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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
18章 国を建設してみよう

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283話 おっさんは新たな敵と今後の戦いに悩む

 レベル8となったマイベース。そしてレベル9へと上がった建設スキルにより、更に広大にそして近未来的な建物へと改修された指令センターの司令席に腕を組んで司令官が机越しに佇む三人を見ていた。本日はおっさんへと戻っている遥である。


 偉そうに勲章をいくつもつけた軍服を着込んで忍者部隊の話を聞き終わり、椅子へと深く沈み込むようにもたれて口を開く。


「なぁ、このプレイ必要? 勲章をつけた制服って意外と重いんだよね。肩が凝っちゃうんだけど? 軍人プレイが本当に必要?」


 シノブたちの帰還時にご褒美はなにが良いかと尋ねたら、このような結果となった。勲章はすべて意味のない勲章である。名付けるなら司令官プレイ頑張ったで賞とかになるのは確実だった。そして意外と重い。


「必要でござる司令。かっこいいこの報告の仕方をいつもそれがしらは夢見てきたのでござる」


「私たちは司令の看病も……欲しいです……」


「うぅ、痛いです……」


 コマべロスと戦って大怪我を負った朧と霞が松葉杖をついて、包帯まきまきで痛そうな声音で報告してくる。


「あぁっ! おねーちゃん、動いては駄目です、傷は深いでつよ」


 ちょろちょろとドライたちがナース服を着て、朧たちの周りを手当するように包帯をどんどん巻いている。このまま放置すればミイラ女になるだろう。なにかな、この茶番は?


 もぉ、ドライたちは可愛らしいなぁと一人だけこちらにきたので、幼女の頭を撫でくりまわす遥。崩壊前なら事案確定、通報一直線、牢屋へレッツゴーなのは間違いない。


 撫でられているドライを見て、シノブが密かに親指をたてているので、シノブの眷属なのだろう。


 はぁ、芸が細かいなぁと疲れたため息を吐いて気を取り直して尋ねる。


「はいはい、桃缶の桃をあげるから。ほら、あ〜ん」


 ナインが横から桃を置いていったので、フォークをさしてあ〜んとその場で食べさせる鬼畜なおっさん司令官である。


 正直治癒術でも、メディカルポットでも治るので比較的どうでも良い。高性能な治癒方法があるので、看病の時間は必要ないのである。


「仕方ないなぁ、司令は! あ〜ん」


 快活に返事をして、突き出された桃を食べる霞。それを見て朧もドサクサに紛れてシノブも食べる。まぁ、シノブを仲間外れにするのも可哀想だ。


 そうしてしばらくは桃を食べさせたあとに、話を戻して尋ねる遥。最初に脱線したのはおっさんだったような気もするが。


「では中継地点のボスを倒したのみで、ネズミは群馬に入った時点で滅びたというわけだな?」


「はい。恐らくはコマべロスはこのような追跡してきた敵を防ぐため用意されていたのでしょう。ネズミはオートで主の元へと移動するのみであったようです」


 シノブの推測を受けて、チッと舌打ちをして、顎に手をあてて真剣に考える遥。


「群馬が移動中のラインに入っていたということは、まだ群馬がダークミュータントに支配されていたとき……。だいぶ前の話だな……」


「そうですね、マスター。とすると、大天狗に使われていたルセルカはだいぶ前に設置された魔人。使役していたボスは今はもっと強くなっている可能性がありますよ」


 コトンと目の前にカフェオレを置いて、ナインがにこやかな微笑みで話に加わる。


 トントンと机を指で叩いて、苦々しく思う遥。ルセルカは簡単に戦闘が終わったように見えるが、それはレキが相手であったからだ。アインたちでは苦戦は確実であったろう。


 あの強さで半年以上前の話? 下手をしたら一年前にも遡るかもしれないとなると……。


「今はかなりの強さとなっている……か」


 ラスボスかよと、苛立たしい思いとなる。裏技的にさっさと野良ボスなんて退治したかったのに、ストーリーのスキップは許されなかった模様。


「東日本の様子から見るに、既に敵は西日本へと移動していると思います、司令」


 コトンと緑茶を遥の目の前に置いて四季が話に加わる。


「たしか東日本はもう碌な力をもつ敵はいないんだよね? 佐渡が僅かに強い反応を示しているんだっけ?」


「そうですね。敵の目的が強くなることだとすると西日本へと向かった理由も推測できます」


 コトンと紅茶を遥の目の前に置いてハカリが話に加わる。


「……その理由とは?」


 ちらりと後ろへと視線を向けるとドライたちがマラソンの給水所のような物を作り、どんどんツヴァイたちに飲み物を配っていた。あの飲み物はどこにいくのであろうか? もう私の机にはのせたくないよ?


 コトンとオレンジジュースを置いてアインが話に加わる。


「飲み物を置けば、このエチュードに加われるのか?」


 話がわからないのに加わりに来たアインであった。


「ちゅーし! もう飲み物を置くのは中止! ドライ! 悪ふざけはやめなさい!」


 遥が怒ると、キャッキャッと楽しそうに笑いながら、幼女たちは散らばっていき、他の待機していたツヴァイたちが頬を膨らませるがスルー。スルー一手である。コントのおかげで話が進まなさすぎる。


「西日本には凶悪な概念を持つエリアが東日本と違い多いです。恐らくは概念を使い自分の力を強くするつもりでしょう、ご主人様」


 ヒョイと遥の目の前に置かれたオレンジジュースを取り上げてサクヤが真面目な声音で正答をする。


「あ〜、京都とかやばいよね? あそこはやばそうだと考えなくともわかるよ」


 うぬぬぬと考えるが、悟ったように諦めて気を取り直す。


「仕方ない。怪しい敵にぶつかったら、その時に考えよう。四季、豪族たちと共に残りの東日本を制圧せよ。期間は来年の春までだ」


 おっさん流奥義先送りできる内容は先送りしようであった。さすがはおっさん、危機において優れた判断能力を持つものである。あとで頭をかかえて、あの時にやっておけばと後悔する可能性が高い奥義であった。


「ハッ! 了解しました。戦略室にて作戦を考案させます」


「うむ、戦略室の力を見せてもらおう。そして四季君、戦略室って、いつできたの?」


 威厳というものを持たないおっさんであった。だって聞いていないのだから仕方ない。聞くはいっときの恥、聞かぬは一生の恥というでしょう?と空気を読まずに尋ねるおっさんである。


「一昨日のゲーム大会で決まりました! ちなみにゲーム内容は無人島でのバトルロワイヤルでした!」


「ヘーソウナンダー、ワカッタアリガトウ」


 ツヴァイたちのあまりの適当さに棒読みで返答をするおっさんであった。適当さではおっさんの肩に並ぶかもしれない。


「まぁ、いいや。それじゃ東日本の制圧は任せたよ。んで、次は偽本部へのご招待をする件だけど、準備は万端かな?」


「問題ありません。しばらくの猶予がありましたので、上手くドライたちによる生活感が出てきましたので、来訪者は疑問を持たないでしょう」


 ハカリがテキパキとこちらの問いに返答をしてくる。なるほど、生活感かぁと納得する。それだけは簡単には作れないかもしれない。でもドライたちかぁ、汚くなっていないよね?と不安を覚えるが。


「よろしい。それで草案はどこかな? 私は貰ったっけ?」


 おっさんは忙しいので、頭に記憶がないのですとアピールする。たとえ暇でも記憶は残っていないだろうというツッコミはなしで。


「データ化してあるので、テキストファイルに入っていますよ?」


 サクヤがのんびりと椅子に座りながら、漫画を読んでオレンジジュースをクピクピと飲みながら教えてくれる。


「あぁ、そうなんだ。この1563ページとか書いてあるやつ?」


「そうですね、ちょっと薄い草案ですが、そこはあとから付け足すので、とりあえず司令が承認して頂ければ、それが本案となります」


 うんうんと頷いて、承認と押下する。電子証明でも自分だとわかるように特殊な承認を行っている。テキスト多すぎでしょと読まないで承認するおっさんであった。常に電子ファイルを使う際に同意するボタンをよく読まずに押してしまうので仕方ない。


 こんな分厚い草案は忙しくて読めないのだ。忙しいったら忙しいのだからして。


「それとこれからの救助者は関東全域に住まわせるようにしよう。そろそろ人々もバラけるのが良いと思うし。それに合わせて防衛隊の基地施設も敵への防衛も合わせて設置するように」


 人口がかなり増えたので、もういい加減、関東全域復興を目指しても良いだろうと考えたのだ。


「施設建設を準備します、司令」


 ハカリの頷きで全ての指示がおわったので、次の問題へと思考を移す。


「さて、では本部へと豪族たちを迎え入れることにしようか。サクヤは準備が良い?」


 念のためにサクヤへと声をかけておく。念のためにというか不安しかないので。


「大丈夫です、ご主人様。準備万端すぎて、自分が怖いですね」


 と、人形を使って敵を倒す漫画を見ながら返事をしてくる。なゆゆたん、ゼンマイの舞! とか手をたまに掲げて小声で叫んでいるので不安しかない。


 話し合い中に那由多人形がゼンマイを出して踊り始めたらデコピンじゃ終わらないよとため息を吐く。


「では、本部へくる人選はあちらに任せよう。あ、一応昼行灯は却下ね」


 あの男が来ると大変面倒くさい。きっと隠れて行動とかして、全国放送がされている今しか糾弾の時はない! とか、主人公っぽい活動をしそうであるからして。


「了解致しました。あちらの人選に検閲を入れておきます」


 ハカリがピシッと敬礼してくるが、検閲ってなにか嫌な語句だよねと苦々しく思う。なので、一応声かけをしておく遥。


「ハカリ、検閲ではなくもっとオブラートに包んだ言い方でよろしく」


 ほむと遥の言葉を真に受けて少し考え込んだハカリであったがピコンとウサギリボンを垂直に立たせて、再度敬礼をする。


「了解致しました。人選は厳正なる抽選の結果、昼行灯がいた場合は選考から漏れてしまったことにします」


 訪問してくる相手に対してそれはどうなんだろうと首を捻る。なんだかオーディションとかライブのチケットの抽選に漏れた人間に聞こえるが。しかもイカサマ確定の抽選であるし。


 まぁ、こんな抽選はいつもイカサマだよね、私は崩壊前に宝くじで高額金を当選したこともないしと、面倒になったのでそれで良いやと、相手が確実に怒る言い回しを承認するのであった。酷すぎるおっさんである。


「では来週辺りに訪問といきますか。これで今日の会議は終了だ」


 ハッ、とツヴァイたちが一斉に敬礼をして話し合いは終了したのであった。





 ふぃ〜と疲れた声をあげて、遥は秋の空を見ながら寛いでいた。最近忙しいなぁ、週に一度は働かないとだめだしと考えながら。


 世の社会人が聞いたら怒り出すことは間違いない思考であるが、崩壊後はのんべんだらりと暮らすことを決意しているので仕方ない。本当に仕方ないかは不明であるが。


 草木も枯れて、枯れ葉が舞い散る中でも、見学に来た牧場は元気よく人々が働いていた。


 北海道にて研修が終わった早苗たちがしばらく前から若木シティの牧場の支配人となったのだ。


 牛や羊、山羊から鶏とかなりの数が放牧されている。牧羊犬が周りを走り、人々が牧草をサイロに刈り入れていた。昔ながらのやり方に戻ったねと感心しながら眺める。


「まぁ、それでも若木シティの全員に行き渡るほどはないんだけどね」


 頑張って働いている早苗たちには悪いが、まだまだ牧畜は足りない。北海道からの供給があっても全然足りない。制圧が終わった北海道であるが、大部分の牧畜は世話がされずに放置されていたために死んでいた。増やすのにもまだまだ時間が必要であろうから、供給量は厳格にしないといけないからだ。なので大樹からの供給は止まらない。


 よっこらしょと立ち上がり、街中へと移動をする。おっさん+2になったおかげで、そこそこ体力は増えたので多少の疲れしか感じない。


 基本ステータスが低いので、+2でも脆弱なおっさんであった。


 ふぃ〜と汗を拭きながら、街中を歩いていく。活気に溢れており、もはや崩壊後の絶望感はかなり薄れている。暗い顔をしているほとんどは来たばかりの生存者たちであろう。


「魚を扱っている屋台が多いなぁ」


 どうやら崩壊後は皮肉なことに豊漁となっているらしい。もはや漁業をしているのが、2つの港のみなのだから当たり前だ。他の港もないし、外国ももはや漁業ができない。自然が戻ってきており、急速に世界は復興している。


 復興しているのはもちろん自然界であり、人間たちではない。しばらくは以前の自然溢れる世界となるだろう。人間が増えるまでの話だが。まぁ、人間は減りすぎたので元に戻るには数世紀はかかるに違いない。


 そう考えると、この崩壊したタイミングは絶妙であった。もはや地球は限界を迎えて滅びへの道を走っていたのだから。


「地球の意志ねぇ………」


 途中でやたらとあったたこ焼き屋やお好み焼き屋の一つからたこ焼きを買って、広場のベンチで食べながら考える。ちなみに立ち食い寿司屋とかもあった。江戸時代へと戻った感じだ。


 はふはふと食べながら考察する。


 さてさて、今回現れた敵はどのようなエゴの持ち主であろうかと。


「恐らくは自我を強く持っている……。理性的に行動がとれるまでに……」


 静香と同じタイプであろう。そして静香は人間に対しての商売を選んだが、今回の相手はダークミュータントへの人材派遣業を選んだというわけだ。


「多少なりとも知性をもったダークミュータントを相手にしているのだろうけど……」


 厄介なことだ。報酬は人々から生み出されるダークマテリアルなのは間違いない。まぁ、そこまで手広くはできないであろう。ダークミュータントは己の力に自信を持っているから、今回の相手に対して話にのるものもそんなに多くないと推測する。


 大天狗はそれをいうと理性的に行動できたわけだ。まぁ、頼りすぎていて崩壊したが。


 う〜んとこれからの戦いが新たな局面に入ったことを感じる。ミッションには出てこない可能性がある敵も相手にしないといけないからだ。


「新ステージ発生ということなんだろうねぇ」


 北海道では耐性やら搦手が増えて、次は想定外の敵が現れたということだ。


「ではでは存分に楽しもうじゃないか。新たなステージをね」


 クックッと楽しそうに含み笑いをしてから、隠蔽があって良かったと安心する。どう見ても不審者であるし。


 これから先も楽しめると考えて、広場の舞台へと視線を移して


「真琴さんも楽しんでいるようで、なによりだ」


 舞台には銀髪碧眼美少女トリオが歌を歌い踊っていた。舞台横にはディーも見える。


「みんな〜! 私たち巫女隊をよろしくお願いしま〜す」


 結構人々は集まって、巫女服で踊る少女たちを見ている。どうやら銀髪碧眼から戻らなかった少女たちを集めてアイドルを始めた模様。


 ひとしきり歌を聞いていたが、結構上手い。なるほど、アイドルをやろうと考えただけはありそうだ。劇場でやるのは人気が出てきてからであろう。というか、ディーはどこにでもいるような感じがする。実に目敏い少女だ。金稼ぎがうまそうである。


 初めて出会ったときも、偶然にディーがいたからである。彼女は隠れスキル幸運とか持っていそうだ。


「まずは本部での会談から片付けるか。遊ぶのはその後だね」


 新たなるイベントが目白押しだと考えながら、そう呟いて、おっさんはふらりと街中へと消えるのであった。


 活気のある街中でおっさんに気づいたものは誰もいなかった。

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[一言] (やっべ、ディーってだれだっけ……) ↑ 話が長くなると以前の登場キャラクターを忘れる典型的なおっさん。
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