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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
16章 バイオなゲームを楽しもう

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262話 おっさん少女は名探偵

 倒したと思った大蛇は炎上の中でも、口を再生させてバネのように胴体を引き絞り蝶野目掛けて思い切り噛みついた。ぞろりと細かい歯が生えており、毒を注入する牙が光るその大きな口で。


「むぅっ!」


 蝶野はロケットランチャーを構えたまま、胴体を嚙まれた時点で抜け出せないことを悟った。もはや自分はダメだと考えて、そのままロケットランチャーを大蛇へと押し付ける。


「すまないっ! 俺はここまでだっ。あとはよろしく頼む!」


 そうして引き金をひきまくり、ゼロ距離でのロケット弾を発射させてロケットランチャーの残弾を全て吐き出して、大爆発の中に消えるのであった。


 先程のロケット弾が命中した以上の轟音が広場に響き渡り、空気を震わし、その攻撃は今度こそ大蛇をバラバラして肉片として空中に飛び散らす。


 ナナがそれを見て、すぐさま火炎弾をグレネードランチャーから数発撃ちだして、炎上状態が続くようにする。


 大蛇は今度は再生のそぶりを僅かに見せただけで、やがて再生力が尽きたのかパチパチと音をたてて燃え尽きるのであった。


 おっさん少女たちもその光景を見て、唖然としていた。まさか蝶野がやられるとは思っていなかったので。


 なので、おっさん少女と女武器商人は顔を見合せて頷いた後に、大蛇の死体へと向けて叫ぶ。


「チョウノサーン」


「チョーノサーン」


 悲痛の叫び声にしたいのだろうが、またもや棒読みであり案山子にやらせたほうが良いだろう叫び声が広場に響くのであった。なんだか繁華街でシャチョーサンちょっとお店に寄っていきなよという勧誘の声にも似ていた。この二人は強い感情を込めた声音は出しにくい様子である。まぁ、感情たっぷりに叫ぶのはちょっと恥ずかしいですよねとお互いが思っているので仕方ないだろう。本当に仕方ないか不明だが。


「なんてことだ………危険だとはわかっていたのに、君たちのリーダーが死んでしまったね………」


 悲痛な表情で綾がこちらへと声をかける。


「なんていって、慰めたら良いかわからないがお悔やみを申し上げるよ。彼は立派に戦った。それだけは確かだ」


 うんうんと重い表情で綾が頷きながら、映画とかでありがちなセリフを口にするが、遥的にはさっきのやったかのセリフのせいではないかと疑ってしまう。あの場面でのあのセリフは完璧なタイミングであった。見事にフラグが作られたのだろうとわかる。


 はぁ~とため息をついて、遥はロープを取り出すとハーケンを取り付けて広場へと落としてナナに声をかける。


「ナナさん、今からロープを落としますね~。それで降りていきまーす」


 大蛇が復活しないか警戒していたナナがこちらを見て笑顔で頷く。


「ほいほーい。レキちゃん降りてくるときは気を付けてね~。結構高さがあるから」


 遥たちはその返事を聞いてから、ロープを降り始める。といってもスルスルとかなりの速さで落ちるようにだが。


 それを見て、綾は戸惑う。この3人は笑顔で合流できたことを話し始めたからだ。今しがたリーダーと思わしき男性が死んだのに気にした様子はない。


 なんでなんだと戸惑う綾もロープを苦労して降りるのであった。




 広場に降り立った遥たちはナナと合流して、現状を話し合う。ナナたちが罠であろうことに巻き込まれたことに対して腕を組んで考え込む。


「それじゃ亜久那さんが上に取り残されて、梯子は破壊されて登れなくなったと………ゲーム的イベントですね~」


 なんて楽しそうなイベントだったんだと感心する遥に、むぅ~と頬を膨らませてナナが言う。


「私としては探索するだけで謎解きはしないだろう二人が謎解きまでして、敵ボスと戦っていたことの方が問題なんだけど。なんで私たちがいない間に謎解きをしちゃうのかな?」


 ん~?と珍しく怒っているナナが顔を近づけてきて威圧してくるので、オロオロとしてしまう遥。顔が近すぎてキスできちゃう距離だよと慌てる。


「だって、謎解きですよ? 名探偵レキは謎があれば解くしかないんです。それは名探偵レキの宿命ですね」


「ほほ~う。そんな危ないことばかりするレキちゃんにはこうだっ!」


 むにむに~と頬を両手で引っ張られてしまう遥。ナナはお仕置きだ~と頬を引っ張ってくるが、そんなには引っ張ってこないので、あんまり痛くない。というか、傍目にみたら遊んでいるようにしか見えない。美少女だとこういうふれあいがあってお得だねとか、遥は考えていたり。


「はいはい、イチャイチャは禁止よ。それよりここの広場を調べましょう。どうも話を聞くとここはボス部屋なだけの感じがするけど」


 パンパンと両手をうって、呆れた表情で静香が言ってくるので、ナナは顔をほんのりと赤くして離れる。どうやらイチャイチャしていた自覚があった元女警官である。


「たしかに、マンホールから入ったら、ここに来た………。しかも、そこ以外にも横道があったんですよね? メインホールから入った際の通路には横道はありませんでした。まぁ、とりあえずこの場所を調べてみましょう」


「な、なぁ、君たちは全然悲しくないのかい? 蝶野という男性が死んで!」


 冷静に会話を続ける3人を見て、ついに耐え切れなくなったのであろう綾が声をあげてこちらへと非難の表情を向ける。


 3人は顔を見合せてから、口を開く。


「きっと蝶野さんは天国で私たちを見守ってくれます」

「きっと仲間のゴリラと一緒に今頃うほうほ言ってますよ」

「きっと蝶野さん、アウト~という感じかしら」


 3人は飄々と死んだ蝶野のことを言ってくるので、綾はますます不審な表情になり、話を続ける。


「仲間の死を悼まないなんて、なんでそんなにドライなんだい? どうも私は君たちを見誤っていたのかもしれないね」


 軽蔑の眼で見てくる綾であるが、その発言に遥と静香はピクリと反応した。反応しただけで肩を軽くすくめただけにとどめたが。


「まぁ、正直いなくなった人のことを考えていても前進はできません。さっさと広場を探しましょう」


 気を取り直して遥が声を発して、綾は渋々と、他の2人は平然と頷き探索をするのであった。




 1時間後、疲れた4人がぐでっとしていた。広場を隅々まで探索していったのだが、なにもなかったのである。ただ、広い空間があったというだけであった。


「どうやら想像通り、本来は他のマンホールからこの広場を通過して、警察署のメインホールへと向かうルートになっていたみたいね」


 腕を組んでモデル立ちをしながら、静香が淡々と推測を話す。


「そうですね。どうやら私たちが本来はいけないルートをクリアしたのがいけなかったのでしょう」


 遥もモデル立ちをしようとして、可愛らしい仁王立ちへとなぜかなりながら、返事をする。本来はメインホールの女神像下のダイヤルは解除不可能であったのだろう。鍵解除スキルがなければ不可能であったことは間違いない。バグ技を使ってクリアするとルートが変なことになるような感じである。


「じゃあ、どこにクリアの鍵があるんだい? これじゃどこにもないじゃないか! いったいどこにあるんだ!」


 綾が怒ったように、静香たちの推測を聞いて声を張り上げる。クリアの鍵があると思っていたら、どこにもなかったのだから、当然だろう。これだと骨折り損のくたびれ儲けであるからして。


「やっぱり時計台かな? 時計台へ入れる部屋がないらしいけど、時計台下の壁を破壊していけば見つかるんじゃないかな?」


 デストロイヤーナナの発言がこれである。段々とレキの脳筋戦法に慣らされていっているのかもしれない。


「むむむ、やっぱり時計台なのかい………。それじゃ警察署をそのグレネードランチャーで破壊していくのかい? 安全地帯である警察署でそんなことをすると危険な感じがするんだけど」


 綾が困った表情で懸念していることを言ってくるが、たしかに壁などを破壊したら安全地帯がどうなるかなんてわからないのだ。


「そうね、貴金属店を重点に探索するというのはどうかしら? もしかしたら謎の宝石があってクリアの鍵になるかもしれないわ」


 ごく真面目な表情で静香が提案してくるが


「それは静香さんが行きたいだけでしょう? たぶんバイオ的世界に静香さんが入り込んだら、宝石のキーアイテムを使うことをしないで一生クリアできなさそうですよね」


 たしか、静香は既に一軒の貴金属店を探索したと言っていたので、もう仕方ないかと遥はため息を吐く。静香へと紅葉のようなちっこいおててを突き出して


「静香さん、ここで手に入れた宝石、ちょっと見せてくれます? ちょっとだけ」


 ん?と首を傾げながらも宝石をゴソゴソとポケットから取り出す静香。ご丁寧にもハンカチで包んで傷つかないように小分けしている。


「これがどうしたのかしら、お嬢様? あげないわよ、私が手に入れたんだから」


 そういう静香へと一つの赤く光るルビーであろう宝石を取って、見えるように持つ。


「ここは劣化した酷いイミテーション・ゲームの世界です。即ちですね、これは罠解除を使うとこうなるんです」


 罠解除と念じると、ルビーはあっという間に小石へと変化していった。貴金属店に入ったといっていた時からなんとなく想像できていたのであるからして。


 気まずそうに静香を見ると、静香は肩をぷるぷると震わせていた。


「………なるほど………。お姉さん、ちょっと考えなしだったわね………。そうよね、粘土の食料しか作れないゴミのような力のボスじゃ、本物の宝石を作れるわけないわよね………」


 ふふふと地獄の底から聞こえてくるような凄みを感じさせる笑いを顔を俯けながら静香がするので、遥は慌ててアイテムポーチから小判を取り出す。


「可哀そうな静香さんには、小判をあげちゃいます。プレゼントしちゃいますよ~。とりあえずこれで怒りを抑えたまえ~」


 へへ~っと小柄な身体で頭を下げて、恭しく小判を捧げる可愛らしい巫女な美少女であった。


 ぱぁっと輝くような表情になり静香が顔をあげる。そして、サッと小判を猫が魚を奪い取るような速さで取りご機嫌な声音で言う。


「お嬢様に気をつかわせて悪いわ。ありがとう、この小判は私が大切にするわね。ところでお嬢様はあと何枚小判をもっているのかしら?」


 もっと小判を奪い取ろうとするがめつい女武器商人である。ちょっとそれはだめですよと苦笑を浮かべながら、周りを見渡して


「それじゃ、そろそろ警察署に戻りましょう。どうやら、ここには何もない様子。たぶん時計台にも」


 確信をもって、遥は答えて全員再び警察署に戻るのであった。



 警察署に戻ると亜久那がメインホールで他の人々と会話をしながら待っていた。深刻そうに話しているが大体想像がつくよねと遥は思う。


 どうせ、二人をみすみす死なせてしまったとか、なんとか怪しい発言をしているのであろう。


 んしょと瓦礫をよじよじと登っていくと、すぐに守っていた人々が気づく。


「あぁ、君たちは無事だったんだね。僕も今から助けに行こうと思っていたところなんだ」


 亜久那がこちらへと心配をしていたという表情で語りかけてくるので、ナナが後ろから出てきて冷たい声音で尋ねる。


「どうも亜久那さん、私たちは放置してレキちゃんを助けに行くんですか?」


 ナナを見て、ぎくりと体をこわばらせる亜久那。予想外の顔を見て驚きを見せるが、なんとか口を開く。


「よ、良かった。生きていたのか。あの状況だと死んだと思ってしまったんだ。すまない………もう一人の男性はどこだい?」


 ぞろぞろと4人で穴からでてくるのを見て、白々しく尋ねてくるが、綾がかぶりをふって悲しい表情を浮かべて伝える。


「死んでしまったよ………大蛇がいてね、相打ちになったんだ」


「そ、そうかい、この世界ではよくあることだけど………それでもお悔やみを申し上げるよ………」


 周りの人々も頼りになるだろう蝶野が死んだと聞いて、ショックを受けた顔を浮かべてしまう。


 そんな通夜みたいな雰囲気の中で、遥はこそこそと陰で早着替えをしていた。子供の裸なんて誰もみたがらないだろうが、一応羞恥というものがあるので。探偵服へと着替えていた。


 ぶーんとカメラドローンが周りを飛んでいるので、前言撤回をしたが。


 ひょこっとメインホールに戻り、遥はパチパチとちっこいおててで拍手をする。ちっこいおててでの拍手なのであんまり音がたたなかったが、それでも沈黙状態となったメインホールでは目立つ。


 人々がまたなんか着替えたよ、この娘という変な娘を見る表情で遥を見てくるので、ウオッホンと咳ばらいをする。全然咳払いにならないので、口でウオッホンと言うアホな美少女である。そんな姿も可愛らしい。


「そろそろこの世界も脱出しようと思うのですが、名探偵レキの謎解きを伝えようと思うのですが、どうでしょうか? ここから名探偵の解決編が始まりますよ~」


 にこにこと無邪気な子供特有の癒される微笑みでの遥の発言をうけて、その内容に一瞬ホンワカする人々だが、すぐに真面目な表情へと変わる。


「本当に謎解きができたのかい? どうやって? いつ? 私はそれらしいものを見ていないけど」


 綾が戸惑った表情で遥を見てきて、亜久那が面白そうな顔を浮かべる。


「今まで、そうやって謎解きをしてきた人間はいたんだよ。全部外れだったけどね。まぁ、聞いておくよ。外れたら蝶野という男が死んだこともあるし、僕が保護してあげるから安心してね」


 通報間違いなしの発言を亜久那が言って、元女警官が手錠があればとか呟いているが、その時は元女警官も捕まってしまうかもしれない。


「名探偵レキ! 真実はいつも私が作る! というわけで謎解き編です」


 ふんふんと鼻息荒く、得意げな表情でノリノリで話を始めるおっさん少女であった。いつかこんな探偵もやってみたかったんだよねと、漫画であったかっこいいシーンは全部やりたい遥である。童心で形成されている中身のおっさんだ。


「では、解決編といきましょう。犯人はこの中にいない!」


 びしりと指を空にさして遥は叫ぶ。


「犯人はこの中にいない? いや、このゲーム世界を脱出する鍵をみつけたんじゃないかい?」


 綾が首をコテンと傾げて尋ねてくるので、鋭い眼光をみせたいけど、可愛らしい眠そうな目でしか相手を見れない遥は答える。


「もう鍵なら見つけました。この世界はおさらばです。まぁ、わかりやすい鍵でした」


 ちらりと亜久那を見ると、苦笑を浮かべて口を開く。


「なんだい、それは僕が犯人とかゲームマスターとかそんな感じの人間だと言いたいのか? それはこの1年半ずっと心無い人間に言われてきたよ。で、ずっと監視をするというんだろ? 良いよ、可愛い君ならずっとそばにいても」


 ニヤニヤといやらしい表情へと変える亜久那を見て、ひょいと肩をすくめて遥は首を横に振る。


「違うんです。貴方はゲームマスターではない。この世界は粘土細工のしょぼい世界です。それはそうでしょう。ボス一人で青森県の全てを塗り替えて補充用の凶悪な再生力を配下に与えて維持をし続けるなんて、力がいくらあっても足りないでしょうし」


 そうして遥は綾へと視線を向けて


「そう思いませんか、綾さん?」


 戸惑った表情の白衣の少女へと声をかけるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 割とあっさり流しすぎて読者はついていけないけど、本当に死んじゃったんやね・・・・・悲しい・・・・・
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