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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
21章 仲間たちと旅をしよう

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348話 コマンドー婆ちゃんの戦場

 黒い大型空中機動用バイクを操る5人。コマンドー婆ちゃんと地水火風の4人のお爺ちゃんたちだ。


 眼前には無数の羽蟻が飛んでいるのが見える。しかもただの羽蟻ではない。大きさも5メートルはあり、その複数の前脚には槍と盾を装備しながらの飛行編隊である。


「どうやら急いで支援をおこなった甲斐があったみたいですねぇ」


 バイクの前面モニターに昼行灯が映り声を掛けてくる。一見、のんびりとしたいつもの調子のように見えるが


「はっ! 緊張してるのが見え見えだよ。戦隊を預かる総指揮官なんだ もっとシャキッとしな!」


 コマンドー婆ちゃんなどとあだ名をつけられたアタシは厳しい声音で注意をする。いつもののんびりとした様子がなければ下が緊張するだろうが。


 その叱咤に苦笑を浮かべて頭をポリポリとかき始める昼行灯。


「参ったなぁ、僕の緊張を見抜くのはお婆さんたちぐらいですよ」


「嘘つけ! アタシが気づくってことは、使える有能な奴は必ず気づく。もう少し頭を使いな、それがあんたの役目なんだからね」


「了解しました。気をつけますよ」


 コホンと咳払いをして真剣な表情へと変える昼行灯は状況を確認してくる。


「お嬢ちゃんは保護できましたか? 迎えに行ったはずですが。まぁ、彼女なら大丈夫だとは思いますが」


 気楽そうに言う昼行灯の様子に、嘆息をすると視線を鋭く射抜くような目つきとなる。


「あぁ、すぐそばに装甲輸送車があったから大丈夫だと言いたいところだが、どうやら大樹の超能力者がじきじきに救けに来たようだよ。だいぶまずいのかもしれないね」


「……それは珍しいですね……。そんなに怪我をしていたのですか? たしか治癒できる超能力をもっていたと覚えていますが」


 訝しげな表情になる昼行灯にアタシは見たことを告げる。眼下に起こっていることも含めて。


「怪我は無いが消耗が酷いさね。どうやらあのアホ娘は、自分の限界を超えた力を使ったみたいだね。一般人に助けられてなんとか歩いていたよ」


「そんなにですか……なるほど大樹の超能力者さんが助けに来るのもわかります。その人たちは今も一緒に?」


「馬鹿げたことに、森林によくわからない茨の鉄条網みたいなのを作って逃げていったよ。………力を使ったと思われるのは、また小さい少女だったね……胸糞悪いことだ。まだ超能力者を作る計画は続けているみたいだよ、那由多の糞野郎は」


 眼下で走っているバギーの運転手は凄腕のドライバーだろうが、一般人なのだろうか? 見た限りではメイド服を着ている以外はエリートのような感じがする。


 超能力を使ったのは、レキのアホ娘と同じぐらいの歳の子だ。焦る様子もないことから、戦闘に慣れているのだろう。


「これだけの兵器を作っても、まだやめていないのか、それとも既存の超能力者がまだいたのか……。僕的には後者であって欲しいですが」


「そうさね。そう思いたいが、アタシャ大樹が超能力者を作る計画を止めているとは到底思えないけどね」


 苦々しく思いながら、昼行灯へと自身の考えを伝える。たぶん昼行灯も同じ考えに違いない。未だに子供を兵器へと変えている奴らをぶっ殺してやりたい。


「その議論は改めてすることにしましょう。なるほど、敵の行軍は茨の鉄条網のおかげで止まったのですね。それならなんとかなるかもしれません。避難民はどれぐらい見えますか?」


 気を取り直す昼行灯にアタシも戦場でのとりとめのない考えをやめて答える。昼行灯の予想を大幅に超えているその様子を。


「ざっと見て5万人はいるか? 道路を埋め尽くして走っているよ」


 昼行灯はその答えに驚きで目を見開く。息を呑んで驚愕したのがひと目でわかる有様だ。多くて5000人ぐらいかと考えて急行したのだから。


「それは……なるほど、その人たちが急に森林に現れたので、大樹から避難民及びお嬢ちゃんの救援要請がきたのですね。まさか、それほどの人たちをテレポートで助けたのか?」


「生憎だが、それだけじゃないよ。避難民は全員が見た目は健康そうだった。あのアホ娘が限界を超えた力を使った結果だろうね」


 誰も痩せこけてもいないし、どこかに怪我をしている様子もない。ただ極めて消耗している様子なので、本当に見かけだけなのだろうが、蟻に捕まっていた人間が誰も彼も五体満足であるはずがない。


 たぶん全員に治癒をかけてからテレポートをしたのだろう。アホ娘がテレポートできるのは、既に情報として知っていたが、そこまで大規模な力を使ってただで済むわけがない……アホな娘だ。お人好し過ぎだね、まったく……。心労で老人の心臓を止める気なのだろうか、あのアホ娘は。


「それは凄いですね……こちらは1500人程度の兵しかいないので茨の鉄条網は正直助かりました。空中戦艦から支援砲撃はもう少ししたら始まるはずですので地上は大丈夫だと信じます。抜けてきた敵の撃破と、生命体に反応して集まりつつあるゾンビたちは此方でなんとかしますので」


「羽蟻たちをなんとかしろって言う訳だろ。他の部隊も来るんだろうね?」


「もちろんです。こちらのもつヘリ及び空中戦艦の戦闘機隊も来ますが、全てをそこに向けられる訳ではありません。周囲へと拡がるように蟻は移動しているので」


「わかったよ。それじゃあとはこちらでやらせてもらう。通信終わり!」


 昼行灯が映るモニターを切り、バイクへと尋ねる。


「おい、目の前の羽蟻はどれぐらいいるんだい? 解析はできたのかい、プラー」


「解析は終了。敵の数は3247匹。移動速度は80〜100キロと推定。敵の武器は槍と盾、地上への攻撃を開始しました。予測される超能力は槍状の岩の単発射出、もしくは小型の岩礫による散弾射出、防御フィールドは1.2秒の持続可能な障壁を生み出せます。その体重は……」


「あ〜、十分な情報さね。相手の持ち札がわかれば問題はない。新しい情報がある時だけアタシに声をかけな」


「了解です。命令を受け入れました」


 このAIの名前はプラー、このバイクからとった。無感情な機械音声での会話はどことなく味気無いが戦闘兵器ならば、これで良いだろうとアタシは思う。ペットじゃないんだ、使い捨てるときもあるからね。


 新型の空中機動バイクを見ながらそう考えて、手元にあるビームライフルを見て、周囲へと声をかける。


「聞いたかい? あの障壁は1秒ほど持続できるらしいさね。ビームライフルの攻撃持続時間は」


「3秒。引き金を引き続ければ、持続して発射されるのがビームライフルの特性だな。多数の敵兵を薙ぎ払えるが、この場合も有効だ」


 土の爺が口を挟む。そのとおり、ビームライフルは大昔に見たアニメとかじゃないので、単発で撃つだけではない。それでは威力が変わっただけの物理弾と同じだが、このビームライフルは持続してビームが発射されるために薙ぎ払えるのだ。


「ちょうどよく、あの左遷させられたゴップとか言うやつに試作型ビームライフルを貰っておいて助かったな」


「あぁ、試作型のこの黒いバイクも貰ったしな。あの親爺は見かけによらずお人好しだったな」


「そうだな。試作型を研究所から持ってくるとは、あやつは機密という言葉を知っているのか疑問に思うぞ」


 他の爺たちが多少の笑いと感謝の気持ちをもって話し合う。


「ふん、あいつが左遷されたのは派閥闘争で負けたせいじゃ無いとアタシは思うよ。こうもバカスカ盗んでいたら、崩壊前なら銃殺刑さね」


 クックックと笑うアタシに風の爺が同意する。


「そうだな。たぶん左遷の理由はそこが原因だと儂も思うぞ。……だが、崩壊後のこんな世界だ、使える武器ならさっさと戦場に投入させようとする考えもわかる」


「では、各々方、せっかくの新型だ。存分に使わせてもらおうか」


 火の爺が気合いの入った掛け声をかけるので、アタシは指示を出す。こちらは5人、周りは敵だらけだ。少ししたら援軍が来るだろうから、まずは敵の注意を地上部隊から、こちらへと向ける必要がある。


「加速して、敵のど真ん中を突っ切るよ! こちらは相手の速度の5倍は軽く出るんだ、当たりはしないんだからね!」


 そうしてアクセルを回し、一気に加速させてウヨウヨ見える羽蟻の軍隊へと突撃をする。


「了解だ、ブラックタイガーの力を見せてもらわんとな」


「今までのよりも性能が大幅に上回ると言っていたが、なぜこの名前なんじゃろうな?」


「デカくて細長いから海老にそっくりだと言うことだろ。エンブレムも海老天だしな」


 軽い笑いを浮かべながら、それぞれ突撃を仕掛ける。目の前の軍勢に恐れを見せずに戦意高く老人部隊は戦いを始めるのであった。




 風を切り、されど風圧は慣性制御装置により運転を阻害するまでには至らない。一気に加速するブラックタイガーにより、羽蟻が目前に迫ってくる。こちらの接近を気づいたのだろう、地上へと散発的に攻撃をしていた奴らが向き直る。


「銃は撃たないよ! 敵の後方まで一気に突き抜ける!」


「了解だ!」


 爺たちの声が聞こえてきて、たった5人で敵兵へと突撃する。やれやれ軍隊としてはあり得ない光景だ。外から見たらまさに神風特攻隊に思われるだろうね。


「だが、このバイクはちょっとしたものさね! 戦力差を縮める性能があるのさ」


 ニヤリと獰猛そうに口本を歪めながら、敵のど真ん中に入る。虫らしく慌てる様子は無く淡々と己が役目を務めるべく、槍を掲げて突っ込んでくるが


「ラムチャージだ。なるべく躱していくが、それでも当たりそうな奴は蹴散らすよ、プラー!」


「了解しました。ラムチャージ起動、前面にフィールドスピナーを展開します」


 音声による命令で、ブラックタイガーの前面に紫電の走る槍が生まれる。突撃専用の武器、フィールドを槍型に変形集中させたラムチャージだ。バイクで突撃するような馬鹿なことはしたくはないが、せっかくあるんだ、使ってやろうじゃないか。


 もちろん本当に突撃するようなつもりはない。敵に当たるごとに速度は遅くなるからね。


 接近してくる羽蟻を車体を傾けてぎりぎりで回避する。次の羽蟻に対しては今度はラムが掠るように横を通り抜けていく。


 掠った箇所があっさりと焼かれていくのを確認する暇もなく高速で空中を移動する。


「まるで映画の中みたいじゃないか。昔、宇宙で戦争する映画でこんなの見たね」


 薄っすらとしか覚えていないが、当時はあんな馬鹿げたバイクがあるもんかいと鼻で笑った覚えがあるのに、今や同じようなバイクに乗りながら、空中を三次元での機動、即ち上下左右全てを利用して走っていくのだ。


 身体が揺られ、敵の攻撃が掠り、フィールドの破片がパラパラと散っていくのが見える。このフィールドが消えた瞬間死ぬだろう。


 大型の上に寝そべることもできる新型バイク、フィールドの出力も今までとは違うと手渡された時に言っていた。そしてそのフィールド出力を集中的に使用することによる武装についても。


 感謝をしなければならないだろう。通常のポニーなら、もう既に大破していたかもしれない。


 無数の羽蟻の群れの中を、岩の礫の攻撃を躱して、あるいはフィールドで受け止めて、槍を手に持ち立ちはだかる奴はラムで粉砕していき、ようやく後方へと突っ切る。


「なんとまぁ、大渓谷とは日本じゃなくなったわけかい」


 目の前に広がる大渓谷を見て、その景色に呆れちまう。蟻共を生かしておけない理由ができたってもんだ。


 ぐるりと旋回すると、羽蟻のほとんどはこちらへと向かい始めていた。


「予想通りだね。蟻なだけあって一つの物事に拘っちまう」


 アタシたちはたった5人だ。人間の軍隊ならば多少の手勢を振り分けて迎撃させるだけだろうが、蟻はそうではなかったようだ。異物を全力で排除するべく全員で向かってきている。


「プラー、荷電粒子砲スタンバイだよ!」


「了解しました。クラブ展開、荷電粒子砲スタンバイ」


 復唱をするプラーに合わせて、バイクの横につけてあったまるで海老の鋏みたいな物が動き出す。鋏を開いて敵へと向けると、その鋏の間に紫電が走り、高エネルギーが溜まっていく。


「限界まで持続させながら攻撃だ。爺共、合わせなっ!」


 自身もビームライフルを構えて敵へと向けると


「やれやれ、まずは大丈夫か? ではないか。準備完了だ」

「敵のかたまった場所が良いな」

「こちらも準備できたぞ」

「儂らはどこまでも戦場でしか生きれんな。撃ち方良しだ!」


 周りにいる爺共は怪我もなく平気な様子で応答してくるのに、微かに笑みを浮かべながら叫ぶ。


「撃てっ!」


 その合図と供に膨大なエネルギービームが発射されていく。空気を高熱で焼きながら、眩い閃光は一条の線となり、盾を構えて障壁を作り出したであろう羽蟻共を切り裂き焼き尽くしていく。


 ジュワッという音と共に障壁はないように貫き、羽蟻の鉄をも上回る装甲はあっさりと切り裂かれて、その高熱は蟻の体内を一瞬で駆け巡り、焼き尽くして燃やす。


 火玉となって次々と墜落していく羽蟻を見ながら、完全に敵の意識がこちらへも向いた感じがした。


 いかに強力なビーム砲とはいえ、たったの5人である。当たるを幸いに倒していったが、全体で見るぶんには僅かなものだ。だが、注意を引ければそれで良かったのだ、問題はない。


 あとは敵を殲滅する方法だが……。


「婆、味方の支援砲撃で撃破するには、敵を集めないといけないが、ちょうどよく集められそうな場所があるじゃないか」


「既に生き残りの人間は嬢ちゃんが助けたと言っていたしな。まぁ、良いんじゃないか?」


「マニュアル通りの使い方をできんな、海老天よ」


 そう言って爺共が指し示す先は大渓谷。大地が抉れた荒れ地である。なるほど、たしかにあの渓谷内に集めれば支援砲撃も容易いはずだ。


「敵の指揮官らしき羽蟻を発見。速度が今までの敵の3倍です。数は20程度」


 プラーが警告音と共に注意を促す。羽蟻へと視線を向けて、その姿をよく見ると角付きが他の羽蟻と違う速度で向かってきていた。それに他の羽蟻が追随している形だ。


「それは好都合さね。爺たち! ドッグファイトの時間みたいだよ!」


「今度は空中レースか。忙しいことだな」


 水の爺が最初にバイクを傾けて、渓谷へと落ちるような速度で、入っていくと


「これは凄いことになりそうだな」


「気をつけろよ、突き出した岩などに当たると事故るぞ」


「物損保険は適用されるのか?」


 軽口を叩きながら他の爺たちも渓谷へと入っていく。


「敵、指揮官レベルはこちらのバイクの速度を上回っている可能性大。撤退を推奨します」


 プラーの言葉をAIらしいと鼻で笑いながら、アタシも渓谷へと入っていく。


「そういう時は腕の差で敵を叩き潰すのさね。まぁ、見てな」


 危険なるドッグファイトを渓谷内で始めるコマンドー婆ちゃんたち。


 すぐに羽蟻たちも追撃してきて、命をかけたレースが開幕するのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] エンブレムもエビ天なのかw しかしコマンドー婆ちゃん達の戦い見てるとハリウッドしてんな……
[一言] まさに星間戦争な映画ですな。 でも海老天は酷いw 大樹の大本が姉妹だとすると残念ネーミングはサクヤでなくクラフト担当の某妹のセンスなのだろうか……。
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