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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
19章 西日本に行ってみよう

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311話 おっさん少女と狼少女

 うぉ~と叫び声が各所から響き、周囲からは銃声と混乱した客たちが逃げまくる。レジスタンスは闘技場を制圧しようと銃を構えて、それを阻止せんとチンピラ軍団がテーブルを盾に迎撃している。


 その中で狼男と化した騎士たちへと瑠奈が大暴れをしていた。


 拳を握りこみ、鋭い視線で狼男と戦闘をしていた。筋肉で膨張した腕をさらに力を込めることで凝集させて狼男は銃を捨てて素早く腕を振るう。


 その手には鋭いショートソードのような爪が長く生えており、簡単に相手を切り裂くことができると想像できる。


 ヒュッと風切り音が聞こえ、その腕が振るわれるが瑠奈はすぐにテーブルから降りて体を翻して躱す。


 躱したまま回転蹴りを入れようとする瑠奈であったが、その攻撃を狼男は冷静な様子で後ろへと大きく飛び退く。


 二人の攻防の間に、瑠奈の後ろへと追加の狼男二人がやってきて囲む。


 自分が囲まれたことをちらりと見て、舌打ちする瑠奈。


「ちっ! やっぱり人間モードじゃ、戦うのは無理があるか」


 腕を引き込み息を吸い、力を込めて叫ぶ。


「やぁぁってやるぜぇぇ! 変身ウルフモード!」


 掛け声がした瞬間に瑠奈から突風が発生して、その少女の姿が変わりゆく。


 ぴょこんとシベリアンハスキーのような白い狼の耳が生えてきて、瑠奈の髪の毛が白く色が変わっていく。短パンからぴょんとモフモフなシベリアンハスキーの尻尾が飛び出してきて瑠奈はビシッと身構えるのであった。


 以上。変身終了らしい。


「え~! あれで変身終了? まじで? たんなる獣っ娘じゃん! 可愛いよ。モフモフしたいよ! ついに獣っ娘がこの世界にも現れたんですね!」


 感動の為、キャッキャッと喜び庭駆けまくる潤んだ瞳となるアホな美少女がいたりしたとか。


「むむむ、マスター。あとで狼の耳と尻尾へと変えましょうか?」


 感動したアホなマスターへとナインが少し頬を膨らませてバニー姿で嫉妬の声を出す。そろそろ褐色少女との友人付き合いをやめさせた方が良いかもしれない。


「大丈夫、大丈夫。ナインは普通にしているだけでも可愛いよ? あとで膝枕をして欲しいなぁ」


 癒しであるはずのナインまで肉食系になってもらったら大変困るので慌てる遥は恥ずかしいけどと自分の希望を言うので、ナインはニコリと花咲くような笑顔になり頷くのであった。


「なんいうイチャイチャぶり! ご主人様、私にも膝枕をしてください! あとで約束ですからね。膝枕券を作っておきましたので」


 またツヴァイに取られそうな券を作ってしまったギャンブラーサクヤの言がこれである。


 トリオでアホなやり取りをしている最中でも、戦闘は続いているのだが。


 


 囲まれている瑠奈は脚に力を込めて、にやりと凶暴そうな笑みを浮かべる。


「痛くても泣くなよっ! 瞬動!」


 その言葉と共に足から突風が巻き起こり、瑠奈の姿がかき消える。


 瑠奈の目の前にいた狼男がその姿を見て驚きの表情となる。自分たちの能力は人外であり銃弾すらもその動きを捉えることができるはずなのに、消えたように見えたからだ。


 次の瞬間、瑠奈は狼男の目の前に拳を握りこみ現れた。


「なっ! 速すぎる!」


 狼男の自分を置いていく速度での踏み込みに身構える事も出来ずに瑠奈の拳が腹へとめり込むのであった。


「ぐはっ!」


 めきょめきょと骨が砕け、内臓が打ち破られる音を聞いて、狼男は吹き飛んでいく。


 瑠奈は動揺を見せる後ろの二人へと振り返り、更に力を発動させる。


「瞬動2連!」


 ビッと床を蹴る瑠奈は、またもや狼男の目には動きは見えなかった。消えるように見えたと思ったら胴体へと今度は蹴りが飛んできて、吹き飛ばされる。すぐにその姿はまたもかき消えて最後の一体へと追撃の蹴りを入れて吹き飛ばすのであった。


 ドンガラガッシャンと狼男がテーブルを巻き込んで吹き飛ぶ。料理やお酒も全て吹き飛ばされていき瑠奈の周りに空白ができあがる。


「はっ! どんどん倒していくぜっ!」


 少しだけ疲れたような息を吐き瑠奈が他の狼男を倒しに行こうと考えたとき、目の前にズズンと大きな音をたててウルフマン二郎が飛び降りてくる。


 獣の目で瑠奈を見て、面白そうに声を笑う。


「やるじゃないか。さすが我が娘! 適応者ではないと超常の能力は使えん、今のところそれは俺とお前だけ。その力を使えば楽に生きれるぞ?」


「あ~ん? なんども言わすなよっ。俺様は親父みたいなのにはなりたくはないんでね!」


 瑠奈もウルフマン二郎を睨みながら叫ぶ。


「どうやら、映画みたいな関係ですね。悪に堕ちた親父とその娘ですか。ウルフマン卿とか呼んだ方がいいんでしょうか?」


 遥は段ボール箱をガムテープでぐるぐる巻きにしながら呟く。


「なんだよこれ、お前、昨日の子供だろっ! だせよっ、だせよっ~!」


 中身がなにかを言っているような感じもするが、無視である。流れ弾で死んでもらっても気の毒だし。


「なんで捕まったんですか? 外を歩いているだけで捕まりました?」


 段ボール箱に声をかける遥。どうしてこんなことになっているのかと。


「そ、外をうろついていたのは確かだけど、いきなり痴女っぽい女に捕まったんだよ! わけわかんね~」


 その言葉にピクリと眉を動かして思案気になる。痴女っぽい女………。そしてレジスタンスを誘い出す方法………。本当にその噂に誘い出されたかは不明だが、気になることを言う子供である。


「わかりました。まぁ、貴方には悪いところは少ししかないと思います。それにあんな目にあっても自分の住処を自白しない心の強さも感心します」


「えっ? そ、そうか? そそそれじゃぁ、今度俺の武勇伝を」


「まぁ、それだけなんですが。頑張ったで賞で拠点へと安全に戻すので少し黙っていてくださいね」


 宛先伝票を段ボール箱に張って、カキカキと宛先を書く。蜜柑愚連隊行きっと………。


「安全に移動するのは沈黙が必要なんです。なので、本当に黙っていてくださいね、私が危険になりますので」


「そ、そっか。それじゃ黙っておく」


 カツはそのまま静かになるが、アホなのだろうか? 騙されているとは露と思わないのだろうか? それともレキの美少女の姿にやられたかな? 男の子だし。


 静かになった段ボール箱を小脇に担いで、さてどうしようかと考える。


 瑠奈とウルフマン二郎はお互いに睨みあっており牽制を繰り返していた。2メートル近い大男というか狼男対獣っ娘。ビジュアル面では瑠奈が大勝利確実ではあるが。


「いくぜっ! 瞬動!」


 足元に突風を巻き起こし再び超能力だろう力を発動させて高速で移動する瑠奈。


 それを見て、余裕の態度でウルフマン二郎は両腕を自分の目の前で防ぐように掲げる。


「狼のカーテン!」


 毛を逆立たせて、超常の力を発動させるウルフマン二郎。そこへ瑠奈が瞬足で入り込み拳を力強く撃ち込む。


 ズンと肉にあてた音ではない凶悪な音がするが、ウルフマン二郎はその攻撃により腕が吹き飛ばされることも体幹が揺らぐこともなかった。というかあれは筋肉もりもりな超人のパクリ技ではないだろうか? プロレスラーだけに?


「無駄だっ! 娘の攻撃でやられる俺じゃぁねぇ!」


 得意げに叫びながら、そのまま瑠奈の拳を強靭な手で掴み取り、上空へと放り投げる。


「うわっ!」


 上空で身動きが取れずにうろたえる瑠奈。ジタバタと手足を動かすが空中なので動けない。


「もらった! ウルフマンバスター!」


 ドンッと床を大きく蹴り、上空へとジャンプするウルトラマン二郎。そのままどこかで見た事のあるなんとかバスターへと移行する。瑠奈の頭を自分の首で固定をして脚を抱え込む。


「テーブルフリスビー!」


 そのまま落下していくウルフマン二郎たちへとテーブルの天板がフリスビーのように飛んできて、ウルフマン二郎へとぶちあたる。


「ぐげっ!」


 思わずその攻撃で吹き飛ばされるウルフマン二郎。瑠奈を放り投げて、慌てて身構える。


「誰だっ? 今の攻撃はどこのどいつだ?」


 じろりと天板が投げられた場所へと視線を向けるが何もいない。ちょこんと段ボール箱が置いてあるだけであった。


「ちっ! どこに隠れやがった?」


 きょろきょろと周りを探す間に段ボール箱はそそくさと逃げていく。まったく気づかない間抜けぶりであるが、仕方ないであろう。スキルがないと見つけられないのだからして。


「く、くそっ! この筋肉親父めっ!」


 その間によろよろと立ちあがる獣っ娘。頭をブンブンとふってめまいを振り払う。


「もう回復しやがったか。狼の再生能力はこういう時に不便だな………。一気にダメージを与えないと倒せやしねぇ」


 瑠奈を見ながら舌打ちする。狼男たちは強い再生能力を持っている。一撃で倒せなければ飽和攻撃で回復する隙を与えないようにしないといけないだろう。


 それ即ち千日手となるのだ。先程瑠奈が倒したとおぼしき狼男たちも回復が終わり立ち上がっていた。


 瑠奈もそれは理解している。だが、一撃で倒すなどほとんど不可能なので、追撃できないようにするだけだ。


「1対1ならなんとかなるのに………。畜生」


 獣っ娘は周りを見ながら悔しそうに呟く。1対1ならば追撃していき、頭を砕けば倒せるのだが、ここまで敵が多ければ無理だからだ。


 だが、相手も戸惑いの様子で入り口付近を見ていた。


「なんだ? なんでかかってこないんだ?」


 じりじりと下がりながら、身構える瑠奈であるが、周囲の様子がおかしい。レジスタンスの攻撃を気にしているのだろうか?


 だが、レジスタンスの銃弾では騎士たちを倒すことは不可能だと理解しているはずなのだ。その疑問は他の狼男の呟きで判明した。


「なんで、援軍がこないんだ? もういい加減来ても良いだろ? やつらなにをしてやがるんだ? さぼっているのか?」


 100人近くいる騎士の内、ここにいるのはほんの5、6名。だが、これだけ戦えばすでに駐屯している他の騎士たちが来ても良いはずなのに来る気配がない。


「いや、気配はしているんだが………。だが消えていく?」


 むぅと顔をしかめるウルフマン二郎。なにかおかしい事が起きているとようやく気づいたのだ。援軍の気配が消えていく?


 闘技場にいる人々が援軍の無さに疑問を覚えている中で、外の気配はどんどんと消えていく。


 一体何が起こっているのだろうか?




 外では大勢の狼男たちが援軍に来ようとしていた。チンピラ軍団は怖気づいてすでに側にはいない。


「いけいけっ! 怯むなっ、相手はたった一人だぞ!」


 怒鳴るように叫ぶ騎士たちの援軍が入ろうとした闘技場の狭い入り口。そこに一人の少女が立っていた。


アサルトライフルを構えて冷酷な瞳で目の前の騎士たちを眺めていた。先程から疲れも見せずに佇んでおり、その少女一人が入り口を塞いでいるのだ。


「ちくしょっー!」

 

 自棄になった狼男が数人走り出し入り口へと向かおうとする。もちろん、手にはアサルトライフルを持っており、銃弾を吐き出していた。


 だが、その銃弾は僅かに身体を柳のように揺らす動きのみで回避されていく。躱した少女はそのまま狼男の人外の速度を見極めてアサルトライフルの引き金をひく。


 撃ちだされた銃弾をその驚異的な動体視力にて回避しようとする狼男たちだが、地を蹴り体を投げ出すようにする先には既に他の銃弾が飛んできており、その銃弾は正確に目を撃ち抜いていくのであった。


「ざくっ」

「ぐふっ」

「どむっ」


 それぞれ断末魔の叫び声をあげて倒れていく狼男たち。

 

 目から貫かれた銃弾は脳を破壊し再生能力を持つ狼男たちを次々と倒していく。


 狼男たちはそれを見て恐怖と驚きで後退る。


「な、なんだ、なんて銃の腕だよ………」

「ば、化け物だ………」

「人間なのかよ」


 その恐怖で怯む姿を見て、銃を構えていた少女は軽くふぅっと息を吐く。


「どうやら雑魚だけみたいですね。ニンニン」


 軽く口元を笑みへと変えて朧は敵へと油断なく視線を向ける。


「レジスタンスのリーダーが銃の配給を受け取りに来た時に、子供が闘技場で使われると聞いて考えなしに飛び込んでいったのはびっくりしましたが、それがこのエリアの概念の影響なのですね、ニンニン」


 感情の揺れ幅が酷いと、考えなしに行動をしてしまうのだろうと見てとれる。レジスタンスたちが全員中に入っていったので仕方なく入り口を守ることに決めた朧であった。


 銃術レベル4の前には一般人も狼男たちも揃って雑魚である。遠くその腕は朧には及ばない。基本ステータスで大幅に上回り、技術でも上回るのであれば無双できて当然だからして。


 おっさん少女がその立場を聞いたら歯軋りして、私もその役をやりたかったと叫ぶかもしれないカッコよさであった。おっさんであれば案山子の役でいいだろう。


 だが、怯む狼男たちの後ろから飄々とした声音で語り掛けてくるモノがきた。


「凄いわね、そのアサルトライフルで狼男を倒すなんて本来は無理なはずなのよ?」


「ふぅ、どうやら新手のようですね」


 嘆息する朧の前に、この間出会った魔人クレムリオンが立っていた。軽くパーマの入った長い髪を揺らめかせて、痴女のような際どい真っ赤なドレス、その手にはこの間の司令が会ったときには持っていなかった鞭を持っている。


「あらら、せっかくレジスタンス撃滅の為に動いてあげたのに、反対に戦力を減らされるとは思わなかったわ。貴女はどこの誰かしら? その馬鹿げた銃の腕前を見るにレジスタンスじゃないわよね?」


 その体から凶悪な黒いオーラを漂わせながら、強者の雰囲気を出して妖しく笑う。その雰囲気に威圧されて狼男たちは尻尾を丸めて更に後ずさる。本当に狼なのだろうかと疑問に思う光景だ。なにしろたった二人の女性に慄いているのだからして。


「私はレジスタンスの一員です。ここは通さないように命令を受けたので守っています。客を探すのならば、他のところに行った方がよいですよ? ニンニン」


 まだ余裕があるのでニンニン言う朧である。


「そう、それじゃ貴女を捕まえてどこから来たのか本当のことを聞かせてもらうわね。この魔人クレムリオンの力を思い知りなさい?」


 クレムリオンはそのまま鞭を持った腕を振り上げる。ピシリと黒い鞭が空気を斬り裂き、朧へとしなりながら向かう。


「まだまだ見える速度です」


 朧はその鞭の軌道を予測して、アサルトライフルから銃弾を放つ。


 軌道上の鞭に当たり、その動きを変化させようとしたのだが


「むっ! 霧に!」


 鞭へと銃弾が当たると思われた瞬間であった。なんと鞭が霧へと変化して銃弾を透過させてしまう。その動きを見て、目を見張る朧はすぐに鞭の軌道上から逃れようとするが。


「無駄よっ! ミストウィップの力をみなさ~い?」


 霧へと変化させた鞭が実体化するが、その軌道は変わり、朧の避けた先へと向かってくる。


 慌ててアサルトライフルを盾にしてその攻撃を防ごうとする朧。だが、アサルトライフルは斬られたようにあっさりと分割されて朧へとその不可思議なる鞭は命中する。


「ぐっ!」


 肩から斬られて吹き飛ぶ朧。ゴロゴロと吹き飛びながらも体勢を立て直して、シュタンと床を蹴りハンドガンを抜き放ちクレムリオンを狙い撃つ。


 ドンドンと音が響き、銃弾がクレムリオンへと向かうが、鞭を引き戻して銃弾の軌道に当たるようにする。


 キンキンと銃弾が弾き返されて、そのままクレムリオンは楽しそうな嗤いを見せる。


「霧の鞭にて斬り刻まれなさい!」


 クレムリオンが脚を踏み込み、高速で腕を振るうと無数のウィップの残像を残しながら朧を斬り裂くのであった。

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