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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
28章 慰霊祭をしよう

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459話 慰霊祭と生きる人々

 若木シティを含む各地で慰霊祭が行われようとしていた。その中でも若木シティの霊園として作られた場所に人々は集まっている。


 霊園として作られた場所は木々が霊園周りに配置されて、内部は見事な芝生が敷かれており、訪れる人々を穏やかにする効果があるような作りになっていた。


 適当に作られたのではなく、かなりの金額と資材をかけたのだとわかる。


 中心地には30メートルは高さがあるモノリスのように黒い長方形の板が黒い墓標として聳え立っていた。その前には台が作られており、偉い人が挨拶をするらしい。


 そして、今やその霊園は見渡す限り、人、人、人と大勢の人々が集まっていた。若木シティに住む全員が集まっているのではなかろうか。


 そんな中で、つい最近に移住してきた不知火初は、はふぅ、とため息を吐いた。


「どうしたの、お姉様。疲れちゃった?」


 気遣うように顔を覗き込んでくるツグミに対して、微かに笑みを浮かべて首を横に振る。疲れた訳ではない、まだ始まってもいないし。


「そうじゃなくて、う〜んと、現実的なことを言うと〜……。本当に世界は崩壊したんだなって、再認識しちゃうんだよ〜」


 口調をゆっくりにして、不安を押し隠すように笑みを崩さないように気をつける。もう両親もいないのだと、この慰霊祭で再認識してしまったのだ。それは凄く辛いことであった。


 でも、前へ進むにはきっと必要なことなのだろう。


「うん…、これからは姉妹で力を合わせて頑張らないとね!」


 手を強く握り、初へと元気な声音で告げてくる良い妹なツグミの頭を撫でると、段々落ち着いてきた。


「姉妹だけじゃなくて、私たちも一緒に頑張るよ!」

「そうそう、一緒に頑張ろう!」

「お金はたくさん貰ったし、学生生活の再開だよね」


 周りの友達も話に加わってきて、凝り固まっていた塊のような不安感は溶けるように少しだけ緩和されるのであった。


「こらこら、そこのお嬢さんたち、そろそろ静かにしないと始まるよ」


 近くの人に注意されたので、ごめんなさいと謝って口を噤む。怒られちゃった。厳粛な雰囲気なので、こっちが悪い。


 始まると言われて、黒い墓標を見ると台の上になんだか偉いと思われるお爺さんが立っており、周りにスーツや軍服を着た見るからに偉い人たちがいる。


「あ、お姉様、先生がいるよ」


 ツグミが指差す先、台のすぐ横に先生が立っていた。相変わらず冷酷そうな表情につまらなそうな目で佇んでいるので、クスリと笑ってしまう。ああ見えて世話好きな親切な人なのだ。どうやら周りの雰囲気を見るに、そうと知っている人はいなさそう。


 ツグミが手を振って気づいて貰おうとするので、慌てて止める。そんなことをしたら先生が困っちゃうだろう。


「駄目だよ、ツグミ。今は大事な慰霊祭なんだから〜」


「はぁい、でも救出されてから全然会ってないし、少しはお話したい」


 ぷんぷんと怒って頬を膨らませてリスのようになるので、仕方ない妹だなぁと、頬をつつく。プシューとノリよく息を吐くツグミに少しだけ笑ってしまった。


「終わったらお話してみようよ〜。だいぶ私たちは優遇されたみたいだしね〜」


 だいぶお金を貰ってしまった。失った学生時代をやり直してくださいねと天使ちゃんから貰ったのだ。先生からのお金もかなり含まれていると聞いた。そのお金は数年働かなくても良いレベルだ。しかもマンションまで貰っちゃったし。


 正直、助かった。私たちはかなりの幸運だと役所の人に伝えられた時はびっくりしたものだ。


 感謝の気持ちを伝えないとと考えていたら、拡声された声が響き渡ってきた。見ると壇上のお爺さんが話し始めていた。これから慰霊祭が始まるのだと、気を引き締めるのであった。




 壇上にあがり話し始める那由多代表。皆はそれに注目する。初たちは遠くから、そして若木シティの幹部たちは最前列で。


 その中で、百地も那由多を冷めた目で見ていた。


 那由多代表は相変わらずのカリスマ性のある雰囲気を出して、人々へと信頼をしてもらうために、自信満々の表情で語り始める。


「諸君、私がこの地に立つのは始めてだろう。これは復興が成功していることを示している。ここに降り立つのが遅れた理由は人々には大変申し訳ないと思うが、色々と問題があった。その中でも重要であったのが大樹国の代表として、他国へと訪問することは難しかったからだ。だが、今や日本は大樹国に組み込まれて、私は懸念なく降り立つことができた」


 堂々と両手を振りながら、人々へと魅せるように語る那由多代表を見て皮肉げに口元を曲げる。


「けっ、なにが他国だから訪問できなかっただ。安全が確認できなかったからだろうが」


 憎まれぐちを叩く百地に、苦笑しながら肘で軽くつついてくる蝶野。


「駄目ですよ、ここは大勢の大樹幹部がいるんですから。口には気をつけないと」


「そうは言うがなぁ。それじゃあ、那由多代表は口が上手いとでもいえば良いってのか?」


「そっちの方が皮肉が効いていて、きっといいですね」


 肩をすくめて、呆れたように蝶野が答えてくるので、小声で那由多代表を見ながら話す。こいつも口が昔より上手くなったもんだ。環境が人を作るってやつか。


「だが、奴が降りてきたってことは、ここはかなり安全になったんだろうな」


「そうですね、どうやら懸念していた危険人物を倒したこともあるようですよ」


「化物たちの親玉を気取っていた奴か。こっちには全然情報をまわさないで、密かに倒したらしいな。いや、神様もどきに飲み込まれたらしいがな」


 終わったあとに情報を出してくるやり方に強く不満を覚えるが、危険なことには関わらせたくないと言う感じもしている。なによりナナシがその話を止めていたらしい。しかも危険極まりないことに、京都へと最初は少人数で潜入したのだという。


 そのような荒事こそが軍のやることだというのに、あの馬鹿野郎は……。なぜ、自分で行ったのか。いや、理由はわかってはいる。大樹の最新式装備を駆使していたらしいからな。


「次がないように強く言っておかないとな、あの馬鹿野郎に」


「自分でなにもかもやろうとする人間はいますからね。できる人間の中では」


「そうだな、危険なことは軍に、政治は政治家に、だ」


 慰霊祭が終わったら、絶対に話し合いだと決意をして、那由多代表の話を聞く。


「諸君は大切な家族、親類、隣人たちを失った! なぜ死んでいったか? それは国の準備が足りなかったからだ! 私は崩壊前にはこのことを予想していた。しかし、誰もが法螺話、戯言と取り合ってはくれなかった。そのために財団を密かに作り上げたのだ! 今は国となった大樹であるが、宣言しよう、これからの世界で化物たちに負けぬ国を作り上げると!」


 その力強い語りに人々は魅せられていく。それを見渡して、確認した那由多代表は


「では、これからの生きる道を再確認するためにも、この慰霊祭にて亡くなった者たちに哀悼をしよう」


 そうして、深く頭を下げたあとに壇上を拍手喝采の中で降りていくのであった。


 それと合わせて、離れた場所にて各宗教団体がお経やら聖句やらで慰霊祭を始めるのであった。




 大勢のお坊さんやらがお経を唱え始めて、啜り泣く声がチラホラと聞こえてくる。厳粛な雰囲気の中で、人々は死んでいった者たちへとようやく葬儀を行うことができて、そしてさようならを告げるために、顔を俯かせて祈りを捧げるのである。


 その祈りは淡い光となって空中へと飛んでいく。この光に照らされて、きっとこの霊園は聖なる地へと変わるのであろうと、誰もが思っていた。


 その中で天使教の人々は俯いて、祈りを捧げていた。聖句なんかないし、皆は適当に祈っていた。いかにもおっさん少女が女神な宗教団体っぽい。


「なぁ、レクイエムを歌えば良いと思うか? なぁ、レキ、なんか聖句考えない?」


 天使教の自称マスコットキャラクターの銀髪の少女こと、天塚真琴が尋ねてくるので、天使の羽を背中につけた子供っぽい少女は、う〜んと唸って困ってしまった。というか、レキであった。


「お経とかってどういう風に最初は作られたんですかね? とくに聖書とか」


 レキじゃなくて、取り憑いているアホ霊だった。悪霊と一文字違うだけでだいぶ印象が変わっていた。いかにもおっさんに相応しい文字だ。


「う〜ん、神様の言葉を連ねたんだろう? 創世記とか。まぁ、私は聖書読んだことないんだが」


 天使の羽をネックレスにしている綾が喪服姿で話に加わってくる。白衣だとさすがに追い出されていただろうしね。


「天は闇を照らす女神を降臨させた。その光は人々の闇を晴らし、魂を浄化した。これより死者は魂を清らかに生者は生きる喜びを得た」


 唐突に最前列の少女が語り始めたのでギョッと驚く面々。なにか、凄そうな話をしている。いつの間にか、周りの人々も唱和していて少し怖いです。しかも聖書らしきものを持っているので、もっと驚いてしまう。


「あれはなんですか? 聖書? なんで皆持っているんですか?」


 戸惑いながら尋ねるが、真琴も綾も混乱していた。全然知らなかったらしい。


「俺も、いや、わたくしも知らないぞ? だって知っていたら巫女やってたし」


「私も残念ながら知らないな。だが、皆が持っているので私たちに隠されていたんだろう。いや、レキの知り合いには、かな?」


 真琴が真琴らしいことを言って、綾が顎に手をあてて考え込む。遥は周りを見渡して、皆が聖書を持っていることに、あることを確信した。


「やられましたよ。誰だか知りませんが本格的な宗教団体にしたい人がいたみたいですね」


 最前列で小さな天使の羽をつけた可愛らしい魔法少女のような格好の少女を見て推測する。というか………あれはツヴァイです、ありがとうございます。私はまた仲間はずれにされた模様。


「生き神様を宗教団体の女神とするんだ。きっとレキなら反対すると思ったんだろう。こういうのは君は嫌いだろ?」


 ニヤリと悪戯そうに笑いながら綾が聞いてくるので、頬を膨らませて憮然とした表情で頷く。適当なお祭りサークルにしていたのに、聖書ができているなんて! ちくせう。


「それじゃあ、もう遅いな。きっと防げないように仕組まれていたんだよ。ほら、他の宗教団体も同じようにお経を唱えたりしているのに、うちだけ止めようと騒いだらまずいだろうしな」


 腕を組んで真琴が呆れたように言うが、そのとおりだ。このために他の宗教団体に金を出して慰霊祭に加えたのだと、今ようやく気づいた。


 おのれ、騙したな。天使教だけだったら、ギャン泣きしたり大騒ぎして無かったことにしたのに。


 泣いていたり、しんみりしている人もいて、お坊さんたちも頑張ってこの真夏の暑い中でお経を唱えている。その中で、レキだけ猛反対したら悪役間違いなしだ。ギャン泣きとかを選ぶあたりで悪役ではなくアホ役になる可能性はおっさんの中では頭に浮かばなかった。


 それにこの神妙な雰囲気を崩せるほど、図太い心はもっていない。おっさん少女は繊細かつ傷つきやすいんです。たんに臆病なだけでしょうと言われればそれまでなおっさんでもあった。


「あの巫女さんの名前はスウ。たしかスウと言う娘です」


 枢機卿のスウ。でも本来は財務など数字に強い娘、スウだったはず。スウだから枢機卿にしたな、ツヴァイたちめ。


 なぜ枢機卿とわかったかというと、肩にタスキをかけているからだ。枢機卿の神代かみしろスウと書いてある。タスキなんて、誰の真似をしたんだか、まったく、まったくもう! 間抜け極まりないね、まったくもう!


「これでご主人様も神様の仲間入りですね。人々に奇跡を与えますか?」

 

 ニヨニヨと口元を笑みに変えて、モニター越しにサクヤが言ってくる。なるほど諸悪の根源を見つけたみたい。後でお仕置きしておこうと硬く決心しておく。


「信仰心でできる奇跡はレベル1までなんでしょ? というか、信仰心を私は吸収できな………なるほど使えるようになったのね」


 なんでこんなことをしたのか理解した。おっさん+8になったけど、なにも変わらないと思っていたのだが、どうやら信仰心を使えるようになったらしい。


「ほむほむ、スキルレベル2までのを信仰心を使えば自身の力を使わなくてすむと。うん、ゴミだね」


 人々の信仰心をゴミ扱いする罰当たりな女神がここにいた。


「まぁまぁ、スキルレベル2まで人々にスキルを与えることができるんですよ? 与えるスキルを0.1区切りにすれば、2でも充分チートです。もちろんステータスにはスキルレベル0.1を1表記にしておきましょう」


「ならドライたちにあげようっと。人間に与える? ないね、絶対ないね。眷属以外には与えないよ」


 即断即決で答える遥。その返答に全く間は無かった。考えるまでもなく人間には与えないよ? 私は優しくないのだからして。


 その返答にサクヤは珍しく苦笑いをした。予想はしていたらしい。このご主人様は基本的にどんな人間でも完全に信用はしていないと。その負の側面があるからこそ、ライトにもロウにもならなかったのだと。スキルを与えるにしても装備品付与ぐらいだろう。


 そんな会話を高速で終える。使えない力だけれども弱いドライたちを補強できるから、まぁいっか。


 高速念話を終えたが、無論のこと真琴たちは気づかずに遥へと話しかけてくる。


「枢機卿の神代スウか。ちっ、俺様もあのポジションにいたかったぜ」


「君は節操なく色々な立場を欲しがるな。アイドルになりたいんじゃないのかね?」

  

 真琴が悔しがり、綾が呆れたようにツッコミを入れるが、ニヤリと腹黒そうに笑みを浮かべて返答する真琴。


「アイドルに女優、それに巫女とか肩書はいくらあっても困らないんだぜ? ムフフフ」


 ほくそ笑む真琴、どうやらまたアホなことを考えたらしい。考えた時点で失敗すると理解していないアホの娘なのだから仕方ない。


「もう伝説のお笑い芸人にはなっているだろう。浪費芸人とか銀髪のアホアイドルとか呼ばれているらしいじゃないか」


「言ってはならないことを言って、痛っ」


 真琴がピキピキと額に青筋をたてて、綾へと飛びかろうとした時に、頭をコツンと殴られて痛がる。


「こら! いい加減にしろ! 静かにしないと怒るからな」


 早苗が珍しく隣にいたのだが、真琴を躊躇なく殴った模様。たしかに周りへ迷惑になりそうな程、声量をあげていたから殴られても文句は言えまい。


「すいませんでした。この人たちは全然悲しまないので」


 綾はともかくとして、真琴もまったく悲しむ様子はない。強い心をもっているというか、なんというか………。たぶんもう割り切っているのだ。前だけを見て歩んでいるのだろう。そして、意外とそういう人たちは多いみたいでもある。あまり悲しむような様子を見せない人たちもいるのだからして。


 だからといって悲しむ人たちの邪魔をして良いという訳ではないので、こちらが全面的に悪い。


「終わったら祭りだろ? アンタらそこまで我慢してな。してなかったら、また殴るからな」


 むん、と牧場で鍛えている腕の筋肉を見せる男らしい少女な早苗。


 はぁい、と素直に頷いて、さり気なく真琴の立ち位置を早苗の隣へと移動させるように遥と綾はそそくさと移動するのであった。


 この慰霊祭はこれが終われば、祭りになるわけだからして。それまでおとなしく少女たちは待つのであった。


 ちなみに前列に立っているナナシは人形です。一番目立つところで静かに佇むなんて、おっさんには無理だからして。


 レキが天使教の前列にいなかった理由は、地面に寝っ転がり駄々っ子スタイルで前列なんか嫌だ〜とギャン泣きしたとかいう噂。きっと都市伝説だろうけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] 早苗さん、『珍しく』というのが似合いすぎて悲哀を感じる。 でも久々の登場嬉しかったです。
[一言] 人形は破棄されようとも第二第三のナナシ人形がまた生まれ……
[一言] ふふ、ふふふふふ、ハーッハッハ! 遂に遂に追いついたぞ!バッド! あ。いきなりごめんなさい。 ちょっと前から少しづつ読み進めていってようやく追いつくことができました! 嬉しみ(^_^)
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