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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
17章 ホラーな世界を楽しもう

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269話 おっさん少女と中学校

 きんこんかんこ~んと学校の鐘の音が辺りに響き渡る。先進的というか未来的な中学校にて、休憩時間は終了ですと空中にホログラフが映し出される。


 子供たちが慌てて、次の授業の準備をしようとしている。もうこの歳だとおしゃまな自我ができているのでふざけてお喋りをしている子供も見える。


 計10クラス各生徒30人の少子化どこいったな感じの中学校。小中学校は3つ作られており、広大な敷地をもつマンモス学校と化していた。監視カメラとドローンが各所に備わっておりいじめ禁止な学校である。


 だが、どこでも見えないところでいじめというのはあるから、撲滅できるのかなぁと不安だ。いやいや、優れた科学力をもつ学校なら大丈夫でしょうと信じる。


 教室では椅子に座って、ちっこい足をパタパタとさせながら、美少女が子供たちを見ていた。


 天使の輪をショートで艶やかな黒髪に作り、眠そうな目ながら、煌めく宝石のような魅了させる瞳、すっきりととおった鼻に桜の色の小さい唇。可愛らしい顔立ち。子猫を思わせる母性本能をくすぐる小柄な身体。ちっこい紅葉のようなおててに健康そうなカモシカのようなしなやかな脚。皆が振り向いちゃうであろう美少女朝倉レキである。


 ふんふ~んと鼻歌交じりに子供たちを見ながら、鈴の鳴るような可愛らしい声音で声をかける。


「ほらほら、チャイムが終わりますよ~。もう授業の時間ですよ~」


 生徒たちを見ながら、すなわち教壇の上に座っていた。椅子だと教壇に自分の身体が隠れてしまうので仕方ないのだ。本当に仕方ないのかは不明。行儀が悪いことは間違いない。


 そして、レキの肩には一日先生とタスキがかけられていた。先生にしてはいけないだろう人間にタスキがかけられていた。


 本日、朝倉レキは中学校がどんな風か見に来たのである。たんに見るだけだとつまらないので、一日先生権もゴリ押しで勝ち取ったはた迷惑な美少女である。


 ちなみに小学校は先日見に行って、生徒たちと一緒にキャーキャーと叫びながらドッジボールとかで遊んでいた子供なる美少女である。見に行ったというか遊びに行ったというのが正しいだろう。みーちゃんもいたし、友達がたくさん増えました。またね、レキちゃん~と子供たちが手を振って見送ってくれたのは良い思い出である。中身はレキなので問題なかろう。きっと童心溢れるおっさんではない。絶対にないと言ったらないのだ。


 そんなアホな美少女は生徒たちを見渡す。歳は統一されていない。中学校を卒業していない生存者を随時編入させているので、転校してきた何々です~と自己紹介をする子供たちが1週間に1度はある。


 ここは中学2年生の教室である。見渡す中にはリィズと綾の姿が見える。中学設立が遅かったので、本来は高校生な綾もいるが、まぁ、綾が気にしていないなら良いだろう。というか綾と同じ立場の子は大勢いるし。


 孤児たちも含めて、学費はとりあえず無料。全て大樹が賄っている。そうしないと今まで働いていた子供たちが暮らしていけなくなるし。孤児たちには生活費も渡しているので、暮らしが厳しくなることはないだろう。


 莫大すぎる金額ではあるが、稼いでいる金額も莫大なので放出しないといけないのだ。ちょっと洒落にならない金額がどんどこ増えているので。


 それにより大樹の評判は良くなっている。さすがは大樹太っ腹だねと。


 それに追随するように早く国を作ってくれという話もよく聞くようになってきたので痛しかゆしな感じ。


 リィズがなにか楽しいことをやるのかな? やるよね? と期待感溢れる視線を向けてきており、綾はこちらを窺うようにしている。綾の記憶がないのが残念だが白衣を着ているので、厨二病は治癒されていない模様。


 それじゃぁ、期待に沿わないとねと、フンスと息を吐いてレキは楽しそうな声音で生徒たちへと声をかける。


「私は1日先生権を貰った朝倉レキです。うぉっほん。皆は私のことを朝倉先生と呼ぶように」


 両手を腰にあてて、平坦なる胸をはって得意げな笑顔で言うレキであるが、教壇の上に行儀悪く座って足をパタパタと振って嬉しそうにしているので、生徒たちは癒されるなぁとマスコットを見るような表情となっていた。


 そしてガタンと椅子の引く音がして、リィズが立ちあがる。


「ん。私はそんな朝倉先生の姉、リィズ。リィズ先生と呼んでいい」


 胸をはって対抗するおこちゃまリィズである。リィズもマスコットキャラとして地位を確立していたらしくパチパチと笑顔で生徒たちの拍手が巻き起こる。


 アホな姉妹がクラスに爆誕した瞬間であった。


「せんせー。せんせーは何を教えてくれるんですか?」


 一人の生徒が手を挙げて聞いてくるので、うむうむと可愛く小首を頷かせて答えるレキ。


「ドッチボールと鬼ごっこ、それか遠足ですね、空中戦艦を借り入れたので空の旅でも良いですよ?」


 のっけから先生をする気の無いおっさん少女であった。そろそろレキと呼ぶのがレキに可哀そうなので遥へと呼称を戻そう。


 そしてその選択肢を出されて、ドッチボールや鬼ごっこと言う生徒はいなかった。


 本日は空中戦艦での遠足と決まった瞬間である。今日の授業は全て無くなったので後で取り戻すのが大変かもしれない。まぁ、それでも遠足は嫌だという人間はいなかったが。




 学校の生徒全員を搭乗させても空中戦艦スズメダッシュは余裕である。数万人が搭乗できる戦艦なので当たり前だ。


 先生も珍しそうに眼を輝かせて、周りを見て回っている。それをツヴァイたちが逐次案内している感じだ。


 この間と違って、研究室や作物育成室なども案内をしている。無重力トラムが気に入ったらしく何往復もしている生徒も見える。


「ふぉぉぉ~。このヘリにリィズは乗りたい!」


 格納庫にてフォトンヘリクイーンビーにしがみついてリィズが早くも我儘を言っていた。べったりとヘリにくっついており離れる様子がない。


「お姉ちゃん。デパートで玩具をねだる子供にしか見えませんよ?」


 遥が苦笑交じりに声をかけて注意するが、いつもはお姉ちゃんぶるリィズはそれでも離れなかった。


「乗りたい、乗りたい、のりたーい! 妹よ、お姉ちゃんの願いを叶えるべき!」


 涙目になり言ってくるので、仕方ないなぁと、近くで見守っていた翼と羽深へ声をかける。


「すいませーん。お姉ちゃんがヘリに乗りたいと言っているので、申し訳ありませんがそこらへんを一周してきてくれませんか?」


 翼も羽深も嫌な顔ひとつせずに、ニコリと微笑んでリィズへと視線を向けて頷く。


「良いですよ。それでは他にも乗りたい人間がいたら、どうぞ、乗ってください」


 その言葉に目を輝かせて、子供たちが何人も並ぶ。俺、友人にヘリに乗れるって言ってくるとダッシュでその場を離れていく友達思いの子もいるので、何周も翼はすることになるだろうなと思いながら


「それじゃ、お願いしますね、翼、羽深。私は他の場所に行ってきますので」


 リィズたちをお願いしながら、無重力トラムへと入り移動をするのであった。



 次に向かうのは植物プラント。透明な円筒がいくつも並んでおり、そこには様々な植物が育成されている。広い空間で様々な植物が育成されており、天井から疑似太陽光の光が降り注いでおり、ちょっとした植物園である。


 そこにもたくさんの生徒たちが珍しそうに植物を見ていた。


 てこてこと中に入っていき、生徒たちへと混ざるおっさん少女。まったく混ざっても違和感がない可愛らしい子供であった。


「いやいや、凄いね、こんな設備が空中を浮く戦艦内にあるなんてね」


 綾も珍しそうに円筒内の植物を眺めながら、遥に気づいて声をかけてくる。


 元気そうなその姿にホッと安心して、にこやかに返事をする遥。


「この空中戦艦は無補給での活動をメインとしています。そのためにこの植物プラントはあるんですよ。将来的には宇宙にでることも可能になると嬉しいですね」


「きっとこの凄すぎる技術があるのなら、宇宙も夢ではないだろね。その時は是非私も搭乗したいものだ。従来の宇宙船乗りと違い、ここならそこまで厳しい体力条件はなさそうだしね」


 たしかに崩壊前の宇宙船乗りは大変な訓練をしていた。まぁ、有人での月着陸などはもうなくなっていたが。それでも宇宙に行くには大変な苦労をしたのであろう。


 だが、この戦艦が宇宙に行くとしたら、そんな苦労はないと思う。おっさんも搭乗できるのを目的としているので。なので赤ん坊でも乗れないといけない性能が無いといけないのだ、おっさんは赤ん坊とタメをはる体力なのだからして。


「宇宙に行く前に、この地球が平和にならないとですね。というか、日本が最低でも平和にならないと無理ですね」


「その通りだ。私にできることは少ないがそれでも助けが必要なら呼んでくれたまえ」


 肩をすくめて、自然な雰囲気で言う綾に遥は不思議そうな表情を浮かべて顔を近づける。


「なんだか、以前に出会った時より博士っぽいですね。なにかありましたか?」


 その言葉に顔を赤らめて、綾は焦った声音で答えてくる。


「まぁ、自分でできることをやろうと思っただけさ。とりあえず学校へとまた通えるという望外な選択肢が増えたからね。今は猛勉強中さ」


「おぉ、高等学校を狙っているのですか?」


 遥の尋ねる内容に、にやりと悪戯そうに笑い胸をはる綾。


「あぁ、これでも以前は学校でも一番成績が良かったんだ。1年半のブランクは私には関係ない。記憶が飛んでいるから、ブランクなんてないんだ。それを強みにどんどん勉強をしていくよ」


 綾の言葉に、遥は優しい目を向けて柔らかな声音で告げる。


「ふふ、安心しました。体を壊さない程度に頑張ってくださいね」


 そして、周りを見渡すと予想外の人間もいた。遠野である。スケープゴートにされたあとは男性なんだから頑張ってねと放置していた冷たいおっさん少女であるが。


「あれれ、もしかしてあの人先生ですか? え? もしかしなくても先生?」


 キョトンとした表情で綾が頷く。


「あぁ、知らなかったのかい? 遠野先生は数学教師だよ。どうかしたのかい?」


「ヘーソウナンデスカー、シラナカッター」


 見る限り、普通に他の生徒たちの世話をしながら円筒内の植物を見ているので、普通の先生なのだろう。


「まじですか。道理でリーダーとかになっていたはずです。元先生だったから最初から信頼性があったんですね………。初めてあった時に失礼なことを言ってしまいましたね………。悪いことをしました」


 生徒たちに向ける目つきも普通だし、少し気難しそうな感じで生徒たちと話しているので、もしかして姿形でスケープゴートとして選ばれていたのだろうと冷や汗をかくおっさん少女である。


 予想外のことだったが、まぁ、別に自分が生徒として学校に通う訳ではないと考え直す。学校に通うのであればやばかったかもしれない。でも記憶が無いから別に構わないのかな?


「しかし、これだけの技術をもつ大樹の本部を見てみたいものだ。今度は本部への遠足をしてみたいね」


 綾が期待を胸に聞いてくるが、それは却下である。何者であろうとも本部ことおっさんの自宅には入れるつもりはない。そこに例外はないのだ。


 でも、それを聞いて大樹本部を作らないとなぁと偽本部を作ることを本格的に考える遥。


 装備作成レベルも建設レベルも9に上げたのだ。それとヴァルキュリアアーマーに変わる新型も欲しいところである。欲しいものがいっぱいだと苦笑をしてしまう。


「本部ですか~。う~ん………。本部は秘密なんです。秘密基地というやつですね。それに移動もふよふよと浮いているので、タイミングが合わないと厳しい感じですよ」


「ふよふよと浮いている? 本部は空を飛んでいるのかい?」


 一応偽本部の構想はあるので、それをそれとなく口にする遥。それとなく口にできたので、明日は嵐かもしれない。


「あっと、今のは秘密です。秘密のレキちゃんですので、忘れてくださいね」


「ふ~ん………。興味が沸くようなことを言ってくるのに秘密とは酷いね」


 頬を膨らませて不満そうにするので、えいっと頬をつんつんと紅葉のようなちっこい指でつつく。


「むぅ、やってくれるな。お返しだっ」


 綾もつんつんと指で頬や肩とかをつついてくるので、そのくすぐったい感触に笑ってしまう。


「やりましたね、お返しですっ」


 ふたりでつんつんとつつきあいじゃれ合う女の子たちであった。周りの生徒がクスクスとその和やかな光景に笑いを見せていた。


「そろそろ昼ご飯にしますよ~。全員食堂へと移動を開始してください~」


 他の女子生徒たちも混ざってキャッキャウフフと遊んでいた遥たちへと声が先生たちからかけられる。


 はぁ~いと素直に返事をして、てこてこと食堂に向かうおっさん少女。今日のおっさん少女は先生ではなかったのだろうか? すっかり先生であることを忘れている鳥頭な美少女であった。


 だって、仕方ない。もう方程式すら忘れてしまったし、もう鎌倉幕府が作られたのも1192年じゃないらしい。なので教えることはなにもないのだ。たぶん中学生に授業内容は負ける可能性あり。


 ならばなぜ先生になったのかと聞かれれば、答えは一つ。楽しそうだから。それに尽きる。


 まぁ、結局女子生徒とキャッキャと遊んでいたら終わってしまうわけだが。


 円筒にはキングメロリンとか、キングジャガーレムとか書いてあり、それを見ていた他の生徒の呟きが耳に入る。


「なぁ、なんだかあの黄金のメロン、動いてなかった?」

「蔓が動いていたように見えたけど、たぶん円筒内では風が吹きこまれているんだろ」

「あれ、最高級の果物だよね? 食べてみたいなぁ」

「なんだかメロンから見られていたような………。気のせいだよね?」


 最後の発言者がまずいことを言っているが、大丈夫。ライトマテリアルで育てたメロリンなのだ。人に襲い掛かることは無い。円筒から抜け出して自立歩行をしそうな感じもするけど………。それはそれ、これはこれ。美味しいのだから気にすることはないだろう。


「なぁなぁ、レキ君? この間もキングメロリンはここから持ってきたのかい?」


 綾があの時のメロンは美味しかったと言ってくるので、遥はすっとぼけて答える。


「いえ、本部からの物ですよ。キングメロリンは美味しいですよね~。私もまた食べたいので、今度一緒に食べましょう」


 おててをブンブンと振りながらてこてこと食堂へと向かう遥と綾であった。


 食堂ではせっかくなので黄金野菜シリーズを含めたご飯を出した遥。


「これはすごい! こんな美味しいジャガイモがあるんだね!」

 

 パクパクとフライドポテトを口に入れて綾が興奮気味に言ってくると


「ふぉぉぉ~! このトウモロコシ、まるで果物! 甘すぎるし、プチプチと粒が口の中で弾けて美味しい!」


 リィズが遥の隣に座っており、茹でたキングモロコシをむしゃむしゃと夢中になって食べている。


 それを見て、遥は育成を高級路線に切り替えて育てる野菜の量が少なければブランド品になるかなと基地で作成中の野菜を思う。


 まぁ、とりあえずは空中戦艦偽本部を作ろうと決意をして、遥も茹でたキングモロコシを手に取るのであった。


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