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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
15章 眷属を作って遊ぼう

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244話 幹部を護衛するおっさん少女

 更地が広がる関東地域。その中でも湾岸から轟音をたてながら走行をしている巨大な機動兵器があった。


 トトトと軽い振動をたてながら、重力システム搭載強襲地上揚陸艦しいたけは移動していた。70メートルはあり、その特徴である敵の攻撃や支援超能力を妨害、または無効化する大型のパラボラアンテナが後部に取り付けられて、椎茸のように傘を開いていた。


 前面には要塞破砕用大型グラビティ砲が一門設置され、脇をバルカン砲が固めている。重厚な特殊装甲にグラビティシールドを持つ新型揚陸艦である。フォトンシステム搭載揚陸艦も碌に使わないで、重力システム搭載揚陸艦を建造しちゃったりする。


 だが、これはナナシが搭乗する揚陸艦とは違う物だと、乗っている人も違うのだとアピールするために必要であったのだ。


 その中で司令官席に座る艷やかな黒髪に眠そうながら、綺麗な黒目、桜の色のちっこい唇と可愛らしい顔立ちの小柄な子猫のような母性本能を喚起させて、女警官がお持ち帰りしそうな美少女、朝倉レキがいた。


 ふわぁと可愛く小さなお口であくびをしながら、流れた涙をちっこいおててで、こしこしと拭き取り美少女は不機嫌そうに呟いた。


「ねぇ、なんで椎茸なの? なんで? どうして? 新型なのになんで焼いたら美味しそうな椎茸? いや、椎茸は食べ方によるけどさ」


 もはや何回目の嘆きだろうか。言っても仕方ないとはわかってはいるが、それでも口に出してしまうのであるからして。


「君、それは大樹に対する批判かね? 那由多代表に対する批判かね? 素晴らしいネーミングセンスじゃないか」


 なんとそれに答えたのは野太い声音の中年の白人男性であった。オールバックにしており、身体は多少肥えており、少々のダイエットが必要な様子だ。


 まさかの男性が新型の揚陸艦に乗り、しかもレキへと警告じみた声を発している異常な状況。しかし、まったく遥は動揺を見せずに


「ほぉ〜、この機動兵器群の名前は今までサクヤが決めていたと、そう言うんだね?」


 ジト目での問いを受けて、突如ゴロンと椅子にもたれかかるようにして呟く男性。


「現在、プレイヤーは離席しているか、電源を入れておりません。少し時間を置いてご連絡ください」


 むむと力を無くした肥えた男性を見ながら、ニヤリと笑みを変えるおっさん少女。


「あ! 大変だ! 私のあられもない寝起き写真がそこに!」


 クワッと目を見開いて、男性が動き出し床に這いつくばり叫ぶ。


「ご主人様! どこですか? 裸で寝ているご主人様の寝起きの写真!」


 とうっと男性に蹴りを入れてレキではなく、遥だとわかるアホな発言をするおっさん少女であった。


「その人形で、ご主人様呼びは禁止ね? 一回言うごとに、一緒にお風呂に入ることを一ヶ月はしないから。ナインと一緒に入るからね?」


 フンスと息を吐いて、それだけは譲れません。ご主人様呼びは美女か美少女なメイドしか許しませんと両手に腰をあてて宣言する。


「マスター、それは遥様のぼでぃで一緒に入るということですよね? わかりました、今姉さんからコントローラーを奪いますので、少し待ってくださいね?」


 にこやかな輝く笑顔でナインがウィンドウ越しに隣にいるであろうサクヤへと襲いかかっている様子。


 すぐにウィンドウがもう一つ開き、サクヤが焦って言ってくる。


「ご主人様! このままではコントローラーを奪われます! ナインは早口で何万回とご主人様と人形に言わすつもりです! ヘタレなご主人様がお風呂でアワアワプレイをナインとできるんですか! 止めてください!」


 思いがけない展開に口元に手をつけて、アワアワと早くもアワアワプレイをして慌てるおっさん少女。


「ごめん! 今のなし! 無しだから、ナインさんややめてください! 代わりにご飯抜きに罰を変更するからっ」


 むぅ〜と唇を尖らせて、ナインはぴょこんと人差し指をたてて言ってくる。


「仕方ないですね。変更されたら仕方ありません。マスターと一回一緒にお風呂に入るだけで我慢しますね」


 既にナインの中では決定事項らしい。アワアワプレイにはなりませんように、背中を流すだけで終わりますようにとヘタレな遥は思いながらも、圧力を感じる視線でのナインの宣言に頷く。でもその好意は嬉しいやと、美少女はてへへと照れて微笑んでしまうのであった。


 そんなコントというか、おっさん最大のピンチは終わり、指令センターを見渡すと、いつものツヴァイたちだけではなく、金色のパワードスーツを着たガタイの良い男性たちが身動きひとつたてずに立っている。


「ねぇ、金色のパワードスーツはかなりの趣味の悪さなんだけど? これどうにかならないの?」


 遥がため息を吐きながらの質問をすると、再び力を取り戻した肥えた男性が口を開いた。


「この戦術室長ゴップ・プライレスに相応しい戦士たちではないか、彼らは選ばれた黄金の戦士なのだ。ゴールドファイターと私は名付けた。ブロンズやシルバーよりも強そうな名前だろう」


 グハハハと嫌味そうなゴップは厭らしそうな笑いを浮かべる。


 ひーふーみーと、ちっこい指先でゴールドファイターを遥は数えて


「9人しかいないよ? 12人いないんだけど?」


 選ばれた戦士たちにしては12人いないよねとのツッコミである。


「それは仕方ない。無口な天上の美しさをもつクール系美女、サクヤ様は最大10人までしか私たちを操れないのだから」


 得意げに語るゴップを疲れた様子で見つめて、ぽそりと呟いた。


「自分で自分を天上の美しさとか引くわぁ〜」


「いやぁ〜、ちゃんとツッコんでください! 真面目な表情で言わないで下さい!」


 コントローラーを持ちながら、ウィンドウ越しにサクヤが涙目で叫ぶのであった。



 というわけで、なぜこんなことを皆でしているのかというと、理由がもちろんある。もちろん理由などないときもある。理由がないときの方が多いかもしれない。


 若木シティへと海辺からわざわざ大回りして移動している揚陸艦しいたけの中で、落ち着いた遥はモニターを見ながら四季たちとお話をしていた。


「世界規模………。空中戦艦が本部……ねぇ……。なるほどね、だからわざわざ海辺から入って来たのね」


 ふむふむと四季たちが集めた情報を見ながら、重々しく頷きたいが、お子ちゃまがごっこ遊びをしているようにしか見えないおっさん少女。


 アニメとかで、ちっこい少女が偉そうに指示を出しているが、現実では頭をナデナデされて威厳はないよねと思いながら推察する。


「この情報はイーシャや静香が送ってきました。港や若木シティの各所にて空中を見張る監視員がいることから、確度は高いと思われます」


 四季がきりりとかっこよく軍人のように背筋をびしっとしながら立って告げてくる。


「ならばそれを逆手に取り、本部が空中戦艦であり、世界規模で動いていると思わせたほうが良いと愚考します」


 ハカリもきりりと同じように告げてくるので、私もかっこよくしないとねと、すちゃっと椅子から立ち上がりかっこよくしようとする。


 だが、哀れ小柄なるレキの背丈では机に大半の身体が隠れてしまうので、かっこよくどころか、どこにいるのかわからない状態となったので、わざわざ椅子の上に、んしょと立ちながら話すアホな美少女。


「まぁ、たしかにくたびれたおっさんが主人の零細企業だと思われるよりマシだよねぇ」


 会社員3人+ツヴァイたちドロイドでは零細過ぎて不安しかないだろう。どこかの商店でも、もう少し人を雇っていると思われる。


「なので今回はドールマスターサクヤが10人の人形を操り幹部ごっこをしようという作戦です」


 フンスと得意気なる表情でサクヤが告げてくるので


「AIをのせた普通のドロイドじゃ駄目だったの? 人形を操るの面倒じゃない?」


 遥の当然な考えをサクヤがキョトンした意外なことを言われたという表情で小首を傾げながら聞いてくる。


「え? おっさんたちをAIをのせたドロイドにするんですか?」


「……ないな。なるほどね、でも外までサポートできるの? 今までしたことなかったじゃん?」


 おっさんがドロイドといえど増えるのは嫌な心の狭い遥である。まぁ、普通の男性なら致し方ないだろう。特におっさんならば。そして、今まで遠隔サポートはできなかったはずだと確認もする。


「ふふふ、それができるのです。遥様+2になったので、善なる大樹の力が及ぶ関東地域なら遠隔サポートも可能になったのです! 褒めても良いですよ!」


 ふくよかな胸をぽよんと張ってサクヤが偉そうなドヤ顔をして告げてくるが、そこにナインも口を挟む。


「マスターの様子ならば、次の神化にて善なる大樹範囲に私たちは出歩くことが出来ます。お外で手を繋いでデートができますね」


 フフっと両手を合わせて幸せそうな微笑みのナインの言葉に、おぉ!と遥は喜ぶ。喜んで、小柄なる身体をフルに使って踊っちゃったりもするおっさん少女である。


 美少女が笑顔で踊る姿はなんとも可愛らしいので、サクヤがカメラドローン、カメラドローンを使わないとと幹部用コントローラーを放り出して、なにやらカメラドローンの操作に全力を尽くしていそうなので、そこはかとなく不安が心に浮かぶのであった。大丈夫かな?大丈夫じゃなさそう……。


 それとお外でおっさんがナインと手を繋いでデート……捕まりそうな絵面であるし、妨害が多数ありそうな予感もする新人類に進化したかもしれない遥であった。


「幹部による視察、そしてそこから続く大勢の大樹職員の出入り、最後にメイドと来れば不自然に思われないはずです」


 ナインの理論は完璧なような、スカスカな理論のような、秋葉原でうろついていたメイドよりも服の仕立ても美少女度も比べ物にならない金髪ツインテールメイドの言うことなので不安だが、やるしかないと決める。


「それじゃあ作戦どおりにいこうか。もう豪族たちには連絡済みなんだよね?」


 コクリと頷く四季を見て、続けてサクヤへとウィンドウ越しに視線を向ける。


「サクヤ、あんまり変なことはしないでよ? 大樹が恨まれるようなことはくれぐれも止めてよ? 昼行灯たちが復活するようなことは止めてよ?」


「司令、それも作戦のうちに入ります。情報を集めるには様々な方面が必要となりますので」


 ハカリが作戦ですと自信満々に告げてきて


「ドーンと私に任せて下さい。面白おかしい豚の舞を見せますので」


 ドーンと胸を叩いて、自信満々なサクヤである。


 その姿を見て、ドーンと不安になる遥である。


 なにごともなければ良いなぁと思うが、作戦は適当にそれぞれが即興劇のようにやりますという、もうこれは作戦じゃないよねとツッコミどころ満載な作戦であるが、それ以上細かい内容は教えてくれるつもりはないらしい。


 神の演技と呼ばれるおっさん少女なら、凄い役に立つのに、仲間はずれなんて酷いと思うが、周りの対応は極めて正しいと思われるのであった。さすが頭脳明晰な四季たちだ。


「では高速で同時に10個までコントローラーを使いこなし、タッチパネルをピアノを弾くが如く操る私の操作に期待していてくださいね、ご主人様」


 パチリと魅力的なウィンクをするおちゃめな美女の銀髪メイド。あぁ、なんだかんだいって、サクヤも可愛らしいなぁと思いつつ、腹を括る。


「司令、そろそろ若木シティに到着します。既に百地代表たちは集まっているようですね」


「モニター拡大します」


 ツヴァイたちが報告しながら、前面モニターを拡大すると豪族や蝶野、仙崎、ナナの姿が見える。他にもチラホラと遠目に離れて玲奈や昼行灯たちの姿も見えるので極めて厄介なことになりそうな予感。


「はぁ〜、ほんっとうに頼むからね? サクヤ、信じているからね?」


「ご主人様も護衛として、ついてきているんですから、面白おかしいことをしましょうね」


「話の文脈が意味不明だと思うのは、私の国語の点数が悪いからかな? ちょっと意味がわからなかったよ?」


 不安バリバリな遥をクスリと微笑んで、コントローラーを10個、キーボードを10個自分の周りに置いて、叫ぶサクヤ。


「ドールマスターサクヤ、操作開始します! ゴップ他ガーディアン起動! あ、ちなみに飲み食いもできますよ、焼却炉のような胃が全て焼き尽くしますし」


「もったいないから、できるだけ飲み食いはなしでね。お願いだよ?」


「ふふふ、ドールマスターって、なんか響きがいいですよね? ドールマスターサクヤ! なにかアニメで主人公になりそうな感じがしますよね!」


 サクヤが目をキラキラさせて、主人公っぽくしようとしているので、親切に教えてあげる遥。


「いや、おっさんドールを操る主人公はきっと需要がないよ、どこらへんに需要があるかもわからないからね」


 肥えたおっさんドールを操る美少女メイドが主人公のアニメ。需要がなさすぎる斬新さだ。ライバルキャラが美少女ドールを使っていたら、いつの間にか主人公の座はライバルと入れ替わっているだろう。


 え〜というサクヤの不満顔をスルーして、キリッと珍しく真面目な表情になるおっさん少女。


 プシューとブレーキがかかり、しいたけがその巨体を停止させる。


 ウィーンとハッチが開くので、てこてこと外に最初に出ると、豪族たちが緊張感を見せて立っているので片手をあげて、ムフフと可愛く笑う。


「やぁやぁ、今日は謎の幹部な朝倉レキのために集まってもらいありがとうございます」


 ムフフと幹部ごっこをしたい美少女がここにいた。豪族がまたもやレキの悪ふざけかと、額に青筋をたてて怒鳴ろうと息を吸い込む。


 だが、おっさん少女は物凄く手荒に後ろから肩を押しのけられてしまってよろめいてしまう。


「どけっ! 護衛として使ってやろうというのに、なんだその態度は!」


 苛立たしい声音で、ノソリとハッチから出てくるゴップサクヤ。


 その姿を見て、ピクリと眉を動かして、豪族がゴップへと視線をずらす。


「……ようこそ若木シティへ、大樹の幹部殿」


「うむ! ようやく大地を踏むことができて感無量である。歓迎の準備はできているかね?」


 傲慢そうに豪族たちをゆっくりと見渡して、ゴップは返事を返した。


 よろよろと態勢を崩すが、すぐに立ち直った遥が、マジですか、そのキャラでいくの?ちょっと大丈夫なのと一気に不安になるが、ウィンドウ越しにマジですとサクヤが口パクで言ってくるので邪魔をしないようにしないといけないのねと諦めるのであった。


 邪魔をしないようにもなにも、既に幹部ごっこをして邪魔をしており、そのためにより酷いキャラでいくことにサクヤはなっていたのだが。


「ええ、せっかくの幹部殿のご訪問なので歓迎の準備をしております。どうぞこちらへ」


 豪族が厳しい目つきでゴップを睨むが、どこ吹く風で気にせずに豪族の案内についていくのであった。同じく黄金チームもキラキラさせながらついていくので、その派手さに少し恥ずかしくなる遥は、少しだけ離れていこうかなと思う。


 だが、目ざとくゴップは離れたおっさん少女を睨み怒鳴る。


「さっさとこんか! 貴様は私の護衛のはずだ!」


「はい、仕方ないですね、謎の護衛が守りますので安心してください」


「ふん! 貴様の出番もそろそろ終わるだろう! 私の合理的にして確実な戦術が正しいと周りもわかるときにな」


 ワハハと笑いながら歩いていくので、ナナが凄い目つきで後ろから睨んでいる。今にも殴りかかりそうなのでちょっとやりすぎじゃないかなぁと思いながらついていく。


 四季たちの作戦がわかれば、完璧なフォローができるのに。私の力を見せたいなぁと思うおっさん少女であるが、周りがおっさん少女をフォローする方が大変であるとはまったく自覚はないのであった。


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