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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
3章 初めてのコミュニティを助けよう
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40話 女警官は希望を見る

 人々が大会議室に集まっている。他の大会議室にも人々が集まっているだろう。わいわいと随分にぎやかである。皆嬉しそうな雰囲気を出している。


 部屋の中央にこの拠点のリーダである警官隊長が来て乾杯の音頭を取った。


「皆、お疲れ様!本日は大変な出来事があったので、それを祝いたいと思う! 乾杯!」


 お~! 乾杯! と周りの人々が歓声を上げるのをナナはニコニコと笑って、自分も隣の女警官先輩と乾杯をした。最近では見なかった程、食べ物やら飲み物がテーブルの上に置かれている。


 今までは汚い服装をして体臭もきつく、泥だらけの布団で寝ても、生き残れるか不安で気にもしなかった人々。


 しかし、今はみんな明日からの生活に希望を持って笑顔で輝いている。服装はきれいになり体臭も石鹸や、シャンプーの清潔な匂いがする。


「ようやく文明人に戻ってきたという感じね」


 女警官先輩がニコリと笑って、カンパーイとナナの缶ビールに自分の缶ビールをぶつけてくる。


 カシャンと金属音がして、ビールがこぼれるのを、おっとっとと言いながら、女警官先輩は慌てて口につける。口元が泡だらけだ。


 そのとぼけた姿に久しぶりにナナは思い切り笑ったのであった。



 随分前に不思議な武器商人が来た。それに続いて不思議というかアホ可愛い少女が商人としてきた。商人なのだろうか。多分商人である。何か少女からは商人の真似事をしてみたいという感じも出していたが。


 武器は周りの脅威を取り除くことができたが、それでも人々の不安はなくならなかった。衣食住を知って礼節を知ると言うが、礼どころではない。命がかかっているのだ。最近は食料の確保にまたも難しくなってきたので不安が増してきたのもある。


 最近の近場での物資の確保が難しくなり、そのため、遠出をして物資の確保をしてみたが拠点周辺のゾンビたちとは違う一段強いゾンビや化け物が出てくるのだった。小走りで銃を受けてもなかなか死なないゾンビ。武器や未知の力を使う化け物。


 精鋭部隊が猿軍団との激闘でかなりの負傷者がでたのも痛かった。絶望感が漂ってきたのである。


 それを少女が現れてすべて解決してしまった。


 重傷者をも癒す力と、どこからか連れてきたロボットと給水車に積み上げられた物資の数々。


 細々と配給を減らして少しずつ使っていた水はタンクに満タンになり、お風呂に入れるという仰天の贅沢さができるようになったのだ。


 それらに対する対価も仰天の内容であった。


 もはや使わないと思っていた通貨で商品の取引ができると聞いたとき、耳を疑ったものだとナナは苦笑いをした。まさに救世主である。以前に再会した時には、ここまで凄いことになるとは思っていなかった。


「あの子たちは何者なのかね~?」


とほろ酔い加減の女警官先輩が尋ねてくる。


「どうなんでしょう? 不思議な少女ですけど」


 ナナたちの話を聞いて、隣の人も話に加わってくる。


「俺は彼女は政府が密かに作り上げた強化超能力者だと思うね。崩壊した世界を復興させるために行動させているんだよ」


だから、復興資金に必要だから通貨を集めているんだと言ってくる。


なるほどねぇ~と周りの人々も自分の意見を言っている。


曰く、謎の組織が世界を支配しようとして活動を始めたとか、異世界から助けに来た魔法少女とか。滑稽な考え方が多い。


「まぁ、あの子は色々非常識だからなぁ」


ナナもレキちゃんの正体がわからない。最初は変な子だと思ったのだが。それは今でも変な子かと自分の思ったことに笑ってしまった。


「皆、お疲れだった。これからも頑張ってくれ」


 警官隊長も缶ビールを持ちながら、こちらにきて話に加わる。


 周りにはレキちゃんから買った多くの食料が広げてある。次にレキちゃんが来なかったら大変かもしれないとナナは思ったが、今の絶望感を払拭させるためにも必要なことなのだろう。特に反対意見は言わない。先輩たちも、そんなことは十分にわかっているはずだ。


「荒須巡査。あの子のコミュニティに私たちが加わることは可能だろうか?」


 警官隊長が思案気に聞いてくる。あの子のコミュニティに入れれば、どう考えても安心である。武器も食料も物資も十分にあると思われるのだ。いや、実際にあるのだろう。何の役にも立たない通貨で取引を行うほどだ。

 

「う~ん、今は無理ではないでしょうか? こちらを警戒していると思われます」


 キリッとした顔で真面目に答えるナナ。心の中では、レキちゃんが警戒しているとは思ってはいなかったが、とりあえずそう答える。彼女が本気になれば、私たちは抵抗もできずに殺されるだろう。


「そうだな。ゆっくりと取引して信用を得るしかないか」


ナナの答えを聞いて頷く警官隊長。


「でも、仙崎さん、あの子かなりちょろそうじゃないですか? ちょっとあほっぽいですよ?」


話を聞いていた隣の先輩も問うてくる。確かにちょろそうな雰囲気だった。ナナの勢いに完全に負けて、マスクを被るのを諦めるし、言われるままに怪我人を治したのだ。押しに弱そうである。


「あの子は良心的だろう。だが、後ろにいる人間が良心的だとは限らない。もしかしたら、あの子に対する私たちの行動で、こちらへの対応を決めているかもしれないぞ? 何しろ貴重な物資をポンとだせるコミュニティみたいだからな」 


 あぁ、ありそうですね。と隣の先輩もうなずく。


 ナナもありそうな話だと思った。


 だが、彼女の後ろには誰もいない感じがあるなぁとも口には出さないが思っていた。直接話した自分としては、彼女の行動は適当過ぎると感じていた。その場その場で行動を決めている感じなのだ。


しばらく後に宴は騒がしく幸せな感じで終わったのであった。




 翌朝である。ナナたち、物資調達部隊はまた会議室に集まっていた。


「最近はこの周辺のゾンビは脅威度が減ってきたと思われる。なので誘導作戦は、反対に他の地域からゾンビを集める可能性があるので、しばらくは行わない」


警官隊長が集まった部隊にテーブルに広げた地図を示しながら今後の方針を言う。


はいっと皆が了解する。現在の拠点周りに敵はそんなにいない。


「そしてだ、あの少女のコミュニティとの取引のために、貴金属以外に通貨も必要となった。通貨収集部隊を作る」


そう指示する警官隊長の言葉を聞いて、私たちは警官なんだけどと、ナナは苦笑する。周りの人々も同じ思いだったのだろう。苦笑していた。


警官隊長も仕方ないだろという顔で苦笑する。そして部隊編成を伝えてくるのであった。


 部隊編成を終えて、今日は自分の部隊は監視班となった。最近ではお休みみたいなものだ。たまにでるゾンビを撃ち殺すだけである。


 でも、ここに来た頃には戦闘なんてできないと思っていた。人間は慣れる存在なのだなぁとナナは考えてしまう。


 中層通路をショットガンをガチャガチャと言わせながら、歩いていると部屋から子どもが飛び出してきた。


「ねぇねぇ、ナナお姉ちゃん。次はレキちゃんいつくるの?」


と、最近では見なかった笑顔で聞いてくる。


若そうな年代のレキである。もしかしたら同年代とも思っているのかもしれない。


あの子何歳なんだろうと考えながら、ナナは返答する。


「う~ん。どうかな。他の拠点もまわってから来るからね~、1週間後ぐらいかな?」


 確か警官隊長とそのように話していた。そしてそれまでに通貨を集めないといけないとも。


 まさか通貨が必要になるとは誰も思っていなかったのだ。


「カスタードサンドイッチ美味しかったの! お礼を言わないといけないよって、お母さんに言われたの!」


元気よく子供は笑顔で話してくる。


偉い偉い、次はお礼を言おうねと頭を撫でてナナが褒めると、その後から人々も出てきた。


「次はそれぐらいかねぇ、私たちもお金を持っていたんだけどねぇ。銀行に預けてあるから困っちゃう」


通帳を持って逃げたんだけどと困り顔だ。誰も銀行が使えなくなるとは考えていなかった。避難してからは通貨が必要となるとは考えていなかったのだ。


「大丈夫です。必需品は拠点の会計として買い上げます。各個人にはある程度の自由になるお金が配給される予定です」


真面目な顔で答える。ここを間違えるとみんなが不満を持ってしまう。


「それは嬉しいニュースだね。それならお金を貯めておかないとねぇ」


と、人々は納得顔だ。何を買おうかと話し合いながら、それぞれの持ち場に移動する。


配給制度で納得する状態がいつまで続くかは、わからないが。


 さて洗濯洗濯といいながら、オバサン連中は梯子を下りていく。俺も風呂に入る番だと続いていく人の姿もある。


余裕がでてきたなと思いながら、監視につくナナであった。



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