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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
15章 眷属を作って遊ぼう

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242話 皆で海遊びを楽しむおっさん少女

 海上をそこそこ高速で移動する機動兵器があった。小型のミニチュアサイズの軽騎士風なロボットである。


 海の上をぎりぎりで飛行しているので、飛行したあとは航跡が残り波を作っていた。


 常ならば敵を狙撃するための超高倍率のカメラアイを頭のバイザー型スリットから赤く光らせて、そのロボットは苛立たしげに声を発した。


「なんで、俺様が子供たちのボートを引くモーターボートみたいな真似をしているんだ? なんでこんな間抜けな姿になってんだ、姐御〜!」


 どうやら自分の姿をかえりみて、悔しいらしい。まぁ、戦闘用機動兵器のアイデンティティを持っているなら当たり前だろう。


 なぜならば、紐をチビカインは掴んでおり、その紐の先は後ろに浮かんでいるバナナ型浮き輪に繋がっているからだ。


 もちろん、その浮き輪には誰も乗っていないということはなく、ちびっこトリオが満面の笑顔でキャッキャと楽しそうな声をあげていた。


「きゃー、凄いはや〜い!」

「ふぉぉぉ〜! リィズはこれ初めて!」

「私も初めてです。意外と楽しいですね!」


 真夏の猛暑の中、強い日差しを浴びながら日焼け対策もバッチリな、レキ、リィズ、みーちゃんのちびっこトリオたちは、チビカインをモーターボート代わりに引っ張って貰って楽しんでいるのだった。


 ちびっこトリオたちはセパレートタイプの水着を青、赤、ピンクとお揃いで着て楽しんでいる。それを浜辺でパラソルをたてた下でサマーチェアに座りながら、そのトリオをのんびりとしながら静香が眺めていた。


 サングラスをかけて、グラマラスな肢体を黒いビキニで覆っており、テーブルには夏に相応しいトロピカルドリンクも置いている。


 う〜んと腕を伸ばして、気持ち良さそうに清々しい声音で静香が呟く。


「あぁ〜、日差しの元って最高ね。まるで黄金の煌めきの中にいるみたい」


「日差しの下って、静香さんパラソルの影にいて、さっきからのんびりと座っているだけじゃないですか」


 両手に腰をあてて、こちらも薄い青のビキニを着ているナナが呆れた表情で声を静香にかけた。


 ちらりとナナを見て、ふふっと笑いながら静香は答える。


「もう私も肌の状態を気にしないといけない年齢ですからね。荒須さんもそろそろ気にしたほうが良いわよ?」


「むぅ、私は大丈夫です! まだ肌はピチピチですし、大樹の日焼け止めとか化粧品を使ってますし」


 フンスと息を吐いてのナナをからかうように見ながら、トロピカルドリンクにささっているストローに口をつけて飲んでから告げる。


「お嬢様の肌はピチピチでしょう? お互いの肌を見比べると怖い思いをするわよ?」


「エヘヘ〜、そんな肌のみせっこをレキちゃんと? そんな、わたし達はまだそこまで深い関係じゃないですよ〜」


 顔を赤らめて照れながらくねくねと身体を軟体動物のように揺らすナナを見て、静香は呆れたため息をついた。


「そういう意味じゃなくて、若さの違いを教えようと思ったのだけど……、貴女は元警官ではなかったかしら?」


「最近のナナさんは乙女になりすぎているんですよ。ちょっと周りが煽りすぎたかもしれないです」


 椎菜が苦笑交じりにナナの様子を見ながら、砂浜をザクザクと踏み結花と一緒に近づいてくる。その手にはクーラーボックスを担いでおり、静香とナナのメイドズも色々な物を持ちながら一緒に歩いてくる。


 周辺にはざわざわと大勢の人々が楽しそうに、浜辺で遊んだり、海で泳いだりしているし、道の側には海の家が商売をやっていた。


「まったく……、海遊びツアーと言っても集める人数が多すぎるわ」


「姫様には貯金という概念を教えてやらないといけないな。使い方がいつもいつも豪快すぎる」


 ノシノシと豪族がワイシャツに短パンで、蝶野夫婦と一緒にビール片手に集まってくるので、一気に人が集まってきた。


「とうっ!」


 のんびりと話していると、空中をくるくると前回転しながら少女が降り立った。日差しに海水で濡れた身体がキラキラと輝いており、美しい。まぁ、キメ顔で降り立って、シャキーンと腕を伸ばしてポーズもしているので、アホっぽい子供にも見えるが。


「今日はこんなに人が集まって良かったですね! やっぱり海遊びは一人で遊んでも楽しくないです」


 ムフフと楽しげに微笑むレキ。レキでいいと思う。おっさんは海水と共に流されたのだ。きっと今頃は無人島に到着しているに違いない。


 そうなのだ。去年は一人で来て、極めてつまらなかったので、今回は周りが騒がしくなる中での海遊びをしたかったレキは大々的に若木シティ全体に海遊びに行こう格安1泊2日1000円ツアーを宣伝して、人々はその話に喜んでのってきて、大勢が海に押し寄せたのだ。相変わらずの計画性の無いおっさん少女であった。


「そうですね、誘って頂きありがとうございます、レキ様」


 いつの間にかイーシャがレキの隣にやってきて、頭を撫でてくるので、イーシャは頭を撫でるのが上手いねと気持ち良さそうに寛ぐ。


「まぁ、海の家から、列車の手配、人々の休暇に合わせるといたれりつくせりのツアーですからね、大樹はいくら出しているんだ?」


 仙崎ゴリラを含む暑苦しいゴリラ軍団もいつの間にかやってきて聞いてくるが


「ほとんどが大樹が出していますよ? 私はちょっとお金を出しただけです」


「姫様のちょっとはどれぐらいか聞くのが怖いがいくらなんだ?」


 豪族が気遣わしげにレキを見て尋ねる。その問いかけに困った表情で人差し指を頬につけて、困った表情で可愛らしく小首を傾げる。


「わからないです、メイドさんに頼んだだけなので」


 その答えを聞いたナナが、はぁ〜とため息をついてプンスカ怒り始めた。


「もぉ〜! レキちゃんのメイドさんには絶対に会わないと駄目だね! ちょっとお金の使い方を教えるように言わないと! 教育に悪すぎるよ、やっぱり私と一緒に住もう!」


 さり気なく一緒に住もうアピールもするナナであり


「メイドさんは良い人ですよ。いつも私を助けてくれますし。はぁはぁと疲れているのか、お風呂の時とか息が荒いときもありますが」


「……! それは危険だよ! 危険すぎるよ! そのメイドさんと会いたいから、今度話を通しておいてね!」


 危険度では最近どっこいどっこいの感じがするナナがレキに詰め寄り、サクヤの評判はドンドコ下がっていっている。もはや、このような嫌がらせをするのはレキではあり得ないので、遥であることがバレた瞬間である。


「ちょっとご主人様! 本当のことを言わないでくださいよ! 私の評判が下がるじゃないですか!」


 自覚がありすぎるサクヤがウィンドウ越しに叫ぶが、本当のことだと認めるのねと苦笑してしまう遥であった。水着姿は最高ですとカメラドローンを浮かべて撮影して、はぁはぁと息を荒げているのでフォローのしようもないだろう。


「子供好きなら、レキ様を可愛がるの当たり前ですよ、ナナさん」


 イーシャが微笑むが、メイドは絶対に子供好きだからというわけじゃないと感覚で見抜くナナはメイドに会わせるようにおっさん少女へと詰め寄るのを止める様子はない。


「あ〜、イーシャさんも子供好きですよね。け、結婚したら子供は何人欲しいのでしょうか?」


 仙崎ゴリラがイーシャへとわかりやすいアピールをして、周りのイーシャファンクラブも


「俺も子供好きですよ」

「今度孤児院に慰安に行きませんか?」

「一緒に買い物にでも」


 ワイワイウホウホと騒がしくアピールしてくるゴリラたちである。


「あ〜、もうウホウホうるさいわね! 私はのんびりとしたいのだから、イーシャさんは離れたところで水遊びをしてくれないかしら」


 ふりふりと手を振りながら、はっきりと言うことができる静香である。まぁ、ようやくミュータントから回復できたのだ。のんびりとして幸せを噛み締めたいのであろう。おっさんならば、はっきりと言うどころか、コソコソとその場を離れて行くに違いない。


 イーシャは苦笑しながらも、自分が原因とわかっているので、それではまたあとでと軽く頭を下げて、海に泳ぎに行くのであった。もちろんゴリラ軍団もウホウホとついていった。


「ふぉぉぉ! リィズも見参!」


 遅れてやってきたリィズと


「きゃー! みーちゃんも見参!」


 みーちゃんの二人が、それぞれチビアベルとチビカインに肩車されて、フヨフヨと浮かびながら興奮した様子でやってくる。


「なんで、俺様が子供の乗り物代わりにされているんだよ!」


「仕方あるまい、主殿に命令されたのだからな」


 愚痴るチビカインとチビアベル。


「静香、静香! リィズもこの玩具欲しい! いくら? いくらなの?」


「みーちゃんも欲しい! お小遣いで買える?」


 無邪気な表情で尋ねる二人は愛らしさの固まりだ。おっさん少女が言われたらタダであげてしまうだろうことは間違いない。


 だが相手は海千山千の静香であったのが、残念なところだ。


 静香はチェアに座りながら答える。


「だめよ、それは非売品なの。同じようなのをお嬢様は作れないの?」


「むぅ、こんなに凄いAIを造る技術は大樹にはないですね。私も一つ欲しいんですが」


 ツヴァイを作るときは知識も技術も必要ない。スキルがあって作成ボタンを押せば作れるので嘘は言って無いよねと真実も語らない遥である。遥には知識も技術も知力もないのだ。いや、考えれば知識も技術も思い浮かぶので、知力が無いというのが正解である。


「なに、そんなところで集まってるの〜?」


「スイカをお持ちしましたよ」


 水無月姉妹もやってきて、騒々しいことこの上ない混沌極まる集団となったが、おっさん少女は穂香の告げてきた内容にキランと目を輝かせて微笑む。


「スイカ割りですね! スイカ割りをするんですよね?」


「ん〜、僕は構わないけど?」


「どうしますか?」


 水無月姉妹の言うことはもっともだと頷く。スイカ割りはスイカがグチャグチャになってもったいないので嫌がる人もいるのだ。というか、おっさんぼでぃの時は疲れそうで遥も嫌かもしれない。だが、今は無邪気極まるレキなのであるから、問題ない。楽しそうなのでやりたいのであるからして。遥も周りに尋ねる。


 うるうるお目々の上目遣いで、おずおずと口元に紅葉のようなちっこいおててをあてての問いかけである。既にその可愛さにノックダウンしている銀髪メイドがいるので、結果はわかっているのと思うが。


「スイカ割りをしませんか?」


 しかもリィズとみーちゃんも楽しそうに期待感溢れるワクワクとした表情である。


 こんな可愛らしいトリオのお願いを拒否できる人間がいるわけはなかったのである。


 


 砂浜にビニールを敷いて、その上にスイカをのせてのスイカ割り。ここまで本格的なスイカ割りはしたことがないよとわくわくした遥であったが、ちょっと予想外のことが起きていた。


「せいっ! 僕にはわかる! 見えちゃうんだ!」


 晶があっさりと、皆の声援を無視してスタスタと目隠しをしながら、木刀でスイカを叩く。


「丸見えだね、ん〜、簡単すぎるかも」


 パカンと叩いて、目隠しを外す晶。割るほどに力をこめないのは、次の人のためであろう。アニメなどでは簡単に割られてしまうスイカだが、晶は普通に次の人のことも考えられる良い子である。


 次の人~と誰かが聞いて、みーちゃんが目隠しをされて、キャーキャーと楽し気に叫びながら、蝶野父にぐるぐると体を回転させられているので、次は大盛り上がり間違いなしだ。


 それをニコニコ笑顔でおっさん少女は見ながら、椅子に座ってのんびりとしている静香へと楽しそうに声をかける。


「随分、人前で無防備なんですね。凄い寛いでいるではないですか」


 ふふっと妖艶な笑みを見せて静香がおっさん少女へと視線を向ける。


「そうね、肌を見せるのは危険な感じがしてたから無意識に用心していたのね。今なら理解できるわ。でも、今はもう用心することなく寛いで大丈夫だから、夏の海を楽しむことにしているの」


 美しい肢体を見せながら、のんべんだらりと寝そべる静香であるので、ムフフとおっさん少女は悪戯そうな笑いに変える。


「これはあれですか? 恋愛なども頑張っちゃう感じですか? もう遠慮することもないですし」


 その言葉に静香も悪戯そうに笑い返事をする。


「あら? 私は既に恋愛をしているわよ? この煌めきに」


 指につけている装飾のないシンプルな金の指輪を見せつけるので


「そうでした。そうですね。静香さんは何も変わっていないみたいで安心しました」


 どことなくホッとした様子の遥である。眷属になるというから、性格とかが大幅に変化するかもと内心で考えていたのだ。静香のアイデンティティが無くなったら、それは別人ということになるのではないかと思っていたのだ。


 それでも、もはや大樹の神域で暮らす限り、眷属にする一択であったのだが。


 本人はどうやらミュータントから治癒されたとしか感じないらしい。ナインも言っていたが、上位存在が姿を隠して命令をしなければ、意識することはないらしい。


 ならば、このまま静香らしく暮らしてもらおうかと遥は思っていた。上位存在など、干渉せずに姿が見えないぐらいがちょうど良いのであるからして。


 おっさん少女の様子が少しおかしいことに静香は気づいたのだろう。首を傾げて疑問の表情で尋ねてくる。


「なにか気になることがあったみたいね。なにが気になったのか教えてくれるかしら?」


「う~ん。もしかして変わってしまうかもと思っていたのです。それはちょっとばかり困るなぁと思っていました。やっぱり静香さんは貴金属を前にするとポンコツになるぐらいがちょうどいいかと思っているので」


 素が酷い女スパイの性格だからねと副音声にてお伝えする遥である。もちろん妙齢の女性にそんなことは言う度胸はない。それに周りに人が大勢いるので核心を告げるとややこしいことになるとも思っている。


「なにが変わるの、レキちゃん? 静香さんは何があったの?」


 ナナが二人の会話を耳に入れて、不思議そうに聞いてくる。その言葉に焦るおっさん少女だが、静香がふふんと鼻を鳴らして少し自慢げにフォローをした。


「ようやく私は大樹の正式な正社員になれたの。強大な力を手に入れたから、変わってしまうかとお嬢様は心配していたみたいね」


 ナナたちはその言葉に驚愕した。まさか、大樹付きになれる人がいるとは思っていなかったのだ。秘密主義な大樹は正式な正社員を採用したということを聞いたことが無い。銀行やその他はグループ会社みたいな感じだと思っているからだ。


「そういえば、静香さんは元大樹所属だったんでしたっけ。おめでとうございます!」


 パチパチと拍手をして、祝ってくれるナナ。それを見て、何々?と他の人も聞きつけて、静香の正社員昇格に驚いて、同じように拍手をしてくれる。


 もちろん、その波に乗らないおっさん少女ではない。私も拍手をしますよ。くす玉も用意しなきゃと考えて、紅葉のようなちっこいおててで可愛らしく拍手をする。


 みんながおめでとう、おめでとう、と拍手をするので、静香は苦笑交じりに答えた。


「ありがとう。これもみんながうちの武器を買い込んでくれているからね。これからもよろしくね」


 椅子から立ち上がり、軽く頭を下げて微笑みながら、お礼を返す静香。


「うははは。俺様たちがいるから安心だな」


「うむ。主殿の忠実なる騎士として働くことを改めて誓おう」


 チビシリーズが、周りの声に合わせて宣言をする。


 うむうむ。なんだか、アニメの最終回みたいだねとおっさん少女も笑みを浮かべながら、静香を見る。


 良かった良かった。でも、厄介そうな感じは変わらなさそうだから、また新たな厄介ごとを起こしてくれそうだとも思っている遥。


「さぁ、まだまだ海遊びは予定がいっぱいです! 夜はバーベキューに花火といきますからね!」


 両手をあげて、ぴょんぴょんと小柄な身体をジャンプさせて、人々へと喜色満面の笑顔で告げるおっさん少女であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 漫画化からのアニメ化したらじっくり丁寧にだと此処までは来れないだろうけどバッサリカットされて駆け足なら2期で此処まで来そうだなぁ。
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