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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
14章 北海道に行こう

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203話 おっさん少女は捕虜を調べる

 レベルが46となり、ブラッドジュエルを手に入れたおっさん少女である。珍しくアイテムポーチから出してみて、コロコロと手の中で転がす。真っ赤なルビーに見えるが、なんだか、血の色のように暗い感じがする。だからこそブラッドジュエルなのだろう。ちょっと不気味で呪われそうだねとビビるおっさん少女。


「ねぇ、最近の報酬は宝石類が多くない? なんだか宝石類ばかりな感じがしない?」


 疑問に思うおっさん少女である。こんなにたくさんの宝石をなにに使えば良いのかしらん。


「マスター。宝石類はもう少し集めましょう。きっとクラフトで良いものができますよ」


 ニッコリと癒やしの笑みを浮かべるナインである。クラフトサポートキャラである金髪ツインテールさんが、そう言うならもう少し集めてみようかと考える遥。もしかしたら宝石を揃えると良いことがあるかもと期待する。


 全部の宝石を集めると凄い効果になるのかなと期待もしている。昔やったゲームでは凄い力を持つ宝石がゲームの主幹であったロマンチックなサガとかいうのを思い出す。あれは全部の宝石があると思い懸命に探したのに、最初から失われたという設定で全部は手に入らないということがわかって呆然としたことがあった。手に入らないというヒントぐらい欲しかったと思うおっさんである。ちなみにリメイク版は敵が強くなりすぎてクリアできなかったおっさんでもある。


「まぁ、それじゃ頑張って集めますか。もうダイヤとかは手に入れているし、あとはしょぼい宝石ばかりでしょ。しょぼすぎてアイテムコレクトから漏れちゃうタイプ」


 楽観主義なおっさん少女は、大体の宝石は集めたからあとは余裕でしょうと考えていた。もちろんフラグをたてたとは、これっぽっちも思わない遥である。


 小説やアニメでは、必ずといっていいほど、もう財宝探しも終わりだねとか主人公やヒロインがいうと、実はもっと凄い物があったとかいう感じ。そして、それに相応したボスもいたものである。


 珍しく自分がフラグをたてたとは露ほども思わずに、そんなことには気づかないおっさん少女は、地面に倒れ伏す男たちを見渡して、次なる手をうつのであった。


 そうして、笑顔で次なる行動に移す。


「バーベキュー、バーベキューが待っています。私のソフトクリームは無事でしょうか」


 次なる一手はバーベキューでソフトクリームも食べることであった子供なるおっさん少女。ソフトクリームが全部食べられていないか心配なのですと考えていた。なので、実際の行動はバーベキューの準備を再開することであった。スキップしながらアインとシノブに捕虜は任せて牧場へと戻る、どう考えてもお子様な美少女だからして。





 数日後、広い大学の教室のような部屋。そこにはごつい人々が座っていた。皆は集められた理由を聞いているため、説明するための人が来るのを雑談をしながら待っていた。


 そこへシュインと教室の自動ドアが開き、白衣の女性が二人入ってきた。というか、一人は袖も裾もぶかぶかな明らかにサイズが大きすぎる白衣を着た少女である。裾をひきずりながら、てってこと歩いて入ってきた。まぁ、おっさん少女ではあるが。


 遥は少女がぶかぶかな白衣を着て歩くことに一定のファンがいるのを知っていた。というか、遥がそのような姿の少女が可愛らしいと思っているからして。


 あざとさ爆発の格好で、教室のモニターの前にもう一人の女性と立つ。ふんすと息を吐いて、両手を腰にあてて、教室にいる人間を見渡す。


 そして、教卓に手を置こうとするが、ちっこくて届かなかった。うんせうんせと手を伸ばそうとする背伸びしているように見える美少女。もうおっさんは亜空間に封印したい。


 見かねたもう一人の美女がおっさん少女の腰を持って、持ち上げるとようやく手が届き、むふふと微笑むのであった。


 グハァッ。バタンキューという音が、ウィンドウ越しに聞こえたがスルーである。たぶん可愛さに負けたどこかの変態メイドなので問題なし。


 教室にいる皆を見渡して遥は真剣そうな、それともごっこ遊びをしていると思われる感じで口を開く。たぶん後者の方を思った人が大多数。


 えへんと咳をしてから、楽しそうな表情で子供な美少女は声を発する。


「皆さん! 本日はお集まりくださりありがとうございました!」


 そしてニヤリと可愛く口元を笑みにして、前にあるモニターへと手を翳す。ピコンと音がして、捕まえた人間がベッドに拘束されているのが映っていた。


「さて、お集まりの皆さん、この捕虜は北部から攻めてきた人間たちです。えっと……。なんだっけ?」


 腰を掴んでいる白衣の美女へ困ったように顔を向ける。もう言うことを忘れたらしい。


 おっさん少女をおろして、白衣の美女はサッと頭をひと撫でしてから頷く。


「レキ様。私が代わりましょう」


 むぅ、と口を尖らせる子供なるおっさん少女。渋々と悔しそうに後ろに下がる。カンペが必要ですよ、カンペがという呟きは苦笑とともにスルーされて、皆は白衣の美女へと視線を向けた。


「皆さん、こんにちは。イーシャです。それでは説明しましょう。この男はついこの間、レキ様たちが確保した者たちです」


 眼鏡をかけた理知的な美女であるイーシャ。今回は捕虜の解析に呼ばれたのである。呼ばれたのは実際は眼鏡であるが、美女なので、眼鏡が本体とかどこかの万屋の青年みたいには呼ばれないだろう。美女は常に美女の体が本体なのだ。


 人間は既にスキャンを行えば、どのような状態かわかる優れ物である眼鏡型スキャナーをキラリと光らせて、説明を始める。


「この男たちは、先日某コミュニティに現れた人間たちです。振る舞いこそはアレですが、正真正銘人間でした。ただ、奇妙にも王と呼ばれる者から授かったタイライムと呼ばれるミュータントを使役していた素振りがあります」


 ここまでは良いですかと周りを見渡すイーシャ教授。おっさん少女は話が長そうなので、早くもコクリコクリと舟を漕いでいた。何をしにきたかわからない。


「ミュータントは通常操ることは不可能です。それは眷属系のミュータントたちの成り立ちが人間への攻撃性を持って変異しているからだと、大樹の科学者たちは考えています」


 そこはメイドたちの言葉であるので間違いない。オリジナルならば、稀に攻撃性よりも自我が強くて人間に混ざることが可能なミュータントがいるかもしれない。というか静香なのだが。だが、眷属系は使役は不可能なのであるのだ。使役スキルはあるが、その場合は餌はダークマテリアルなのでありませんよと言われてスキルの取得を諦めたおっさんがいるとかいないとか。

 

「だが、そいつらは可能にしていた。可能にしていた理由はなんだ?」


 席に座っていた腕組みをしていた豪族が鋭い眼光を見せながら質問してくる。


「王と呼ばれる者が使役している眷属と思われます。しかも特定の人間へと使役を任せることができる極めて特殊なミュータントだと考えられています」


 真面目な表情をしながら、キビキビと答えるできる美女なイーシャ。そして、おっさん少女はてこてこと部屋の隅に行き、寝そべってスヤスヤと寝息をたてていた。


 自由すぎて、美少女でなければ、放り出されていたことは間違いない。寝ている姿があどけない子供にしか見えないので、皆はほんわかしたその姿を見て和むのである。おっさんならゴミ収集車に入れられているだろう。


「しかも彼らは王の命令だと誤認させる力を持っていました。これですね」


 カシャリとモニターに映るものが変わる。何やら薄い赤い昆布のようなひらひらしたものである。


「これは寄生型ミュータント。名前は寄生赤昆布と名付けました。これをまるでペイントのように体に貼りつける、いえ、寄生させていることにより、同じミュータントだと誤認させたと思われます」


 誰が名付けたかは不明である。たぶんドヤ顔の銀髪メイドかもしれない。


 寄生型と聞いて、教室内の人々が驚き、お互いに顔を見合わせて話し始める。パンパンと手を叩いてイーシャはざわつく教室を静かにさせて、話を続ける。


「これは極めて脆いミュータントです。人間の身体に潜り込み、血液を吸いながら生きるタイプですね。寄生されなければ子供でも駆除が可能でしょう」


「血を吸われた人間は影響は無いのか? 問題なく暮らしていけるのか?」


 蝶野が、手を少しだけ挙げて難しそうな表情で発言する。


 イーシャはそれを哀しそうに首を振って否定した。


「いえ、残念ながらそう都合よくはいきません。根株を頭に植え付けられており、そこから昆布は身体に伸びていき、体内に根を張り血を吸います。本来であれば激痛が常に走り、体内はボロボロになっていくでしょう」


 再度、ざわつく教室を見渡して、ゆっくりとした口調で話を続ける。


「ですが、常人なら不可能な動くことを可能としていた力があります。恐らくは洗脳系の力により無痛状態とされているのです。ここで注意していただきたいのが、赤昆布自体には力が無いのです。単に人間に寄生して吸血するのみであり、その力も大したことがありません。タイライムが誤認するように使われたと推測されます」


 淡々と説明をするが恐ろしい内容である。激痛に苛まされているにもかかわらず、本人はその状態に気づかないで暮らしているというのだから。昆布という名称が極めて緊張感をなくしていたので、隅っこでおっさん少女は寝ていてよかっただろう。たぶんおっさん少女が説明していたら、シリアスではなくシリアルと雰囲気は変わり、甘いミルクをかけられていたかもしれない。


「………だとすると、赤いペイントをしているやつらは全て寄生されて極めて危ない状態にあるということか………。どれぐらいで体は耐えられなくなる? 危険水域はどれぐらいだ?」


 強面をさらに顰めて、豪族が唸りながら尋ねてくる。どう考えても人体に寄生されて長く生き続けることなどできないと思うからだ。


 頬に手をあてて、辛そうな表情を見せてイーシャは返答をする。


「恐らくは1年半………。もしかしたら、もっと短いかもしれません………」


 さらにざわつく教室。衝撃の発言である。北部ではペイントをしている人々が多数いると考えられているからだ。


 イーシャが片手をあげて、静かにするように見せて話を続ける。


「ですが、大樹の技術ならたとえぎりぎりの余命でも回復可能です。救出作戦を考えないといけないでしょう」


 その言葉を聞いて、バンと机が叩かれて、立ち上がる人がいた。誰かと思えばコマンドー婆ちゃんである。厳しそうな表情で強い意志を感じる声音で怒鳴る。


「はっ! なら、簡単だ! あたしらが乗り込んで親玉をぶっ倒して人々を助ける! だろう? それともこの兵器は張りぼてだとでも言う気かい?」


 両手を周りにみえるように掲げて言う。


 そう、ただいまコマンドー婆ちゃんたちは空中戦艦に乗り込み、作戦室で今回の出来事について聞いていたのであった。若木コミュニティの防衛隊も集合して状況を確認してもらっているのである。


「そうですね! この空中戦艦なら敵はびっくりして戦意を失うことは間違いないですよ!」


 正義感の塊であるナナがコマンドー婆ちゃんに同調して立ち上がり意気を上げる。周りの人々も、そうだそうだと騒ぎ始める。防衛隊もこのコミュニティにいる兵も、この巨大戦艦ならどんな敵でも倒せると信じている様子だ。


 その騒ぎに水を差すように冷静で強い大声が響く。


「待て………。話はそう簡単とはいかないはずだ。そうだろう姫様?」


 豪族が周りを威圧するように、部屋の隅っこを見つめる。


 見つめた先にいたおっさん少女。ふわぁとうるさいなぁと、むにゃむにゃと言いながら起きあがり、豪族の推測を補完する。


「その通りです。救助なんて気にしなければ、戦艦の艦砲射撃で倒せる可能性はあります。それに私が戦いますしね。ですが、ペイント寄生されている人々がいるならば話は別です。彼ら彼女らは一般人の可能性が高い。しかも洗脳の種類もわからないのですから」


 そうして、ニコリと無邪気そうに微笑みを浮かべるおっさん少女であった。


 余談だが、本当はおっさん少女は起きていた。こんなに騒いでいる中で寝られるわけがないのである。いつ自分の出番があるか、まだかな、まだかなとソワソワしながら、声をかけられるのを待っていた、映画俳優を目指しているかもしれない、しょうもないおっさん少女であった。余談であるので、この記録は抹消されます。たぶんカメラドローンで撮影されていなければ。




 空中戦艦スズメダッシュが飛翔して、牧場コミュニティを離れていく。グングンと高度を取り空の彼方へと消えていくのを、皆が頭をあげて見送っていた。


「なんだい、なんだい。随分慎重なやつらじゃないかい。虎の子だか、猫の子だか知らないが戦艦ってのは使わないと意味が無いんだよ。大和の最後を教育されていないのかい、大樹って財団は」


 コマンドー婆ちゃんが文句を愚痴りながら、消えていった戦艦を見送った。状況がわかるまでは待機するということで空中戦艦は本部へと戻っていったのである。たぶん大和といっても、宇宙を航行しないほうだと思われる。第二次世界大戦で最後は輸送艦扱いされた哀れな艦のことだろう。


「にゃーんと鳴く子猫は可愛いですよね。あの空中戦艦も子猫なので大切に扱わないといけないんですよ」


 ニコニコと可愛く笑顔を見せながら遥はコマンドー婆ちゃんへと視線を向ける。


「はっ! あんなにでかい子猫なんて、あたしゃ見たこと無いけどね」


 肩をすくめてコマンドー婆ちゃんが、憎まれ口を叩く。


「そうですよね! 私も常々あの戦艦をもっと効率的に使えば、もっと生存者を助けることができると思っているんです」


 コマンドー婆ちゃんへと詰め寄るように近づいて、フンスと鼻息荒く同調するナナである。まぁ、気持ちはわかるが。


「大樹の切り札的な物だからな。あれがやられると全ての計画が狂っちまうから気を付けているんだろう。それに………」


 豪族が苦々しく答えて、おっさん少女をちらりと見る。なんだか辛そうな表情だがなんだろうと遥は首を傾げてみるが、豪族は何も言わなかった。


「あぁ………。あたしゃ、引きこもりのエリート様ってのが嫌いだね。子供を前線に立たせるなんてさ!」

 

 ガリガリと頭をかいて、やはりコマンドー婆ちゃんもこちらへとなにか憐みを覚える視線を向けるが、意味が分からない。なにか最近したっけと考えるが思い当たることが多すぎて、わからないアホなおっさん少女である。なぜかナナも辛そうな表情でこちらを見てくるが。


 まぁ、考えてもわからないのであれば、あとでわかるだろうと気にしないで、紅葉のようなちっこいおててでパチパチと拍手をして、ここにいる人々へと先程決定した内容を告げる。


「ここにいた隊長さんは1か月もしないうちに洗脳されて出ていった模様です。しかし、洗脳されたのは自衛隊隊員のみとか。コマンドー婆ちゃんたちは元傭兵であるのに洗脳はされなかった。これにはなにか理由があるはずです。そのために、申し訳ありませんが若木コミュニティの元自衛隊員にここで暮らしてもらいどのような洗脳かを調査したいと思います」


 その言葉に豪族や蝶野たちが強く頷く。彼らは既に常人の域を超えた戦士である。おっさん少女のライトマテリアルの輝きを受けてパワーアップしている。その彼らにも影響するほどの力なのか? それとも単に北海道の自衛隊隊員のみを狙った攻撃か? もしも洗脳はもっと万能ならばどうするか? 調査しなければなるまい。北部の人々を助けるためには防衛隊の力も必要なのだから。ちなみにナナはどうしてもといってついてきた。


「任せろ。もし仲間が洗脳されているのならば、絶対に助けてみせる」


 蝶野が危ないセリフを言う。みーちゃんを悲しませない方法でお願いします。


「自衛隊隊員が悪さをしているなら、ガツンと一発殴ってやらないとな」


 豪族が力強く頷く。殴りすぎて倒さないでねと心配してしまう。


「はっ! 隊長さんたちがもしも生き残っているなら………。預かっているこのコミュニティを返しに行かないとね!」


 コマンドー婆ちゃんチームが、それぞれ渋い動きを見せてこちらへと同意する。映画みたいに返した途端に死なないでよと内心で思ってしまう。


「大丈夫! 今まで助けてもらった分、私たちもがんばるよっ!」


 力こぶを見せてナナが元気よく宣言をするので苦笑しながら、主人公だから、また凄いことをしそうだなぁと予想しながら。


「まぁ、とりあえずはここで暮らしてみましょう。洗脳がどういうものかを確認してから出撃は考えます。なので、まだ気合を入れるのが早いです」


 皆が意気を上げる中で、ひまわりのような明るい笑顔を見せて、空気を読まないおっさん少女は水をさすのであった。だって、今から戦いに行こうという雰囲気だったので。





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