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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
19章 西日本に行ってみよう

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309話 悪徳ドームに潜入するおっさん少女

 暗闇が広がる地下道。その中を足元を注意しながら歩き続けるレジスタンスの精鋭。2年の間をこの都市を解放するために戦い続けてきた人達である。その足取りはしっかりとしており、戦う戦士の様子を見せていた。


 その中で大樹所属凄腕エージェントなくノ一朧も注意しながらついていく。


 その後ろで、ブッブーとエンジン音の擬音を口にする大樹所属マスコットキャラの可愛らしい少女の声音で段ボール箱がついていく。


「ブッブー、車が通りますよ~」


 そこらへんで遊んでいる子供のように楽し気な声音で言うので、そのたびにレジスタンスの戦士たちは後ろを振り向いてなにかいないかと確認するが


「な、なぁ、さっきから少女の声がするんだけど、なにもいないよな?」


「あ、あぁ………、だが、誰もいないよな………死んだ子供の幽霊か?」


「脅かすな! たぶん風の抜ける音がそんな感じに聞こえだけだろうよ」


 お互いに誰もいない後ろを不気味に見ながら少しばかり恐怖風に吹かれる。


 後ろには暗闇と片隅に段ボール箱が置いてあるだけで不自然なことなど何もないのだから。


 ゲーム仕様の為、見つからなければ隠蔽スキルで目の前に隠れていても気づかれないおっさん少女は先程からレジスタンスをからかっていたりした。何気についていけないことを根に持っているのかもしれない。


 そんな地下道にはたまにゾンビがふらふらと歩いてくる。こちらを見つけて死者の身体を引きずりながら暗闇の中を不気味な表情で歩み寄ってくる。


「ちっ、またゾンビかよ。最近は地下道に現れるゾンビが多くないか?」


 忌々しそうにゾンビを見ながらレジスタンスがショットガンを放つ。地下道に大きな銃声が轟き、撃ちだされた散弾はあっさりとゾンビを粉々にする。


「あまり地下道で銃は使いたくないんだがな………。それで食われたりしたらたまったものじゃないからな」


 轟く轟音は地下道を響き渡り遠くまで反響をしていくので、その音で敵に気づかれないかと考えているのだ。だが、ゾンビ相手にナイフでの戦闘は行わないらしい。鉄パイプとかを使い音をたてないようにしようとは考えていないのだろう。


 そのことが気になり朧がちらりとレジスタンスリーダーへと問うような視線を向けると簡単に伝えてくる。


「あぁ、出口に近くなったら銃は使わんよ。まだ、出口から離れているし、他にも物資を漁る人間はいるからな。銃声がしてもそんなに不自然じゃない」


 なるほどねと頷き納得する。そうして、一行は目的の出口へと行くのであった。



 隠された出口を出ると陽射しが目に入り眩しい。今まで暗闇にいたせいだろう、目を細めて周りをみると元名古屋ドームが見えた。すでに天井は半壊しており、突き出したヘリの残骸が見える。


 ドームも汚れており、その入り口には銃を構えたチンピラたちが不真面目な様子で立っていた。


 モヒカン頭のとげ付き肩パット、ビリビリのダメージ受けすぎなGジャンにGパン、まさしく世紀末のチンピラらしかったが………。


「なぁ、さみーよ。もうこの姿やめないか? 夏になるまではやめようぜ。このモヒカンのせいで普通の人は逃げていくしよ」


「俺もそう思うけど、この姿をしていたら店で割引してもらえるじゃねぇか。はっくしゅん!」


 ブッブーと段ボールでできた車がトテテテとドームまで行っていたが、その言葉に呆れてしまう。


 まじですか。正月に和服を着たら割引セールと一緒じゃん。私とアイデアかぶっているじゃんと驚嘆してしまう。アホなおっさん少女と同じアイデアを使う敵がいるとは考えてもいなかった。


「ぷぷぷ。ご主人様、誰かとアイデアが一緒ですね。今度若木シティでも同じことをしませんか?」


 サクヤがウィンドウ越しにニヤニヤと面白がりながら言うが、平然とした表情で答える。


「アイデアは認めるよ。あれで崩壊した世界というのがよくわかるしね」


 うんうんと満足そうに頷くので、このアイデアは良いねと満足げにしていた遥であった。あれならば崩壊した世界だとよくわかるだろうと。


「むむむ、さすがご主人様。わびさびがわかっているんですね」


 どことなく呆れた顔になる銀髪メイド。ちょっと予想外の反応だった模様。


 そんなアホな言い合いをしながら、ドームへと入っていくレジスタンスについていく。


「銃はどうやって手に入れるんですか?」


 疑問を問う朧へとリーダーは顎をくいっと動かして奥へと指し示す。


 ドームはいくつもの仕切りが作られており、小さな町となっていた。こういうの見たことあるよ。核戦争で崩壊した世界で誘拐された子供を助けるゲームでこんな町があったよ。たしか市長がロボットだったはず。


「もう面倒なので、段ボールは仕舞っておきましょう」


 ひょいと立ち上がり段ボールを仕舞い、周りを見渡す遥。


 天井が崩れている中でベニヤ板で仕切りが作られており、看板に書きなぐったような汚い字が書かれている。


 カジノやレストラン、闘技場に武器工廠と書かれていた。ベニヤ板にはペンキで卑猥な表現の文字が書かれていたり、まさに崩壊した世界の街だ。


「求めていた町はここにあったんだ!」


 おめめをキラキラと輝かせて周りを見渡して感動の声をあげるおっさん少女である。こういうのを求めていたんだよ、本当に凄いよと天空に浮かぶ城を見つけたような感じだ。


「最初はどこに行きましょうか? やっぱりカジノ?」


 きょろきょろと見渡して、最初はどこを見ようかなぁと迷っちゃう。うぅ~ん迷うね、迷っちゃうねと上京したおのぼりさんのように落ち着かない様子で歩く。


 そしてハタと気づく。


「あれ? 朧たちは?」


 いつの間にかはぐれた模様。遊園地に来た子供が親とはぐれるが如く、あっという間にはぐれた遥である。どうもこの仕切りにも空間結界が張られており合間合間に感知できない場所があり朧たちがどこにいるかわからない。


「ん~。なんでこんなに空間結界が張られているんでしょうか? 非効率だと思うですが………」


 コテンと可愛く小首を傾げて考える遥。


「マスター。恐らくは誰にも気づかれないようにするためでは? 誰かがいなくなってもわからないように」


 いつも通り、花咲くような笑顔でナインが自分の考えを披露する。なるほど、たしかにそういうのはあるかもしれない。細道で誰かがいなくなっても薄汚れて暗いこのドームシティでは誰も気づかないわけだ。


「それじゃ、ここらへんには空間結界を張るミュータントが大勢いるのかなぁ? それとも結界が得意なミュータントが1匹いるとかかな? でも情報が足りないな」


 う~んと考え込むが、考えてもわからないだろうと気を取り直してナインに言う。


「まぁ、迷子になったのは仕方ないよね。あとで合流すればいいよね、それまではこの街をうろつこう。まずはカジノで」


 ご機嫌な表情でてってこと歩きだす。その先にはカジノと書いてあった。



 どんつくどんつくと大きなBGMがカジノ内を響き渡り、モヒカン族や普通の人間、紐みたいな水着を着た女性がポールにしがみついて踊っていたりする中で、でかいサイコロを使いハイアンドローをしていたり、ルーレットやトランプ、花札などをテーブルの上で遊んでいる人々がいた。


 どうも電気はあんまり使えないのだろう。どこも少しばかり陰がかかり薄暗い。その中でコインを積んでカジノを遊んでいる人々。うめき声をあげて勝負の結果に一喜一憂している。大負けしたのだろう男が黒服の人間に連れられていく姿も見えた。地下帝国行きの人だろうか。


 おぉ~、カジノって初めてだよとワクワク顔でスキップをしながら入る子供にしか見えない遥。


「凄い凄い、こんな世界があるなんて感動ですね。コインの交換所はどこでしょうか?」


 ちらりと入り口を見ると、コイン交換所と書いてあり、パチンコの景品交換所みたいに仕切りで覆われているカウンターがあるので、そこにてこてこと歩いていく。


 カウンターにはにこやかな笑顔でバニー姿の女性が座っておりこちらに気づいて声をかけてくる。


「あら、いらっしゃい。でも、子供はこんなところに来たらだめよ? あっという間に騎士様たちにさらわれちゃうから」


 こそこそと呟くように言う心配顔なバニーさんである。胸も大きくてなによりバニーって本当にいるんだと遥はガン見をしていたが。どうやらバニーさん、そこそこ良い人らしい。


「マスター。バニーって珍しいですね。さすがは崩壊した世界ですか」


 ウィンドウ越しにバニーを見たナインが声をかけてくるので、そうだねと返事をしようとナインへと視線を向けた遥は息を呑む。


 いつの間にかナインはバニーさんになっていた。ウサギの耳をふよふよと、胸はえぐい切りこみが入っており網タイツがエロい。平坦な胸が少し寂しい感じ。


「尻尾もあるんですよ。ほら」


 後ろを振り向いて、ウサギの尻尾をふりふりとお尻を動かして見せてくる可愛らしい金髪ツインテール。


「はい。世界一可愛いです。バニー似合うよ、ナイン」


 おぉ~と頬を赤らめてナインを見ると、少し恥ずかしいのだろう、ナインも顔を赤らめて照れて見せるので、なんという愛らしいウサギだと目の前の受付バニーの姿はどうでもよくなる遥であった。

 

 策士ナイン恐るべきであった。


「お嬢ちゃんでいいのかな? 聞いてる?」


 フードの陰に見える顔から少女と判断した受付バニーが心配気に聞いてくるが、すぐさま偽装を使い、汚れた顔へと変化をして返事をする。


「大丈夫です。私はここに一攫千金しにきたんです。なので換金お願いします。どうやってコインと変えるんですか?」


「はぁ~。そういう子供は多いの………でも、お嬢ちゃんの思う結果にはならないわよ?」


 そう言う受付バニーは諦め顔だ。今までもこうした人間が来て絶対にカジノから帰らないとわかっているからだ。その考え通りに目の前の少女がコクリと頷くので嘆息しながら説明を開始する。


「ここはクレジットか、物々交換ね、そうねお酒なんか高いレートで交換できるわ」


「おぉ、それならば偶然私はビール缶を持っているんです。これならどうでしょうか?」


 愛らしい顔をパアッと明るく見せて、カウンターに6本入りビールをドンと置く。


 そのビールを見て、キョトンとする受付バニー。この娘、いつの間にビール缶なんて持っていたのかしらと。


 手ぶらだったように見えたが、気のせいであったのだろうと思いなおしビール缶を見る。飲み口は完全に塞がれており、中身が偽物なのではなさそうだ。というかかなり綺麗な良品だ。もう最近ではこんなに綺麗な良品を見たことが無いし、しかも恵比寿様がニコリと笑っている高級品の本物のビールのようだった。


「そうね、こんなに良い品ならこれぐらいかしら。大事に使うのよ? 怪しい人にはついていかないのよ? 暗がりにいかないのよ? お酒を勧められても飲んじゃ駄目よ? 麻薬はないから大丈夫だけど、お菓子をあげると言われてもついていっちゃだめよ?」


 なんというか、この人はオカン気質だねと遥は思いながらもうんうんと頷いてコインを受け取る。


 白いコインが一番高いらしく、その次は黄色であった。黄色のコインが3枚。レート的には3万円ぐらいだろうか。


「ご心配には及びません。謎の放浪者はカジノは強いんです」


 受付バニーへとニコリと可愛らしい笑顔を見せて、おててにコインを握ってカジノの中へと入っていくのであった。カジノはゲームでは得意である。なにせ勝つまでロードをすればいいのだからというおっさんは何故か自信満々であったりした。




 しばらくのちにルーレットの盤を見ながら椅子に座り、遥はちらちらとポールにしがみついて踊るエロい姿の女性を見ながら言う。


「ねぇ、あれのなにが良いのかな? エロい感じはするけど、そこまでじゃないよね? よく映画とかで見るけど映画でも実際に見てもあんまりエロくはないよね?」


 たしかに着ている服は紐みたいでエロいけど、ただそれだけだよねと冷静に見る遥。


「そうですねマスター。それよりも一緒にお風呂とかの方が嬉しいですよね」


 ナインがニコニコと嬉しそうな笑顔で同意する。どうやら遥はそこまで魅了されていないみたいだと考えてご機嫌だ。あとでたくさん甘えようとも考えていたり。


 そんなおっさん少女の周りにはざわざわと話すうるさい人々が集まっていた。こちらを見ながら驚きの表情を浮かべているが気にしない。


「あ、次は24に全額ベットします」


 遥の前には山と白いコインが積まれていた。それはもう山となりおっさん少女の顔が埋まるほどの高さになっていた。むふふと得意げに新たにベットだ。


 ディーラーは口元を引きつらせながら、ボールをルーレットに投げ込む。もう自分で4人目のディーラーだ。あとからボールを投げる方式であり自分の思い通りの場所に入れることがほとんどできる技術を持つ者たちであったのに。


 コロコロと転がり、ボールは24にコロンと入っていってしまった。


 ニコリとその結果に満足した笑顔を見せて遥は更にベットする。


「次は6番に全額で」


 それを見て周りの人間たちも動く。


「おぉ~! なんという強運! 信じられない。これで何連続当たっているんだ?」


「わ、私も彼女の置いた場所にベットだ!」


「私もだ!」


 次々と遥と同じ場所に置いていくお客たち。


 それを見て、自分ももう駄目だと顔を蒼褪めるディーラー。そのディーラーの肩をポンと叩く人間がいた。


 ディーラーが恐る恐る振り向くと強面のスーツ姿の男性が立っていた。このカジノを経営する支配人である。


「もう今日はルーレットは終了だ。お前はもう下がれ」


 そう言って遥へと鋭い威圧感のある殺意の籠った視線を向ける。


「お客様。今日はもう終了したらどうでしょうか? もう充分儲けたと思いますが?」


 遥の前の山となるコインを見て、多少震える声で聞いてくるので、遥は素直に頷きぴょこんと椅子を降りる。


「そうですね、これだけ勝てば今日は良いでしょう。もう白コインも足りないみたいですし」


 ふふっと悪戯そうに笑いながら店員に景品交換所に行きますと伝える。


 そうしててこてこと歩いていく少女の姿を呆然と支配人は見つめるのであった。



「メタルなキングの盾は? 緑のガムの鞭とか、祈りの指輪とかは? 何もないじゃないですか? クレジット? そんなものはいらないです!」


 景品交換所でそのラインナップを見て、ブーブーと唇を尖らせて文句を言う遥。風圧を発生させてルーレットの球を操って手に入れたのは、景品所にレアなアイテムがあるからだと思ったのだからだ。ゲームと混同しているおっさん少女がそこにいた。


 だが、置いてあるのは食料品や車両、粗雑な銃器だけで珍しいものがまったくない。これは期待外れだと溜息を吐く。

 

 期待外れもなにも、この少女は何を期待していたのかと店員は困り顔である。


「でしたら、VIPカードはどうでしょうか? これは選ばれた貴族のみが住める悪徳ビルへと入れる許可証です。そこであれば様々な食べ物や安全が買えますよ?」


 黒いカード、景品交換所でガラスの箱に入っているカードを見せながら言う店員。最高級の景品であり普通は交換できないのでたんなる飾りと化していたカードである。なにしろ1兆円と書いてある。値段設定をした者も酷いが、そこまでおっさん少女が勝つのを放置していたカジノ側にも問題はあるだろう。なぜ天井無しのルーレットにしていたのだろうか。


 ほむほむとそのVIPカードを見て、なるほど、これなら良いかなと考える。


「良いでしょう。それならば、そのカードをくださいな。あとはそうですね………バギーを貰いましょう」


 ちょうど解析をするのにちょうどいいしと思う遥。ナインが嬉しそうな表情でコクコクと頷いているのでプレゼントにしなくちゃねと。


「はい、それではバギーの鍵となります。ガソリンの補給はドームにあるスタンドのみでしかできないのでご注意ください」


 ほっと安心する店員が車両の受け渡しをしてくる。それを見ている遥の横を通りすがる人の話し声が耳に入る。


「なぁ、そろそろ闘技場が始まるぞ。今日は子供らしい」


「うへぇ、そりゃ気の毒に………」


 なんだかイベントっぽい会話を聞いた遥。


「なんだか危ない匂いがしますね、これは見に行かないとですね」


 子供という響きが気になるので、バギーを受け取ったおっさん少女は闘技場に向かうのであった。

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[気になる点] >これは選ばれた貴族のみが住める悪徳ビルへと入れる許可証です。 選ばれた貴族のみが住めるのに、悪徳ビルって名前が酷い。
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