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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
16章 バイオなゲームを楽しもう

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266話 時間を失くした少女

 2LDKのマンションの部屋にて狭間綾はぼんやりとした表情で座っていた。

 

 天井からは裸電球が灯っており、外はそろそろ薄暗くなる。動かなきゃと考えるが体から力は沸いてこなかった。


 自分の手をわきわきと動かすが、おかしいところはない。本当に1年半も経過してしまったのだろうか?皆で私を驚かそうとしているだけではないのだろうか?


 再び部屋を見る。少し貧乏くさい部屋だ。私の部屋もなく両親と雑魚寝をするしかない狭さである。避難民用の仮設マンションらしい。この部屋に案内された時に両親はそう説明されたそうな。


 テレビもなく、スマフォもない。簡単に友達と連絡を取り合う方法もなく夜にふざけながら話をすることもできない。


 再び思う。本当に1年半も経過したのだろうかと。


 そして思う。本当に世界は崩壊したのだろうかと。


 私は単に夢を見ているのではないだろうか? 悪夢を見て唸っているだけで、目が覚めたら、いつもの生活が待っているのでないだろうか? 


 ベッドで目が覚めて、お母さんに休みだからって寝すぎよと怒られて、お休みなのだからいいじゃんと口を尖らせて反論をしながら、作ってもらった昼食を食べるのだ。


 そうして連休を楽しく遊んだら、休み明けの学校は面倒だね~と友人たちと話しながら登校する。そんないつもの生活が待っているのではないのだろうか。


 自分の手の平を軽くつねるが痛い。ちくりと痛みが身体を襲うので、ここが現実だと否が応でも理解する。


「ほら、綾っぺ。ご飯にするからちゃぶ台を広げてくれない?」


「綾っぺって言わないでよ~」

 

 お母さんが声をかけてくるので、力無く条件反射的に答えて、ノロノロとちゃぶ台を部屋に組み立てる。こんな物があったなんて驚きだ。映画でしか見たことが無い。軋む木の音がしてちゃぶ台を組み立て終わると、お母さんがドスンと鍋を置いてくる。


 ホカホカと湯気が立っており、美味しそうなすき焼きだ。うちですき焼きなんて珍しい。


「奮発したのよ~。仮とはいえ、家族で住み始めた初日だからね。美味しい物を食べて元気を出さないと!」


 お母さんが元気いっぱいな感じで皿を配りながら言う。


「お~! 良いな。あの世界では粘土しか口にできなかったからな。あ、いや、久しぶりで良いな、すき焼きか!」


 お父さんがテンション高めにわざとらしく騒ぐが、あの世界と言ったときに慌てて言い変えた。ちらりと私を見てくるので気をつかっているのだろう。


 私を含めた皆は化け物が作った街に住んでいたらしい。粘土のような食べ物を日々食べ続けて、ゾンビたちに殺されるかもという恐怖と戦い、逃げ出せないと絶望に包まれながら。


 そんな世界は私の記憶には無い。レキちゃんが言うには街を作った化け物にスケープゴートとして操られていたということらしい。恐らく崩壊時にすぐに操られていたので、記憶がないのだろうと。


 らしい、だろう。推測の域をでないが、私にはその世界のことなんて記憶にない。記憶にないから、両親が喜ぶ姿にもいまいち共感できない。悲惨な生活を送っていたと言われても、テレビ越しにみる悲惨な生活を送る人々というニュースと全然変わらない。


 私にとっては連休が始まったところで記憶は止まっているのだ。なんかゲームの世界と言われていたそうな。脱出できれば、いつもの生活が待っていると思っていたらしいが、本当は世界全体が既に崩壊していたとわかり、混乱して嘆き続けている人々も多いとか。


 私の両親は元気に現実を受け入れて、新たな生活を始めようとしている。新しい家に移り、一からやり直さないといけないと頑張っている。恐らくは私のためでもあるのだろう。


「いただきま~す………」


 ぱくりと煮えた肉を食べると美味しかった。久しぶりなのだろうすき焼きは美味しかった。




 数日過ぎても私はぼんやりと家でしていた。まだ夢じゃないかと疑いたいのだ。だが、本当は理性ではここが現実だと理解していた。


 悔しいけどご飯はいつもどおりの味だし、眠くもなるしトイレにも行く。これで現実ではないなら、私たちが生きてきた世界もゲームの世界ではと疑わないといけない。


 窓枠に肘をつけながら、私はため息を吐く。学校に行かなくて良いなんて、少し前なら喜んでいたのに、今はちっとも嬉しくない。休みだと聞けば胸を踊らせていた自分はもういなかった。


 永遠に学校には行かなくて良いのだから。


 憂鬱な感情に支配されて、のんびりと外を眺める。お母さんはそんな私を見ても気遣ってなにも言わない。皆は壮絶な暮らしをしていたから、この平和を噛み締めているのがわかる。


 今まで見たこともない嬉しそうな表情でご飯を食べる両親。幸せそうな顔で畳に敷いた布団に寝る両親。私の記憶にはそんなことで喜ぶ両親ではなかった。ただ、当たり前のことだと享受して、布団よりもベッドの方が良いわよねと文句もつけただろうに。


 それだけ悲惨な暮らしだったのだ。皆に共通する点。この若木シティの人々も味わってきた懸命に生き残ってきたという記憶。


 私にはそれがないから、なんだか仲間外れになった感じがしていた。友人も何人か会いに来たが、皆どことなくハッとする程逞しく感じたのだ。


 取り残されてしまった。私も記憶があれば良かった。操られていた時の私は友人たちのリーダーだったらしいし。


 皆は口を揃えて悲惨な記憶なんてないほうが良いよと言ってくれるが、なによりも私はその記憶が欲しかった。


 頭も窓枠にのせて、またため息を吐く。友人たちの何人かはいなかったし、その友人たちも両親がいない人も多かった。


「私……何しているんだろ……」


 他の人よりも恵まれている。両親は生きており、私はぼんやりと日がな窓から外を見ているだけだ。テレビもスマフォもない世界では、暇を潰すことは難しい。


「贅沢な悩みなんだよね。もう働いている人もいるのに」


 お父さんは農園をやるつもりらしい。まぁ、昔からりんご農園をやりたいと言っていたお父さんだから、ここで夢を叶えるのだと鼻息荒く話していた。崩壊前はただの商社のサラリーマンだったのだ。


 農園なんかできるわけないでしょと、以前はお母さんと一緒にからかっていて、お父さんも本気ではなかっただろう。ズブの素人が農園をやるために脱サラなんて成功するとは思えなかったし。


 でも今は違う。ズブの素人でも丁寧に教えてくれるそうな。稼げる農園主になるには今しかないとも言っていた。最初にやった者の方が、あとからやる者よりも有利だとも。


 なんだか凄腕の女銀行員が融資を周りに持ちかけているらしい。それにのるとお父さんは決めていた。


 そうしないと、物資集めの日雇いしか働き口が最初はないらしい。苦しい生活になるかもしれないが、一人ではなく共同で農園を経営して、お金ができたら独り立ちするという融資内容でもあるので安心感があるとも言っていた。


 私のお父さんはあんなに逞しかっただろうか?いつの間にかお母さんも逞しくなっている。肉体的ではなくて精神的に。


 窓越しに見える公園にはぼんやりと座っている覇気のない人々も見える。私とおんなじだ、この世界が信じられなくて動けない人々。ゲームの世界から脱出できれば、きっと元の世界に戻れると信じていた人々らしい。


 それが本当は世界は崩壊しており、自分たちの住まいはとっくに無くなっていたとショックを受けて動けないのだ。


 私とはまた違う形で、現実を受け入れられないのだろうと眺めていると、見たことのある少女が歩いてきていた。


「ん? ……レキちゃん? なにしているんだろ?」


 ぼんやりと少女を見る。金魚の柄の浴衣を着ており、カランコロンと下駄の音をたてながら。


 なぜかたすきがけにした新聞の束も肩に担いでいた。


 この間会った時と同じく、無邪気な笑顔で悩みなんてない感じで、カランコロンと歩いている。


 そうしてぼんやりと座っている人へと振りかぶって新聞を投げつけた。


 一枚しかなかったのだろう新聞が広がり、ぼんやりとベンチに座っていた人の顔へと当たり、ブハッと声を出してびっくりしている。


「しんぶ〜ん。幸運しんぶ〜ん。読むと寿命が100日延びますよ〜」


「な、なんだね、君は! 人の顔へとこんな失礼な!」


 ベンチから立ち上がり怒る人へと、無邪気な微笑みを向けて


「そんなに元気なら大丈夫ですね。今日の収穫祭には是非いらして下さい。美味しい物が屋台に格安で売り出されますし、盆踊りもしちゃいます。……それにこの世界がどうなっているのかも理解できるでしょう」


 最後の発言時だけ、眼光を鋭くして真面目な表情になるレキちゃん。その眼光を見て怯む相手だが、投げつけられた新聞を手に取り興味が湧いた表情で読み始める。


 読み始めた人を放置して、再びレキちゃんはカランコロンと下駄の音をたてて、こちらへと向かってきて……。


 窓枠に肘をついてぼんやりと眺めていた私と目があった。


 フフッと口元を笑いに変えて、レキちゃんは新聞をこちらへと投げつける。


「うわっ! バハッ!」


 先程の人と同じように私も新聞で顔を包まれちゃう。離れているのに凄い投擲技術だ。


 バサッと新聞を畳の上に落とした私へと近づいてきて、窓越しに声をかけてくる。


「是非、つまらなそうな表情をしているそこの博士もいらして下さい。きっと楽しいですよ」


 そう言って、カランコロンと他の犠牲者を探しに行ってしまうのであった。


「収穫祭かぁ。……なんだか本格的っぽい感じ……」


 新聞ではなくて、チラシだったみたい。レキちゃんは新聞と言っていたが、カラフルな写真が掲載されており、そこには素朴な笑顔を浮かべて、稲束を持っている麦わら帽をかぶった農家の人がニカッと笑っていた。


 以前ならば見向きもしなかっただろうつまらなそうなチラシだったのに、その生き生きとした表情の農家の人の表情に釘付けになる。なぜなんだろう?自分が今はもっていない表情だからだろうか?


「うん。行ってみようかな」


 私が久しぶりに外出を決意したのと同じように、外でぼんやりと座っていた人も行ってみようと決意していたが、私はそんなことにはちっとも気づかなかった。




 ドンドンピーヒャラー、ドンドンピーヒャラーと収穫祭の場所では櫓が組まれており、太鼓と笛の音が鳴り響いている。


 凄い賑やかで、周りの人々もお酒や食べ物を手に持って和気あいあいとしていた。


「綾っぺー。なんだかすごいね〜!」


 誘った友人が感嘆の声をあげる。私も感嘆としながら周りを見渡す。広々とした広場に無数の屋台、そして盆踊りをしている人々。祭りを楽しんでいるのだとわかるのだが


「なんだか皆生き生きとしているね。……っていうかさ、私たちとの違いがはっきりわかっちゃうね」


 苦笑を思わずしてしまう。皆生命力に溢れているような楽しそうな表情を浮かべている。だが、戸惑いながら表情に影が見える人々もその中に見えた。


 稲束がそこかしこに積み重なられており、野菜を売っているパワフルな屋台もある。楽しそうに生きていることを喜んでいるようにしている人々の中で、それは非常に目立った。


 そして表情に影がさしている人々が青森県の生存者だとも悔しいが理解してしまった。


「仕方ないよ……。あの世界から脱出できたら、元の暮らしに戻れると思っていたんだからさ……」


 友人も表情に影を差して呟く。食べ歩きながらもそんなことを考えてしまうと楽しめないだろうと私も思う。……でも、今のままで良いのだろうか?


 なんとなくそう考えながら歩いていると後ろから元気な声が私にかけられた。


「楽しんでいますか? この世界を楽しんでいますか?」


 振り向き確認すると予想通りの少女、レキちゃんであった。私は戸惑う友人を放置して唇を尖らせる。


「楽しめないよ。だって皆ようやく助かったんでしょう? しかも元の生活に戻れると考えていたのに」


 そういう私にコテンと首を可愛く傾げて、心底不思議そうにするレキちゃん。


「おや、いつもの君呼びは無しですか? なんだか普通の娘になっちゃいました?」


「記憶がないんだもん。生活に不安があるんだもん。あんな博士ごっこをいつまでもしていられないよ!」


 少しだけ声を大きくして答える。こんな少女に声を荒げても仕方ないと思うが、それでも自重できなかった。


 怖がっちゃうかなと、罪悪感が湧いてくる私だったが、レキちゃんはケロリとして全然気にしていないので、少しムッとする。


「はて? 私の記憶では博士ごっこをしている貴女を皆は頼りにしていました。実に自信ありげに無茶な行動する貴女に頼っていたんですよ? 博士ごっこなだけで、専門知識もない貴女を」


 不思議に耳にその言葉は入ってきて、隣の友人へと視線を向けると苦笑しながらも頷き答える。


「うん……綾っぺの無駄に自信がある態度はなんとなく安心したんだ。この先もそんな余裕がある綾っぺがいれば大丈夫だって。あの呪われた世界で頼りにしていたんだ」


 それは自分ではない。そのような演技をするように操っていた化物のせいだと反論しようとする私へとレキちゃんが声をかぶせてくる。


「病院で出会った博士は自信満々で見ていて安心しました。操られていなくても変わらない貴女に私は安心したんですが、私の見込み違いだったんでしょうか?」


 ふわりと柔らかな安心させてくる微笑みをレキちゃんは浮かべてくるので、私は思わず口ごもっちゃう。


 だから、小声で尋ねてみる。


「……本当に私は変わっていなかった? 全然?」


「えぇ、博士が板についていましたよ」


 クスクスと口元を押さえて可愛らしく笑うレキちゃん。


「なので、綾さん。もう一度貴女の言葉をまだ現実だと理解していない人々に聞かせてやりませんか? 記憶があってもなくても、頼りがいのある綾博士は健在だと」


 そう言ってレキちゃんは私をひょいとお姫様抱っこをして、地面を蹴る。


「え? え〜!」


 人にはありえないジャンプ力で櫓の上に移動する。いきなり現れた私たちに太鼓を叩いていた浴衣姿の男性は驚く。そんな男性へとレキちゃんは声をかける。


「真っ先にアウトとなった蝶野さん。申し訳ありませんが、少しだけこの場を貸してください」


 アウトってなんだろうと不思議がる私を尻目に、肩をすくめて男性は答えた。


「あれはすまないと思っている。バングルのフィールドが発生しなければ死んでいたし仕方なかったんだよ姫様」


「貸し一つ、それを返してもらいます。ささ、綾さん、これをどうぞ」


 いつの間にか持っていた白衣とマイクを私に渡してくるレキちゃん。真面目な表情で伝えてくる。


「綾さんは遠野さんとは違ったリーダーシップをとっていました。アグレッシブな貴女を頼りに思っている人々へと一言どうぞ」

 

 無茶振りだ! 私はしがない中学生なのだ。もう中学生ではないけれど………。それでも無茶振りだと断ろうとしたが、レキちゃんの目を見て思いとどまる。


 優しい目つきを私に向けていたのだ。だから私は嘆息して白衣を羽織り、マイクを掴む。ここで断ったら厨二病じゃないじゃん! 目立つの大好きな博士じゃないじゃん! ……それになにかを期待している少女を悲しませたくもない……。


 なので歯を食いしばりマイクを強く握りしめて、突如と太鼓が鳴り止んだので不思議そうな表情で、こちらを見上げてくる人々へと声を発する。失敗しても知らないからね!


「あーテステステスト終わり。皆さんこんばんわかな? 私の名前は狭間綾。私を知っている人々はいると信じているのだが」


 呪われた世界では私は有名だったらしい。そこかしこから誰だろうかと推何する声と、あれは警察署にいた名物博士だよと言う声が聞こえてきて……う〜っ、恥ずかしい!


 ゴクリと息を飲み込んで、それでも話を続ける。


「どうやら私はゲームの世界で道化役をさせられていたらしい。私の優秀さが化け物に目をつけられたらしいじゃないか」


 肩をすくめて残念そうな演技をする。


「とても残念だ。私は時間を失い貴重なる経験をしそこなったわけだ。私は諸君らが羨ましい」


 演技ではなくて本当に残念なのだ。


「ふざけるな! なにが羨ましいだ! あんな記憶はないほうが良かった!」


 誰かが声を荒げて言ってくるが無視をして話を続ける。


「いやいや羨ましいね。何しろ私は平和な飽食の世界からこの世界へと移行したわけだ。その際の絶望ぶりがわかるかな? 苦しい思いをしなかったためにすべてが物足りない。スマフォもテレビも週刊雑誌もないときた。君たちはどん底に落とされたあとに救出されたのだろう?」


 こわごわと周りを見つめるが、反論は来なかったことに胸を撫で下ろす。


「もうどん底からは脱出できた。美味しいご飯にゆっくりと寝れる寝床。極めて幸運なことだ。何しろ生き残ってきたからこそ、今の状況を勝ち得たのだから」


 静寂が広がっており戸惑う人々の視線が突き刺さるが無視だ!


「その幸運を享受しないで、これからもぼんやりとしているのなら、生き残ってきたという記憶を私にくれたまえ。死んでいった者たちに謝ってくれたまえ。以上だ」


 バッとマイクをニマニマと口元を笑みに変えているレキちゃんへと手渡す。きっと顔は耳まで真っ赤になっているはず!


「さすがは綾博士。なかなかの演説でした。少なからず今の発言を聞いて考える人々はいるでしょう」


 再び太鼓が鳴り響き、またピーヒャラーと笛の音とともに周囲へと伝わり始めて、盆踊りは再開される。その踊っている人々の中で顔を真っ赤にしながら昼間にベンチでぼんやりとしていた人を見つけた。


「きっとカンフル剤となりますよ。見事な対処でした綾博士」


 レキちゃんもその人に気づいたのだろうか? 私のたどたどしい叫びは誰かの心をうったのだろうか?


 一つだけたしかなことはある。


 今の発言で私は吹っ切れた。私にはカンフル剤となったのだ。いや、吹っ切れてはいないのかも。祭りの雰囲気と私がだいそれた発言をしたテンションで今は吹っ切れた感じになっているだけなのかも。でも、それで良いのだろう。


 だから私はニヤリと笑みを見せて答える。


「私は博士だからね、レキ君。カンフル剤を作ることなど簡単なものだ」


 そうして私も夜空の中で、瞬く提灯の明かりのもと収穫祭を楽しもうと、手をぶんぶんと振っている笑みを浮かべている友人の所へ戻るのであった。


 きっと時間を失っただけではないと信じながら。

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[良い点] あ、生きてた。ショックで飛ばしてたけど勘違いでした。 本当に良かった・・・・・
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