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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
10章 体験牧場を楽しもう
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136話 極限戦線で先制攻撃をするおっさん少女

 間宮コミュニティは300人の大所帯だ。全ての人々を間宮の家に入れることはできないので、少し離れた家々に住んでいた。バリケードを作ってはいたが、それは少数のゾンビに対抗できる程度であった。


 間宮の見張りは集まりつつあったゾンビの大群を見て、戦うのを諦めてすぐに家に閉じ籠った。助けが求められない状況での立て籠もりは絶望でしかない。


 あのままでは、いずれバリケードは破られてゾンビたちに喰われていたのだ。


 その場合はゾンビ映画さながらの悲惨な光景となっていただけに、人々はどうするつもりだったんだろうと遥は緊張感の溢れる中で考えていた。


 装甲艦の甲板から下を見ると、死が目前に迫っているのを感じた人々は急いで装甲艦に我も我もと乗り込んでいる。カンカンと金属の床を踏む足音が響き渡り、走り込んでいた。


「旦那様、ヘリを目視できました」


 可愛らしい声音でレキが星でも見つけました、という平然とした話し方で教えてくれた。


 見ると空中には細身の戦闘ヘリらしき物が3機飛来してきている。バタタタタとローターを音をたてながらの現代の戦闘ヘリだ。おっさん少女の未来的ヘリとは違うが、性能は見た目ではなく、レベルに依存するので、超電導ヘリが100機ぐらいいないと勝てないであろう。


 う〜ん、ケチるのもそろそろ限界だねと反省する遥。作ろうと思えば作れたのに、まだまだ戦えると作成しなかったおっさん少女である。


 いくら高性能でも戦略さえあれば戦えると言って、悪いけどパワーが違うんだよねと、作戦を練って攻撃したものの全く効かないで主人公に言われて撃破されるパターンである。おっさんには相応しい役柄であると思うがどうだろう。


 戦闘ヘリは銀色の装甲、両脇にガトリング砲を装備しており、鋭角な先端は口が開いてガチガチと牙を打ち鳴らしている。鋭い目が獲物を狙い撃つべく睨んでいた。


 即ち、よくヘリにペイントされているサメのような目と口が半生命体化して実体となっていた。


「ご主人様、鮫肌のあのヘリはヘリシャークと名付けました!」


 ふんふんと鼻息荒く久しぶりの名付けに興奮する銀髪メイドである。確かになるほどヘリシャークだねと、なかなか上手い名付けだと感心した。


「最近はなかなか名付けが上手くなってきたね、サクヤ」


 ニコリと口元を愛らしく微笑み、褒めてあげる。


「ふふん、そうでしょうそうでしょう。もはや一心一体になるしかありませんね」


 ふんふんと鼻息荒くぽよよんとふくよかな胸をはり調子に乗る、久しぶりに褒められて自重しない変態メイドであった。


「攻撃きます」

 

 いつもの眠そうな目で動揺は一欠片もなく、ぽそりとレキが呟くと同時にヘリシャークからガトリング砲を撃ってきた。轟音と共にドルルルと銃声がして、凄い勢いでガトリング砲が回転をして無数の銃弾のシャワーを放ち始めた。それらは全てレキを狙い銃弾のシャワーが流れるように押し寄せてくる。


「エンチャントサイキック」


 その攻撃を見て、対処すべく遥が援護のためにレキへと超常の力を与える。超常の力がレキの身体に力を与え、超技の準備を授け始める。


 その遥の意図をすぐさま察したレキも、阿吽の呼吸でヘリシャークを狙う。


「超技ソニックブームスナイプ」


 レキが超技と共に、ちっこいおててでリキッドスナイパーの引き金を引くと、撃ち出された流体金属弾は射線上の空間周辺に衝撃波を発生させる。


 流体金属弾はその小さな質量にもかかわらず、空気を震わせ、衝撃波を生み出してガトリング弾のシャワーへと飛んでいく。


 その衝撃波は飛来するガトリング弾を、生み出された衝撃波で吹き飛ばしていく。木っ端の如くあっさりとガトリング砲の銃弾は風に煽られたようにバラバラに威力を無くして落ちていった。


 ガトリング弾を吹き飛ばした流体金属弾は、その威力を減衰させずに、狙い撃ったヘリシャークへと飛来する。


 ヘリシャークは回避行動を取ることもできずに、その装甲に銃弾をめり込ませる。


 通常兵器ならば、あっさりと弾き返すはずの装甲はあっさりと食い破られ、ギシギシと嫌な音をたてながら胴体にめり込みながら、銃弾がめり込んでなお発生させる衝撃波を受けて、周囲に響き渡る轟音と共に、火花や装甲を撒き散らしながら胴体を破裂させて爆散していったのだった。


 小さな弾丸の考えられない恐ろしい威力により、炎上しながら破片を撒き散らしながら墜落していくヘリシャーク。それを目の当たりにした他のヘリシャークが慌てて攻撃態勢をとき、旋回して離れようとする。


「この距離では既に回避は遅すぎますね」


 レキは回避するヘリシャークへとすぐに狙い撃ち、2発の銃弾を放った。カシャンと軽い引き金を引かれる音がして、シュィッと静かな銃声がする。


 懸命に急速旋回するヘリシャークの行動を予測したレキの銃弾は回避先のローターの付け根に正確に吸い込まれるように命中して爆発した。  


 爆発によりローターが吹き飛ばされていき、残りのヘリシャークはくるくるときりもみ回転をしながら墜落していく。


 そうして僅か3発の銃弾にて、あっさりとヘリ部隊は全滅したのである。


「やっぱりヘリはすぐに墜落するね。凄い怖いね。絶対乗りたくないよね」


 あっさりとレキの攻撃により墜落していくヘリシャークを見ながら、ふぃ〜と息を吐いて、その可愛らしい体をぷるぷると強張らせて怖がる遥。


 おっさん的には脳裏にヘリはすぐに墜落する物とインプットされている。特にバイオ的なゲームにでてくるヘリは確実に落下するので、絶対に乗りたくない。


 そして自分が操るヘリは確実に操作が難しくて、その場をウロウロするだけで撃墜されるトラウマ持ちなのだ。トラウマがゲームの体験からという、ゲームやりすぎなおっさん脳であった。


「後5分で敵の軍勢も目視距離に入りますね」


 レキの忠告は的を射ている。そのためにまずは面倒な空中戦力を即座に撃破したおっさん少女。


「そして、最初の軍勢があっという間に撃破されれば、次の軍勢まで時間を稼げるはずだ! レキ、いくよ!」


「わかりました、旦那様。私たち夫婦に敵はいません」


 珍しく気合いを入れる遥に、夫婦の共同作業だと、うっすら頬を染めて嬉しがるレキ。両方とも同じ美少女の体なので、面倒な感じがする反応だ。


 気配感知には装甲車20台、戦車10台、強化サルモンキー兵500ほどが接近してきている。車両の速度に歩兵が並走できるのがシュールな感じだ。さすがは高ステータスというわけなのだろう。


「だがしかし、既にそこは私の領域なのだよ、敵の諸君。念動雨!」


 厨二病に目覚めてしまった遥が黒歴史と共に必殺の広範囲超能力を放った。多分後で後悔する呟きだ。もちろんそんなシーンを見逃さないカメラドローンはバッチリ撮影中である。


 強力過ぎて滅多に使用しない念動雨である。先制攻撃にて殲滅する勢いで、残り回復薬も厳しい中での選択をした。





 道路を行軍中の要塞ダム軍。多数の車両と多くの軍勢をもって敵を撃破するべく自信をもって進軍中であった。


 あと少しで敵との会敵だと知っているので油断せずに銃を身構えて強化サルモンキーたちは移動している。


 しかし、そのあと少しの距離で異変は起こった。最初はポツリポツリと降ってきた雨粒だと無視をしていた軍勢。


 雪ではなく雨とは最近では珍しいが、己の強靭な体躯には関係ない。生半可な毒や病気すら効かない体躯なのだ。


 そのため、周辺からの呻き声に慌てて周りを見た時は既に遅かった。雨粒は超常の力を込められており、触れれば強靭なはずの身体はねじ曲がり圧縮されていく。


「ぼんぎきぃぃ」

「グギャァ」

「ザルゥゥ」


 あっという間にあたりは阿鼻叫喚の叫び声で埋め尽くされていき、その悪魔のような雨が降り止んだあとは、ただ小さく小さく丸まった強化サルモンキーの死骸が散らばっているのみ。


 しかし、装甲車と戦車はその攻撃に耐えきった。装甲を折り曲げられながらも、自らの超常の力にて薄く白い膜のようなバリアを砕かれては張り直し砕かれては張り直しを繰り返し耐えきったのである。強化サルモンキーのような歩兵部隊とは耐久度が違うのだ。


 だが、ようやく耐えきったと安心した車両の真ん中に、彼らにとって死神がフワリと着地音をたてずに、空から飛んできた子猫を思わせる小柄な体躯、彼らにとっては脆弱過ぎて触れたら砕けると思われる美少女が舞い降りた。


 その出現の仕方に車両群は敵とは思わずに、攻撃態勢を取るのが思わず遅れる。仕方無いであろう反応だ。その愛らしい小柄な身体に満ち溢れる脅威を感じ取ることは無理であろう。


 その美少女は黄金の装甲に覆われた、紅葉のようなちっこいおてての指をピシッと伸ばして呟く。


「超技黄金剣の舞」


 黄金の粒子がキラキラと右腕に集まり始める。美しいその光景を見て、超常の力を感じ取り、敵だと理解した車両群はすぐに取り付けられている機銃を、戦車砲を向けようと動き始めるが、時すでに遅かった。


 美少女の黄金の装甲に包まれて、いまや黄金の粒子で輝いている右腕は少女が軽く腕を振り上げて鋭く下に振り下げられた。


 だが、振り下げられたはずのその振りはいくつもの残像が重なるように、身体がまるでブレるように見えたのである。


 そうして、周囲に黄金の軌跡が無数に現れた。その軌跡は装甲車も戦車も等しく貫いて存在していた。


 何が起こったのだと考える敵の命は既に消えていた。


 黄金の軌跡が消える頃には、敵の攻撃を防ぐはずの装甲が、車体から滑り落ちるようにバラバラと破片となって斬り裂かれ細かい破片となり地面に落ちていくのであった。


 その有様を確認して、敵の第一陣を速攻倒せたようだと、周りの敵の残骸を見て満足げに遥は頷いた。


「念動雨に耐えるとは予想外だったけど、まずは予定通りに殲滅できたね」


 ふぃ〜と安心だと肩の力を抜くおっさん少女。極悪なるコンボにてあっという間に撃破完了である。


 様々な珍しいマテリアルが手に入ったとわかる。なんだかセイントマテリアル(中)とかタンクマテリアル(R)とかカノンマテリアル(R)とかである。


 特にセイントマテリアル(中)とか、敵の戦闘能力が想像できて怖いので考えたくないおっさん少女。


 何とかなるでしょと、きっとレキが何とかしてくれると相変わらずの他人任せな楽観主義であった。


「ご主人様!装甲車は装甲マウス。戦車はカブトタンク、歩兵は強化サルモンキーと名付けました!」


 意気揚々とさっきに続き、にこやかな笑顔で名付けをするサクヤ。確かに装甲車にはネズミの尻尾が生えていた。ボンネットも口としてパカンと開きそうであった。戦車は無限軌道があるのに昆虫の脚がたくさんはえていて気持ち悪かったので、戦車砲も入れると妥当な名付けだろう。


 そして強化サルモンキーは肩当てに強と書いてあり毛皮が緑であった。運営の色違いなら強いよねという昔の敵キャラの匂いがする手抜き感がヒシヒシと感じられる敵であった。


「50点ということで」


 何故か評価を点で表す遥。悔しがるサクヤは100点ならスペシャルなご褒美が貰えたのにと呟き、報酬を捏造している。わざと遥に聞こえるように呟いて、この発言で既成事実にする気満々の模様である策士サクヤ。


 嘆息しながらも、まぁ、良いかとすぐさま装甲艦まで戻るおっさん少女であった。




 ピョイーンとウサギが跳ぶには高過ぎなジャンプ力で、ウサウサと可愛く呟きながらおっさん少女が装甲艦に戻ると、丁度収容が終わりハッチが閉まるのが見えた。


「ツヴァイデザート班より司令に報告します。全員の収容を完了。移動準備問題ありません」


「それは良かった。出発するよ! 全速前進だ!」


「ツヴァイリーダーより司令に報告します。現在シールド減少率18パーセントです。まだまだ戦えます」


「それは良かった。注意しながら戦闘を続行してね」


「ご主人様、要塞ダムから砲撃が再開されました。それと小走りゾンビとグールがそろそろ接敵します」


「それは良かった。いや、良くないよ! もう再開されたの? 殲滅されたことに気づくの早すぎない? ちょっと早すぎない?」


 ツヴァイデザート班、ツヴァイリーダーときて、最後にオチを持ってくるサクヤである。


 気配感知を新人類の如く、ピキーンと使うと確かに要塞ダムが砲撃準備を再開している模様。


 そして新たに巨大な戦車が門へと出撃するために移動していた。何だか列車みたいな巨大な戦車であるので敵の切り札的存在であろうか。嫌な予感ビンビンである。


 まぁ、ゾンビやグールは装甲艦にお任せで大丈夫だろう。何だかわんさか来ているが問題無いはずだ。多分、恐らく、メイビー。


「倒したのが速すぎたんだ。脅威度を上げてきたな、要塞ダムめ」


 うぬぬと歯噛みをして悔しがり、脅威度を上げる遥である。ちょっと敵を速く倒したら、その分は次の部隊まで時間が空いて楽ができると思っていたのだ。ゲームの殲滅系はそうだった。早く敵を倒すと、予定されている次の部隊出現まで時間が取れたはずなのだ。


 ゲームを基本に戦略を練る弱点だと、驚いたおっさんである。そもそもゲームを基本戦略にするのが間違いだと思うのだが、戦略なんてゲームでしか経験が無いのだと言い訳する駄目なおっさんである。


 そして、現実なら第一陣がやられたら様子を見るか、第二陣を送るかすぐに行動に移すのは当たり前だ。ここのボスは防衛思考なのに、やけに積極的である敵であった。


 次も頑張るかと気合をいれて撤退を始めるおっさん少女であった。

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