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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
27章 国と対決しよう

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428話 奈良へと侵入するおっさん

 空は黒く雲が覆い夏の強い日差しは見えなくなり、ざぁざぁと豪雨となっていた。隠れ住む社でひそひそと小声で話す人々は皆、力なく俯きこの生活に疲れていた。着る服も一体いつから変えていないだろうか。饐えた臭いが充満して、暑さからの汗の臭いも部屋に充満して、体調を崩す人間もいたが、助けようとするが、それもただ風通しの良い場所にて水に濡らしたタオルを頭にのせるだけだ。


 その中で外で見張りをしていた少女はため息を吐いて、この夕立がいつ終わるかと空を見上げていた。夕立の中で動くのは危険だ。ゾンビたちが近寄ってきても、その足音に気づかずに襲われてしまう可能性が高い。


「もう雨は嫌になるわよねぇ~」


 のんびりとした声音で呟くように言う少女に、隣で同じように見張りを買って出た少女がこちらを振り向く。


「でもお姉様。この雨で水の確保がマシになりますよ。私たち幸運だと思うんです!」


 元気そうな声音でこちらを見てくる少女を見ながら、おっとりと笑みで返す。


「そうねぇ~。それならお風呂に入れるかしら~」


 頬に手をあてて、小首を傾げてのんびりとしているように見える目で相手へと聞くと、気まずそうな表情になり


「えっと………。水は貴重なのでそれは無理かと思います。ごめんなさい、お姉様」


「ううん、いいの、いいの~。私も意地悪を言っちゃった。ごめんね」


 答えはわかりきっていた。夏のこの最中で水は貴重品だ。お風呂どころか、身体を拭くことも難しいだろうとは。でも、ついつい意地悪をしてしまったと反省する。


 この少女たちは私が守らないといけない。いえ、守ろうとしてくれるマスコット役を演じないといけない。それが彼女たちの心を守っているのだから。


「いいえ、気にしないでください。それにしても罰が当たったんでしょうか? 女人禁制の大峰山に私たちが侵入して隠れ住むなんてことをしているから………」


「それならもう天罰が下ってもおかしくないわね。でも、他に逃げる場所はなかったわ。下の街から食料を確保して、周囲のゾンビたちから身を守るにはここが最適でしたから」


「ごめんなさい、お姉様。私が登山口を見てみたいなんて旅行中に提案をしなければ、もっと安全な場所にいれたはずなのに」


 元気の塊のような少女がしょぼんとした様子を見せて、ポツリと言うのを耳にして、彼女の精神状態がまずいと気づく。先程の会話から躁鬱が激しい感じがする、街へと無理をして行こうとするかもしれない。


 しれない尽くしだが、これまでに友人を少なくない数失っている自分としては見過ごせない。自身は一番年齢が高いのだから、安心させなくては。


「ふふふ。大丈夫よ~。だって安全な場所を探しに行くと言っていた運転手さんたちは帰ってこなかったでしょ~? それはここらへんが危険だということだし、助けがこないことを考えるとたぶん街も危険なのよ~。それに私たちは閉じこめられているみたいだしね~。私たちはここにいれるだけ幸運よ、きっと」


 ニコリと微笑み相手の頭を優しく撫でると、俯き黙り込むがなんとなく弛緩したような感じがする。これで大丈夫だろうか。わからないができることをするしかない。


 遥か先に見える空へと聳え立つ広範囲に広がる白い壁を見て、嘆息する。あの白い壁は外と中を断絶しているのだろう。


「あれ、なんですかね~。あれがあるから救助隊が来れないんですよね? 私、昔のアニメで見たことがあるんです。ドームで閉じ込められていて、外は凄い速さで時間が過ぎているんです。ようやくドームから抜け出れたと思ったら、主人公の幼馴染で外で暮らしていたのが大人の女性になっていて」


 また元気な様子になり話し始める少女を見て、やっぱりまずいかと思う。でも、おっとりとした表情は崩さずに感心したように、その話を聞く。その話がこの場所にきて数えきれない程聞いていた話であっても


 笑顔で頷きながら感心したように聞かなければならないのだ。そう自身に言い聞かせて、再びこの生活がいつ終わるのかと内心で心を重くする。物資調達も難しいし、この生活は死ぬまで続くのだろうか………。その前に外に出て、近場の大きな街に行くべきだろうか………。でも、救援を呼んでくると言って外に出た友人は誰一人帰ってこなかった。それを考えると………。


 頭の中でいつもの答えの出ない内容をぐるぐると脳内で考えていた時であった。


 ガラガラと大きな雷の音が響き、社の前に雷が落ちた。油断していたため、雷の光に驚き凄い輝きに目を瞑る。


「きゃぁっ!」


「わわっ!」


 お互いに耳を塞ぎ、腰を屈めて身体を竦める。今のは大きかった、それに目の前の広場に落ちたようだ。それほど近い場所に雷が落ちたのは初めてだ。心臓がドキドキして、体が恐怖で震えた。


 大丈夫だったかと相手に尋ねようとして目を開けると、なぜか相手は呆然とした表情で雷が落ちただろう場所を見ていた。


 どうしたのだろうと思い私も顔を向けて、驚いて口をポカンと馬鹿みたいに開けてしまった。


 なぜならば、雷が落ちた場所には人間がいたからだ。


 スーツ姿で刀を片手に持つ酷薄そうな顔つきのスラッとした体格の男性。もう一人は小柄な身体で金髪のツインテールの髪型をしたメイド服を着た可愛らしい少女。そしてその傍には子狐がおとなしく座っていた。


 異常なる光景に私たちは口を開けて呆然とするしかないのであった。いつの間にか雨は止んでいた。




「マスター、神道を通り結界内に侵入できたようです。どうやらきゅーこが役に立ったようですね」


 横で可愛らしい笑みを浮かべながら、ナインがドヤ顔で言ってくるので、うんうんと頷いて遥はナインの頭をそっとナデナデして


「ねぇ、本当にレキじゃ侵入不可だったの? おっさんが来る必要があった? おっさんだよ? 救援はくたびれたおっさんより、可愛らしい少女の方が良いと思うんだけど? おっさんはいらないと思うんだけど?」


 不安いっぱいで、遥は片手に持つ刀に力を込めて尋ねる。おっさんいらないよね?


 その問いかけは何度もやり取りをした内容ではあったが、ナインは嫌がらずに笑顔で答える。その答えも何回もやり取りした内容ではあったが。


「このライトロウへと偽装する法と秩序のメダリオンは本人しか効かないんです。残念ながら急いで作ったので2個しかできませんでしたが。レキの身体では上手く動作をしてくれないんです」


 ナインは手に持つ元は白く輝いていたメダリオンを見せて説明をする。今は灰色になっており力を失っており、すでに偽装の力はない。


 遥はその答えを知っていたが、諦めきれなかっただけである。なので、はぁ~と深く嘆息するのみで、もう一度サラサラとしたナインの髪をナデナデして精神を安定させる。


「妾も! 妾も頑張りました、主上様」

 

 ケンケンとアピールする子狐のきゅーこ。へっへっと舌を出して、なにかを期待するような眼になっているので、苦笑をしつつレベル5の油揚げをアイテムポーチから取り出してあげる。


 ぱくりと食べて、きゅーこは尻尾をブンブンと勢いよく振って遥の周りを喜び駆けまくった。その様子を見て可愛いなぁ、ペット最高と喜ぶおっさん。


「うぅ………。私が死んだらやり直しか………。もう一度メダリオンの作成からやり直すとなると出雲には間に合わないよね。あの爺さんは気難しい老人っぽいから、来年の10月だと思っていましたとか答えて遅刻したら凄い怒りそうだよね。となるとやり直しはメダリオンの作成時間も考えて無理か。サバイバルモードは苦手なんだよ、死んだらおしまいってありえないよね?」


 死んだらおしまいなのは現実では当たり前であるが、不死に近いおっさんにはありえない内容であった。スタンダードモードが良かった。サバイバルモードはおっさんにはクリア不可能だよと、早くも弱音を吐く。2個あるんだから、ナインを連れてこなければ2回試せたけど、その場合はナイトメアモードは確実なので選択肢には最初から無い。


 即ちいつものゲーム脳なおっさんであったりしたが、なぜこんな危険な場所に来ているかいうと、ナインの説明通り、レキでは分体と判定されてメダリオンが反応しないためであった。本体で使用しないと属性を偽装できないらしい。まじですか、分体はおっさんの方だよと抗議をしたが、メダリオンはレキの姿ではうんともすんとも動作しなかったのだ。


 自身を分体でも良いと考える、まったく主体性のないおっさんであるが、そのため渋々おっさんの姿で来たのである。


「それでここはどこかな? きゅーこのスキル、稲荷の神道を作ってどこに来たのかな? ここは山の中かな?」


 周りを見渡すと、ボロボロの大きな社が目に入るが、他は一面森林である。というかたぶん山々が見えるので山脈のどこかではないだろうか。


「ご主人様、ここは奈良県、大峰山。女人禁制の山として世界遺産としても有名な場所ですね。神聖度が高いのでここに神道が開かれたみたいです」


 モニター越しにお留守番のサクヤが真剣な表情で伝えてくるので、なるほどと頷き


「そういわれても、どこだかはさっぱりわからないけど、奈良? 京都じゃないの? え、力の結晶は京都に行かないと駄目じゃないの? タクシー使えるかな?」


 タクシーは重要だよ? タクシーがないとおっさんは移動できないからねと早くも軟弱な言動をする心も体も軟弱なおっさん。


「神道は残念ながらランダムです。本来は聖域同士をつなげるんですが、そんなものは崩壊時に綺麗さっぱり消えましたね」


「ランダムテレポートか……石の中に出ないで良かったよ。あれで昔、最強のパーティーがロストしたんだよなぁ。当時眠たくて間違えてセーブしてしまったんだよね。あの時にリセットボタンを押しておけば………。神道はもう使う気はないね、私の運の高さだと石の中に出そうだし」


 昔の嫌な思い出を思い出すおっさんであるが、実にどうでも良い事ばかりである。そして、もっと油揚げをくださいときゅーこは言っていたが、それを聞いてショックで脚にしがみついてくるので、頭をナデナデして、ごめんごめん、ちゃんと神道が整備されて開通したときに使うよと慰める。モフモフ最高。


「それとご主人様、重要なことがあります」


 きりりと一層真面目な表情になるサクヤなので、こちらも真面目な表情で見つめ返すと


「私のサポートはこの地域ではあまり役に立ちません。残念ながら」


「あっそ」


 軽く返事をすると、ガーンとサクヤはショックを受けた表情でぷくーっと餅でも膨らんだように頬を膨らませる。


「酷いじゃないですか! そこはそれはまずいね、困るねと言って焦ってくださいよ。どうしてそんなに軽いんですか!」


 サクヤがブーブーと抗議してくるが、ジト目でその様子を見ながら、自身の予想している内容を口にすることにする、というかサクヤの性格は既に読み切っているのだからして。


「レキのぼでぃじゃないからやる気が出ないとか、どうせそんな理由でしょ?」


 わかっているのだよ、サクヤ君。君の考えはまるっとお見通しなんだよ。


「………。私のボケが………。酷い! ご主人様、私は傷心のため少し休暇を取ります。もう働きませんからね!」


 べーっと舌を小さく突き出して、プンスコ怒るフリをしてサボタージュをする銀髪メイドであった。どう答えてもさぼるつもり満々なことだったのは明らかだった。モニター越しにごろんと寝っ転がり、お饅頭を片手に持ち、漫画を読み始める。


 しょうがないなぁと、苦笑をしつつ遥はサクヤからまともなサポートを受けたことってあったけ? と首を捻るがないような感じがする。まぁ、おっさんの記憶力なのであったかもしれないけれど忘れちゃったよ。ごめんね、サクヤ。でも、サクヤさんやモニタ画面は消さないんだね。寂しがり屋かな?


「さて、それでは仕方ないね。探索を始めるとしますか。刀術も念のためレベル8に上げておいたし、とりあえず刀で頑張ろうかな。銃だと銃声で敵が集まりそうだしね」


 手に持つ神々しい強力な力を鞘に納めていても感じる天叢雲を見ながら、気を取り直してナインときゅーこへと告げる。レキのぼでぃには必要ない刀術であるが、おっさんはパンチで敵を倒せる自信がなかったので、レベル8まで上げておいたのだ。これで残りスキルポイントは53である。だって、へろへろパンチでゾンビに食べられているし。


「はい、マスター。では目的は二つ、この壁を破壊してレキさんのぼでぃでも入れるようにする。そして力の結晶を回収するということでよろしいですか?」


 ニコリと野に咲く花のような微笑みとなりスカートを摘まんで、綺麗なカーテシーをするナイン。可愛いなぁ、このメイドさんはうちのメイドさんなんだよ。


「主上様、お任せください。このきゅーこが万難を排して目的を達成するお手伝いをしましょうぞ」


 くるくると走り回る子狐がアピールしてくるので、綿のような軽さでいい加減に頷きを返して出発することにする。肩に羽のような軽さの刀を担いで


「まずは京都へと向かうしかないか。さて、最低でも電車かタクシーが必要なんだけど………。支援ボタンはグレーアウトしているかぁ。まぁ、これで侵入できたら壁なんてないも同然になるしね」


 と、ステータスボードを見て多少がっかりはするが予想されていたことなので、のんびりとまずは山を下りるかぁとナインときゅーこを連れて歩き出そうとしたおっさん一行。


「あの………。神様ですか~?」


 そんな実に奇妙な一行へと、社から声がかけられたので、うん? と顔を向ける。そういえば気配感知はアクティブにしていなかったや。でもいつも気配感知を使用するのはおっさんでは無理です。


 そこには少女が二人、社からおずおずと怖がっているような、そして助けを求めるような視線を向けて佇んでいた。


「むむ………。レキならなぁ。ここでボケるんだけど、まぁ良いや」


 小声で呟き、身体を相手に向けて口元を笑みに変える。


「残念ながら神様ではないね。私が生まれてから神様などという存在には」


 会ったことないとキメ顔で言おうとして、ハタと気づく。鏡を見れば自分が映るし、傍にもその可能性が高い少女たちがいるやと。


「あ~。神様ではないね。少しばかり観光に来たんだよ。ほら、奈良県の大峰山って世界遺産で有名だからね、興味があったんだ」


 ボケを含んで答えたのに、レキならばアホでしょうという視線を今までは向けられてきたのに、なぜかお互いの顔を見合せて少女たちはひそひそと話を始めた。


「神様って、嘘が下手なんですね、お姉様」


「駄目よ~。神様は正体を知られたら立ち去っちゃうの。私たちは気づかないフリをしないと~」


 遥の知覚では少し離れた程度では、その会話は丸聞こえであるので苦笑をしてしまう。たしかに、今の出現の仕方は人間ではありえないだろう。


「あの、では観光案内を私たちがしましょう~? えっと、その代わりに助けて頂ければと思いますが」


 恭しく尋ねてくる少女を見て思う。


 やっぱりおっさんと美少女には格差があるねと。レキならば、呆れた表情で接触してきて、すぐに親しくなれるのにと。


 まぁ、できることをするしかないかと、おっさんは頷きを返すのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラーゼフォン!
[気になる点] 銀髪と金髪 サクヤさんは金髪でしたっけ [一言] 応援してます
[良い点] 秋葉原で死んで以降は、レキボディがメインでおっさんは既に背後霊的な物だと思ってたら、一応は本体扱いだったのかそれとも単にナインの策略かな。 [気になる点] ランダムテレポートかぁ、拠点は広…
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