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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
16章 バイオなゲームを楽しもう

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267話 おっさんはハーレムにいるのだろうか

 深い眠りから、朝倉遥は目を覚ました。いや、実は全然深くなかった。浅い眠りであった。特にまだ枯れていないので、現実逃避をしながら寝るのが大変だった。


 瞼を開けると、天井が目に入るので、おっさんぼでぃの遥は口を開く。


「新品の天井だ」

 

 見渡すとただ広い部屋であった。100畳はあるだろう。それでも遥はこの部屋が狭いと感じてしまう。皆で寝れるようにと作成した無駄に広い寝室である。


 天井へと顔を戻して呟くように口を開く。


「ねぇ、サクヤ? お前はもうギャンブル禁止ね?」


 天井にはミノムシみたいに縄でぐるぐる巻きにされた銀髪メイドが器用にパジャマを着て、ぶら〜ん、ぶら〜んとぶら下がっていた。おでこには負け犬と書いてある貼り紙があった。


「違うんです、ご主人様。次は、次こそは私が勝ちます。なので安心してください」


 負けまくって破産しそうなギャンブラーサクヤの発言である。


「いやいや、安心できないよ? お前はどれぐらい俺との添い寝券を賭けて負けたわけ? 見ろよ、この人数」


 100畳はある部屋はぎゅうぎゅうに布団が敷かれており、ツヴァイたちが、同様にぎゅうぎゅうと押し合いへし合い寝ていた。


「これはもう添い寝じゃないよね? ただの雑魚寝で色気も何もないんだけど? お風呂券も女湯に紛れ込んだおっさんという感じで極めていづらかっただけなんだけど。なんで、俺はここにいるんだろうと考えてしまったよ?」


 そう。今はツヴァイたちが司令との添い寝券とやらを使用してきたので、一緒に寝ているのである。まぁもはや雑魚寝になっているのだが。


 腕にはしっかりとナインが収まって遥の腕枕でスヨスヨと可愛らしい寝息をたてて寝ているのが可愛らしい。ただ、ナインのしがみつくような脚が遥の下半身の微妙なところをときたまサワサワと触ってくるのが少し困ってしまう。


 そしてスヨスヨと寝息をたてている割には耳まで真っ赤にしているので狸寝入りならぬ、美少女寝入りだとわかるので、赤くなっている頬をぷにぷにとつつく。柔らかくて触り心地が良い反発が指に返ってくるが、それでもスヨスヨと寝息をたててしがみついてくる今日はいつになく攻めてくる金髪ツインテール。


 そんな遥とナインの周りは添い寝と言いつつ、僅かに空白となっていた。添い寝なのに、なぜツヴァイたちはくっついてこないのかというと理由がある。


「うにゃうにゃ〜」


 わざとらしい寝言をたてて、新たなる挑戦者が寝ている状態から浮かび、遥へと向かってくる。隣で寝ようとするツヴァイ。だが、スヨスヨと寝ているはずのナインが手をちょっと動かすと、ぐるぐる巻きになり、新たなるミノムシとしてぶら〜んとぶら下がるのであった。もちろん額には負け犬と貼り紙がしてある。


 おっさんの動体視力ではいくらパワーアップしても視認もできない。


「うぬぬ、あのロリメイド、片側は空いているのに、全然譲る気がないです」

「このままでは朝になります」

「全員で襲いかかりましょう。もはやそれしかありません」

「それで、第一陣は全滅したのです。再考しましょう」


 ツヴァイたちが寝ながら作戦を練っているが無駄であろう。既にかなりのツヴァイたちが天井にぶら下がっているし。


 ナインさんは独占欲が凄いなぁと、再度頬をぷにぷにとつついてから、目を閉じて二度寝をするおっさんであった。


 戦いのトキの声など、耳には入ってこない。きっと幻聴だねと。




 朝になり、ミノムシだらけとなった寝室しかないというか、会議室な感じの会議場から、眠そうな表情で出る。


「ふわぁ〜。おはよう〜」


 遥はあくびをしながら、疲れが全然とれないよと眠そうな表情でいた。


「おはようございます、司令」


 四季がテーブルを並べて、その上にハカリが料理を並べている。少し離れた場所で、ナインが朝食を作って、それを運んでいるのだった。


 あれ、四季たちがいると首を傾げて不思議に思う。あの不毛なる添い寝をするための戦闘には加わることをしなかったからである。なんで加わらなかったのかな?


 その不思議そうな表情に気づいた四季たちはあっさりと教えてくる。


「勝てない戦はしないと決めております、司令」


 ちらりとナインを見ながらの四季の発言なので、なにか圧力を感じたに違いない。それだと券は意味がなかったねと、少し四季たちを可哀想に思う。


「ですが、起きている状態ではあからさまに妨害はできないはずです」


 スチャッと、司令と一緒にラヴラヴご飯券を取り出す四季。前言撤回、まったく同情する必要はなかった模様。さすがは指揮官なだけはある。大局がわかっているのだろう。


 起きている状態で独占欲丸だしでの行動はナインはできまいという相手の性格を読み切ったアクションである。そして、あとでサクヤには本格的にお仕置きをしようと決意するおっさんであった。


 だが、四季はナインへの対応だけを見ていて、周りをよく見ていなかったと遥は朝食をもぐもぐ食べながら思う。


 目の前にはツヴァイ同士が壮絶なるじゃんけん大会をしていた。カードにじゃんけんの絵柄が書いてあって、戦うという豪華客船でやっていたイベントっぽい。


 トーナメント戦らしく、それぞれの名前が書いてあり、勝ち抜いた一人が遥と一緒にラヴラヴ朝食をとれるらしい。


 四季たちは頑張って戦っているが、極めて意味がないトーナメント戦である。戦っている間に食べ終わるし、それをおいても意味がない。


 なぜならば、遥の隣には何人かのツヴァイたちが、グイグイと食べさせようとオカズを運んでくるからだ。しかも隣はナイン、そしてもう一人のツヴァイ、さらに隣にまたツヴァイ………。


 トーナメント戦で負けたツヴァイたちが、負けたことなんて関係ないとばかりに、遥の隣に座ってきたのだ。トーナメント戦を真面目にやっているツヴァイたちが可哀想である。


「はい、司令。あ〜ん」


 真っ先に負けてしまった凪がナインと反対側に座り、嬉しそうな表情で箸に摘まんだオカズを遥の口元へと運ぶ。


 もしゃもしゃと食べたあとに


「美味しいよ、凪。ありがとう」


 と、頭をナデナデするまでが一通りのパターンである。さらに隣にはイーシャが座っており、菜箸を上回る長さの箸で器用にオカズを摘む。


「はい、司令。あ〜ん」


 心底嬉しそうな表情なので、これももしゃもしゃと食べるおっさん。そして、わざわざイーシャも座っている場所から離れてこちらへと近づいてくるので、頭をナデナデする。


 そうして、さらに隣のツヴァイがさらに長い箸でオカズを摘んで……。なにかな、これは? なにかの芸なのだろうか?


 なぜ皆で座ったまま、あ〜んをしようとするのか? もはや箸が長すぎてギャグにしかならない。それなのに頭をナデナデしてもらおうと、食べ終わったら近づいてくるのだ。


 内心でため息を吐きながらも、まぁ、それでツヴァイが喜ぶなら良いかなと思う遥であった。


 もしゃもしゃと朝食を食べながら、ふと、思う。


「ツヴァイたちもいつの間にか個性が出てきたね〜。皆髪型も髪の色も目の色も肌の色も全員変えているし」


 そうなのだ。皆、少しずつ要望があって姿形を多少変えている。凪は元気一杯の外ハネショートヘアの褐色少女だし、イーシャは金髪美人、四季とハカリは変えていないが、他が変えているので、また個性として存在していた。


「でも、髪の色を薄緑にする人がいるとはなぁ。それと、なんでピンクはいないんだろう?」


 首を傾げて疑問を口にする遥に、ナインがピットリとくっついてきながら答える。ナインの体温が感じられて、柔らかな肌の感触があり照れくさい。


「ピンクは淫乱とか言われることがあるので、皆は選ばなかったんです」


「あ〜。たしかにそんなネタが使われることが多いな……。あれはなんでなんだろう? アニメとかってピンク髪のヒロイン多くない?」


 たしかトラブったラッキースケベしか起こさない主人公の漫画でもピンク髪のヒロインだったはず……。いや、あれはダークなネスになって主人公を寝取った妹だったっけ? いや、寝取ってはいないか、ヒロインの座を奪い取っただけだったかな。


「たしかに、なんででしょうね? いまいち私もわかりません」


 ナインにもわからないことがあるらしいが、漫画の話なのでどうでも良いのかもしれない。


「あと、銀髪もいないね。銀髪こそ王道ヒロインなパターンが多いのに」


「そうですよね! 私こそが王道ヒロイン! 聞きましたかナイン? ご主人様が私を王道ヒロインと認めましたよ! あと、お腹が空いたので、ご飯ください!」


 ゴロゴロとミノムシ状態で地面を転がってくる銀髪のなにかが得意げに戯言を言ってくるので呆れる。


「……なんで銀髪にはしないのかがわかるから、返答はいいや。うちの娘が酷すぎるものね」


 ジト目で、皿に乗っているウインナーを摘んで、ゴロゴロ転がるミノムシへと餌付けをする遥であった。


 あ〜んとサクヤが芋虫みたいに口を開けるので、といやっとウインナーを口にいれると、モキュモキュと咀嚼してから真面目な表情になりながらお願いをしてきた。


「白米もお願いします! 肉にはご飯ですよね。肉肉白米肉白米でお願いします」


 遠慮という言葉は銀河の果てに捨ててきたのだろう。取り戻すには宇宙戦艦が必要な銀髪メイドであった。


「朝食から肉は重いだろ? まぁ、良いけどさ」


 なんだかんだいって、美女への餌付けはおっさん的に嬉しいので、白米を口に入れてあげて、食べる姿は間抜けだけど美女だからなんとなく良いなぁと遥は考えたが、前方を見てすぐに後悔した。


「前言撤回。そういえばミノムシはサクヤだけではなかったね」


 ゴロゴロとミノムシツヴァイの群れが転がってきて、口を開けてくる。なんだか、王な蟲の群れみたいだねとツヴァイたちを見ながらため息をつき、仕方ないので山盛りにしたご飯を食べさせるおっさんであった。その姿は農家で鶏へと餌をあげる爺さんに見えたとか、見えなかったとか。




 一日が終わり、既に真夜中へと移行する中で、リビングルームでソファにズブズブと沈みこみながら、遥は今日の出来事を話していた。


 膝の上でゴロゴロするレキにたいして。


 もう就寝時間なので、レキが作った精神世界でお喋りをしたあとに寝る予定なおっさんだ。


 レキの艷やかで、絹糸のように触り心地が良くて細い髪の毛を漉きながら、遥はのんびりとお喋りをしていた。レキは遥の膝に頭をのせて、ゴロゴロしているが、その反対側の膝の上にはナインが頭をのせていたので、両手で二人の髪の毛を梳きながら。


「なんだかなぁ、これはハーレムといって良いのかね?」


 二人を膝の上にのせて頭を撫でて、髪の毛をとかす。他人が見たらハーレムと思うのだろうか?


 う〜んと悩んでしまう。たんに自分の娘が甘えてくるだけに見えるんではなかろうか?そしてツヴァイたちは常にアホな戦いをしているので、全然甘い感じがしない。たとえそれが女湯の如き、美女たちしかいなくても。


 数人の美女なら照れてしまうし、自分の幸運に感謝の気持ちを持つだろう。なにしろ幸運なんてもったことがない。常に宝くじは300円しか当たらないときた。


 だが、右を見ても美女、左を見ても美女、下を見られるのはおっさんと、美女が多すぎてあんまり嬉しくなかった。


「もうちょっとこう……いちゃいちゃな甘い感じがしないといけないんだ。でも全然いちゃいちゃな感じがしないんだよ。おかしくない? たんなる苦行をこなす修行僧みたいな感じになっているよ?」


 それはおっさんだからですと二人はツッコまなかった。ゴロゴロニャ〜ンと遥の膝の上で寛いでいたので。


 なんかこれも子猫を撫でるおっさんな感じで、甘い感じは醸し出さないよなぁと苦笑をするが、まぁ良いやと考え直す。


 崩壊前ならこんなことはできなかったし、できたとしても次の瞬間には通報からの逮捕をされていただろうから。


 贅沢な悩みなんだが、それでもなぁと残念極まりながら、現状を思う。


 レキの髪の毛を梳きながら、まったく髪の毛が伸びることがないよねと。自分もそうなのだが爪も伸びないし髭も伸びない。成長というものがないのである。


 まぁ、なぜかなんて考えるまでもない。たぶん状態異常無効だからか、たんなるライトマテリアルの存在と化したからであろう。


 ナインもサクヤも静香でさえも、恐らくは成長はするまい。それは永遠を生きるということになるのだが……。


「精神が狂うこともないのだろうね。なにしろ状態異常無効なのだから」


 独り言のように呟く遥へと、レキとナインがこちらへと仰向けになり顔を向けてきていた。


 なので、ナデナデと頬を撫でてしまう遥。これでハーレムではないと思っている贅沢なおっさんなのだが、エロゲーの如きイベントは発生しないので仕方ないかもしれない。


「これからのことを考えているのですか、旦那様?」


 レキが気遣わしげに聞いてくるので、素直に頷く。


「あぁ、永遠を生きるのかもなぁと思うとね。私は平気なのだろうかと思ったんだよ」

  

 そんな遥の手に自分のちっこいおててをのせて、ナインが優しい声音で言う。


「私たちがいますし、未来ではもっと眷属が増えているかもしれません」


「私は旦那様と一生精神世界で暮らしても構わないです」


 レキがヤンデレみたいなことを言うが、遥は特に気にしなかった。レキは自分の嫌がることはしないと信じているからだ。


 それにそのとおりでもある。


「まぁ、これからもレキとナイン。そして、隙間女みたいに、密かにカーテンの後ろで寂しそうに覗いている変態メイドがいるなら良いよ」


 その言葉で密かに精神世界に潜入していたサクヤがカーテンから飛び出してきた。


 ブーブーと頬を膨らませて抗議をしてくる。


「三人で精神世界でのんびりとしているのがいけないんです。私は仲間はずれで寂しいのですから! もううさぎの如く寂しいのですから!」


 クネクネと身体をくねらしながら、言うので


「うさぎではなく、うなぎだろ」


 と遥がツッコむと満面の笑顔で、ムキーとわざとらしく怒ってくるので、もはやお笑い芸人と化しているサクヤである。


「……なぜ、旦那様と私の精神世界へとメイドたちは簡単に入ってくるんでしょうか? ラヴラヴハウスと書いて表札を置いておいたんですが」


 どうやらあの表札はメイドたちに対する牽制だったらしい。その言葉を受けて、ぽよんとふくよかな胸を叩いてサクヤがドヤ顔になる。


「レキ様、安心してください。あの表札は私とレキ様と愉快な仲間たちのラヴラヴハウスと書き直しておきました!」


 なぜ、ドヤ顔で言えるんだろう? サクヤは本当に怖いものなしだなぁと遥は呆れて、レキはゆらりと立ち上がった。


「ちびメイド以外にも敵はいたんですね。勝負です!」


 そう言ってレキとサクヤの姿がかき消えて、外からなにかを破壊する轟音が聞こえてくる。


 元気だなぁと笑う遥へナインがこちらの顔を窺うように尋ねてきた。


「未来が不安ですか、マスター?」


 その質問へと遥はニヤリと笑って答える。


「あぁ、不安だね。なにしろ私は自分に自信がないからな。なのでこれからもサポートをよろしくお願いします、可愛らしいメイドさん」


 その言葉を聞いて、花咲くような微笑みを遥へと見せて、コクリと嬉しそうに頷くナインであった。

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