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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
30章 失敗から学ぼう

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487話 おっさん少女は悪者と戦う

 真っ暗闇の中でただ広い荒れ地に見える訓練場。そこにエビフリート艦は辿り着き高価な遺物とやらを探そうとしたところで、何者かが声をかけてきたのであった。


 暗闇の中で赤いカメラアイを光らせながら、一歩前に青色の塗装がされている角ばった装甲が分厚そうな機体が出てくる。その機体は何でも真っ二つにしそうな大剣を持っていた。


「俺の名はレシア。大剣のレシアだ」


 ガションガションと、次の緑色の機体が金属音をたてながら同じように歩み出てきて告げてくる。この機体は軽装甲で両腕が銃となっていた。


「私の名前は二丁銃のトリア」


 最後の一体は赤色の塗装をしており、両肩にキャノン砲を備え付けており、両脚にミサイルポッドも搭載している。


「儂は爆裂のブルク!」


 ジャキンと3機はそれぞれ手を掲げたりしてポーズをとりながら、野太い声で叫ぶ。


「俺たちはダルキア3兄弟! お前らを助けに来たぜ!」


 特撮ヒーローだ、特撮ヒーローだと幼い少女はそれを見てぱちぱちとちっこいおててで拍手をしちゃう。サイン、サインを貰わなきゃと慌てて色紙を探して、折り紙にしてくれるかなと可愛らしく小首を傾げてもいた。


 だが、シスは相手へと冷淡な目で見ながら、冷たい声音で尋ね返す。気になる変なことを言ってきたので。


「助けに来たぜ? どういう意味でしょうか? 自分たちは助けが必要な状況にありませんが?」


「あん? そりゃ決まってんだろ? 今から命の危機にあって機体を捨てないといけない状況になるからだろうが」


 からかうような脅すようなレシアの声に、シスはピクリと眉を動かす。


「なるほど、カメラの無い場所ですからね。なにが起こるかわからないといったところですか」


「物分りが良さそうだな。おとなしく機体を捨てれば助けてやるぜ? 死人が出ると少しばかりバトルグラウンドの主催者も困るんでな」


 トリアがノシノシと機体をこちらへと近づけながら、嫌な笑いの籠もった声で告げてくる。


「え〜、特撮ヒーローだと思ったら悪人だったんですか? 凄い残念なんですが。これじゃ私たちがヒーローになるしかないですよ?」


 遥は残念ですと嘆息する。助けに来たと言う割には押し売り強盗みたいな連中だったので。


「ヒーローで問題はないと思われます。この連中を片付けてから遺物を探しに行きましょう」


 シスは楽しそうに不敵に笑みを浮かべて、レバーを握る手を強める。どうやらやる気満々な模様です。


 まぁ、それでも良いかと遥もシスの提案に乗ることに決めたが


「よく私たちの居る場所がわかりましたね? 今からくず鉄になる3兄弟さん」


「時間内に稼げそうな場所で良い機体に乗っている初心者な奴らが来る場所ってのは決まっているもんなんだよ! 交渉は決裂したみてえぇだな!」


 レシアは煽る言葉に反応して吠えるように答えながら、機体を加速させた。青色の機体、よくよく見ると後部ランドセルタイプのバーニアは巨大な噴射口が6個も搭載されており加速性能には優れているとわかる。


 地面をガリガリと削り、火花を散らしながら迫りくるレシアの機体は手に持つ大剣を勢いよく振りおろしてきた。風が逆巻き鉄をも叩き斬るだろうその攻撃に遥は素早くレバーを引く。


「ガオーン、私はエビ〜」


 子供がごっこ遊びを楽しむような可愛らしい声でエビフリート艦のハサミを振り上げて大剣を掴む。ガガンと金属同士の叩きあう音がしてぶつかり合うハサミと大剣。


 だが、大剣を掴むことにより動きの止まっているエビフリート艦へとトリアの機体が滑るように床を移動しながら、銃となっている手を掲げる。


「隙だらけですよ! いただきます!」


 タララララと銃の軽快な音が響き、連射された銃弾が襲いかかってきた。


「運転は任せてください!」


 シスがそれを見て、多脚を動かして横っ飛びにして銃弾を躱す。大剣は遥が横へと滑らかに受け流して体勢を崩させる。


「ガハハハ、貰った!」


 脚に搭載されているミサイルポッドから、ミサイルを射出するブルク。噴煙が尾を引きながら飛んでくるミサイルに遥ももちろん対抗して攻撃を繰り出す。


「尻尾ミサーイル!」


 楽しげな声で告げてくるが、その行動は精妙で精密であり、尻尾に格納されていたミサイルが見事に飛んでくるミサイルへと正確無比に命中して迎撃をするのであった。


「爆裂キャノンもおまけじゃい!」


 両肩のキャノン砲を発射させて、後ろに大きくその反動で下がるが、砲弾は高速で迫りくる。


「海老ジャンプ!」


 シスは素早く後ろに避けて砲弾を躱し、爆裂砲弾は通り過ぎて飛んでいき爆発するのであった。


 そして、いちいち行動するたびに叫ぶ幼い少女がいたりもした。


 3兄弟はその様子を見て、警戒を強めてお互いに忠告をし合う。


「兄者っ! こやつら只者ではないぞっ!」


「ウヌッ、軍人とやらは戯言ではないようだ。気をつけろよっ」


「スカイストリームアタックで行くぞっ!」


 3兄弟が連携するべく話し合う。さすが兄弟だけあって、その連携は抜群の模様。もちろんおっさん少女たちも声をかけ合う。


「シスさん、こちらも対抗して変身を」


「しません」


「一度で良いので」


「攻撃が来ますっ!」


 遥の言葉をガン無視して、シスは敵へと目を向ける。さすがは連携が抜群な少女たちである。以心伝心とはこのことをいうのだろう。


「スカイストリームアタック!」


 雄叫びをあげて、空を飛ぶ3機。フラフラと飛びながらブルクがキャノンを撃ち放つ。スズンと重い音がして砲弾が飛んでくるのをシスは横っ飛びにエビシャンプをして回避するが、やはりフラフラと飛行していたトリアの銃撃が装甲にチュンチュンと命中してしまう。


「トドメだ!」


 フラフラと飛んでいたレシアの機体が急滑降してきて大剣を振るってきたので、ハサミを掲げてなんとか防ごうとするがその勢いに弾き飛ばされてしまうのであった。ハサミだけ。


 大剣も勢い良く振り下ろしてきたがハサミに対抗されたので弾かれて勢いを無くし、機体はフラフラとまたもや空へと浮く。


 その様子を見て、遥はキリリと表情を真剣な様子に変えてシスへと言う。


「ねぇ、あれのどこがスカイストリームアタック? 連携なんかしていませんよね? フラフラと飛んでいただけですよね?」


 不満を真剣な表情で言うおっさん少女であった。


 どう見ても連携していないよね? 順番に攻撃してくるのを連携と言い張るのは初心者プレイヤーだけで、高速で敵に隙を与えないで連続攻撃してくるのが連携だと個人的に思います。


「多分、飛行するだけで限界なんでありますよ。直線的な加速性能はあっても旋回性能はゴミなんでしょう。各部スラスターも搭載されていない様子ですし」


 シスは不満そうに可愛らしくプクーっと頬をふくらませる少女へと予想内容を口にするが、たしかにそのとおりなのだろう。ニューロットは空を飛ぶだけでも高性能だと思われている様子だった。


「全操作権限を自分にお願いします。あっさりと倒して見せますので」


「えっと、ユーキャンコントロール………だっけ?」


 宇宙語は苦手なおっさんなので、音声での権限委譲はできません。子供だから仕方ないよねと、レキのおめめをウルウルとさせて誤魔化そうともしていたが、ユーキャンだと意味が違う。なのでボタンで権限を委譲させておく。


 シスは権限が全て自分に移ったとパネルに表示されたので、冷酷な笑みを浮かべてレバーを倒す。


「行きます! 海老反り変形!」


 声をあげてエビフリート艦を変形させる。ガションガションと尻尾と胴体の継ぎ目あたりから太い脚が出てきて、海老反りになった胴体からはロボットの腕がでてくる。そしてハサミの前脚が肩あたりにきて二本足で立ち上がるのであった。


 尻尾が長いので、その背丈は10メートル程であるが立派なロボットへとエビフリート艦は変形した。これこそが新機能にして改修した目玉。ロボット変形機能である。


「これこそ海老たん星人。フォッフォッフォッ、特技は分身の術です」

  

 マイクでわざわざ得意げに告げるおっさん少女。余計なことをするのにこの少女を上回る人間はいないだろう。


 その姿を見て、たんに海老が威嚇しているだけじゃね? と3兄弟はあんまり驚きを見せずに怯みもしない。


 当たり前である。たしかに海老が強敵を前に威嚇するように海老反りをしているようにしか見えなかったので。


「ハッタリだ! お前らもう一度スカイストリームアタックだ!」


「え〜っ! ロボットモードにもっと驚いてくださいよ! 耐久力を30パーセント下げて、各武装も結構外したんですから!」


 変形機能を入れるとどうしても関節部分やら、いらない格納システムを搭載することになって、弱くなったのにとブーブー文句を言う美少女。


「あ〜ん? 聞いたか? 間抜けにも程があるぜ!」


「弱くしちまったのかよ!」


「……今の会話はなにか変なところがなかったか?」


 一人だけ改修したのではと鋭い疑問を持つ男もいたが


「問題ありません。その分機動性が大幅に上がっておりますので!」


 尻尾スラスターを噴かせて、地を這うように高速で移動を始める海老たん。その動きにぎょっとする3兄弟。予想よりも加速性能が高かったのだ。鈍重そうな見た目と違うのだと理解する。


「くらいなっ!」


 トリアが両手の銃を海老たんへと向けて速射を始める。タタタと銃弾の嵐が地を這うように移動する海老たんへと降り注ぐが


「先程の攻撃結果を見なかったのでありますか? 貴方の小器用そうな武器ではこの海老たんの装甲を傷つけることもできないと!」


 シスは叫びつつ、脚を床に強く踏みしめて一気に海老ジャンプをして飛行するトリアへと肉薄する。


 伝える内容は真実であり、銃弾の嵐は海老たんの装甲に石礫でも鉄の装甲に無意味に当たるようにカンカンと音をたてるだけで、傷つけることはできていなかった。先程も同じ光景であったと思い出すが全ては遅かった。  


 ジャキンとハサミで片腕と片足をあっさりとちょん切ると、ふらりと揺らいでトリアの機体は地に墜ちる。


「うぉぉ! 儂の爆裂キャノンを喰らえぃっ!」


 ブルクが雄叫びをあげてキャノンを発射させるが、その瞬間を狙って素早くスラスターを噴かせて一気に空中でブルク機体へと迫る。


 キャノンを発射させて大きく後ろへと下がって体勢を崩していたブルクはその様子に動揺して目を見張って驚く。


「無反動砲でもないのに、足場を固定できない空中などで使うからっ!」


 両肩をチョキチョキと斬って、さらに脚とバーニアを斬って落とす。ブルクのキャノンを発射させた挙動をしっかりとシスは見極めていたのだ。


「よくも二人を〜!」


 あっという間に2機をやられて、怒りの咆哮をあげながらレシアは大剣を振り下ろしてくる。だが、その攻撃をあっさりとハサミで受け止めてシスは冷淡に告げる。


 尻尾を入れると20メートルの図体の海老たんと、6メートル程度のパワーアーマーでは相手にもならない。


「体格が倍近いのに、相手のエンジンが強力だとは考えなかったのでありますか? 貴方たちは軍人として失格だと告げておきます」


「ば、馬鹿な? 地球人の機体がこれ程のパワーとは!」


 片方のハサミで大剣を掴まれ、レシアはそのハサミを押し叩くことも離れることもできないことに驚きを示した。


 もう片方のハサミで腕をチョキチョキと切り放ち、大剣が落ちて機体を揺らがせるレシアにトドメとばかりにバーニアと脚を切り裂き、他の機体と同様に地に落とす。


「人を助けると言いながら、傷つけることを目的とするとは……下衆がっ!」


 シスは怒りと共に動きを止めた3機体へと、恐怖を覚えさせる声音で告げるのであった。


 たぶん自身の秀頼に操られていた日々を思い出していたのかもしれないと、遥も怖くてブルブル震えたりしていた。こういうことでからかうのはやめておこうとも考えていたりするので、気弱なおっさんの心は健在である。


 ぷしゅーと怒りで怖い表情になっているシスなので、とっておきのヒレステーキ弁当をあげようかな? それともアイテムポーチに入れっぱなしのソフトクリームが良いかなと、遥がシスを宥める方法を考えていたら


「ニューロットとはいえ、彼らは有名な戦士たちだったんだが。あっさりと倒してしまうとはね。ますます君たちに興味が湧いたよ」


 荒れ地の陰から、金色の騎士のような機体がハッチを開けたまま姿を表す。ハッチに足をかけてキザな笑いを浮かべたブレイバーはこちらへとぱちぱちと拍手を向けてきていた。


「なんの御用でしょうか? 私たちはこれから優勝のための遺物を見つけないといけないんですが? 忙しいんですけど?」


 遥は男相手なので冷淡に告げる。こういうかっこいい出現してくるのがきざな男性の場合は冷淡にしておいて良いと思います。


「優勝は君たちで決まりさ。エレベーターを起動させた時点でね」


「エレベーターを動かしただけで? 優勝って本当ですか?」


「あぁ、おめでとうと言わせて貰うよ。優勝賞金は君たちの物だよ」


 演技っぽくかぶりを振るブレイバーの言葉に、もう優勝? と驚いたが、それならそれで良いよねと遥は帰還することにしようと思うのだが


「それで、なぜ私たちに姿を見せたのでありますか? ブレイバーさん」


 シスは冷ややかな表情で、ブレイバーへと尋ねる。教えてもよいことはないはずなのに、なぜ教えてくれるのか?


 疑問を口にするシスへと対して、口元を曲げながら悲しげな表情を装うブレイバーだが、まったく怪しい雰囲気は消えない。次なる言葉を告げてくるブレイバー。


「エレベーターを起動させたことはまずかったね。君たちはたいしたことをしていないと思っているみたいだが、あれは数万年起動させることができなかった代物なんだ」


「そうだとするとどうなるんでしょうか? 勲章でも貰えるんですかね?」


「地上に戻ればそれもあるだろうが……本国からの指令でね。君たちの機体を捕獲せよとのお達しだ」


 コックピットへと戻りハッチを閉めて、金色の機体は腰にさしていた黄金の片手剣を抜き放ち、こちらへと向けてくる。


「はぁ、本当に戦うつもりなんですか? 今の戦いを見ました? 海老たん星人の戦闘力を見ましたか?」


 答えは決まっているんだろうなぁ、きざなパイロットの次の言葉はなんとなくわかるなぁと思いつつ、一応尋ねる遥。


「もちろんわかっているさ、でもこのオールドロットもたいした力を持っているんだぜ、と貴方は言う」


「もちろんわかっているさ、でもこのオールドロットもたいした力を持っているんだぜ」


 ブレイバーが予想通りのことを言って、遥の言葉にギクリとしてしまう。


 むふふと予想通りで当たったよと、ちっこいおててをあげて、バンザーイと喜ぶ子供な少女だが、おっと渋いセリフで返さないとねと考えると


「貴方の考えなど、隊長殿の手のひらでしかありません。落胆の表情を浮かべていいのでありますよ?」


 シスがフフンと鼻で笑いながら告げてしまうので、落胆の表情になるおっさん少女である。


「戦いでは予想通りにはいかないように気をつけるよ」


 渋いセリフをブレイバーは返してきて、戦闘は開始されるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ブルクが儂だから…w
[一言] シスとおっsレキちゃんは良いコンビですね!
[一言] 機動戦士海底少女の奇妙な冒険でした。 3倍速い人はどっちかというと戦争だから自爆しそうな事いってますね。 お役所勤めは辛いんだなぁ。
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