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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
4章 女武器商人と遊ぼう
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42話 おっさん少女は女武器商人と共闘する

 ドンドンと銃声を響き渡らせながら、遥はようやく女武器商人の拠点に辿り着いた。高層ビルがひしめき合う只中にある静香の住処である。


 周りのグールやら、走る現代版ゾンビを倒しながらようやくたどり着いたのだ。珍しくレキぼでぃを使用しているにもかかわらず、遥は疲れを感じていた。


「フフフ。遅かったわね。ド派手に鳴り物入りで来たみたいね。パレードでもしていたのかしら?」


 うっすら微笑みながら、拠点の前には茶髪のセミロングのぼさぼさで天然パーマが軽くかかっている武器商人のダークミュータントである静香が後ろ手にまわしながら、遥に皮肉気に聞いてくる。


「しょうがないんですよ。人気者なのでサインや握手会をしないといけなかったんです」


肩をすくめながら、疲れた感じを見せて答える遥を、サクヤが拳を握りしめナイスです、ご主人様という顔をしているのが見えた。


 仕方ないのだ。ハードボイルドなのだ。固ゆで卵なのだ。半熟卵が好きな遥は、今のようなやりとりをしてみたいと思っていたのだ。ダンディさにあこがれるおっさん少女。見た目が可愛いので、ハードボイルドは無理であろうレキぼでぃである。


「でも無傷なのはさすがね」


感心されて手招きされる。


「こっちが注水バルブになるわ」


と静香に案内されたのは、ビルの横脇にある注水バルブである。そこに給水車を移動させて、ホースをとりつけ、ごうぅんごうぅんと水を流していく。


「助かったわ。やはり商人は身ぎれいにしないと信用されないからね」


 怪しげな格好をやめればいいのではと思う遥であるが、身ぎれいにしないといけないのは納得する。小奇麗で貧乏な人と、汚い恰好をしている金持ちなら、小奇麗な貧乏な人を大体の人間は選ぶであろう。第一印象では、金のあるなしなどわからないのだ。


 サラリーマン時代でも、身ぎれいにするよう注意していた。汚いとそれだけで相手に嫌われる可能性増大。おっさんなら確実に嫌われる。女性社員に後で給湯室で、こそこそ、あの人汚いよね。加齢臭もねとか言われたくない年齢不詳のおっさんである。


「それならば、もう少し怪しくなさそうな格好をしてみれば良いのではないでしょうか? 男物のロングトレンチコートは止めて、普通のジャケットとかでも羽織れば良いのではないでしょうか? トレンチコートが好きならば女物のトレンチコートで良いと思いますが?」


 怪しげな格好をしており、女性を感じさせない静香である。あんまり女性扱いをしないでずけずけというおっさん少女である。そしておっさん少女は偉そうなことを言えるほど、服のセンスはない。


「あらあら、ダメよ? このトレンチコートは私が武器商人であるというトレードマークなの。この世界で大きな箱を背負い、男物の薄汚れていそうなトレンチコートを着ていると、私だと誰もが思うでしょう?」


 ふむふむ、なるほどと遥は頷いた。一理ある。トレードマークは必要かもしれない。私もホッケーマスクをトレードマークにするべきかと考えたが、心を読んだのであろうか? 二人のメイドがウィンドウから手をバツにしていた。


 どうやら、ダメらしいと遥は残念だなぁと思った。そして気心がしれてきた三人である。


 でも、何か他にも理由がありそうな気がするが、そこは聞かなくてもいいかと、相手にあまり近づかないことをポリシーとする遥である。もうおっさんになると、自分の世界ができてしまうのだ。私の世界に入れる人はいないのだ。と思うのだが、そこにズカズカと入ってきているメイド二人がいることは気づいていない。すでに遥の世界はメイド二人に支配されている可能性もある。


「さて、お支払いは円でよろしいかしら? お嬢様」


水が流れる音を聞きながら、からかうようにこちらを見ながら言ってくる静香。


「はい。円で結構です。お支払いは今すぐでしょうか?」


まぁ、ツケは認めないけどね。と心の中で遥は言っておく。


「ええ、お支払いは今すぐよ? でもお金を置いてあるのは地下駐車場になるの? 一緒に来てくれるかしら?」


 罠であろう。罠しかないよね? と遥は思った。こんなの映画とかでテンプレだろうと。


「あぁ、次は軽油も欲しいの。地下駐車場には災害用の発電機もあるのよ」


と頬に手を当てながら、更に静香は言ってくる。


「軽油は保管が大変ですよ? 大丈夫ですか?」


 大丈夫よという返答を聞きつつ、こんなにわかりやすい罠もあるまいと、おっさん少女は静香と一緒に地下駐車場に降りていくのであった。





 電気が通じていない地下駐車場は真っ暗で不気味である。降りる前にアインには給水車で待機を命令して遥は静香と一緒に地下駐車場に降りていくのである。


 懐中電灯片手に、どんどん降りていく。足音とうめき声が聞こえてきてグールが数人くるが、パンパンと銃を連射してヘッドショットが炸裂して瞬殺である。数人程度は高性能なレキぼでぃには敵う訳がないのだ。


「なんか不気味ですね~。地下駐車場は、崩壊前でも不気味なのに今はもっと不気味です」


ただ真っ暗の中を懐中電灯片手に歩くのも寂しいし暇なので、遥がちらりと横にいる静香を見ながら声をかける。さっきから遥しか戦っていないが、武器は持っているのだろうか。


 でも、武器は商売道具だから使わないというポリシーなのかなぁと遥は思う。そういう人が昔の映画に居たような気がする。たぶんあの映画の人はケチなだけだと思う。


「そうね。美女と美少女二人なら襲われても文句は言えないわね」


 パンパンとまた現れたグールを銃で遥が倒したのを見ながら、静香が言ってくる。襲われても簡単に撃退しそうな女性である。


 なかなか気の利いた返しをしてくる人だなぁと、私も何か気の利いた返しをしなければと、無駄に焦るおっさん少女。対抗心があるらしい。だが気の利いた返しなど、高性能なレキぼでぃでも補助できない。


「女二人の旅は危険な物ですが、静香さんはここに住んでいるんですよね?」


えぇ、そうよと答えてくる静香に、気になっていたことを聞いてみる遥。


「静香さんは、化け物に襲われない体質ですよね? なんで、ここのグールには襲われるんですか?」


同じダークマテリアルなのだ。襲われる可能性は低いと思う。しかしここのグールは、気にせず普通の人間を見つけたように襲い掛かってくる。


「それはね、ここにはグールを束ねる存在がいるのよ。それが私がここの奥に来るのを妨害しているの」


グールって、なかなか良い名づけねと静香は言いながら、そんなことを言ってきた。


 少し驚いた遥は今の言葉を聞き返す。


「束ねる? 主ってことですか?」


ここらへんの敵は強くなっている。その主だとかなり強いかもしれないと。


「ご主人様、前方に多数のグールと思われる反応あり! 奥に更に強い反応も見えます!」


珍しく焦った様子で、サクヤが伝えてくる。気配感知で遥も気づく。


「主ねぇ。そういうものだと思うわ。ほら到着よ? ここに発電機があるの。そして発電機を起動させまいとするグールたちもね」


 劇にでてくる出演者がそこにいるように、前方に手をふる静香。


なんで発電機を起動させるのを嫌がるんだと、遥は前方にうめき声と共にたむろしているグールを見ながら、やっぱり騙されたのね。映画は正しかったと思うのであった。




 目の前には物凄い数のグールである。なんで今まで気付かなかったと思った遥にサクヤが解答を教えてくれる。


「ステルス系の超能力を主が使っていたかと思われます。超術看破でないと見破れません」


 いつものおふざけは止めて真面目な顔で伝えてくるサクヤ。そしてサクヤが真面目であるほど、遥は敵がそんなに強いのかと不安に思う。こういう時は軽い感じで注意するのが当たり前ではないだろうか? 真面目な顔で、2アウト満塁にだされる代打の気持ちである。勿論、野球をやっていても、おっさんは代打に選ばれることすらないだろう。


 そして毎度、超術看破を取り忘れてピンチに陥るおっさん脳。危機が過ぎるとわすれてしまう残念仕様なのだ。


「新しいミッションも発動しました。グールの巣を殲滅せよ。クリア報酬は5000expとスキルコアですね」


 親切な説明ありがとう、これなら12レベルになれるね。生きていればねと最近はゾンビだと経験値0、グールで1だから助かるよと、ここらへんは敵が急に強くなっているので、珍しく皮肉気に答えるおっさん少女である。


 まぁ、それはともかくとして戦闘である。レキぼでぃよ、頼りにしています。スキル大明神よ、我を助けたまえと、相変わらずの、他人任せのスキル依存な遥である。


 ジャキッと短銃をレキぼでぃは構えて、その銃口を走ってくるグールに向ける。


 暗闇の中でもこちらの姿がはっきり見えるのであろうか? グールは凄い速さで近づいてくる。一番近いグールの頭を狙い撃つレキぼでぃ。


 パンパンパンと乾いた音を立てて、銃弾が3発吐き出される。高速でグールの頭に当たり障壁が揺らいだ後にガラスが割れるように粉砕する。障壁を貫かれたグールは頭に銃弾が食い込み破砕され倒れ伏す。


 しかし周りにはまだ100体近いグールがいる。押しのけ、押しのけとグールが争いながら走ってくる。

よだれを垂らしながら、恐ろしいうめき声を駐車場に響かせながら、倒れた仲間など見向きもしない。


「これは倒しきれないね。足止めからいきますよ」


 アイスレインも考えたが、フレンドリファイア無効が適用されない可能性のある存在、すなわち静香が隣にいるのだ。範囲攻撃は使えない。


 仕方ないと、次々と頭から膝に狙いを変えた。膝であれば弾丸が食い込んだだけでも問題ない。膝に弾丸が当たって引退だ。


 もう一度、今度は膝を狙って次々とグールを撃っていく。グールの障壁は弾丸に反応はするが、その弾丸の食い込みは頭ならば多少は防げるであろうが、膝のような細い部分では致命傷だ。膝が砕けて走れなくなり倒れ伏す。


 それでも、グールは這って近寄ってこようとするが。


「お姉さんも援護するわね。れきちゃんが膝を砕いたグールを倒していくから、走ってくるグールはよろしくね」


なんだか役割分担がかなり偏っていると遥が思う中、静香は女スパイが使いそうなデリンジャーぽい銃を取り出す。


 あれは単発だし射程も短そうだから、役割が偏るのも仕方ないと遥が思って見ていると、静香はダンダンと膝が砕かれ這いながら近づいてくるグールを撃っていく。


その弾丸は勢いよくグールに当たり、障壁をあっさり砕き、体を破砕した。


ダンダンダンと静香は撃っていく。


 おいおい待てよ? 何その威力は? どこのマグナムですか? 後リロードはどうしたの? と遥も走っているグールを撃ちながら、静香の戦いを見てびっくりしていた。


遥の視線に気づいたのだろう、静香が答えてきた。


「この銃は中距離でも強力な威力があるの。後、弾丸は無限リロードなしに改造済みよ」


 なにそれ、欲しい。私も無限弾欲しいです。でもハンドガンの無限は弱いので、ロケットランチャーの無限弾を所望しますと思うおっさん少女。図々しさ極まりない。


「ふふ。あんまり驚いていないのね?」


静香の問いに、まぁ、ゲーム仕様はさんざん見てきたのでと遥は心の中で思うが、そう答えるわけにはいかない。


「まぁ、こんな世界ですしね。色々変なことがあっても、あんまり驚くのはやめたんです」


 可愛く微笑んでみるレキぼでぃ。誤魔化すことにかけては、おっさんをおいて他にはいないと威張れる得意技である。全然威張れないと思われる。


「同意するわ。こんな世界だものね。おかしなことがあっても、面白可笑しく暮らしていけば問題はないわね」


なかなか刹那的な答えをしてくるハードボイルドな女性だと、最近、刹那的生活をすることが多いおっさん少女は自分を棚にあげて思う。


暫くパンパンダンダンと銃声が響き終わって、グールのうめき声は聞こえなくなる。


「そろそろ、大体のグールは倒したみたいね?」


と、静香が無限デリンジャーを片手にこちらを見る。


そうですね。そろそろですねと同意する遥。そろそろなのである。


「ご主人様、奥の大きな反応が近づいてきます! 恐らく主と思われます」


サクヤがまるで戦闘用サポートキャラみたいな忠告をしてくる。


 恐らくじゃなくて確実でしょうと、ゲームではそろそろボスが出てくるパターンだよねと遥は思いながら、次の戦闘に備えるのであった。


ずしずしと大きな音を立てて異形の姿が現れたのを見ながら。





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