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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
16章 バイオなゲームを楽しもう

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257話 おっさん少女はゲームな街を散歩する

 薄暗いビルの通路。蛍光灯は砕けており、ところどころにまだ動いている蛍光灯がチカリチカリと光っているが、薄暗さを消すまでにはいかない。瞬く蛍光灯の灯りの下、そんな通路によろよろと数人のゾンビが欠けた肉体に血で薄汚れた服をきて、ずりずりと足を引きずるように徘徊しており、生者を呪ううめき声をあげていた。


 通路にはそのうめき声が響き渡り、不気味極まりなく恐怖を感じるシチュエーションである。そんな通路の陰に隠れて少女はハンドガンを構えていた。


 そっと通路の陰から覗きこみゾンビを確認する。


「どうやら通常タイプのゾンビのようですね。スクリーマーとかではなさそうです」


 ホッと安心すると、少し離れた仲間へと人差し指をフリフリと振ってみせる。その行動に首を捻る仲間たち。意思が通じていないので、今度はブンブンとちっこい腕を振り回すが、それでもわかってくれなかったので、小柄な身体をへニョへニョと動かして魔力を吸い取る不思議な踊りをする美少女であった。


 謎のパントマイムでもわかってくれないみたいで、不思議な表情を仲間がしていたので、頬を膨らませて、てこてこと少し離れた壁際に戻って声をかける。


「も〜、敵は3匹いますよってハンドサインを出していたじゃないですか」


 プンスカと怒りながら言う遥であるが、苦笑してナナが答える。


「あれは謎のパントマイムにしか見えなかったよ。レキちゃん、ちゃんとハンドサインを覚えた?」


「え、えぇ、覚えましたよ? もう完璧です。人差し指だけで敵がいる。二本の指で敵がたくさんいる、旗を掲げたら横断歩道を渡ります、ですね」


 目の中の魚をバシャバシャと泳がせながら答えるので、覚えていないことは丸わかりであった。なんだか、ハンドサインって、かっこいいよねという童心から見よう見まねで使うおっさん少女である。


 はぁと、ため息を吐いてナナがメッとおっさん少女の額をつつく。


「だから謎の踊りにまでなったわけね。もぉ、レキちゃんは仕方ないなぁ。ちゃんと勉強しないとね」


 仕方ないと言いながら、嬉しそうにするナナである。渋々遥も、はぁいと頷く素直なおっさん少女であった。頷くだけで、あとはウィンドウ越しにサクヤに教えてもらおうと画策しているのである。カンペよろしくサクヤと視線を送ると、くねくねと身体を揺らしてドヤ顔で返すので、なんだろうと首を捻る。


「トイレに行きたかった? 我慢しないで行って来ていいよ」


 サクヤをいたわる遥であるが、サクヤは頬を膨らませてプンスカと怒る。


「もぉ〜。ご主人様、今のは了解しましたのサクヤ一刀流ハンドサインですよ。今度教えますね」


「ハンドサインのどこらへんに一刀流が必要かわからないね。ごめん、カンペはいらないや。やっぱり自分で覚えるよ」


 もはや不安しか覚えないサクヤの返答に、にこやかな微笑みを返すのであった。お互いに似たもの同士の主従の二人である。


 気を取り直して、サブマシンガンではなく、このエリアで手に入れたハンドガンを構えて、ゾンビたちへと銃口を向ける遥たち。


「ていっ!」


 鈴を鳴らすような可愛らしい声音で遥が引き金をひく。隣で銃を構えたナナと静香も引き金をひき、乾いた銃声とともに銃弾は飛んでいきゾンビたちの頭へとショットを決めていく。


 あっさりと全員倒して安心する三人。だが、三人の後ろから銃弾がさらに三発放たれて、倒れ伏したゾンビへと命中する。


「このエリアで生き残るルールその一ゾンビは必ず二度撃ちすること」


 そう告げるドヤ顔の亜久那が撃ったゾンビたちは灰へと変わっていった。


 それを満足げに見てから話を続ける亜久那はこちらへと自慢げに教えてくる。


 あれから、食料を調達するにも敵と出会った時のルールを教えておこうと、本人は爽やかに見える笑顔でおっさん少女たちに同行するように来たのだ。


 ほ~、頷きながら感心する4人。そのルールは映画でみたことあるよとツッコミを入れたいが我慢する。その態度に満足したのか歩き出す亜久那。


「それじゃぁ、ついてきて。これから安全な食料の取り方を教えるからさ」


 そうして、てこてことおっさん少女は亜久那の後についていく。途中でやはりゾンビたちがいたが、亜久那は危なげなく慣れた様子でゾンビたちを倒しながら先生役をこなす。


「ああいった普通のゾンビは二度撃ちで大丈夫だけど、他にもゾンビはたくさんの種類がいるからね。細かく教えていくよ」


 気さくなキャラっぽく話しながら、ある程度ビルからビルのつり橋を移動して、ビル内に移動して立ち止まる。


 人差し指で、し~っと口元で静かにするようにジェスチャーをして中を見るように手ぶりで教えてくる。


 なにかゾンビがいるのだろうと、こっそりと遥たちが部屋を覗く。覗いた部屋の中には四つん這いになっているゾンビがきょろきょろと辺りを探りながら歩いている。


「あれは犬ゾンビだ。ゾンビ犬じゃないよ、犬ゾンビだ。かなりの速さでこちらへと襲い掛かってくるゾンビだね。あれを見つけたら倒しておいた方が良い。どこまでも追ってくるからね」


「………あぁ、サイレンが鳴ると復活する系のゾンビですね。ありましたね、そんなゲーム」


 たしかゾンビたちの視界で見ながらクリアするホラーゲームだったはずだ。遥は最初の警官との出会いで怖すぎて止めた覚えがある。ゲームを買って1時間でこりゃ怖いしクリアできないし無理だなと放置した伝説のゲームである。たしかCMが怖すぎて放送禁止になったと聞いて興味を持って買った覚えがある。


「復活しないのが良いところさ。さっさと片付けるとしようかな」


 亜久那は背負ったショットガンを取り出して、腰だめに構える。犬ゾンビは2匹程いたが、亜久那は軽く引き金をひく。


 無数の散弾がばら撒かれるが、距離が遠く数発が犬ゾンビに当たったのみであった。すぐに犬ゾンビたちはこちらへと気づいて走り寄ってくる。


 かさかさとGみたいな動きで近寄ってくるので、生理的な気持ち悪さを感じる敵である。ガシャコンと慌てずに亜久那は弾丸をこめて近づいてくる犬ゾンビへと1発ずつ、ドンドンとショットガンの轟音をたてさせて吹き飛ばす。


 近くではそこまで狙わなくても散弾なので命中して犬ゾンビは倒されていくのであった。


 ふぅ~と、かいてもいない汗を拭うふりをして亜久那はこちらへと声をかける。


「どうやらこれだけみたいだね。レッスン2強敵はショットガンで倒せ。ショットガンは最強の武器さ。それでは食料があるか探索しようじゃないか」


 は~いと遥たちは多少の呆れを見せながら中に入る。そうすると奥にある自販機が赤く光っていることに気づいた。内心ではロケットランチャーが最強だよと思うが、もはやそこまでいけば戦車も倒せてしまうだろう。ショットガンだとヘッドショットを狙いすぎて、ゾンビが近寄りすぎて噛まれること多数の経験があるおっさんである。だって頭を狙えば1発で倒せるんだものと欲張り狙い定めて、狙いすぎてがぶりと噛まれるのだ。


 サンドイッチかなと見てみると、教えてもらった自販機と中身が違う。物凄い懐かしい自販機が赤くランプを点灯していた。


 それに気づいた亜久那が嬉しそうな表情を浮かべて自販機を指さす。


「やったね、あれはレアな自販機だよ。うどんとかトーストが温められて出てくるんだ。君たちラッキーだったね」


「コレハスゴイヤー。ワタシタチラッキーデスネ」


 全く心のこもらない遥の棒読みのセリフでも亜久那は満足したようで、こちらへと声をかける。


「他にも危ない罠とかギミック、敵の倒し方も知っているから、僕はリーダーなわけだ。そこの筋肉のみの男よりも頼りになるかもしれないよ?」


 ぱちくりとウィンクをしてアピールしてくるが、小太りで鍛えてもいなさそうなひょろそうな細い腕や脚を見せており、ウィンクは但しイケメンに限るという名言を亜久那は知らないと見える。


「僕は今回は食べるのは良いや、君たち食べて良いよ。僕は通路奥で見張りをしてくるからさ」


 あくまでで爽やか青年のキャラを解かずに亜久那はそのまま部屋を出ていく。


 部屋を完全にでて、近くにいないと判断した遥は唯一生存者のコミュニティでついてきた白衣の少女へとうんざりしたように尋ねる。


「なんだか、えっちな視線を向けられている感じがしますよ? どうもナナさんたちよりも私へと粘つくような視線を向けてくるんですが?」


「さぁ、彼はいやらしい目で見てくることは多々あるが、誰か特定の女性と深い関係になったという話は聞かないな」


 綾が予想通りの問いかけだよという感じで、口元を軽く曲げて笑う。それは妙齢の女性には興味を持たない少女趣味なのではと疑いを持つ遥。もし手を出してきたらそれなりの罰を与える気満々である。それを聞いてガルルと同類の可能性がある元女警官が警戒を見せているが。


「この自販機は懐かしいな………。俺が子供の時は結構そこら中にあったもんだった」


 蝶野が感心したように目の前にある自販機を見る。いくつか並んでおり、ハンバーガーやトーストを熱々で出す物。うどんやそばをその場で熱々な状態で出す物とたしかに凄い懐かしい物ばかりである。


 自分も子供の時にスイミングスクールの帰りにお小遣いを握りしめてハンバーガーを買ったものだと懐かしく思う。お腹が空いていたのでペラペラのなんの肉かわからないものを挟んだハンバーガーでも熱々で美味しかったのだ。


 いや、今は美少女レキなので珍しい表情をしなければと思い直して、静香へと視線を向ける。


「そんなに懐かしい自販機なんですか? 静香さん」


 と、視線を向けた先の静香が般若となった。両手をグーにして、おっさん少女のこめかみをぐりぐりとして恐ろしい声音で言う。


「そ・れ・は、私の歳がそれだけいっているという意味なのかしら? お嬢様、もう一回発言を許すわ」


「ぐぇぇ~………。え、ええと蝶野さんは懐かしいみたいですね、この自販機と言ったんです」


 静香の言葉を恐れて言いなおす、迂闊な発言をしてしまったと反省するおっさん少女。女性にとって年齢はデリケートな話なのだ。


「ふふふ。私もこの自販機を見たのは初めてだわ。本当に初めてよ」


「私も初めてだけど、ニュースでやっていたよ。日本ではもう数台しかないって」


 ナナも話に同意してくるので、うやむやにできたと安心して遥は話を再開する。


「静香さん、作り方を教えてください。ボタンを押下するだけでいいんですか?」


 静香さんなら知っていますよねと迂闊な発言を反省したはずの遥の発言。頭ぐりぐりの刑が再執行された瞬間であった。



 ガシャコンウィーンとトーストやらなにやらが自販機からでてくるのを思い思いに食べる遥たちだが………。


「粘土は変わらないんですね………。ただ熱々なだけです」


 ちらりと綾をみるとそれでも美味しそうに食べているので、このエリアの食料事情の悲惨さがわかるが、普通の食事に慣れている遥たちには辛い。


 綾が美味しそうに食べているのに、捨てるのはかなり罪悪感が湧くのでアイテムポーチに入れて隠す遥。ナナや静香もこっそりと隠しておいてと渡してくるので苦笑交じりに受け取る。蝶野だけはうほうほとさすがのゴリラだ、いや軍人さんだ。しっかりと全部食べた。ナナも同じ生活をしているのだが贅沢に慣れてきているのかもしれない。防衛隊は行軍訓練などしないだろうし。そしてここに来てからはアイテムポーチから取り出したご飯を密かに食べている面々である。だって、物凄いご飯がまずいんだもの。


 ちらりと部屋の外を見て、亜久那が視界にいないことを確認して軽く腕組みをしながらクールなる女スパイな静香が口を開く。


「で、あの男、怪しいわよね? とりあえず殺してみない? なにか変化があるかもしれないわよ?」


「たしかに怪しすぎるほど怪しいんですが。アニメならば、こいつ犯人でしょとみんなからコメントでツッコミを受けるぐらいに怪しいんですが」


 もうこのうえなく怪しい。鍛えている風にも見えないのにゾンビを退治するし、汗もかかない。ドヤ顔で説明をしている中でレアな食事を見つける。


 亜久那が無双して、みんなからちやほやされる、そのための世界のような感じである。


 綾がわかる、その言葉はわかりすぎるぐらいにわかるよと頷きながら答えてきた。


「私たちも最初は疑ったんだけどね。彼はたまに女性とどこかに消えるが、その女性が行方不明になったとは聞かないし、怪しいのは姿と行動と言動ぐらいなんだ」


「いやいや、それは全部怪しいんですよ。監視とかしたんですか?」


 呆れて遥がツッコミを入れる。全部怪しいとわかっているなら、調べたりしているのではなかろうか?


「もちろん、最初のうちはしていたよ。でも彼が活躍するなかで死者はでないんだ、強力な敵はうまく誘導したりして、私たちを逃がしてくれるし」


 う~んと、ちっこい腕を組んで悩んでしまう遥。怪しすぎるほど怪しい相手はミスリードの可能性があるのだ。とりあえず殺そうという静香の考えはわかるが、たしかダークミュータントは卒業したよねと確認したい。確認したいのは、まず静香からという味方から確認しないといけないかもしれないおっさん少女。


「それならば仕方ないでしょう。少し様子見をしましょうか。あと、怪しいのは」


 続けて話を続けようとする遥だが、大きな時計の音に阻まれる。ゴ~ン、ゴ~ンと古めかしい鐘の音をたてて周りへ響き渡る。


「もう12時か、探索すると時間がたつのは早いね」


 綾が時計塔の鐘の音を聞いて呟く。はぁ~と、ため息をついて遥は話を再開する。


「メインホールにある女神像。あれにはメダルをはめる場所が3つあったことを確認しています。でもメダルはない。そして時計塔へとつながる通路も見つからない。最後にあの怪しいリーダーである亜久那さん。ちょっと怪しいのが多すぎて、どこから手を付ければいいかわかりませんね」


 もう少しヒントはないのだろうか? ここのボスは正々堂々とヒントの紙きれをそこらへんに置いておくべきだと憤慨するおっさん少女だが、誰が好き好んで破られるための結界を作るのかという事だ。現実では謎ときをさせないゲームマスターがここのボスだろう。


 綾がニヤリと悪戯そうに笑い、遥へと人差し指を突き付ける。


「あと、怪しいのは君たちだよ。明らかに戦い慣れている面々。それも蝶野殿はわかるが年端もいかない少女の君と、妙齢の女性と元気な女性。いったいどういう組み合わせで、なにがあってこの世界に迷い込んだのかな? 教えてくれるとありがたいが」


「はぁ、まぁ、たしかに私たちは客観的に見ると怪しい謎の観光客ですよね。ふふふ。ついに謎のキャラとなれましたか。照れますね」


 テレテレと今まではアホだとばれるので、謎を呼ぶ少女ではなく、アホな展開を呼び起こす少女となっていた遥である。なので、謎と言われると嬉しさでニマニマと口元を緩めてしまう。


 追及するように目を光らせて、白衣の少女はこちらを見てくるが、照れてくねくねと体を動かすおっさん少女を見て、教えてくれなさそうだと嘆息する。まぁ、教える気はないんだけどね。


「食べ終わったかな? それじゃ次のレッスンといこう。油断しないようにね、みんな」


 亜久那がてくてくと部屋に入ってきて、食べ終わっている面々を見渡して次の行動に移ろうと提案してくるので、皆で頷いて移動を開始する。


「あ~。これは意外と面倒ですね。本当に面倒です。生存者の位置が確認出来たら行動を開始したいのですが、上手くいくんでしょうか」


 ぼやく遥に静香がふふっと妖しい微笑みを見せる。


「とりあえずはこの地域に存在する貴金属店の宝石を保護するのが先決ではないかしら?」


「それは保護ではなく、略奪と言うんじゃないですか? 散らばる宝石を集めたプレイヤーに武器を売るのが静香さんの役目では?」


「あら、最近の武器商人はアグレッシブなのよ。主人公たちより先に宝石を回収するの」


 飄々と言ってくる静香に苦笑いをしつつ、小声で確認する。


「ねぇ、静香さん。誰がボスなんでしょうか? 私的にはボスがこのコミュニティに紛れ込んでいると推測します」


「そうねぇ………。言いたいことはわかるけど、どうなのかしら。裏の裏でわかりやすいやつがボスかもよ?」


 う~ん………全くその通りと困り顔になりながら、前を進む綾へと鋭い視線を向けるおっさん少女。それとここのエリアの宝石はあれだよねとエリアクリアまでは静香には黙っておこうと決意するのであった。

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