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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
15章 眷属を作って遊ぼう

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240話 おっさんは様々に流される

 広大なる更地にポツンポツンと建物や畑があり、その中に周りの景色に似合わない豪邸があった。庭付き、ガレージ付き、家庭菜園付きのレンガ風な上品なレンガ風の豪邸である。最近ジャグジーバスもついている。


 一般人なら、なにか悪いことをしているのかしらと疑問に思う程の豪邸の中ではなく、今回は庭にて宴をしようとしているおっさんである。


 メイドやツヴァイたちが大勢ちょこまかと動き宴の準備をしていた。


 その中で赤茶会などで見るような和風の赤い敷物を敷いている場所に座布団に座るおっさんである。おっさんの名前は朝倉遥、あとの自己紹介はCMのあとでにすると良いだろう。


 高そうな渋い紺色の和服を着て、あぐらをかいて皆を見ている。


「司令、これが今日のメニューです」


 スッとツヴァイの一人が今日の料理のメニューを持ってくるので、ありがとうと頷く遥。嬉しそうに戻るツヴァイ。


「司令、これが今日の献立です」

「司令、これが今日のコース一覧です」

「司令、これが今日の目録です」

「司令、女体盛りをやりましょうか?」


 最後の発言者の提案に頷きたいが、他の面々がグイグイとメニューの名前を変えただけのものを遥の体に押し付けるように持ってくるので、残念無念頷けない。


「待て待て! ツヴァイたち、ちょっと待った! もうメニュー一覧は貰ったから! もう良いから! 遠慮します、ギブアップ!」


 カンカンカンカンと都合よく持ってきたゴングを鳴らす気の利いた銀髪メイドが見えたので、あとで頬をムニムニの刑だねと、仕返しを考えるおっさんだ。


 まぁ、美女に怒ることはしないおっさんである。仕方ないなぁと呟いてメニューを見ると不思議そうに首を傾げる。


「何これ? 流しそうめん?」


 メニューには最初に流しそうめんと書いてあり、あとに色々と料理名が書いてあったのだ。


 その言葉にてってこと、様々な料理を皿にのせてやってきた小柄な癒やし系金髪ツインテールのナインが返事をした。


「はい、梅雨も終わり暑さ厳しい夏に入りましたので、流しそうめんをやってみようかと思いまして。マスターはやったことないですよね?」


 遥のそばにたむろするツヴァイたちを一瞥してから、遥の前に小さなテーブルを用意しての言葉であり、ツヴァイたちはそそくさと離れていくので、上下関係がわかる内容であった。


「ほほう、流しそうめんとな? 確かに私はやったことがないよ。というか流しそうめんって本当にやれるの?」


 簡単にできそうでやらないのが流しそうめんだと遥は思う。なんというか、いざやろうとするなら人数を揃えたいし、それだとそうめんだけとはいかないだろう。色々と準備を考えるとやらないほうに天秤は傾くはずだ。


 断じておっさんだと後ろの方に追いやられて、食べることができないなんて思ったこともない遥である。


「それでは流しそうめんを開始しましょう。準備はできましたか?」


 ぱんぱんと手を叩いてナインがツヴァイたちへと確認すると、はぁいと答えて杖っぽいのを次々と並ぶようにたてる。


 そうしてポチッと杖の横のボタンを押すと光る通路みたいなものができるのであった。


「フェイクマター式流しそうめん用筒です。これに水を流して、流しそうめんを始めますね、マスター」


 ニコニコと笑顔でのナインが、手を筒と称するものに向けて得意気に語るので、ちょっと気になることを聞いても良いよねと遥はナインへと微妙そうな顔で尋ねた。


「ねぇねぇ、なんだか4メートルぐらいの川に見えるんだけど、これが流しそうめん用の筒?」


「はい、マスター。大勢でも食べれるように大型の筒を用意しました」


 へぇ〜と冷や汗をかいて、放水をしようとするツヴァイを無理矢理退けてサクヤが位置につくのを見てオチが見えてしまう。嫌だなぁ、これ本当にやらないといけないの?


 そう思う遥であるが、小柄で愛らしいナインを見ると止めようとも言えないので渋々と筒と称する川のそばに渡されたツユのグラスと箸を持つ。


 ウキウキとこの先の騒動を予想させるような嬉しそうな顔でサクヤが


「はい、これから無口なクール系の美女サクヤがそうめんを流すので、頑張って食べて下さいね!」


 ゴー!と叫んで放水を始めるが


「サクヤ! 激流すぎるだろ! 取れないっ! この流れだと箸が持っていかれるよ!」


 ドドドドと激流が筒と称する川を流れていき、その中でそうめんが大量に流されていく。


 もちろんそんなそうめんをおっさんが取れるわけはないので、箸をつけることもできずにオロオロするが、ツヴァイたちは、たぁっとか、てやぁっとか言ってそうめんを掬って食べているので、極めて悔しい。


「仕方ないですね〜、ご主人様は。私がお手伝いしますね」


 いつの間にか後ろに移動していたサクヤがグイグイと背中を押してくるので、慌ててナインに助けを求めようとするが、家に料理を取りに行っており姿が見えなかった。というか、それを狙って激流にしていた司馬懿サクヤである。


「おのれっ! 貴様もかブルータスって、やめろって、まじで!」


「おほほ、ご主人様のためなら、えんやこーらっ」


 体全体で押してくるサクヤであり、悪質この上ないことにふくよかな胸もあててくるので、ぽよんと柔らかくて気持ちいいねと思うおっさん。ツヴァイたちは争うように、というか、実際に争いながらそうめんを取り合っている。


「このそうめんは司令に私が差し上げます」

「私こそがそうめんをプレゼントします」

「私自身が食べてもらいます」


 あとー!とか言いながら戦っているので、最後の発言者は確認できなかった遥である。


「そいやーっ!」


 サクヤが一気に力をこめて体当たりしてくるので、激流に吹き飛ばされる遥であるが


「しなばもろとも〜っ!」


 吹き飛ばされる寸前に振り返り、ガシッとサクヤの腕を掴んで


「きゃー」

「ギャー」


 と楽しそうなサクヤの声と、恐ろしい目に合うおっさんの声が響いたのだった。


 数分後、正座をさせられて、そうめん塗れで二人は食べ物を粗末にしないように説教をナインに受けることになったのであった。


 


 お風呂から出てきてさっぱりとした遥が庭に戻ると、色とりどりの料理をナインが用意したテーブルにのせていて、待っていた。


 いつの間にかサクヤもお風呂から出てきておりさっぱりとしている。


「もぉ、最近姉さんと遊びすぎですよ、マスター? 私でも嫉妬することはあるんですからね」


 プクッと頬を膨らませて怒るナインはその可愛らしいメイドの姿も似合っており、物凄い可愛らしいので頭をナデナデしてしまうおっさんであった。


 サラサラな髪の毛は触り心地が良くて、ずっと触りたくなる滑らかさを感じる。ナインが気持ち良さそうに目を瞑って力を抜いているのでますます可愛くてナデナデしてしまうおっさんであるがサクヤがその様子をのんびりと眺めながら教えてきた。


「ご主人様、北海道大ダンジョンを攻略せよ。exp65000、アイテム報酬賢者の宝珠、樹の王リスターを撃破せよ! exp70000 報酬生命の宝石をクリアでレベル51になりましたね」


 テーブルに置いてある皮串をパクパクと食べながら、パチパチとおざなりに拍手する銀髪メイド。


「今回はかなりの苦労をしたんだから、もう少し喜びを見せてよ。私は3日も3日酔いのような頭痛に苦しんだのだからさ」


「そのオヤジギャグはスルーしておいて、本当に喜んでますよ? まさかさらに進化をするのがこんなに早いとは思っていませんでしたから」

  

 サクヤがふふっと慈しみをみせる微笑みを珍しくするので、ポリポリと頬をかいて少し照れながら遥はテーブルの前に座るのであった。


「そうですよ、マスター。さらなる進化をあっさりとするなんてさすがマスターです。あ、日本酒もお酒のツマミもたくさん用意してありますよ」


 ナインがどうぞどうぞとお猪口を手渡して、お酒を注いでくる。


 おっとっととお猪口に注がれるのを見ながら、美少女にお酌して貰えるなんて最高だなぁと思いながらお酒を口に含む。

  

「うむ、芳醇な香りとスッキリとした味わいが良いね。美味しいね」


 ゴクリと飲みながら語彙力のないおっさんはとにかく美味いと言うのをナインはニコニコと笑顔で見つめてくる。


 ちょっと見つめられると照れるねと思いながら、串焼きを一つ掴んで、もしゃもしゃと食べると隣にサクヤが珍しくツツッと寄り添う。

 

「ささっ、ご主人様、さっきは申し訳ありませんでした。お詫びにお酌をしますね」


 トトトとお猪口に注いでくるサクヤを見ながら、そこはかとない嫌な予感を感じる遥。


「マスター、私のお酌も受けてください。どうぞどうぞ」


 ナインも体を遥にくっつけるようにしてきながら、注いでくる。


「う〜ん、ちょっとペース早くない? 私しか飲んでないから早くない?」


「そんなことはないですよ。酔ったら私が介抱しますので、全部私に任せてください。良いですよね、マスター?」


 あぁ、私は只今ボッタクリバーにいます。根こそぎ取られそうな予感がしますと遥は気づいた。その懐かしいいくらでも拡大解釈できる言い回しに気づいた。


 これは酔ったら最後、いつかみたいに大事なイベントは見逃す脇役となる予感がすると。


 ぷよぷよと腕に柔らかな胸を押し付けながら


「さぁさぁ、どんどん飲んでください、ご主人様」


「私のお酌も受けてください、マスター」


 ちっこいけれど、可愛らしいナインもさらにお酌をしてくる。


 なので、おっさんは気づいていても逃れられない戦いがあると決心した。


「我が生涯に一杯の悔いあり!」


 ゴキュゴキュとお猪口のお酒を次々と飲み干して、やがて深酔いして意識をなくし眠りこけるのであった。おっさんでは美少女と美女からのハニートラップは逃れることができないので、仕方ないのであったりするのであった。だって二人とも可愛らしいんだもの。




 遥は深い眠りから目覚めた。


 神秘的な目覚めでもなんでもなく、頭がズキズキと重く痛む二日酔いの頭痛と共に。しまらない目覚めであったが、酔いを消去するとすぐに痛みはなくなったので、瞼を開ける。


 そこは楽園であった。美しきキラキラと光るような金髪ツインテールの物凄い美少女が遥を膝枕しながら髪を優しく撫でてくれていたのだ。


 これが楽園でなくて、なにが楽園となるのだろうか? いや、これ以外に楽園は存在しないと強く思う。

  

 なので再び瞼を閉じて寝たふりをしていようかなぁと考えるだめなおっさん。でも、だいたいのおっさんがこの状況下になったら同じことをするだろう。


 ん?とそこで疑問に思う。何やら頬にあたる涼やかな風や体に感じる陽射しの暖かさから外にいると気づいたのだ。


 そうなるとツヴァイやサクヤにナインの膝枕をされてゴロゴロしている姿を見られていることになる。それは少し恥ずかしいねと起きることにした遥にナインが声をかける。


「おはようございます、マスター。今日は気持ちの良い朝ですよ」


 今起きたのです。ナインに膝枕されていたことなんて気づいていなかったですというバレバレの無駄な演技をしながら


「うぅん、おはようナイン。あれ?膝枕してくれてる? ありがとうね」


 と平然な顔で起きる遥なのである。無駄な演技が凄いで賞を受賞間違いなしのおっさんであった。


 だが次の瞬間、周りを確認した瞬間に驚愕の声を発する。


「なんじゃこりゃ〜!」


 遥はなにかが変わるだろうとは考えていた。まぁ、それは当たり前だ、ボッタクリバーにいったお代は常になにかが作られているのだから。


 だが、今回は規模がまったく違った。なにが違うかというと


「え? ここどこ? 枝? なんか宝石みたいな巨大な枝の上?」


 そこは樹の王リスターの黄金の樹よりも美しく神秘的な巨大な樹であった。きらめく半透明な樹。そばににいるだけでなんだか気力が湧いてきて心が癒やされそうな。キラキラと輝く中には様々な色の葉が存在して、まるで宝石のようであった。


 その樹の巨大な枝の上でナインの膝枕を受けて寝ていた遥であったのだ。


「これは進化したマスターの座す神域」


 ナインがにこやかな笑顔で静かなる声音で告げて


「新たなるご主人様の象徴たる神域」


 サクヤが続けて歌うように告げてくる。


「意味がわからないので、もう少しざっくりと赤ん坊でもわかる言葉でお願いします」


 遥が神秘的なイベントを台無しにするように告げる。


 だってわからないんだよ、おっさんには難しい語りだったのだから。


 こういう人ですよねと、クスクスと笑いながらナインが教えてくれる。


「これは今まで貯めた宝石マテリアルとピュアウォーター、そしてマスターが2段階目に進化したことによる最低レベルですが神域を作れるようになったので作成した善なる大樹です」


 どうやら神秘的なイベントはまたもや見逃した模様な脇役遥。


「ほ〜、神域ってどんな効果があるの?」


 まぁ、仕方ないか、ボッタクリバーに入ったんだしねと諦めて、なにか凄い効果があるんだろうなとわくわくする遥へと困った顔で小声で告げるナイン。


「拠点聖域化とほとんど同じですね」


「あ〜……ようやく課金の力に追いついたって感じかな?」


 苦笑交じりにナインの告げた内容にがっかりする遥。まぁ、課金はそれだけすごかったということだろうと納得もする。


 納得しちゃうんですか、重要な内容も遠回しに告げているんだけどと、でもこういう人だからこそ、ここまで普通にこれたのだろうと納得するナイン。


 どこかで力に押し潰されて、間違った方向にいく可能性はあったのだ。だがこの愛しい人は常に自由に過ごしながらも、悪い方向には曲がらなかったのだから。


 独裁者には面倒くさいから嫌だと言い、ハーレムはそれぞれの女性に気遣いするだけで疲れてしまうよと言って作らないのだから。平凡に見えて平凡ではないマスターへとさらに告げる。


「ですが神域は聖域化とは一味違います。ご主人様が加護をしているこの関東のほとんどをライトマテリアルの力で浄化を前よりもずっと早くしているのです。その力により侵入するミュータントもいなくなります」


 ほうほうと頷きながらも、防衛隊もいるし、あんまりメリットがないなぁと思う罰当たりなおっさんがここにいた。メリットデメリットで考えるゲーム脳なおっさんであった。


 がっかりしていることに、もちろんナインたちも気づいていたので、さらに重大なことを告げる。


「マスター、これをどうぞ」

 

 ナインが遥の手のひらにちょこんと小さいなにかを渡してくるので、なんじゃらほい?と見てみると小さい林檎であった。


 ただし宝石のような煌めきをもつこれまた半透明な神秘的なものである。


「それは進化したマスターが創り上げた善なる林檎です。これを食べたものはマスターの眷属となって役にたってくれるでしょう」


「眷属? なんでも食べると眷属に?」


「はい、ご主人様。そこらへんにいる子猫にあげましょう!」


 サクヤがとぼけたことを言うがスルーである。ちょっと真面目に考えたいので。


「これを食べさせると眷属になる、すなわち私の正体もバレる?」


「いえ、上位の存在であるご主人様が正体を隠して語らなければわかりませんよ? ただなにか強大な力の眷属になったと感じるだけです。今のご主人様では召喚とかもできませんし」


 ナインの言葉に顎に手をあてて思考する、がすぐに結論はでた。というかあげる人は決まっている。


「それじゃあ、初めての眷属作りといきますか。まともな眷属になれば良いんだけど……」


 少し不安だなぁと思いながら、遥は外出の準備を始めるのであった。

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