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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
14章 北海道に行こう

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238話 おっさん少女は黄金の衣を纏う王と戦う

 黄金の木屑が空中を舞い散る中で、レキは黄金の毛皮を持つリスと対峙していた。人型であり、その力の余波は空間を歪める程である。


「フフフ、私の力を見せるのはこれが初めてですが、あっさりと倒されないでくださいよ?」


 余裕綽々の表情で、この大ダンジョンのボスにして、赤昆布の森林を作っていた元凶は語ってきた。


「宇宙の帝王気取りのようですが、貴方では枯れた木のボス程度がお似合いですよ、先程の樹の王がお似合いです。引き篭もりのニートさん」


 眠そうな目で、感情の籠もらない声音で淡々と答えるレキの言葉にリスターは怒気を放った。


 空間が怒気を放った力だけで、震えて木屑が吹き飛び威圧感が物理的力となりレキを襲う。


 ビリビリと髪がなびく中で、レキは動揺せずに、身体を震わすこともなく眺める。


「期待していないような目で私を見るのはヤメロー! いつもいつも、皆、俺をそんな目で見やがって〜! 俺は最強になったんだ! その力を見せてやるぞ!」


 右腕を持ち上げて、リスターはこちらを見ながら怒鳴るその姿は狂気を感じ、真にエゴに取り込まれたミュータントだとわかる。


「あぁ、こいつのエゴがわかり易いほどにわかるね。これが都内ならともかく運良くこんな森林内で育ってしまったというわけだ」


 遥が激高したリスターを淡々と語る。どうやらエゴの赴くまま、そして養殖を協力できるヨク=オトースがいて、森林内でダンジョンマスターをしたことから、強くなったのだろう。


「では、そろそろ世界の広さを教えて上げましょう、旦那様」


「だね。ダンジョンマスターは外に出て来たらおしまいだしね」


 そうしてレキ対リスターの戦闘は始まる。




 レキが翼を広げて、瞬時にリスターと距離を縮める。勢いよく接近してくるレキを見て、ニヤリとリスターは牙を覗かせて笑い


「ククク、私の力を思い知るが良いよ、本気の私の力をなぁ!」


 ちぇいと叫びつつ、右腕を繰り出してくる。その突きの速度は今までの敵とは違う速度を持っており、肉薄していたレキは素早く左腕を掲げて、その右腕を軽く抑えて軌道をずらし自らの半身を回転しながらずらして潜り抜けるように回避する。


 そのままリスターへと身体を近づけて、右肘をリスターの胴体へと打ち込む。


 ドンッと胴体を貫くレキの肘打ちであったが、リスターはその体幹を揺るがすこともなく、左拳を繰り出してくる。空中であることを利用してくるりと沈み込むよう回転して、右脚を伸ばして、鮮やかに踵落としを頭に打ち込んだ。


 そうして、そのまま間合いを取るために離れるレキ。


「ククク、いったいなにをしたのかい? なにか踊っていたようだけど?」


 今までの敵であれば、頭を砕かれて倒していたレキの攻撃であるが、コキコキと首を鳴らしてリスターは笑いながら言う。


「黄金……なるほど、黄金の毛皮は打撃無効ですか」


 他の敵は打撃で倒せたので、リスター専用の無効化能力なのだろう。調子にのったリスターが身体を屈める。


「今度は私の番といこうか!」


 宇宙の帝王になりきった演技をするリスターが、そのままスタートダッシュをするように、急加速にてレキへと迫る。


 瞬時にアイテムポーチから雑草薙の剣を取り出して、右手に持ち構えるレキ。


「キエエ!」


 超高速にてレキへと迫り、右拳を叫びつつ繰り出すリスター。僅かに身体をずらして、刀を振り落として、リスターの右腕を斬り落とそうとするが、むぅと眠そうな目で右腕の色を確認して、そのまま振り下ろす力を緩めて爆発するように超加速しながらリスターの横を通り過ぎる。


 力のない振り下ろしは腕に当たり弾かれたが、そもそも効かなかった。なぜならばいつの間にか右腕の毛皮は銀色と化しており、樹木の時を考えると斬撃無効だからだ。


「シャシャシャ」


 リスターはふりむきざま、両腕を右、左と連続で振りかざし攻撃をしてくる。その速度はレキよりも鋭く速い。


 常ならばのレキではという条件付きであるが。


 今はウインドモードにより、速度が大幅に上がっておりついていける。


 スイッと風を逆巻くように左腕を回転をさせて、次々と繰り出されるリスターの拳に絡みつくよう弾き飛ばしながら攻撃を捌き続けるレキ。


 まさか片手で捌かれるとは考えていなかったのだろうリスターが目を広げて瞠目する。


 ヒュヒュと右手の刀を滑らかに高速で突きを入れる。その攻撃を見てとり、リスターは身体を銀色へと変える。


 カチンとレキの胴体への刀攻撃は届かず、弾かれる。だが、その防御は予想通りであったのでレキは半身となり、左足を空中にて踏み込むようにして、カモシカのような右脚を槍の如し突きにてリスターの身体へと突き入れる。


 その攻撃はあっさりとリスターの胴体へと吸い込まれて、直撃を受けたリスターは胴体くの字にして悶絶した。


「がふぅ!」


 そのまま左足からのハイキックをリスターの頭に打ち込もうとしたレキであるが金色へと戻ったために弾かれる。


「てめえ!」


 リスターは叫びつつブンブンと拳を繰り出すが、少しずつ後ろにスウェーしながら下がるレキには決して当たらない。


 リスターの攻撃が止まったところにレキが冷静に反応した。


「体術は落第点ですね。どこらへんが最強なのでしょうか?」


「く、くそっ! 圧倒的なステータスにしておけば雑魚なんて倒せると思ったのに!」


 技術の差により翻弄されて、動揺を隠せずにリスターは両手を強く握り、わなわなと震える。


 その言葉にふふっと可愛らしい微笑みを見せて答えるレキ。


「雑魚を相手にするために鍛えたのですか? 強者と戦うつもりはなかったのですね」


「そ、そんなわけはないだろ! 喰らえっ!」


 右手を広げたと思ったリスターはそのままダークマテリアルの力たる黒き光のエネルギー波を撃ち出してきた。しかも素早く右手の位置をずらしながらの連続エネルギー波だ。


「旦那様の力を使うまでもありません」


 身体を小刻みに揺らすとレキの体が幾人にも分身したようになる。


 そうしてエネルギー波はレキを貫くが、残像であったので、連続エネルギー波はすべて残像を貫くだけでとどまった。通り過ぎたエネルギー波が地面へと到達して、大爆発を起こし大きなクレーターを次々と作っていく。


 しかしながら、エネルギー波は無限という訳でなかった。エネルギー波が尽きた瞬間に再びリスターへと接近するレキ。


「でやあぁ!」


 またもや近接戦闘に陥ると判断したリスターはすぐに身体全体から360度エネルギー波を生み出して対抗するので、すぐさま近付くのを止めて離れる。


 全体攻撃は射程が短かったのだろう。すぐにエネルギーの嵐は収まった。


 リスターはリスの癖に汗をかくという器用なことをして叫ぶ。


「なんだよ、力が全てじゃないのか? なんだよ今の!」


 ふぅとため息を吐いて、レキは肩をすくめる。肩をすくめる姿も小柄な美少女なので愛らしい。


「どうやら貴方は筋力と超能力が大幅に上がっているのですね。防御は無効化頼り。紙のような耐久力みたいですね」


 たった数回の戦闘で敵を見抜いた戦闘センスの塊、天才レキである。


「どうやら体術というものを知らないのですね」


「あ〜、確かに2代目大魔王と戦う時が技術を求めていた最後だったかも。あとは戦闘力を上げて殴って倒すみたいだったしね。技を重視しなかったんだ」


 ウンウン、わかるわかるとアニメを参考にするおっさんがレキへと教えてくれた。


「体術? そんなもん嘘っぱちだ! 強い速い攻撃ができれば圧倒的に相手を倒せるに決まってる!」


「では、その強い速い攻撃をしてみてください。貴方が倒れるまで」


「ば、馬鹿にしやがって!」


 リスターはレキの言うことが信じられなかったのだろう。その場に突風のみを巻き起こし、急加速にて近づいてきて、再び今度は右足からのハイキックを繰り出す。レキは頭を屈めて前回転をさせて、ふわりとリスターへ踵落としを決める。


「そんな攻撃が効くかぁ!」


 頭を振り払い、左腕を伸ばしレキを掴もうとするが、逆さまの状態で反対に左手でリスターの左腕を掴み、リスターを引っ張り前のめりにさせると身体を捻り、右手の刀を背中に突き入れるが、その時には銀色へと毛皮を変えていたので、弾かれる。


 すぐさま、羽を広げて急停止を行い、レキはリスターの背中を強く踏みつける。


「ゲハっ」


 踏みつけられた勢いで、直下に落ちていき、そのまま地面へと爆発するように激突するリスター。その少し離れた場所にレキはスタンと着陸して


「相手になりませんね。強く速い攻撃とやらはいつ見せてくれるのですか?」


 淡々と平静で平然な声音で地面へとめり込んだリスターへと告げるのであった。


 リスターはよろよろと立ちあがり、焦りの表情で呟く。


「なんでだよ………技術なんていらないはず………、よっちゃんも言っていた………。技術なんていらないって………」


 その呟きを聞き取り、ヨク=オトースが安全策をとっていたことに遥は気づいた。


「ヨク=オトースはいらないと言っていた技術を人間を脳代わりにすることで補佐していましたよ。どうやら貴方は裏切られたときに備えて嘘を聞かされていたみたいですね」


 恐らくヨク=オトースは自身より強いリスターを警戒して、技術の必要の無さを伝えていたのだろう。お互いが信頼をしていない関係だったのは簡単に予想がついた。なにしろミュータント同士であるので最終的には喰いあうか配下にされるかといったことになるだろうからだ。


「う、嘘をいえ! よっちゃんはこんな僕にも優しかったんだ! いつも僕を気にかけてくれていたんだ! 騙されるもんか!」


「僕が素なのですか。その友好関係はミュータントとなり貴方がヨク=オトースより強いと判断されたときに消えたんでしょう。残念でしたね、僕ちゃん」


 レキの言葉に驚愕の表情となり、体を震わすリスター。思い当たる点があるのだろうか、後退りをして動揺を見せて顔を俯ける。


 だが、それも少しの間であった。すぐに顔を持ち上げると狂気の笑顔で叫ぶ。


「はっ! なら頼りになるのは僕自身だけって訳か! 良いよ、良いだろう。お前を倒して次は体術とやらを覚えてやる!」


 どうやら吹っ切れたリスターであるが、それはもう遅いのだ。


「私を倒すという前提では不可能ですね。体術を持っていないのは私的には楽しめないので残念でしたが、終わりにしましょう」


 戦闘民族レキは右腕を持ち上げて半身となり身構える。とことんまで戦闘民族な美少女がそこにいた。


 不敵なる笑いを浮かべてリスターが同じように全身を正面にして両手を持ち上げる。


「ふざけるなよ! ちょっと美少女だからっていい気になりやがって! 僕はなぁ、超能力を上げているんだよ! 近接戦闘をする前に倒してやる!」


 そして両手から鋭い爪を取り出すや、空間をクロスするように振り下ろす。


「王技光爪」


 ピシッと光の軌跡がレキを襲う。回避する間もなく佇んでいたレキが斬り裂かれていくのを見て、リスターは狂気の笑いをして


「ハハハハハ、見たか! 光速でのレーザークローだ! 偉そうなことをいいやがっ」


 斬り裂かれていくレキが目の前で消えていくのを見て、すぐに体を後ろに振り返らせて、尻尾での横薙ぎを行うリスター。


 だが、そこには何もいずに戸惑うリスターの頭に刀が振り下ろされる。寸前で気づいて頭を反らして地面を蹴り、その場を離れるリスター。


 回避しきれなかったために、頭から緑色の血を流しながら刀を振り下ろし地に足をつけるレキを忌々しそうに見る。


「残像と言ったら、後ろからの攻撃だろうがっ! なんで上空からなんだよ!」


 今しがた斬り裂いたレキが残像と気づき、瞬時に後ろに攻撃をしたリスターであるが、レキが予想外に上空から振り下ろしてきたため、理不尽なる抗議をしてくる。


「たしかにね、残像ですと言って後ろに移動して攻撃するのはセオリーだけと、セオリーすぎて知られているから、そんなことはしませんよ」


 うんうんと相手と同じぐらいアニメ脳なおっさんがそこにいた。同等のレベルであるので相手が何をするかが想像できてしまう困ったおっさんであった。この場合は助かっているが。


「うぉぉぉ! 光爪! 光爪! 光爪!」


 今度は両手の爪を左右別に振り下ろし、横薙ぎを行い、振り上げながら様々な角度で攻撃してくるリスターであるが


「いかに光速の攻撃であろうと、僅かな溜め時間と、出だしが丸見えでは意味がありませんね」


 リスターの攻撃角度とその位置を瞬時に見切り、光の爪の攻撃が発生する前に寸前で回避していくレキ。


 トントンとリズムにのったダンスを踊るように可愛らしく光の軌跡を回避しながら躱していく。まるで可愛らしい妖精が光の軌跡を背景に踊っているような美しさであった。


「チキショー! 当たれ! 当たれよ、こいつ」


 懲りずに何度も繰り返すリスターへと左手を掲げて遥が超常の力を発動させる。


「サイキックレーザー」


 空間が震えリスターの体格など簡単に飲み込む大きさの念動でできた不可視のレーザが空間を歪め砕いてリスターへと接近するが


「そんなもん効くか!」


 毛皮の色を虹色に変えて、直撃を受ける。直撃したことにより周辺の空間が弛む中、リスターは平然とした姿を見せており、今度は右手のひらをみせるようにして、こちらへと超能力を発動させる。


「絡みつく黄金の根!」


 発動させたと同時に地面から無数の黄金の根が生み出されてレキへと迫る。


「バインド系! こいつリスになっても樹の王リスターの力を使えるのか!」


 遥が驚くが、レキは動揺せずに根へと神速の薙ぎ払いを行い、斬り裂いていく。おっさんならば簡単につかまりピンチに陥るが、信頼感溢れるレキには通用しない。


 レキが刀での薙ぎ払いをしていく中で、隙と見たのだろう。リスターがにやりと笑い両手でエネルギー波を次々と打ち出す。


「根を斬り裂きながら、この攻撃はかわせねーだろ! 喰らえ! 連続エネルギー波!」


 両手を交互に高速での突き込みを繰り返して、次々とエネルギー波を撃ってくる。


 無数のエネルギー波が高熱を発しながら、地面を削りレキへと近づく。根っこを斬り飛ばしながら、レキはそれをちらりと見るが気にせずに根っこを斬り裂くことに集中したために命中をして大爆発が起こり、クレーターが生み出されて土埃が空中を舞いあがっていった。


 それを見てリスターは喜色を浮かべて叫ぶ。


「やったか!」


 爆煙が周辺を覆い姿が確認できないが手ごたえを感じたリスターであるが


「それを口にした者がいるときは、相手は怪我もおっていないのですよ?」


 飄々とした声音で根っこを全て斬り終わったレキが蒼き水晶のような防御壁の後ろから声をかけるのであった。


「ぬぐぐぐぐ、しぶといやつめ! 害虫みたいなやつだ!」


「それを貴方が言いますか? 樹の中で引きこもって寄生していたリスさん。あ、リスでもないでしたね。なんでしたっけ、金メッキのリスターさんでしたか」


 ふふっと笑みを浮かべてレキが答えると、リスターはますます激昂してヒートアップしてくる模様。


「僕の力をこんなものだと思っているのか? 僕は黄金衣の王リスター。こんな真似もできるんだ」


 そうしてリスターが身体を震わすと、自身の毛が抜けてパラパラと落ちてくる。


 なんだろうと首を傾げるおっさん少女であるが、すぐにその意味に気づいた。


 毛がそれぞれ30センチほどのリスターへと変身していったからだ。


「ふふふ。驚いたかい? 僕の力は樹の王でなくなっても限定的な生命を生み出すことができるんだ」


「西遊記のお猿の技か………。なんというか懐かしいというか………あと、密かにゴールドなところがあれに被っているのか………」


 思い当たるのは毛を分身に使うお猿の有名な技。そして他にも生命を生み出す黄金って幽霊を使う漫画と被っているのかなぁとくだらないことを考える遥である。


「小さく多少パワーが劣るが、こいつらの力は僕と同等さ! 四肢を破壊して俺のペットにしてやるよ!」


 調子にのるリスターを前に、おっさん少女はどう戦おうかと思考をするのであった。


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