにあるパネルが光って呼び出すのだ。なんでベル? というとおばさんがメイドはベルで呼び出すものなんですよと、こだわったためだった。


 ほほう、なる程とパパさんがその話に頷いて、ハンドベルを取り出して、チリンチリンと鳴らしたら、おばさんはなにか福引きで外れたんですか? と飄々とした口調で返したので、お互いの頬がどこまで伸びるか選手権を二人は開幕していたりもした。


 二人のコントはいつ見ても面白いでつねと、内心で考えていたら、目つきの悪い若いメイドが入ってきた。


 ジロジロと木野を見て、じっとりとした目で挨拶をしてくる。


「過労死を気にしない木野様、おはようございます。お呼びでしょうか」


「あぁ、コーヒーを持って来てほしくてね。それとノックをしてほしいな。何回言ったらわかるんだね」


 快活な冗談めかした口調で言うと、メイドは頭を下げてくる。


「体調不良で木野様が倒れていたら大変だと思いまして、つい忘れてしまいました」


「いつも君はそんなことを言うな。まぁ、良いだろう」


 このメイドしゃんは変わり者でつねと、木野は苦笑を浮かべる。そう、ここにはかなりの人間が雇われているが、ほとんど人間である。来よー問題とかパパさんは言ってた。なにがくるんでつかね?


 適当に募集をかけたり、取り巻きから是非にとお願いされた人たちを雇ったのだが、一応仕事を皆はしているし、実際はキノはこの家にはいないので、別に気にしない。おしゃべりと噂好きな召使いでも気にしないのだ。


「木野様。やはり朝食は必要では?」


 ドアを開けたまま、ジッとした目でメイドが見てくるのでびっくりするが


「必要ない。どうも朝食は食べない方が頭が回るんでね。ナナシに負けないように、頑張らないといけないんだよ」


 パンケーキ五枚重ねを食べた木野は爽やかに答えるのであった。


「……木野様は頑張っていると……いいえ、なんでもありません」


 そう言って出ていくメイドに、何だったのかなと木野は首を傾げるのであった。



 コーヒーはまじゅいので、持ってきたコーヒーを速攻コーヒー牛乳と入れ替えという、手品師も真っ青なすり替えをして甘くて美味しいでつと味わっていたら、しばらく重要なお仕事をする。


 どんな重要なお仕事かというと、ドライたちの通信を利用した掲示板確認である。今や大樹国の北海道から大阪まで各地にて働いている幼女たちだ。その情報は膨大で多岐複雑に渡る。その情報を掴んでおくことは大事なお仕事なのである。


 なにも見逃すまいと、細かな部分もチェック。


「ムムッ、北海道の搾りたて牛乳を使ったプリン! 分けてもらうしかない。この間小川で見つけたピカピカの小石と交換します」


 どれかと交換しましょうと、お宝の小石をいくつか掲示板に載せる。みんな暇な時に小川で見つけた逸品なのだ。どうやらプリンを載せたドライは見ていないようなので、提案だけだして他をチェック。


 他にも、珍しいまつぼっくりを見つけましたとか、可愛らしい子犬が通り道にいました。人懐っこい子犬でつ、とか重要な情報はすべてチェック。


 子犬は若木シティにいるみたいなので、あとで寄ることにする。そんな風にできるエリート幼女は情報を集めていると、いつのまにかお昼ご飯になるので、本日のお仕事は終わり。


 お昼ご飯はこの家で食べないといけないので、メイドさんに持ってきて貰う。


 お昼ご飯はクロワッサンにオレンジジュースで終わり。メイドさんがなぜか見てくるので。ジッと見られると困るんでつけど。


「お昼ご飯はそれだけで、夜は皆様とお飲みに行かれるのですね」


 ドアのそばで待機している目つきの悪いメイドしゃんがポツリと言ってくる。夜は取り巻きと飲むと予定に入っていますが、それは霞ねーたんが入れ替わってくれるから、アタチは家に帰りまつ。


 霞ねーたんは高いお酒をパカパカ飲む役目は任せてと、人形作成で木野そっくりの人形を作って欺瞞してくれるのだ。優しいおねーたんでつ。たまに玩具をくれるし。


 普通の木野役もやって貰っても良いのでつが、四季の配下になる感じがするし遠慮しますと、サポートは夜の飲み会だけにしてくれてまつ。


 でも、メイドしゃんにはそんなことを言えないので、なんと答えようか迷う。


「お酒は百薬の長だよ。潤滑油とも言えるよ」


「……いつも通りお粥を用意しておきます」


 はぁ〜っと深くため息をつき、メイドしゃんはそれ以上のことは言ってこなかったでつが、いつも霞ねーたんはお粥を食べているんでつか。う〜ん、お粥はあまり好きじゃないでつので別に気にしないで良いでつね。


 メイドしゃんが諦めたように、食べ終えた食器を片付けて部屋を出ていくので、素早くおにぎりを取り出す。千春たんのおべんとーのおにぎりは絶品でつからね。


 モッシャモッシャと食べる。焼きたらこにおかか、それに塩だけでつか。さすがのチョイスでつ。


 そうして、しばらくしたら取り巻きの人たちが会議前にお迎えにくる。いつも手をもみもみしてるなぁと、面白いのかなと思いながら、会議場で最近そばにくる詩音たんとお話して会議を始めるのでした。


 


 会議が終わり、珍しく出席していたパパしゃんがプレゼントだと簡単な包装の箱をくれまちた。なにが入っているのですかと、詩音たんは苦笑しながら聞いてくるが、アタチはなにが入っているのか理解しているので、かぶりを振るだけにして、霞ねーたんと入れ替わりお家に帰る。


 姿を元に戻して


「たらいま〜」


「お帰り〜」

「ご飯はあと少しでできるでつよ」

「その箱なんでつ?」


 春夏秋たんたちと挨拶を返して、むふふと小箱を掲げる。


「新しいバイクの玩具でつよ。中身は〜」


 頑張ったごほーびとメモが中にあり、空中バイクブラックタイガーの玩具が入っていまちた!


「やった〜! これはえびふりゃーと言う名前で、大事にしまつ!」


 おぉ、良かったでつねと、皆が拍手してくれるのでありがと〜とぴょんぴょん飛び跳ねちゃう。さすがパパさん、アタチの欲しいものがよくわかっていまつ。


「あ、そういえばあとでプリンを貰える約束を北海道の娘と約束したので、あとで皆で食べましょ〜」


 そう伝えて、宝物部屋にてってこ新しい宝物を置きに行く。部屋には様々な宝物、ピカピカの小石や蝉の抜け殻やらが置いてあるが、そこにバイクの玩具棚が置いてある。ズラッと並んでいる中に新しいピカピカのバイクを置く。


 並んだバイクを見て、フンフンと満面の笑みとなる。今日の仕事も頑張りましたと頷く。


「明日も頑張りまつ」


 そうして、ご飯ができたとの声に食堂へと向かう幼女であった。キノたんの一日はこうしてすぎていくのであった。キノたんの一日が。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 銀髪メイドはおばさんなのに金髪メイドはナインたん扱い…… いやぁ幼女って正直(感想はここで途切れている
[良い点] >「やった〜! これはえびふりゃーと言う名前で、大事にしまつ!」 ふりゃーって響きいいですよね。ほんわかします。
[一言] おばさん扱いの銀髪メイドに少し同情… いや、日頃の行いが行いだけに当然かも。
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