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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
9章 東京観光をしよう
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111話 おっさん少女はビルの解体人になる

 高層ビルの壁に重力を無視して横に立っている少女。それを3体の機動兵器が囲んでいる。


 ビュゥビュゥとビル風が吹き、レキの髪を凪いでいく。レキはその風を受けながらリキッドスナイパーを構えて眠そうな目をしながらも、戦う活路を考えているのだった。


 なんと、怪しげな詐欺師かもしれない女武器商人擁する3体の機動兵器は連携用の超能力をもっているというチートがあるのだった。倒す寸前に敵がタンク役に入れ替わるというチートである。よくゲームでは仲間を守るスキルをタンク役が使って庇うが、それを現実で使われるとこれほどイラつくことは無い。


 そのようなチートなスキルはPVPでは禁止でしょと自分のチートを棚に上げて怒る遥である。ダッシュチートとか絶対に禁止でしょうといつも思っているので、PVPではイラつくのだ。自分はチートの塊の可愛い美少女なわけであるが。


 スチャッとガンリリスがビームライフルを構えて撃ち込もうとするのが見える。そして脇にいる二人もそれをサポートしようとホバリングをやめて、バーニアから黒い光を噴出させて動き出す。


「サイキックレーザー」


 遥がガンリリス目掛けて、空間を歪ませていくレーザーを放つ。だが、ガンリリスは排熱板をやはりというか、予想通りに射出して自分を取り巻くように配置すると黒いフィールドが生まれてサイキックレーザーを防いでいった。空間の歪みはその黒い光に飲み込まれていったのだった。


「あぁ、やはりビット系か、しかも防御できるタイプだ」


 しょうがないなぁと溜息をついて、次なる一手をレキに提案する。


「レキ、まずはビル内に入るぞ。それから反撃だ」


 知力ゼロのはずのおっさんの提案である。普通は話し合いが必要なレベルだろう。それで却下にする流れである。


 だが、レキは迷うこともなく、平然とコクリと可愛く頷いた。


「わかりました。旦那様。まずはビル内ですね」


 すぐにリキッドスナイパーをアイテムポーチに仕舞い、ビルの壁をドカンと、その脆弱に見える小柄な可愛い脚で砕いて中に入る。


 レキが中に入ってみるとオフィスであった。机がいくつも並びPCがその上に置いてある。蛍光灯が天井から外れかけており、血であろう染みが大きく広がっており、倒れている机や床に投げ出されているPCが見えており、椅子がそこらに散らばって転がっている。生者のいない廃墟であった。


 スタタタとそのオフィスを抜けて、レキはすぐに廊下に入る。後ろを見るとガンシリーズは追ってはこないようだった。


「考えているな。中に入ると空中の利が無くなることがわかっているんだ。さて、中には予想だけど何か罠が仕掛けてあるかもしれないから、レキも気を付けるんだ」


 気配感知で廊下を進むといくつものダークミュータントの気配がする。どうやら伏兵を仕掛けているのは間違いない。恐らくはこの仕掛けで外にレキを出す予定なのかと考察する遥。


 廊下を進むと、敵の射線に入ったのだろう。ドンドンと銃声がして、弾丸がこちらに撃ち込まれてくるのが見える。


 だが、その弾丸は普通弾みたいである。腕を上げてひょいと銃弾に手を合わせて受け流すレキ。高速で飛んできた筈の弾丸はあっさりとポテポテ床に落ちていく。


 それを見ても敵はひるまず、ドンドンと撃ってくる。気にせず受け流しながら、テクテクと歩いて撃ってくる敵に近づくレキ。

 

「これ……、何? いや、見ればわかるんだけど……」


 近づいて見えた敵の姿をみて、呆れる顔の遥。


 執拗に撃ってきた敵の正体は、ジャガイモであった。1メートルぐらいのジャガイモがスナイパーライフルを背負い撃ってきていた。下部に無限軌道がついているのが可愛いかもである。


 でも、このジャガイモはゴツゴツしていてリアルすぎるから可愛いとかは、やっぱりなしだなと否定する。


「ご主人様、このミュータントは芋スナと名付けました!」


 銀髪メイドが、わかりきったことを伝えてくる。うんうん、確かに芋スナだね。これがそこら中にあるの? とその効果を疑う遥。


 えいっと軽く蹴りを入れると簡単にバラバラになる芋スナ。なんだか存在が哀れである。


 そして、これ何の意味があるの? と首を可愛く傾げる遥だが、レキはすぐに気づいた模様である。


 スタッとその場からジャンプして下がる。その場所を高熱の2メートルはあろうビームが貫いていった。


 貫いていったあとは大穴が開いており、じゅわじゅわとビームで溶けた周りの縁が赤熱していた。


 そして、そっとその穴を覗き込むと、外にはビームライフルを両手で構えて発射した状態のガンリリスがいた。


「なるほどね、レキ、すぐにここを移動だ。隣のビルに入り込んで芋スナを探すぞ!」


 その指示に従い、スタタタと走り出し、その高速移動で軽い風が巻き起こる。再びドカンと壁を砕いて、外にある隣のビルにまたもや壁を砕いて入り込むレキ。


 隣のビルに入り込みズササッと脚を床につけて、入り込んだ衝撃を床で緩和するレキ。


 芋スナの場所を気配感知で察知する。


「まずはあいつのスナイパーライフルだけを破壊するんだ」


 遥の言葉に従い、床を蹴り芋スナの場所まで移動するレキ。廊下に佇む芋スナを見て敵が反応する前にスナイパーライフルを蹴り飛ばす。


 あっさりとスナイパーライフルを吹き飛ばし、ジタバタして移動しようとする芋スナをそのコンパスの短い脚で、えいっと押さえる。


「しばらく、敵の攻撃が無いか待機で」


 そのままガンシリーズの攻撃がくるか待つが、追撃の攻撃はなかった。


 うんうんと頷いて、遥は反撃を行うことをレキに提案する。


「まずは隠蔽を使い1階まで駆け降りよう。そして撃破タイミングを待つんだ」


「はい、隠蔽にて進みますね」


 告げられると同時にレキの姿は隠蔽を使い、おぼろげになっていった。


 そして、スタタタと脚の残像が見えるほど、恐ろしい速さでレキは階段を降りていく。


 いちいち階段を踏まずに、ぴょんぴょんと全段を抜かして途中の降り口にジャンプしながら降りていく。


 子供の時によくやる階段の降り方である。おっさんも子供の時にやったもんだと思い出す。


 歳をとってからそれをやると大体腰をやるんだよねぇとも思い出す。


 童心をだして腰をやった同僚を見たことがあるのだった。しかもその時は僅か3段飛びであった。グキッとなってぎっくり腰になりしばらく休暇を取ったのである。


 芋スナも各所に配置されていたが、まったくレキに気づかずに移動をしていき、ようやく1階に到着したレキである。


 受付ロビーが見えたりする。外からもそこまで行けば気づかれるが、隠蔽もあるし廊下の奥にいるので気づかない模様である。


 気配感知ではビルの周りをウロウロしているガンシリーズを感知した。やはり中には入るつもりはないらしい。


「静香さんの機動兵器もゲーム仕様みたいだね。火力や機動力は凄くてもセンサーは物凄い性能が悪いんだろうね」


 うんうんと、腕を組んで予想が当たり頷く遥。そのため、芋スナを大量に配置しておいてレキを撃たせることで、その音で場所を確認していたのだろう。


「レキ、この階の柱を全て砕いていくよ。そしてビルを解体するんだ」


 いつになく的確な遥である。おっさんもついに知力のステータスに目覚めたのだろうか。


「で、ビルの解体後はレキに任せるね」


 やはり雑な計画だった模様である。大筋を決めて任せるつもりなのだろう。大筋がない計画もあるが。




「あの小娘、出てこないな」


 ビル周りをうろつき、ガンカインがイライラした感じで話す。


「我慢だ。ここで入ると近距離戦で倒される可能性もある。有利な場所での戦闘を行うのだ」


 渋い声でガンアベルがガンカインを窘める。


「そうね、彼女は油断できない相手よ。芋スナの発砲音を検知して」


 と、言いかけたときである。目の前のビルが崩れ始めた。


「なんだ、ビルが崩れた?」


 まるで発破での解体工事を受けたみたいにビルが下からズズズと崩れていくのを見て慌てるガンカイン。


 ビルの解体が行われて瓦礫による砂埃が発生して周りがまったく見えなくなっていく。


「まずいわ! みんな離れなさい!」


 その砂埃を見て、レキの狙いがすぐにわかったガンリリスが二人に離れるように命じようとした。





 ビルが解体されて自分の上に瓦礫が落ちてくる。どかどかと凄い質量が落ちてきており、ちょっと怖い遥である。


 レキは平然と眠そうないつもの目で上から落ちてくる瓦礫をのんびりと見ていた。薄く蒼い色の水晶の障壁がまったく揺るがず砂埃も瓦礫もその重さも耐えている。さすがの念動障壁の結果である。


 先程、リキッドスナイパーの超技レインスナイプにて全ての柱を打ち砕いたのである。そのため、柱を一斉に失ったビルは一気に崩壊していったのだ。


 そうして瓦礫が落ちてくるのが少し収まると、レキは床を強く踏み込み、砂埃の中に飛び込んでいく。


 砂埃の中でも気配感知にて敵の姿ははっきりと感じていたレキである。


 最初に倒さなくてはいけない目標の敵へと一気に肉薄していく。


「獅子の手甲展開」


 いつもの黄金の装甲が右腕を覆っていく。そしてすぐに黄金の粒子が砂埃の中で輝いていく。


 その光に気づいたガンアベルがレキに気づく。すぐに盾を展開しようとする。


 だが、それより先にレキの拳が撃ちだされていた。


「超技獅子の牙」


 黄金の牙が一筋の光の矢となり、ガンアベルの胴体に吸い込まれていった。そして重厚な装甲に亀裂を入れていく。


「油断したか、見事!」


 そうガンアベルが答えた瞬間に爆発してバラバラになっていくのだった。


 その爆発で砂埃が消えていき、視界がひらける。


 ひらけた先にはガンカインが空中に浮いていた。既にガンアベルは倒しており、注意する入れ替えの超能力は無い。


「なに! このガキッ」


 すぐにスナイパーライフルを構えようとするガンカイン。


「ブースト」

 

 レキは足のブーストから青い光を噴出させて一気にガンカインに近づく。


「う、うおおおおおおおお」


 その接近してくる速度にスナイパーライフルの照準を合わせようとして叫ぶガンカイン。


 既にレキはその紅葉のような右のおてての指をピシッと伸ばして手刀の形にしていた。


「超技黄金剣、一閃」


 ピッと右手刀を振り黄金の軌跡が一本、ガンカインの胴体を横薙ぎで過ぎていく。


「がぁぁぁ、てめぇぇぇぇぇ」


 そう叫び上半身と下半身が断ち分かれてガンカインは爆発していくのだった。




 砂埃が完全にガンカインの爆発で消えていく中、ガンリリスが空中でホバリングしている。


「静香さん、ちょっとセンサー系弱いみたいですね? この程度の砂埃でみえなくなるなんて」


 と、可愛く首を傾げて遥は忠告をしたがゲーム仕様ならば仕方ないよねとわかっていた。


 砂嵐などがあるとセンサー系がすぐにダメになるのはゲームのお決まりなのだ。それにビルの中まで映しはしないのだろう。


 現実ではそんなことは決してあるまい。ガンシリーズレベルの機体ならば、それに対応したセンサー系も開発されていてもおかしくないのである。ゲーム仕様機動兵器の弱点であった。


「そうね、次があればセンサー系も強力なものにするわ」


 ガンリリスは空中に浮いていたガンビットに攻撃を命じたのだろう。無数のビームがビットから射出される。


 眠そうな目でガンリリスに視線を向けるレキ。


「残念ながら、その攻撃はこの間受けたばかりなのです」


「念動障壁」


 再び遥が念動障壁を生み出す。障壁が生み出されていき、ビームは光はじけて消えていく。


 ダンッと脚を踏みこむレキ。瓦礫がその踏み込みではじけ飛び空中に浮いていく。


 その瓦礫群をトンッと脚をかけて、重さを感じない動きで軽やかに跳んでいく。無数の瓦礫をその動きで跳んでいきガンリリスまで接近していく。


 ガンビットがその動きに合わせてビームを撃ち続けているが効果を見せない。


「あらら、トリニティシステムオープン!」


 レキのその動きを見て、ガンリリスは紅い装甲を黒い光で覆っていく。


「あぁ、そういう機能があると信じていましたよ、静香さん」


 そのまま残像の軌跡を残しながら移動していくガンリリス。どうやらありがちな性能の大幅アップらしい。


 しかし、使うタイミングが遅いのだ。アニメと違うのだ。最初に必殺技や切り札は切っておくべきだったのだと遥は思う。


 常に使うタイミングどころか、戦闘が終わるまで使わないおっさんはそう思ったのだった。


「すでに、貴女一人では私の速度にはついていけていませんよ」


 瓦礫はまだ空中に浮いており、足場は大量にある。ガンリリスがその速度でビームライフルを撃ち込んでくるが無駄である。全て瓦礫を踏み台に右に左に上下にと空中機動をして、回避していくレキ。


 そしてレキの高速の空中機動の結果、無数のビームライフルの射撃は命中せずに肉薄されていくガンリリス。


「フフフ、残念、ここまでみたいね」


 諦めたようにガンリリスが呟くと同時にレキも超技を発動させる。


「超技黄金剣の舞」


 右の腕にある黄金の光がきらめき、無数の光の軌跡をガンリリスに刻む。その刻まれた数だけ、ガンリリスは分裂し切り裂かれていく。


 そうして、ガンリリスは他のガンシリーズと同じく電光が発生し、空中で爆発していくのだった。


「性能差が戦力の本当の力にはなり得ない証拠となりましたね」


 これ一度は言ってみたかったのだと、おっさん少女は思っていたのであった。





 戦闘が終わりウィンドウから、おっさん少女に話しかける声がした。


「マスター、ガンシリーズを撃破したことにより、セイントマテリアル(中)、トリニティマテリアル(R)を手に入れました」


 金髪ツインテールの癒し系ナインが笑顔で教えてくれる。


 今回はミッションクリアは無かったためにサクヤのクリア宣言は無い模様である。


 ちなみにガンシリーズは1機経験値5であった。多すぎであると遥は内心で泣くのであった。


「あぁ~、これからは空中戦も考えに入れておかないと、ヤバイ敵がでてくるかもしれないね」


 ぐったりとした表情でうなだれて遥が言う。予想以上に戦闘が苦労したので疲れたのだ。


「まぁ、いいや。では行きますか」


 そう呟いて、テクテクと数十分歩いていき、キョロキョロと捜し物をする。


 しばらくしたところに窓ガラスが割れているボロボロのゲームセンターがあったので入っていく。


 テッテコと歩いて中に入ると、うち捨てられたゲーム台の中で一台だけ動いているゲーム機がある。その画面にはゲームオーバーと表示されており、そのゲーム台には一人の女性が座っていた。


「疲れたので手短にお願いしますね、静香さん」


「フフフ、助かったわ、お嬢様」


 そう言っていつものトレンチコートを着ていつもの妖しい笑顔を浮かべて振り向く静香。


 疲れた表情で可愛い顔を静香に向けて話しかけるおっさん少女であった。

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