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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
30章 失敗から学ぼう

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488話 金色の騎士と戦うおっさん少女

 眼前に立ちはだかる金色の機体。話によるとオールドロットと呼ばれる旧世代の機体らしい。旧世代と言っても現在では制作不可能な兵器だとのこと。


 三倍ハイボールという名前は秘密にしてあります。常に楽しいことと混沌を求める少女でも気遣いができるのである。この程度しか気遣いできないのは子供だから仕方ない。仕方ないったら仕方ない。中の人の精神年齢も子供だからね。


「悪いがこれもラダトーの人間としての宿命でね。申し訳ないが倒させてもらう」


「たぶん、決め顔で言っているんでしょうが、私たちはこの世界に来たばかりなのでさっぱり背景がわかりません」


 あっさりとシリアスな雰囲気を壊す子供な美少女である。だって、この島以外の名前を知らないしね。ラダトーという島があるんだろうなぁというぐらいにしか予想はつかない。


 その言葉に、クックッと含み笑いをしてブレイバーは剣と盾を掲げて身構える。


「そうだろうな。こちらの都合に合わせてもらってすまない!」


 オールドロットは後部に搭載されているバーニアから黄金の粒子を噴き出して、荒れ地を壊す勢いで踏み出して加速をして近づいてきた。


 その速さは先程のニューロットの加速性能とは一線を画す。各部スラスターもついており、旋回性能も機動性と桁違いだろう。


「ですが、海老たんも負けてはいないはずです!」


 シスも海老たんを加速させてオールドロットを迎え撃つ。数トンの重量がぶつかり合い、振り下ろされる剣をハサミで受け止める。


 体格は圧倒的に海老たんが上のため、シスはその重量で吹き飛ばそうとするが、右脚についているスラスターを噴射させて闘牛士のようにその突撃をオールドロットはひらりと躱す。


 躱したあとに腕に格納されていたガトリングガンからオールドロットは銃弾を撃ち出して、海老たんを狙ってきた。


 ガガガと撃ち出された銃弾は受け流されて体勢を崩していた海老たんのフィールドに命中してしまう。


「フィールド8%減少」


 海老たんのAIが銃弾ダメージを報告してくるが、シスはその言葉を聞き流して海老たんを旋回させて、そのまま尻尾アタックを繰り出す。


 振り回す海老たんの尻尾攻撃は鋭い刃のようにオールドロットへと襲いかかるが


「甘いなっ!」


 盾にて尻尾攻撃を受け止めて、そのまま弾き返すオールドロット。


「まさか力負けしているんでありますか?」


 その力を見て動揺するシス。機体性能が上だと理解して焦りを見せる。


「シスさん、どうやら相手の超能力が機体とちょうどマッチしているみたいですね」


 パリポリとお煎餅を食べながら遥は忠告する。だってやることないので暇なので。


 だが、シスはその言葉に含まれていた内容に反応して振り返って遥を見る。


「機体性能が超能力によって補正されるのでありますか?」


「マテリアル式のはだいたいそうですね。ブレイバーは元から多少の超能力を持っています。ラッキーなことにオールドロットとのスキルレベルがちょうどマッチしているので、今のシスさんの力とマッチしていない海老たんより上です」


 今の、とわざわざ強めにその部分だけ言う少女はニヨニヨと悪戯そうな笑みを浮かべていた。


「あの〜、隊長殿が手伝ってはくれないのでしょうか?」


「それが残念なことにお煎餅の破片がパネルの隙間に入ったようで、わたしの操作を受け付けなくなりました」


 テヘッとちっこい舌を可愛らしく出して故障しちゃいましたと宣う鬼畜な少女。だって、ウサウサを見てみたいのだからして。


 うぬぬと歯噛みしながら、シスはブレイバーの剣での猛攻を防ぐ。左右連撃を高速で繰り出してくるブレイバーの剣撃を器用にハサミで弾き返しながら防ぐと、素早く後ろに下がって腕部ガトリングガンを放ちながら空中機動にて間合いをとられる。尻尾ミサイルで倒そうと放つと、シールドからビームシールドが展開されてオールドロットの身体を覆う程の大きさになり防がれてしまう。


 明らかに戦いなれているパイロットである。しかも性能が上であれば手のつけようがない。


「そろそろ降参してくれるとありがたいんだが、どうかな少女たち?」


「仕方ありません……」


 悔しそうなシスの言葉にホッと安心してブレイバーは聞き返す。ブレイバーも少女たちを痛めつけたいわけではない。降参してくれるなら問題はないだろう。機体は放棄したと説明すれば、あとは偉いさんがなんとかするだろうから。


 だが、ブレイバーの予想とは違う答えをシスは強い口調で言う。


「仕方ないとは、私の真の力を見せないといけないからであります!」


「真の力?」


 ブレイバーの不思議そうな問いかけには答えずにシスはパイロット席で苦渋の決断をした。なお、後ろではワクワクと悪辣な美少女が眺めてもいた。


 両手を掲げて、轟き叫ぶ。


「変身モフモフ〜!」


 パアっと光の粒子がベルトから生み出されてシスを覆う。ぴょこんとウサギ耳が頭から飛び出して、座っているから見えないけれども尻尾も飛び出して変身完了。


「闇夜に照らす光の一筋。正義の使者ウルフガール三号ただいま見参!」


 右手を掲げて、左手を水平にハイポーズ。


 ウルフガール三号に変身終了。ウサギだけど。


 ムフンと息を吐いて、得意げに笑顔を浮かべるシスである。


「可愛らしいです! ウルフガール三号! 耳を触っても良いですか?」


 ちっこいおててをうんしょと伸ばして、うさ耳をサワサワと触る遥。おっさんならば通報間違いなし、勾留させることは決定であるが、幼い少女なので問題はない。


 サワサワと触って、手触り最高と喜ぶ少女を放置して、くすぐったいのを我慢しながら戦いを再開するシス。真面目な軍人少女である。


 真面目な軍人少女に機体は反応して、スキルレベルが足りないためのペナルティがなくなり、その出力が全開となり赤い粒子を纏う海老たん。


 今までと違う力を感じ警戒してブレイバーは大きく間合いをとって盾を構える。


「なにか秘密兵器かな? お嬢ちゃん」


 からかうような言葉にも真剣味を混ぜて尋ねてくるブレイバーへと、シスは身体に漲る力のままにレバーを引く。


「秘密兵器かどうかは、その機体で味わって見てください!」


 今はまでとは違い、滑らかな動きで床を滑るように移動しながらシスは叫ぶ。


「良いだろう、その力を味わわせてもらおうか!」


 ブレイバーも、シスの叫びに答える。


「この海苔煎餅美味しいです」


 パリパリと海苔煎餅を味わって、観戦をするのほほん少女。


 おっさん少女は放置して戦いはシリアスに進められる。


 スルスルとオールドロットに接近しながら、ハサミのスピアガンを撃つ海老たんの攻撃は予測射撃が正確であり、回避した先に槍の形をした弾丸が飛んできて慌てて防ぐブレイバー。


「急に動きが良くなったか?」


 オールドロットがガトリングガンを撃つが、今までよりも硬いフィールドとなった海老たんには効かずに、シスは肉薄させる。


「貰いました!」


 ハサミを盾に噛まさせて、そのまま切り離そうとするが


「オールドロットを舐めないでもらおうか!」


 剣が赤く光りハサミへと攻撃する。フィールドがその攻撃を防ぐが、それでもフィールドが発生したことにより、盾から離されてしまう。


「このオールドロットは超能力で力を上乗せできるんだ。そして俺の金髪は炎の最高位の色なんだよ」


 ブレイバーが炎の剣と化した剣を自慢げに見せて教えてくれる。


「金髪は雷じゃないんですか。予想外ですね」


 遥は金髪は雷属性だと思っていたので意外に思う。


「超能力を上乗せできるとは厄介ですね」


 シスは超能力を剣にのせたブレイバーに警戒する。


 思う箇所が実戦的なシスの方が頭が良いだろう。おっさん少女は勇者は雷でしょと唇を尖らせて不満げなので、比べる方が間違っているのかもしれない。


「古代べギラの街を焼き尽くしたと言われる最強の炎の力を見よっ」


 剣を掲げるとさらに炎が剣を中心に渦巻く。その炎により暗闇の訓練場は真昼のように明るく照らされる。


 メギドの炎じゃないのかな? それを言うならと遥もシスも思ったが、威力は半端なさそうな予感。


「そんじゃ、こちらも必殺技といきましょうシスさん!」


 必殺技の対決だねと、真剣な二人とは別にお気楽な少女はワクワクとしちゃう。ブレイバーがパイロット席を見れたらがっかりすることは間違いない。


「君たちのフィールドが保つことを祈るよっ! 炎の剣技 べギラスラッシュ!」


 剣には炎の竜巻が生み出されており、その剣を掲げてオールドロットは振り下ろす。


 間合いは遠くても炎の竜巻が海老たんを打ち砕こうと、周りの空気を灼熱地獄へと変えて、襲い来る。


「対抗するでありますっ! 海老ジャンプパンチ!」


 海老たんの身体を弛ませてバネのようにしならせて、ぴょいんとジャンプさせるシス。


 瞬間的な加速は今までと比べ物にならずに、床は大きく亀裂が入りオールドロットへと立ち向かう。


 勢い良く突撃をしてくる海老たんにブレイバーは動揺も見せずに、その炎の剣の軌道は変化せずに命中させる。


 炎は海老たんを巻き込み、周囲を高熱で溶かし、土はガラス状へと熱で変化をし爆発が全てを吹き飛ばした。


 熱風がオールドロットへと吹き荒れて、ブレイバーはモニター越しにやりすぎたかと不安で海老たんの様子を見ようとして


「隙ありっ! でありますよ!」

 

 上空から空気の中から滲み出るように海老たんが現れて、オールドロットにのしかかる。


 その重量を支えることができずに、オールドロットは海老たん諸共地上に落ちてしまう。ズシンと砂ぼこりが舞う中で、ハサミがコックピットに押し付けられていた。


 この距離ではフィールドも貫通するだろう。それだけの威力を海老たんは持っているとブレイバーは理解して、オールドロットの武器を手放して、両手をあげる。


「降参だ。いやはやまさかあの攻撃を回避するとはね。いったいどんな手品だい?」


「フフン、名乗りを聞いていなかったのですか? 海老たんの特技は分身の術でありますよ」


 その言葉にブレイバーは苦笑する。たしかに隠れ潜んで様子を見ていた際にそんなことを言っていたなと思い出す。


「迂闊だったよ。たしかに最初にそんなことを言っていたのに注意することがなかったな」


「さぁ、コックピットから降りて貰いましょうか。これにて訓練はおしまいであります」


「凄いです、シスさん。うまいことを言いましたね、座布団一枚あげちゃいます」


 鈴を鳴らすような可愛らしいご機嫌な少女の声がして、戦闘はおしまいとなったのであった。




 お立ち台では二人の少女が笑顔で立っていた。ワーイと周りの観客におててを振って嬉しそうに。


「なんと! 今回の優勝者は地球人の二人でーす! 何万年も動かなかったエレベーターを動かすという栄誉と、我々に多大な貢献をしてくれた水戸シスさんと朝倉レキちゃんへと皆様拍手をお願いしま〜す!」


 実況のチョコがマイクを片手に、観客へと二人を紹介する。


「優勝者にはルキドの街の名士、ワイドマンさんから優勝賞金とトロフィーが贈られま〜す」


 でっぷりと太った男が厭らしそうな笑みを浮かべて、手を振りながら遥たちへ近づき声をかけてきた。なんというかお触り禁止で近寄るのも禁止ないかにも悪役っぽいおっさんである。個性があるだけくたびれたおっさんとは格差があるかもしれない。


「よくぞエレベーターを稼動させてくれた。優勝者には格別の感謝を。そしてこれが賞金1億水晶だ。これから先もルキドの街のために頑張って欲しい」


「ありがとうございます。賞金はありがたくお土産に使わせてもらいます」


「……隊長殿がそう言うなら自分もありがたく貰っておきます」


 遥もシスも一応笑顔で受け取る。無邪気な少女なのですと、観客へと精一杯背伸びして、ちっこいおててで手を振るので、その可愛らしい姿に騙されて、キャーキャーと黄色い声援を受けちゃう。


 ついに私も黄色い声援を受けるようになったねとご機嫌なおっさん少女とは別にシスはどことなく不満そうではある。


「これから優勝者を囲んでの晩餐会だ。それに君たちの乗っている機体の性能に皆は興味津々だよ。わっはっはっ」


 ワイドマンが口を大きく開いて、汚らしい歯を見せながら笑う。


「隊長殿。こいつが私たちにダルキア3兄弟をけしかけた相手でありますよ? 放置しておいて良いんですか?」


 こっそりと耳元に話しかけるシスに、平然とした表情で遥は同じく小声で答える。


「雑魚な相手でしたし、別に気にしないで良いでしょう。次に仕掛けてきたら、それなりの報復をしておきましょう」


「むぅ、わかりました。では次の機会ということで了解しましたであります」


 頬を膨らませて不満そうではあるが納得するシス。さすがは軍人さん、隊長の命令には忠実だね。どこかのメイドたちとは一味違う。


「ご主人様! なんだか変なことを考えませんでした? 忠実なるメイドが常におそばに這い寄っているのに!」


「はいはい、あとは観光とお土産を買って帰るから、少し待っていてね」


 モニター越しにプンスカと怒るフリをするサクヤを適当に宥めると


「でもご主人様。そこでのクエストはまだ発生していないですから帰るのはもう少し後になるかと」


「ん? こんな世界も間違えたらできるんだよと教えるために転移させたんじゃないの?」


「なんのことかわかりませんが、違います。まぁ、あとでわかるから良いとして、コマンドー婆ちゃんたちがご主人様たちはどこへ行ったかと煩いのですが、どうしますか?」


 サクヤが恐ろしい爆弾を落としてきたので戦慄する少女。まじで?


「四国で活動中と伝えておいてよ。問題はないよね?」


「それがですねぇ、なぜか不思議なことにご主人様がいなくなったら水中概念はなくなり、今は四国へと上陸を開始しているんです。なので四国で活動中は無理かと」


 しれっと重要なことを言う銀髪メイドに、えぇ〜っと驚く。なんでそんな仕様になっているわけ? ちょっと酷いよね?


「仕方ない……。レキは四国でお遍路中と言っておいてよ。それなら誤魔化せると思うし」


 物凄い雑な誤魔化し方なので、その話を信じるのはアホな少女以外にはいるまい。


「まぁ、仕方ないですか……。わかりました! 私にお任せください。皆がニコニコと笑顔になる結果を目指して頑張りますので」


 ムフンとふくよかな胸をぽよんと張って、サクヤは自信満々に告げてくる。


「頑張らないで良いよ? 意味のわからない行動はなしでお願いします」


「まぁまぁ、いつも完璧な私にかかればご主人様の行動を誤魔化すのも簡単ですので、任せてください」


 一番任せたくないメイドは、自信満々でそう告げるとモニターを消す。


「仕方ないなぁ、お任せしておくしかないか……。晩餐会で美味しい料理を食べようっと」


 サクヤに任せたらだめでしょうとは一瞬頭によぎったが、気にせずに気を取り直して、てこてこと晩餐会の会場へと向かうおっさん少女であった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ああ、ラダトームにメルキド、そしてベギラマ…… ドラクエ1だったんですね(今更気づいた)
[良い点] 毎日楽しみに小説up待ってます( ^ω^ ) [気になる点] そろそろレキ、ツヴァイ、ナイン達以外の少女達の名前とキャラがよく分からなくなってきてます…(゜∀゜) 昼行灯やコマンドーばあ…
2020/04/23 06:31 退会済み
管理
[一言] 旧型がロストテクノロジーで最強なのはメガゾーン2xのガーランドが元ネタですかね? あれはレンタルビデオ屋で借りたら思いがけず面白くて驚いた。その時点で相当絵が古かったけど。 そして四国が話…
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