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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
14章 北海道に行こう

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218話 おっさん少女は一旦戻る

 酷いもんだとおっさん少女は呆れかえった。この間までは猟師であったはずなのに、ノリノリで防衛隊の戦闘服を着て、キメ顔で闊歩をしている山間コミュニティの猟師たちなのだから。


 もはやツッコミを入れることもできない。なにしろいい歳した男性らが銃を持ってキビキビと動いており、楽しんでいる様子でいるのだからして。


 どこかにいい歳をしたおっさんが美少女に取り憑いて楽しんでいるだろというツッコミがあるかもしれないが、それは棚に置いて非売品と値札を書いておく。


 でも、さすがに一応聞いておかないとと渋々尋ねるおっさん少女。


「ここの防衛隊の司令官はどこにいったんですか? 富良野さんが司令官なんですか?」


 ジト目で髭もじゃを見つめるおっさん少女。美少女からのジト目はご褒美ですという人もいるだろうが、髭もじゃはそうではなかった模様。


「あ〜。ちゃんとした司令官はいるぞ? まぁ、地元だしな、一応俺が形式上は司令官なんだが」


 ポリポリと頬をかいて気まずそうに答える内容に、ホッと安心して胸を撫で下ろす。いかに自動化されていても、超電導システムはツヴァイが二人常駐して操作している。そしてその周辺を支援する兵士が必要なのだ。素人には任せられない。


 村の中心には合金でできた小さなビルがあり、メカニカルなその建物はいかにもな指令センターの様子を見せていた。


 そんな指令センターへてってこと近づくと、馴染みの人間が近づいてきた。


「よう、姫様。どうだった、ダンジョンとやらは?」


 仙崎である。パワーアーマーモジャコを着込んでおり、その立ち姿は歴戦の戦士という雰囲気を出している。


 猟師の髭もじゃでは出せない雰囲気であるからして、役者が違うというやつだ。そう考える、もっとも役者が違うであろう美少女の中身であるおっさん、遥であった。


 ひょいと肩をすくめて、人差し指を可愛らしく顎にあてて、戦闘内容を語ってあげた。


「そうですね。敵は手強すぎます。この一帯は兵士を集めておかないとまずいかもしれません。どこかに戦車隊を配置する必要があるでしょう」


「そんなに手強いのか………。ならば激戦になる可能性があるということか?」


 難しい表情をして、ゴリラ隊長は考え込みながら尋ねてくる。


「いえ、解放後は統率のとれた戦闘は敵はできないはず。しっかりとした防衛網を敷けば問題はないかと」


 そこの猟師さんを抜けばねと副音声で非難しながら、ちらりと髭もじゃたちへと視線を向けて答えた遥。


 もちろん、仙崎はその視線に気づいて、苦笑交じりに弁明してきた。当たり前である。なぜ、素人を防衛隊へと配置しているのか?


「姫様の気持ちはわかる。なぜ素人の彼らを使っているのかということだろう? ………だがな、彼らは自分の生きてきた村を守りたいと懸命に言ってきてな。こちらが避難しろといっても聞く耳もたなかったんだ」


「ここは俺らの生きてきた村。そして骨を埋めるつもりの村だ。俺らの最後の意地なんだ………。仙崎さんを責めないでくれ」


 真剣な表情の髭もじゃたちが一斉に子供のように見えるおっさん少女へと頭を下げてくる。それを見ながら遥は嘆息して髭もじゃたちへと意見を言った。


「仕方ないですね。新兵さんだから気をつけてくださいよ。絶対に戦闘は防壁の中で行なってくださいよ? 約束ですからね」


 むぅと頬を膨らませて、可愛くおててを腰にあてて、メッと怒るおっさん少女であった。怒り方が可愛すぎるので、相手は言うことを聞くのか不明なほどだ。もしかしたらご褒美だと思い、わざと言われたことを守らない人間がでるかもしれない。


「では私たちは一旦本部へと帰還します。新型防衛用機動兵器が配備可能か尋ねてきますね」


「あぁ、すまないな。戦力はあればあるほど良いからな」


 遥の言葉を聞いて、嬉しそうにする仙崎へと、小柄な身体でめいいっぱい手を振って、ばいば〜いと帰宅するおっさん少女であった。中身はきっと霧散したと思いたい可愛らしさであった。




 アインたちを置いて、一足先にファストトラベルで帰宅したおっさん少女は自宅にてソファに沈み込むように座る。


「ふへ〜。最近は色々と考えることが多くて大変だね〜」


 ふかふかソファに座りながら呟く遥。ここ最近は忙しくて困っちゃうよと、遊びと睡眠が1日の7割を占めているおっさん少女は愚痴る。食事は入れていないがだいたい1割だろう。すなわち全然働いていないのであるが。


 遥視点だと働き過ぎなので、そこに反論は認めませんのスタイルであった。


 素早くおっさん少女の前にことりとチョコレートパフェを置いてくれるナイン。


「冷たくて甘いものが食べたいかと思いまして」


 にこやかなるその笑顔と気の利いたデザートに嬉しさいっぱいな遥。パフェなんか食べたくてもおっさんには不可能であるからして、伝説のアイテム並みだ。


「ご主人様。肩をお揉みしましょうか? もみもみと揉みますよ? ちょっと手が滑ってしまうかもしれませんが、そこはスルーしてくださいね?」


 にこやかなる下心溢れた笑顔とツッコミまちなその言動に疲れがいっぱいの遥。美女の肩揉みなんか、おっさんには受けることなど不可能であるが、変態メイドからの提案なので、閉店セール並みの価値しかないアイテムだ。


 といやっ、とサクヤの身体を回転させて、ソファに沈み込ませて黙らせる。そしてチョコレートパフェを甘い甘いと語彙の少ない褒め言葉で褒めて食べるのであった。


 パクパクと食べながら、そして生クリームで口をベトベトにしてナインに問いかける。その間にも仕方ないですね、ご主人様はとハンカチでムギュムギュ拭いてくる幸せそうなサクヤ。美少女だからこそ許される食べ方だ。ツーカーの動きである二人。


「新型はなにを作ろうか? 面制圧ができる機動兵器が必要だよね。多少の速い動きでも漏れなく倒せるやつ」

 

 スプーンをフリフリしながらの問いかけに、ナインがふむんと頬に手をあてて考え始める。おっさん少女では無理である話だ。なにしろ種類が多すぎる。絶対に強そうだと思う機動兵器を作成して、その後で失敗したと後悔するだろうことは間違いない。それに名前からは強そうだと予想できない。ネーミングセンスが最悪な運営の悪意ある名付けが行われているので。


「マスター。ならば拠点防衛用兵器チェスを作成しましょうか?」


「チェス? どんなの?」


 まともそうな名前である。チェスがまともそうな名前という点で終わっている感じがするが。遥の頭にはオリハルコンでできたチェスの兵士が頭に浮かぶ。漫画で出てきたのだが、かなりかっこよかった。主人公補正で相手にいくらダメージを与えてもHP1から減らないとかイカサマだろと敵側の視点になってしまったものだ。 


「実際に作ったほうが説明がしやすいと思いますが」


 ナインのにこやかなる癒やさせる微笑み。その態度にイカサマを感じる遥。もう新人類並みにピキーンと頭に嫌な予感が走る。


 ちらりとサクヤの反応を見ようとするが、いつの間にかおっさん少女の膝に頭をのせて幸せそうな表情でスヤスヤと可愛らしい寝息をたてて寝ている。もう永眠したいのであろうか。


 まったく頼りにならないサクヤへと失望のため息を吐いて、ポチリと大型機動兵器チェスを作成する遥であった。


 せめて、テキストフレーバーだけでも読もうとしたが


「えいっ。目隠しです。できるまでは内緒です!」


 ちっこいおててをおっさん少女の顔に被せて、可愛らしい声音でナインが言ってくるので


「そっか、内緒では仕方ないよね」


 とあははと笑い誤魔化される遥であった。それはキャバクラでフルーツ盛り合わせを頼んで良いかしら? お値段はヒ・ミ・ツ! と言われて騙されるような感じであったとか、ないとか。




 のんびりとリビングルームで寛いで、暇なのでサクヤとゲームをしながら建造を待つ遥。


「なんでワンナップ全部取るわけ? 私の残機が五機から変動しないんだけど。もう少し相手のことを考えてほしいんだけど?」


「ご主人様。このゲームはいかに相手の残機を減らしてクリアするかが目標なんですよ?」


 飄々と嘘をついて、遥のキャラへと妨害を仕掛けるサクヤ。しかして機械操作スキルがあるので、超人のような回避をしていく。そんなアホらしくかつ壮絶なバトル中にナインが声をかけてきた。


「そろそろ完成すると思います、マスター」


「あぁ、そんな時間? なら遊ぶのはやめて工廠へ向かいますか」


 よいしょとさり気なくゲームをリセットして、立ち上がるおっさん少女。


「あ〜! 私の80機を超えた残機が〜!」


 なんだか後ろから悲痛な声音での叫びが聞こえてきたが、もちろんスルーする卑怯なるおっさん少女。手慣れすぎているので、昔はいつもやっていたのかもしれない。




 工廠には50メートルの高さをもつ機動兵器が建造を終えていた。この高さはたしかに安心できるけどと感想をナインへと言う。


「ねぇ、これ本当にチェス? いや、言いたいことはわかるよ? チェスなんだろうけど」


 ついっとちっこい人差し指を伸ばして、困ったようにナインへと叫ぶように言う。


「チェス盤じゃん、これ! え? チェス盤が縦に立っているだけだよね? 白黒に一応分けられているけど、これどうやって敵から守るの? 武器が見えないんだけど」


 そうなのである。単に白黒の盤が立っているだけだ。武器の欠片すらわからない。


「大丈夫ですよ、マスター。試せばわかりますから」


 ニコリと笑顔を見せて、ナインがポチリと空中に浮いているモニターを押下する。ウィ〜ンと音がして、チェス盤が細かく分裂し始めて、それぞれがブロック状となり組み合わさっていく。


 数十秒後、軍隊のような兵士たちが出来上がった。フンスと胸をはり自慢げな金髪ツインテールさん。


 その様子を見ながら、どうにも困った感じだねと戸惑いながら、遥は感想を言う。


「………え~と、たしかにチェスと同じ数の兵士が出来上がったね」


 キングらしき機動兵器はごつい強襲揚陸艦みたいな形になっており、兵士ではなく指令艦だ。クイーンは小型のガンビットらしきものを浮かべた戦車。ビショップは工兵、ナイトは装甲車のような無限軌道のキャタピラではなく車輪となっている小型の戦車。シールド発生機のようなタワー型のルーク。そして人型ロボットのポーンである。


 何も知らないで、この軍隊を見たらロマンあふれるメカニカルな軍隊だねと喜んでいた。おっさんは確実に喜んでいただろうかっこよさだ。


 だが、ツッコミを入れたいのだ。たとえナイン相手でもツッコミを入れねばならんと謎の使命感に駆られる遥はチェスの軍隊へとちっこい人差し指をビシッと指し示して叫ぶ。


「ブロックが組み合わさってできたよね、これ? よく見ると継ぎ目があるしチェスじゃないよ、これはなんとかブロックとか宣伝していそうな積み木ブロックの軍隊だよね? なんか超人としてどこかの筋肉な漫画にでそうなやつだよ! ブロックマンとか名付けられて!」


 チェスだったのは最初のチェス盤だっただけだ。あとはブロックとしてバラバラになり組み合わさってできた玩具の軍隊のような感じである。チェスなのは最初だけでしょと感じるのであるからして。


 ナインは動揺も見せずに両手を組んで、にこやかに見惚れる微笑みを浮かべる。


「これは万能型可変機動兵器チェス。大型の敵なら大型の機動兵器に、小型の素早い敵ならば小型の兵士群に、用途にあった機動兵器です。これらは審判艦と呼ばれる指揮車に乗りながら遠隔での指示を行いながら戦闘できます。もちろん空中戦艦スズメダッシュからも遠隔操作可能で、姉さんが操作をできますので、まさに完璧な機動兵器となると思います。弱点は核である月の紋章の鍵が破壊されるとただのブロックになってしまうことですね」


「それはサンシャなんとかという超人だから! 砂に変形できる私の一番のお気に入りの超人の能力だから! あと可変機動兵器ってここまでバラバラになったりしないからね? 飛行機とかになるのが可変って意味だと思うんだけど!」


 ツッコミしきれないというナインとの会話では珍しい状況になるおっさん少女。そして、あの超人は絶対に最強だと考える遥。だってどう考えても負ける要素がない。


 だとしたら、これもそこそこ強いと考え直して、その力を尋ねる。


「戦闘力はどうなっているの? だってブロックだよね、武器は?」


 砲台とか銃とか持っているけど、全部ブロックが組み合わさってできたものだからして、ただの飾りじゃないかしらんと首をコテンと可愛く傾げるおっさん少女。


 両手に腰をあてて、あるかわからない胸を反らしてドヤ顔になるナイン。クラフトの話になると人が変わる美少女だ。そのギャップも可愛らしいよねと密かに思う遥。


「このブロックは複雑な回路が組み合わさってできており、多数と連結することでプラズマエンジンとなります。その力により、プラズマ系の武器となるのです。あの砲台や銃は玩具ではなく本物のプラズマウェポンなんですよ。超電導よりも断然威力が上の武器です」


「おぉ! なんだか凄い! ネーミングセンスは相変わらずの無さだけど、戦闘時は凄い役に立ちそうだね!」


 凄い、凄いよ、ナインと紅葉のようなちっこいおててでパチパチと拍手するおっさん少女。ナインも褒められて嬉しそうな表情で可愛らしいちっこいおててでパチパチと拍手をする。


 小柄な美少女二人がパチパチと拍手をする癒される光景がそこにはあった。


 後ろで、はぁはぁと興奮した息を吐いた銀髪メイドがカメラで撮影しまくっているので、その光景も台無しになる可能性が高い。


 ならば最後の気がかりはこれだねと、ナインの耳元に口を寄せて小声で尋ねる。


「で、お値段はいかほどでしょうか? ハウマッチ?」


 ケチな遥はお値段も気になるのである。そんな年ごろであると言い張る中身は年齢不詳。


 こそっと小声で答えてくれるナイン。こしょこしょとやっぱり遥の耳元に口を寄せて教えてくるので、息がかかって、こしょばゆい。反対側の耳に無意味にサクヤがふ~っと息を吹きかけてくるのもこしょばゆい。とりあえずサクヤには蹴りを入れるが華麗にスカートをなびかせて回避されてしまう。


「これぐらいです。マウンテンベースと牧場コミュニティ、一葉港、若木コミュニティにそれぞれ設置を行なっておきます。若木コミュニティには念のためにというところですが」


 ニコニコ笑顔であるナインだが、耳に入ってきた値段に驚愕するおっさん少女。空中戦艦スズメダッシュとほぼ同じマテリアルを使用しているのだからして。


 うぬぬと建造をためらうが、この機動兵器は遠隔操作にてツヴァイかサクヤが一人で操作できるのがウリである。空中戦艦スズメダッシュのように大勢の乗員を必要としないのであるからして。


 それと考えたら、かなりの出費となるが仕方ないと嘆息する遥。ケチって負けることができるのはゲームの中だけ。現実では軍備をケチり始めた国から滅んでいくのだ。シミュレーションゲームではそうだったと、やはり参考はゲームからのおっさん少女。


「それならどれぐらいの戦闘力か試すことにしますか! 実際に見てみないとね」


 気を取り直して宣言をする。検証して強いところを見えてもらおうと思う。大ダンジョンに連れていけば良いかな?


 おずおずと気まずそうに、遥の宣言に対して返答をするナイン。


「マスター。チェスは最初にチェス盤として設置した半径10キロ以内でしか行動できないのです。そういう仕様なので持ち歩きして戦わせるということはできない機動兵器ですね。設置を変更するには1日かかります」


 ナインの言葉に肩を落として、ゲーム仕様なら仕方ないね、そういうのあるからとがっかりするおっさん少女であった。

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