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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
14章 北海道に行こう

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237話 おっさん少女は樹の王リスターと対峙する

 敵の行動を次々と封印しながら戦うのが得意なのだろう樹の王リスター。壁の如き幹は果てを知らず、伸ばす樹木は空を覆う。


 そして、リスターの力により黄金に煌めく木の葉が周囲を舞い散り、超常の力でできた刃の鋭さをもつ木の葉の空間は高速で移動すれば、自らの速さで切り刻まれるだろう。


 そして地面には黄金色の野菜軍団が見えており、どこを見ても黄金に包まれていた。


 空にて浮遊する美しき可憐なる戦乙女は神秘的な光を宿す翼を広げて周囲を見渡していた。


「戦う隙間は充分にありますが……」


 珍しく戸惑いながら、風妖精が宿り常に逆巻く風に守られている腕を軽く振るうと、その風により木の葉は吹き飛び、空間に隙間ができる。


 だが、埋まる前に高速機動にて隙間を作り続けて移動すれば良いだけだ。簡単な方法が思い浮かぶゆえに


「ん〜。たしかにレキが罠を警戒するのもわかるね。ちょっと攻略サイトを覗きたい気分だよね。ちょっとサクヤが攻略サイトを作るべきじゃないかな?」


 攻略サイト、攻略サイトが必要なんです。ないのであるからして、変態メイドが作れば良いんじゃない?と思う遥である。


「申し訳ありません、ご主人様。私はご主人様の撮影の編集を暇な時間があればしなければならないんです。暇でなくてもするんですけど」


 平然とサボタージュする銀髪メイドの言葉だがいつものことだよねと、サポートキャラはサポートキャラでも戦闘中に一緒に戦ってくれるサポートキャラと思うことにした遥であった。相変わらずのアホな二人の掛け合いである。


「とりあえずは攻撃をしていき、敵の対応を確認しますね、旦那様」


 戦闘民族レキが言葉にして身構えるが、人はそれを脳筋の力押しと言う。


 これまたいつものことであり、罠であれば食い破るのみとフォトンライフルを構えるレキへと、舞い散る木の葉を足場として、シュタンシュタンと地上から飛んでくるキングメロリン。


 小さな木の葉を足場にできるその力はかなりの体術もちなのだろう。どうやら木の葉によるダメージは入らないようで、フレンドリーファイア無効の様子。


 四方八方から跳んてくるキングメロリンは、レキを囲むように高速での移動だが、その光景を見て不敵な微笑みを見せるレキ。


「ちょうどよい木の葉よけが来ましたね。わざわざ傘になりにきても恩返しはしませんよ?」


 ほとんど同時にレイピアを高速にて突き出してくるが、ほとんど同時にであり、超高速戦闘の時間の中では、同時では決してない。


 僅かに先行したキングメロリンの突きをフォトンライフルの銃身にて、チンと金属音を軽く弾いて明後日の方向に反らす。


 次にきた突き込みを弾いた際に跳ね上がった銃身をレイピアに巻くように折りながら弾く。


 すぐに身を翻して空中であることを活かして、上下逆さまになりながら、足元を狙った突きを躱して銃弾を撃ち込んだ。


 そうしてキングメロリンの一斉攻撃を凄まじい速さで受け流し、躱しながらフォトンライフルでカウンターを入れるレキ。


 キングモロコシたちが、詠唱を終えたのか力を溜めたかはわからないが、それでも超常の力を発動させる。


「メテオコーンストライク」


 空中に家ほどもある大きなポップーコーンが現れて、レキへと落ちてくる。


 生半可な攻撃では通じないと見たのだろう。最強の魔法っぽい術を撃ってくるキングモロコシ。


 周りのキングメロリンがいれば巻き込むのは確実だが、無限に増やせそうな感じもするし、損害は気にしていないらしい。


 ちらりとデカイポップコーンを見て、レキはウィンドモードの超高速を全開にして、キングメロリンたちへとレイピアの槍衾とも呼ぶ攻撃を躱して、幾人にも分身するような速さで胴体を蹴り飛ばしてメテオポップコーンへ目掛けて蹴り飛ばした。


「ギィ!」


 蹴り飛ばしたキングメロリンたちはメテオポップコーンへとぶつかり大爆破が発生する。


 爆発の爆煙と爆風で木の葉が一斉に吹き飛び、静寂なる空間が一瞬生まれる。


 その隙を見逃すレキではない。素早く銃口を幹へと向けて、遥がそれに合わせて超常の力を発動させる。


「エンチャントサイキック」


 身体を空間の歪みが覆い、超技を発動させるレキ。


「超技サイキックピアッシング」


 銃口から量子弾が発射されて収束されてクリスタルに似たフォトンのエネルギーの槍へと代わり、リスターの幹まで向う。


 いかなる装甲をも貫く一撃である。あっさりと敵の幹を貫き、その衝撃波から、敵の内部をすべて吹き飛ばす予定であった。


 だが、幹の色が黄金から、半透明な白い色へと変わるとフォトンのエネルギーの槍はあっさりと弾かれてしまった。


 その結果に僅かにピクリと眉を動かして、すぐさま刀を取り出して、居合の構えをとる。


「超技念動一閃」


 居合の一撃は神速の抜き手により目に止まらずに、すぐに鞘へと収まった。しかし振られた斬撃は空間を超えて敵の幹を切り裂くはずが、銀色へと幹の色を変えたリスターに当たると、白刃の軌跡は見えてもダメージは入らずに、やはりパシンと弾かれて、傷一つ幹には入らなかった。


「ファイアブリッツ」

「アイスブリッツ」

「サンダーブリッツ」


 すぐさま三色の超能力を次々と発動させてリスターへと向かわせる遥。おっさん少女程の大きさの火球が生まれて、空気が凍りついて、雷が放電を始めて敵へと向う。


 赤色へとリスターの幹は変化をしてファイアブリッツを弾く。


 しかし、他の超能力は僅かに幹を凍らせて、雷で小さな穴を開けた。


「マジですか。こういう防御してくる敵とたくさん戦ったよ! 色が属性無効化を示す奴!」


 リスターの防御方法を見て戦慄する遥。こういう防御をしてきたボスは数多い。それは体験で知っていた。もちろんゲームの中でであり、結構ありがちな能力ではあるが


「でもこちらに合わせた属性無効化をホイホイと切り替えるボスがいたことはなかったよ!」


 そんなの卑怯でしょ、時間ごとに色を変えて戦わないとボスらしくないよと、ゲーム脳な遥である。時間ごとに色を変えるからこそ、隙を見て倒すのがセオリーなのだ。


 それなのにこちらの攻撃を見てから色を変えてくる。どうやらそこまで瞬時には切り替えられないようだが、それでもチートだよねと憤慨するチートな自分を非売品美少女フィギュアとして棚に飾るおっさん少女。


 しかもアイスブリッツとサンダーブリッツで空けた穴がみるみるうちに回復していくので、再生持ちとも判明した。


「旦那様、あれでは超技は当たりませんね」


「たしかに………悔しいけど、超技は僅かにタメがあるから、その時の攻撃種類を見て、対抗の色に変えるだろうしね」


 多分技名を叫ぶのを止めても同じだろう。さりとて、巨大過ぎて超技以外の攻撃は再生持ちでもあり、厳しい。


「打と斬は両立できない模様なので、粉々になるまで攻撃をしましょう」


 きりっと真面目な声音で予想通りの方法をとろうとするレキである。ある意味清々しい態度だ。


 巨大なリスターを切り刻もうとするレキへと声をかける遥。


「待った! こいつはヨク=オトースと近いコンセプトで作っているから、倒すには一気に倒したい」


 すなわち、高火力重装甲で、ある意味王道なだけあり強い。さすがはヨク=オトースの仲間であり、しかも再生つきで上位互換なだけはある。


「フハハ、我は樹の王リスター。いかなる攻撃も効くことは無い」


 そうしてまたもや実がなって、再びキングメロリンとキングモロコシは増えてくる。ちなみにキングジャガーレムはウロウロと地面を歩いており、哀愁を見せつけていた。空に飛んでいるレキには手が出せないという悲しい敵であり、どこかのおっさんと同じく役立たず感を見せるのであった。


 それらを見て、遥は体の主導権を自分に戻して、大きく深呼吸をして、一気に倒すべく超能力を発動させる。


「念動界」


 必殺のコンボの事前準備である超能力。


 一見したらわからないだろう力がさざなみのごとく世界へと伝わっていく。その力は世界を覆い、法則を変えていった。


 バラバラと再度木の葉を踏み台として向かってくる多数のキングメロリン。後続のキングモロコシは詠唱を開始している。


 だが念動力を大幅に引き上げるこの超能力が発動したのだ。威力は段違いとなっているのだと、遥は信じて


「サイキック雪だるま〜!」


 本日二度目のサイキックを使用する。世界を俯瞰して、原子の粒も、本来は不可視であるはずのマテリアルを見つけることができて、その力を球にして一気にゴロゴロと転がすように野菜軍団も舞い散る木の葉も全て吸引していく。


 ちっこい両手を掲げて、小柄な身体をまわして、お遊戯のような愛らしさを見せながら、無理やり球にして圧縮から破砕していく。


 バッと集めたミュータントで作った球を自分の上空に浮かべる。


「エンチャントファイア」


 あれも自分の装備品だと思考した遥は、炎を纏わせる巨大な太陽といえる球にして、大きく叫ぶ。


「皆の命を私にくれ〜!」


 力ではなく、命だと叫ぶおっさん少女である。こんなシチュエーションは二度と無いかもと、某野菜戦士の言葉を真似したのだ。命と言っているのが趣味悪すぎである。さすがは命がかかっている場面でも趣味を優先にするおっさんだ。


「超技野菜玉〜!」


 太陽の塊となった野菜玉をリスターに向けて飛ばす。


「無駄だ! 我にはどんなに強い攻撃でも効かぬのだ!」


 その攻撃どうりに赤へと幹の色を変化させるリスターに、巨大な太陽の塊ともいえるサイキック球をぶち当てる。


 予想通りに炎はかき消え、弾かれて消えていくが


「ば、馬鹿な! 炎の球体ではなかったのか!」


 幹へとサイキックでできた球体は飲み込まれていく。ズズズと飲み込まれて、内部で空間を破砕していき大爆発を発生させた。


 ミシミシと巨大な幹が空間の捻れを伝播して消え去っていく。樹が激しくきしむ音をたてながら、その姿をただの木っ端へと変化させたのであった。


 キラキラと舞い散る黄金の輝きをもつ木粉。これを売れば確実に静香は買うだろう輝きである。


「エンチャントファイアを使って、炎の球体に見せかければ、必ず炎に対抗する色に変わると思ってたよ」


 未だに砕け散っている樹の王リスターを見ながら、ドヤ顔になり語る遥。炎の球体はカモフラージュ。周りを炎で覆っただけで、実際の中身はサイキックだったのだから。


 ウィンドウ越しに、サクヤがニコリと微笑み口パクをしてくる。内容はわかる、わかりすぎるほどわかるが、言いたくないおっさん少女。でも多分言わなくても駄目なんだろうなぁとやけくそ気味に叫んだ。


「やったか?」


 強敵と戦っている最中に言いたくないベストスリーであったが、仕方ないかぁと嘆息する。なぜならば今ので倒したとは、ちっとも思っていないからだった。


「さすがはご主人様です。誰もが言わないアホな発言をするなんて! さすがはお笑い芸人希望のご主人様! 狙ったブツは回収確実ですね!」


 以心伝心過ぎるサクヤが嬉しそうに、また傑作が撮影できましたと告げてくるので、反論しようとしたところ


「にゅ?」


 チュインとレーザーの如し、光の光線が見えた。見えたというか速すぎて、ぎりぎり身体をずらして回避したのである。


 いや、回避はしきれなかった。フォトンライフルの銃身に当たり、スッパリと斬り裂かれてしまったのだ。


「高価なライフルが!」


 マジですかとムンクの叫びとなるおっさん少女である。このレベルの武器は高いんですよと文句を言うべく、黄金の木粉が舞う中で強い力がこちらに近付いてきたので、眠そうな目を向けて睨む。


 その姿はアイスを取られていじけて怒っている子供のようで愛らしい。


 ズズズと木粉が舞う中で2メートルぐらいの大きさのミュータントがこちらへと現れたのであった。


「初めてですよ、この私をここまで怒らせたのはね」


 木の粉が風によって消えていく中で全容がわかり、遥はむぅと唸る。


「嘘ですよね? 絶対にいつも怒られていたから、怒り返していましたよね」


 なんだか、引きこもりのニートっぽいものと、鋭いツッコミを入れるおっさん少女。むぐぐと、言葉に詰まるリスターなので、崩壊前は両親などに物凄く怒られていたんだろうなぁと予測して、クスリと笑うのであった。


 それでも気を取り直して、リスターは怒気を交えて、こちらを睨んだ。


「私の真の姿に驚愕したかい? 樹の王? バカも休み休みにいえ! まさか樹と黄を間違えたと本当に思っていたか? そんなことあるわけあるまい。真の姿を隠すためさ!」


「ハスターとリスターは間違えていたんですね?」


「………………」


 途端に無言になるリスターは、2メートル程のリスだった。どことなく人間臭い感じの二本足で立っているリスだ。黄金の毛皮をしており、逞しい感じもする。鼻をヒクヒクと動かしているのが、悔しいが可愛らしい。


 そしてハスターとリスターは素で間違えていたらしい。


 しかし、その力は強大であり、今までの敵でずば抜けて上であった。


 ふぅ〜と深く深呼吸して、気を落ち着けたのだろうリスターは、リスの顔なのにこちらを見下しているとなぜかわかる顔つきで告げてくる。


「私の真の姿に恐怖してくれると嬉しいね。我こそが黄衣の王を上回る黄金の衣の王リスターなり。黄だとカレーライス好きな王に思われるかもしれないが、黄金であればどこの聖なる闘士ですかと聞かれてもおかしくないでしょう」


 リスターは一礼をしてから、フフフと余裕綽々の声音で語ってくるが


「ちょっと名乗りを考えた方が良いですよ? リスの知能並みみたいですが、ちょっとばかりアホのリスっぽいです」


 平然とした声音でリスターを煽るレキ。


 もちろん煽り耐性のなさそうなリスターは怒気をはらんだ声で叫んだ。


「うるせぇー! ビジネスマナーだなんだと、お前らは煩いんだよ! 挙げ句の果てに農家をやりたいから北海道に行くと告げたら、喜んで家から追い出したくせによぉ!」


 リスターは両手を掲げて、その口元を大きく禍々しく歪めて嘲笑う。


「だが、見ろよ? 俺が正しかったんだ! 農家を失敗して早々に親の仕送りで引き篭もっていたわけじゃぁない。こんな世界になると薄々気づいていて、異世界に転生したらなにをするか、色々毎日考えていたんだ! 異世界じゃぁなかったが、ダンジョンマスターになれた! あとは力をつけて世界を支配する帝王になるだけだぜ!」


 おぉぅと、余りの駄目っぷりにドン引きになるおっさん少女。さすがにおっさんであっても、ここまでは酷くない。というか、ニートになれるほど裕福ではない。


「ダンジョンマスターになった場合も考えていたんだ! 近所で小さい整備工場で働いていたよっちゃんもこの世界を楽しんでいた! 最高だ! この世界は最高だ! 冒険者共を倒しまくることができなかったから、早々と養殖を始めた俺は最高だ! スタートダッシュも完璧で最強になった! バカにしていた見る目のないやつは昆布にしてやった!」


 調子に乗りまくり、ペラペラと冥土の土産の如くお喋りをするリスター。メイドへの土産にはできないねと、そして静かなる声音で問いかける。


「どうやらゲスの極みであるようですね。あなたこそ、この森林の肥料となり、歪めた環境を戻す糧になると良いと思いますよ?」


 身体を半身にして見構えて、多少怒ったおっさん少女はリスターと対峙するのであった。

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