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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
13章 要塞を攻略しよう
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171話 激闘!おっさん少女対邪武

 天守閣の広間ともいえない広すぎる広間。広すぎて部屋には見えないその中で空気が破裂して、突風が巻き起こり、畳は弾け飛び、混沌の世界と化していた。


 小柄なる蒼き装甲を着込む少女が立ち止まる一瞬にしか姿を見せず静音の中で行動すれば、黒き武者が残像を残し畳を打ち壊しながら音高く突き進んでいる。


 静と動の戦いがそこにはあった。


 ズドンズドンと拳が受けられ、蹴りがいなされる時に轟音が発生して広間に響き渡り、空気を震わせて、その場を崩壊させていく。


 主の支援をしようとするサルモンキーはコンバットナイフを持ったまま、敵の姿を視認できずにオロオロと身構えるのみ。戦いは次元の違う世界へと突入していた。



 高速の世界で邪武がレキへと接近する。瞬時に移動してくる姿を確認して、レキは立ったまま案山子となっているサルモンキーの後ろへ移動して、そのまま邪武の前に蹴り飛ばす。


「モンギッ!?」


 自分がなにかに蹴り飛ばされたことすら気づかずに、蹴り飛ばされたサルモンキーは風圧で顔を歪めて、己が主のもとへと吹き飛ばされていく。


 サルモンキーを見た邪武はすぐさま対応する。


「ひょぉぉ!」


 両足を揃えてサルモンキーの頭へと飛び乗る。そしてそのまま飛翔して、右脚を伸ばしてレキへと蹴りにて突いてくる。


「ボンギッ」


 邪武に飛び乗られたサルモンキーは頭から縦に真っ二つとなって地面へと落ちる。


「北条飛翔脚!」


 邪武が叫ぶと突きこまれた蹴りが超常の力を纏い槍の鋭さとなる。


 超技である。パクリくさい名前の攻撃を邪武はしてきたのだ。恐らくは受ければ風穴が空くだろう力をレキは感知する。


「エンチャントサイキック」


 素早く遥がレキを強化すると、それに合わせてレキも超技を使う。


「超技サイクロンパリィ」


 くるりと身体を回転させると、レキを中心にして竜巻が巻き起こり、邪武の北条飛翔脚へと対抗する。


 竜巻は北条飛翔脚の蹴りを回転にて受け流す。レキの前を通り抜けた邪武は床へと蹴り足をつけると同時に、蹴り足を支点に踏み込み、後ろ回転にて蹴りを再度サマーソルトキックの形で繰り出してきた。


「北条月砕脚!」


「超技サイコハイキック」


 それを見てとったレキは回転を止めて右脚を高く掲げるように勢いよく蹴りを繰り出した。


 レキの蹴りと邪武の蹴りがまたもや激突する。空間が歪み、周囲が激突の衝撃波でたわみ、お互いに蹴りの反動で数歩吹き飛ぶ。


 そうして間合いが離れた二人は両足を地面へとつけて体勢を立て直し身構え直す。


 二人の踏み込みにて、また一つ畳がボロボロになり、足を擦り付けられた畳はその摩擦力でブスブスと煙が発生して、小さな炎が起こった。


 激しい戦いである。その光景に緊張感を持って、悔しそうに遥は呟いた。


「敵の技の名前の方がかっこいい」


 呟くのを禁止にしないといけない遥の言葉である。もう戦闘中は話すの禁止にしたらどうだろうか。


 パクリっぽいけどかっこいいと悔しがる遥。常日頃、薄々思っていたが、レキの技名は簡単なのだ。ネーミングセンスがないのかも。今度教えてあげようかなと余計なことを考える。厨二病禁止な余計な考えである。


 そんな遥は放置して粗大ごみ回収箱にでも入れておきたいが、戦いは未だ続いている。


「かはぁ〜」


 邪武は両手のひらをこちらへと向けて、鉤爪の形へと指を折り曲げて、素早く腕を交差させて半身にして構え直す。


 レキもスッと腕を掲げて半身にして構え直す。


「クッ! 構え直す姿もかっこいい」

 

 もはや幻聴で良いだろう。それがいい。そんな呟きがまた聞こえるが無視をして、邪武が大きく呼吸をして呼気を整える。


 ひゅうと微かに息を吸いレキも呼吸を整える。


「こぉぉぉぉぉ」


 大きく邪武が息を吐いて、こちらへと接近してきた。


「北条百烈ダム拳!」


 邪武は叫び、いくつもの拳が残像で残る連続突きをしてきた。


「ダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ」


 遥相手なら、その攻撃は抜群だった。パクリすぎると大笑いしていたからだ。どうやらおっさんのツボに入った模様。ここにきてダムを絡めるのかと、いくつ漫画をパクる敵だと、精神世界で大笑いだ。笑ったまま殴られて死んでいただろう。極めて間抜けな死に方だ。きっと何回コンテニューしても笑ってしまい死ぬ。


 だが主導権はレキにある。感情をピクリとも動かず、迫り来る無数の拳を見つめる。


 そして右足を擦るように床へと踏み込み、右手のひらを敵へ向けて掲げた。


 敵の拳が迫り来るなか、舞うように柔らかな流れるような動きで手のひらを動かした。


 その動きについていけないかのように、レキが動いたあとに残像が動くように残り、手のひらは踊るように敵の拳を捌いていった。


 邪武の無数の剛拳が残像と共にレキを攻撃しようとすれば、レキも負けじと、剛拳に手のひらをそえて捌き受け流していく。


 無数の残像と拳撃が交差していき、受け流されて消えていく。順々にその拳撃を逸らし、捌き、受け流していくレキ。


 次々と拳を繰り出して、押しつぶし殴り殺そうとする邪武。 


 いつまでも繰り返されていく輪舞のような戦いは邪武の100発目の拳撃で終わりを告げた。最後の拳撃をスッと受け流すレキ。次々と攻撃が受け流された邪武の残像は全て消えていく。


 レキは最後の拳撃を受け流すと、ちっこい紅葉のような右手を軽く握りしめる。


 ぎゅっと握られた拳は脆弱そうで誰も倒せないようなか弱さを持っていた。


 だが、全ての攻撃を受け流されて体勢が崩された邪武へと突き出した拳は閃光のような速さで敵の胴体へと到達した。


「ぐへっ」


 雑魚っぽい呻き声を上げて、邪武は吹き飛ぶ。空を飛び床へ落ちると思われたが、腕を空にて持ち上げて床へとすぐにつけた。そしてくるりと回転して、スタッと床へと立つ。


 その目は驚きに満ちて、体を震わせこちらを睨んでいた。


「まさか、俺様の百裂ダム拳を受け流すどころか反撃をしてくるとはな………。化け物か」


 そんな驚きの問いかけにレキは淡々と眠そうな目を向けて応ずる。


「化け物は貴方かと。どうやらそれが限界のようですね。もう動きはわかりました」


 見切りの言葉を聞いた邪武は目元をピクピクと動かし、怒気を込めて叫ぶ。


「あぁ? これだけで俺様の動きを見切っただぁ? それは過小評価も良いところだぜ、小娘」


 ふぅぅぅと息を吐き、力士のようにドスンと床に水平に両足を踏み込み、胴体の前に両掌をこちらにみせるように腕を持ち上げる。


「こはぁぁぁぁぁ、北条の拳が極意、小田原城の構え!」


 尋常ではない超常の力が邪武に集まっていき、不可視の力が邪武を覆っていく。


 覆われた力を感じたのか、余裕の声音でレキへと怒鳴るように言う。


「これこそ、俺様が拳の真骨頂! 無敵の防御よ! この構えを破ることはできん!」


 両掌を螺旋のように動かしながら、得意げに語る邪武。どうやら防御の方が得意のようだ。


「でも、なんで小田原城の構えなの? どこらへんが小田原城の構え? ちょっとお城の雰囲気がどこらへんにあるか教えてほしいですけど? どこらへんにあるの? 腕? 脚? プロの芸人でもわからないと思うのですが」


 ツッコミを止めることのできない遥。どうしても問い詰めたい模様。なんで小田原城なのか? 神奈川にあるんでしょ、あれと、もはやつっこむことしかできないアホなおっさんである。なんとかの構えとか意味があるのかと、小説とかアニメとかでいつもツッコミたいおっさんなのだ。


 そんな遥の言動はおっさんギャグの加齢によるものなので、華麗にスルーしてレキは口を開く。


「なるほど。どうやって防御のみで戦うのか、お手並み拝見です」


 レキは目を細めて、口元を微笑みに変えて、右手の星金の手甲に力を込める。キラキラと黄金の粒子が昏き星の光を纏い集まり輝いていく。


「いきます」


 ドンッと床を蹴った瞬間には邪武の眼前に迫るレキ。拳を振り上げて超技を発動させる。


「超技星獅子閃烈拳」


 繰り出した拳は無数の光の矢となり邪武へと迫る。


「うぉぉぉ! 今度は俺様が受け流して反撃してやるぜ!」


 光の矢となったレキの拳撃を両掌を螺旋に動かして残像を繰り出し受け流していく邪武。


 受け流していく音とは思えない硬質的な音がキィィィィィンと部屋を響き渡る。


 次々と攻撃を捌いていく邪武。防御の方が得意というのは伊達ではないらしい。


 先程の邪武の攻撃を受け流すことによる拳撃の残像が消えていったように、光の矢の残影も次々と消えていく。


 邪武はにやりと口元を歪めて嗤う。


「このまま押し切って反撃を喰らわせてやる。さぁさぁ、次々とご自慢の拳撃は捌かれていくぞ」


 どんどん消えていく光の矢の残影。先程はこの先にすべての攻撃を捌かれた邪武が反撃を受けた。その時を待つ邪武。


 だが、先程と同様にはならなかった。加速するように次々と光の矢が増えていく。それは無限に増えていくように感じる攻撃であった。


 レキの攻撃は止まらない。どんどんと光の矢は増え続けていく。それはまるで無数の流れ星のようにとどまることはなかった。


「うぉぉぉぉぉ! て、て、てめぇ………! いつ攻撃が止まる? いつ止まるんだぁ!」


 捌いていく速度が落ち始める邪武。いや、レキの攻撃の速度がどんどん速くなっていくのだ。


 その名の通りに星が流れ落ちるように光の速度へと到達せんと速くなっていく。


 巡りくる星の流れは光の矢となり、ついに邪武は捌ききれなくなった。一つの光の矢が邪武の胴体に到達する。


 その衝撃で僅かに体勢を傾ける邪武。その僅かな体勢の崩れが致命的であった。


 他の光の矢は捌かんとする邪武の両掌を潜り抜けて、残りの全てが邪武の胴体へと到達する。


「ぐへぇぇぇぇぇ!」

 

 光の矢が到達して、邪武の無敵であるはずの黒き武者鎧へと攻撃を命中させていく。邪武の叫びと共に徐々に砕かれていく武者鎧。自らの構えも崩れ、光の矢の攻撃に吹き飛ぶ邪武。


 空を吹き飛び、床へとズサァと擦るように落ちて、ゴロゴロと回転しながら吹き飛ぶ。


「どうやら、私の勝ちですね」


 かすかに嬉し気にレキは邪武へと告げるのであった。




 邪武はよろよろと砕かれた黒き武者鎧の破片を散らばせながら立ちあがる。だが、立ち上がる時にはレキが懐に入り込まんと、とどめを刺さんと床を蹴り肉薄していた。


 レキが右腕を引き絞り、追撃の一撃を食らわせんとする。


 それを見てとった邪武は切り札を使うことにした。


 パカリと面頬が開き、銀色のシャワーがレキへと襲い掛かる。邪武の切り札。ニードルシャワーだ。攻撃の威力はたいしたことはないが、敵の意表をつく。


 銀色の針での攻撃に気づき、すぐさま、レキは攻撃を中止して腕を交差させて防御へとまわして回避しようとする。


 だが、追撃態勢に入っていたレキは体勢を崩しており、回避まではできなかった。銀色のシャワーはレキの腕に当たり刺さっていく。


 装甲を貫通するその鋭い針での思わぬ攻撃にぐらりと体勢を崩すレキ。


 レキの体勢が崩れたことを好機と見た邪武は右足からの蹴りを繰り出す。


「けぇぇぇ! 北条豪破脚!」


 さらに追撃を受け、レキは交差した腕で防ぐが威力が高いのだろうその蹴りにより吹き飛ばされる。


 今度はレキが空を吹き飛ばされて、ごろんと床に叩きつけられて、倒れ伏す。


 それを見た邪武は息を吐き、安心したように得意げに倒れ伏すレキへと言う。


「ぎゃははは! 残念だったなぁ、切り札は取っておくものだ! 俺様の力を見たか!」


 そしてずるりとバズーカ砲みたいにでかいショットガンを手の平に生み出す。


「ひょぉぉぉ。俺様の最強さは、この臨機応変さよ! 見たか小娘!」


 ショットガンをレキへと向けて勝ち誇る邪武。


「とどめだぁ!」


 当たれば粉々になるであろう巨大なショットガンを向けて引き金をひく。


 ズドンと音がしてゴルフボールみたいな弾丸が無数に飛び出してレキへと向かう。


 ふらりとレキは血を流しながら立ちあがり、ボソッと呟く。


「念動障壁」


 蒼き水晶の壁が空間に生み出されて、ショットガンの弾丸の攻撃を防ぐ。


 ガンガンと音がして、ポロポロと地面に弾丸が落ちるのを見てレキは呟く。


「………なるほど………油断しました。戦士としては失格ですね」


 邪武を睨み、そう告げる。その瞳は眠そうな目でありながら怒りの炎を宿していた。パラパラと突き刺さった銀色の針が腕から落ちていく。蹴りのダメージもあり、僅かに出血をしているレキ。


「むぅっ」


 その気迫と怒りにあてられたように、思わず後ろへと下がる邪武。


「でも、仕方ない。私も悪かったよ。ごめんね、レキ。いつものパターンで終わりかと油断したよ」


 今度は邪武への言葉ではない。遥のレキへの謝罪だ。正統派な戦闘だと思って見学モードであったのだ。絶対にピンチになったら卑怯なことをすると言っていたのに、予想外の強さであったから油断したのだ。戦闘を楽しむレキの思うがままにしようと思って手出しをしなかったのだ。


 首を横に振り、しょぼんとした声音でレキが答える。


「いえ、私も油断しました。搦め手をもっていると考えて慎重に攻撃するべきでした。あの追撃は一呼吸おくべきでした」


 しょんぼりレキである。珍しい。それだけ戦闘が楽しかったようだ。


 でも、これで終わりだねと遥は邪武へと視線を向けて冷酷に告げる。


「では、次なるは夫婦の共同作業を見せてあげよう。私たちの切り札というやつだ」


 少し怒りを込めて言う。珍しくおっさん少女は怒っているのだ。


「わけのわからないことを! しねぇ!」


 ショットガンが効かないとわかり、投げ捨てて、瞬時に床を蹴り突撃してくる邪武。それを見て冷静に遥は呟く。


「たしか、ダムエリアの概念は、ダムの軍隊の能力を上げるんだったかな」


 すっと右手を己と水平に持ち上げて遥は超能力を発動させる。


「念動界」


 その言葉と共に発動した超能力。おっさん少女の髪が力の発動により浮きあがる。淡い光が周辺へと散らばり始める。触れても何も起きない淡い光。しかしレベル8のもう一つの超能力は空気を一変させた。周辺全てが何か変わったような感じを与える。しかし何が変わったかはわからない。


 その空気を感じ取った邪武が突撃を中止して、何が起こったか判断ができずに腕を振り上げて、怒鳴り問いかけてくる。


「何をしやがった! こむすめぇ!」


「この超能力の効果は単純明快です。ただ広大なエリア全ての念動力系の効力を2倍にするだけ。他の超能力の効果を半分にするだけ。ね? 単純明快でしょ」


 水平に掲げていた腕を下ろしながら、冷たい微笑みとともに遥は淡々と語る。その声はただ何か単純な作業をしただけと言っている感じであった。


 遥は満ち溢れる自らの領域を感じ取った。そうして次なる超能力を発動させた。


「念動破壊」


 残念超能力。敵の中でも雑魚しか倒せない超能力である。もちろん邪武には効くわけがない。


 だが、遥が狙ったのは邪武ではない。


 発動した超能力は波のように広がっていく。発動した念動破壊が空間を覆う。全ての物体へと波のように広がっていく。


 そうして広がった波の後には、邪武自慢の城が崩壊していく。バラバラと細かい破片となり床も壁も天井もなにもかも。


「うぉぉぉぉ! なにをしたぁ!」


 砕け始めた城をみて、足元が崩れ落ちながら、焦り叫ぶ邪武へと丁寧に静かな声音で教えてあげる。


「ちょっと無機物を対象にしただけです。念動破壊のね」


 そう、遥は念動破壊を城を対象にした。念動界の効果により威力が2倍になった念動破壊は城自体を破壊していった。城内には銀色のシールドを発生させることができなかった城はあっさりとその巨大な図体を細かい破片と変えていった。城が建っている水も壊れかけたダムも周辺にあるトーチカも全て砕いていく。


 バラバラと細かい破片となり城は砕けていく。そして砕けた破片の中で床が無くなり、自由落下していくおっさん少女と邪武。お互いが破片のさなかに浮いていると思える自由落下をしていく。


 落ちながら瞼を瞑り、囁くように遥は言う。


「さようならだ。要塞ダムよ、何もかも破片となりて消えていけ」


 再度開いた瞳には強き光が宿っていた。


「そして城を失くした落ち武者もさようなら。ここでお別れです」


 レキが静かに言った。高揚感もなく怒りも憎しみも何もなく。


 ただ、ちょっとした知り合いへ別れを告げるように淡々と告げる。


 邪武は自らの城が粉々になったのを信じられない思いで見ながらも、すぐさま動揺を収めてこの元凶を睨んだ。


 脆弱そうな触れれば倒れるような小柄な少女。されどありえない力を内包する化け物。自らを超える敵。


「俺様がやられるか! 北条極意有象無象!」

 

 自らの最高奥義を使う。超常の力が集結して人型となっていく。それは風神であり、雷神であり、ザ・ハートであり、超龍であった。


「見たか! この奥義の力を! これらは幻影にして現実! 本物と同じ力を持ち、俺様の力となる!」


 そして柳のように揺らぎ、レキへと破片を蹴りながら近づく。生まれた幻影たちもそれに追随していく。


 溢れた力は津波の如く。威圧感は空気を震わせ圧倒的な速度でレキへと途中にある破片を砕きながら肉迫していく。


 それを見たレキは雷妖精の腕輪の力を解放した。瞬時に雷の妖精のエネルギー体が腕輪からフワリと出現して、そのままレキと融合していく。


「サンダーモード」


 雷の攻撃力を纏い、超常の圧倒的な雷の力を得たレキは右腕を引き絞り、邪武へと身構えて呟く。


「超技星金獅子雷光撃」


 打ちだした拳は星の輝きを持つ雷光纏う獅子となり、迫りくる邪武へと飛翔した。


 光の獅子は空気を焼き、途上にある破片を砕き邪武へと空気を震わせ歪めながら向かう。


 獅子はそのまま光の奔流となり邪武たちを飲み込んでいく。


「ごへぇぇ、お前、そんなちからおぉぉぉぉぉぉぉ」


 邪武はその奔流に巻き込まれて顔を歪ませて、鎧を砕かれ、幻影たちをかき消されて、自らの体が破壊されていくのを見てとり叫ぶ。


 邪武を貫いた光の獅子はそのまま一条の光の柱となって空を駆けてゆくのであった。


「貴方の敗因は簡単です」


 ドーンと大爆発する邪武を眠そうな目で見届けながら声を発する。


「私たち夫婦には敵わない。何故なら愛があるからです」


 頬をうっすらと染めてレキはそう呟き、地上へと降り立つ。


 こうして長かった要塞ダム戦はレキの勝利で終わったのであった。



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