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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
9章 東京観光をしよう

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110話 おっさん少女対女武器商人軍団

 もはや生者のいない高層ビル群。地上には腐臭がして歯茎が見えており、肉が削がれて骨が各所から見える死者たるゾンビや更に進化し筋肉に各所を覆われ毒を吐くグールのみが徘徊している。静寂が包み込みうめき声が時折聞こえるのみである。


 そしてビルもすでに人が使わないことから薄汚れており、窓ガラスには血がべっとりとついていたり、割れており、生者の姿がいない崩壊し荒廃した世界を物語っている。


 その高層ビル群を黒い光を噴出しながら、高速で空を駆け抜ける3機の機動兵器があった。鋭角にその噴射による移動をしており、音速を超えていても音速に伴う衝撃波は発生せずに少しの風を巻き起こすのみである。


 ビル壁にぶつかることもなく、速度を緩めることもなく突き進んでいく。


 おっさん少女以外で唯一のゲーム仕様な女武器商人の静香が操る機動兵器である。そのパワーアーマーはどんどんと高層ビル群を先に進んでいった。


 それを見ながら一生懸命にビルの屋上や壁を蹴りながら同じく高速移動をしているおっさん少女。だが、壁や屋上を蹴りながら移動しているので、移動速度はどうしても空中を移動している機動兵器には負けてしまう。


「あぁ、ちょっと速いよ、あのグループ。私のことも考えてくれないかな」


 口を尖らせて不満を言う遥。辛うじて黒い2機は見えているが、紅い機体はすでに引き離されており見えなくなっている。やはり空中仕様は強いみたいである。


 移動して数十分して、ビル群の前に3機が空中でホバリングしながら、おっさん少女を待っているのがようやく追いついて見えたのだった。スタッと高層ビルの屋上に着地して機動兵器群を見るおっさん少女。


「ちょっと速いですよ、静香さん。もう少しゆっくりと移動してください」


 緊張感なく文句をブーブーというおっさん少女である。敵と認識しているのだろうか。パワーアーマーをあげるからついておいでと言われたと勘違いしているのだろうか。


 知力の無いおっさん脳ならありえそうで怖い展開である。


「フフフ、ごめんなさい。宝樹の力を知らしめないといけないと思ってね」


 ホバリングしている3機のうち、真ん中に位置するガンリリスから声が聞こえた。


 ふむ、と遥はそのガンリリスを見て考え込む。だが、別にいいやと話を続けることにする。


「それと宝樹ってなんですか? うちのオペレーターはノリノリで最強を見せつけよとか笑いながら言ってるんですが?」


 不思議そうな困った表情になり可愛く口を尖らせて、静香を責める遥。


「あらあら、ごめんなさい。まぁ、別になんでも良かったのよ。お嬢様が否定しても肯定しても。否定した場合はお嬢様は私の存在を上から教えてもらってないのねと言って誤魔化すし、肯定したら、そのまま話を続けるつもりだったのよ。まぁ、話はなんでもよかったのよね。要は財団の興味をひきたかったのよ」


 紅いパワーアーマーは、その金属の手を顔にあてて困ったようにいう。


「そうしたら、お嬢様は私の話を全く聞かないで、機体を欲しがるだけなんですもの。百地さんが話に乗ってくれなかったら困っていたところだったわ」


 あれは想定外だったと言いながら、おっさん少女をガンリリスのカメラアイが見る。どうやらアホなおっさん少女のせいで計画がおじゃんになるところだったみたいである。


「う~ん? だって私は前に静香さんの家に行ってますからね。何を言っているんだろうと思いました」


 武装組織なんてない事を知っていますからねと、遥がのほほんとした緊張感のない笑顔と共に静香に話を向ける。


「そうね、それに私が化け物だとわかってもいるわよね?」


 ホバリングしながらガンリリスがこちらの表情を確かめるように鋭く言ってくる。


「あぁ、気づいていたのですか? はい、勿論気づいていましたよ。害がなさそうなので放置で良いと上が放置することに決めたんです。うちは武器の供給はするつもりはありませんでしたし、都合が良かったので」


 特に驚きはしないで、平然とした表情を眠たそうな目と共に向ける。


「やっぱりそうだったのね。私も気づかれているとはわかっていたわ。最初ね、貴方を見たときは私と同じ種類と思ったのよ。私は貴金属を食して力を得るの。そして通貨を取引に使うお嬢様は、通貨を食して力を得ると思っていたわ」


 紅きパワーアーマーのガンリリスは首を振りながら話を続ける。


「でも、違った。あまりにも多種多様な力。豊富な物資。まさかこんな世の中に闇の組織みたいなのがあるとは思わなかったわ」


 そして腕を上げて、その金属の指をおっさん少女に向けながら語るガンリリス。


「そして貴方の力もわかったわ。貴方は私たちと全く違う対極の力を持っているのね。あの財宝騒ぎの時に確信したわ。貴方は化け物の力を消していく能力を持つスーパーヒロインだって」


 湯川戦の時であろう。獅子の黄金の光でオデンの騎士を倒したときの話である。あの時にレキも覚醒したのだった。


「えへへ、照れますね。スーパーヒロインなんて、それほどでもありますが」


 静香の言葉に頬をかいて照れながら答える、常にレキに頼るおっさんの言動がこれである。


「まさかスーパーヒロインを擁する組織が存在するなんてね。正直驚いたわ」


 ひょいと肩をすくめてガンリリスが続けて話してくる。器用に機体を操るもんだと遥は感心した。遥なら感情エモーションは常に踊るを選択してしまうのだ。


「う~ん? 話がつながりませんね? 普通は私から離れようとするんではないですか? 化け物なら」


 コテンと可愛く首を傾げて疑問の表情になる遥。話が通じていないようだと思うのだ。


「フフフ、これは私に重要なことなの。財団が貴方に私と戦わせようと指示することがね」


「なので、あんな嘘を? 豪族さんたちに言ったって意味がないことですよ? 財団も動かないでしょうし」


 疑問の表情は消えず、更に静香の言葉に問いかけを続ける遥。


「あれは若木コミュニティに対するサービスよ。面白い話だったでしょう? きっと謎の組織だと私のことを思ってくれるわ、今頃楽しんでくれてると思うのよ」


 くすくすと笑って、そう答えるガンリリス。相変わらずの意地の悪さである。武器商人から詐欺師に転職をお勧めしますよと遥は思う。


 ガンリリスはそこで、カイトシールドの後ろに収めていたビー厶ライフルを右腕を動かして、ガチャンと取り出す。その隣の黒い機体達も戦闘準備になりそうな感じである。


「肝心なのはこの機体なの。財団は私の機体を見れば、絶対に闘おうとするんじゃない? 欲しがると思うのよ。あなたたちと同水準に至る化け物の兵器を。私を放置しきれないぐらいに」


「なるほど、戦うことが目的だったのですね。仕方ないですね、静香さん。意地が悪いですよ。ナナさんなんか今頃泣いてそうですので、フォローを後でお願いしますね」


 目的はわからないというか、なんで戦いたがるか、大体想像がついた遥であるが、まぁ、付き合ってあげようと、ポンと手をうって、瞼を閉じる。そしてゆっくりと開けてガンシリーズを見る。


「その兵器を作るのは大変だったでしょう。破壊されても後悔されませんように」


 レキが輝く光を目に宿し、腕を上げて体を半身に構えて戦いを始める準備をした。


「おっしゃぁー! 話し合いは終了! ここからは俺らの出番だな!」


 どうやら話し合いが終了したと判断した黒い軽装パワーアーマーであるガンカインが長大なスナイパーライフルをガションと構えて、レキに向けて即座に撃つ。


 長大なスナイパーライフルから細長い銃弾が射出する。ドンッと音がして、音速の壁を乗り越えてレキに向かってくるのが見える。


 レキは受け流そうと右腕を銃弾に合わせようとするが、そこで驚きの変化が銃弾に発生した。


 銃弾は飛来する最中に黒いエネルギー弾と化して、レキに迫ってきたのである。


 受け流すことが不可能と察したレキはすぐに回避のために、屋上のコンクリートを軽く踏んで移動を開始する。レキの移動前の場所にエネルギー弾が着弾して、弾痕どころか周辺を巻き込んで爆発した。爆発後は瓦礫となり下の階が大きな穴が開いて見えている。


「ヒャッハー! どうだ、流体エネルギー弾だぜ! すげえ威力だろ!」


 続いて、バーニアを吹かし黒い奔流を流しながら、機体の軌道を右に左と細かく鋭角に変えてスナイパーライフルを撃ち続けるガンカイン。


 射出されたエネルギー弾により、レキに回避されドンドンと屋上が着弾による爆発で砕けて瓦礫が空中に舞う。その瓦礫が舞う中でジグザグに移動して弾丸を大きく回避しながら、ガンカインに近づこうとするレキ。


 射程内に入ったと判断したレキはガンカインに向けて、足を大きく踏み込み飛翔をする。瞬間の加速が発生し直線状で接近する様は銃弾よりも速いと思われた。


 だが、ガンカインの前に近づいたところで、ガンカインの姿がぶれてガンアベルとなる。


 眉を僅かに上げて驚愕するレキ。だが、そのまま攻撃に移るべく右拳を繰り出す。


 その攻撃をみたガンアベルは盾を掲げて防ぐ。盾から黒い光が放射され、ガンアベルを包み込む。


 レキの攻撃はその黒い光に触れた途端に流されて、衝撃も発生せず受け止められた。


「残念だが、少女よ。我が盾を破ることは何物にもできないのだ」


 自信の溢れた声がガンアベルから聞こえてきて、盾で右拳を払われてバズーカ砲を向けられる。


「ブースト」


 レキはそのまま脚の装甲を展開して、身体を翻してブースト装甲から青い光を噴出させ回避を試みる。


 ガンアベルは回避されるのも気にせず、バズーカ砲を撃った。砲弾が撃ちだされて空中を飛んでいく。


 そして、レキがブースト回避した側でドーンと大きな音をたてて大爆発をしたのである。


 爆風に巻き込まれたレキは地上に落下していく。だが、身体を回転させ、ビルの壁に脚をつけて壁走りをして、水平に移動する。


 そのレキの後ろにガンリリスが追い付いてきて、空中から追尾してビームライフルを構えて狙ってくる。


「お嬢様には悪いけど、これはどうかしら?」


 ビームライフルから、多数のビーム弾が射出されてくる。ビュォンとレキが素早く射線を予測し回避し横を通り過ぎていくビーム弾を受けた壁がじゅぅじゅぅと音をたてて、どろりと赤熱した色となり溶けていく。


 その攻撃の威力を見ても、動揺もせずに高速でビルの壁を走っていくレキ。ガンリリスが追いながら、ビームマシンガンを撃ちまくり、ビュンビュンと音をたててビーム弾の弾幕を作っていく。ビルの壁があっという間に赤熱した穴だらけになっていく。


 攻撃を受けながら、レキは走る途中で大きく壁を蹴り、反対側のビルまで一気に飛翔する。そしてレキが蹴った壁にガンカインが撃ったスナイパーライフルの一撃が着弾して大きく爆発した。


「まじか、この3体すごい強いぞ! 空中戦っていうのがまずい! 銃だ、銃の出番だ、レキ!」


 連携の取れた攻撃を受けて、焦る遥が体術の戦闘を諦めて銃の戦闘を指示する。


「そうですね、残念ながら接近するのは難しいようですね」


 その言葉にこくんと頷いて、瞬時にリキッドスナイパーを取り出しながら、反対側のビルの壁に脚をつけて、ズササッと壁を脚でこすりながら立ち止まる。そしてすぐさまリキッドスナイパーを構えるレキ。


 周辺を即座に確認して、ガンリリスが一番近く狙いやすいと判断する。


 レキはガンリリスを狙い、リキッドスナイパーの引き金を引く。シュィっとかすかな音がして、流体金属弾が高速で射出される。


 ガンリリスはビルの壁を蹴り、反対側に移動したレキを捕捉しようとして振り向いた体勢をしており、命中すると思われた。


 だが、また先程のガンカインと同じことが起きた。


 ガンリリスの姿がぶれたと思ったら、ガンアベルとなり盾を構えられて防がれたのだ。


 流体金属弾はその威力を発揮せずに黒い光に阻まれて、チュインと音をたてて銀色の光となって散っていった。


「残念だ、強き少女よ。我ら、ガントリニティを破ることは不可能だ」


 ホバリングをしつつ、盾を構えたガンアベルが告げてくる。


「ヒャッハー! そうだ、そうだ。俺らの連携は無敵なんだよ!」


 ガンカインが空中からガンアベルの側にきて叫んでくる。


「ごめんなさいね。この機体凄い強いでしょ? ほとんどの力を使用して作成したんだもの」


 ガンリリスも日差しを受けて紅き装甲をキラキラと輝かせながら、その横にくる。


「ご主人様、あれはスキルです! 恐らくはお互いの場所を入れ替える空間念動ですね」


 焦った表情のサクヤが遥に告げてくる。焦ったサクヤを見るにかなりまずい状況みたいである。


 なるほど、恐ろしい連携超能力である。そして遥は静香に一言言っておかねばと使命感にかられて告げる。


「静香さんの歳でロリ宮さんのポジションは辛いですよ?」


 トリニティの妹枠は確かロリ枠だったはずだ。あのキャラは好きだったのでゲーム化したときにも使っていた女性キャラを愛でるおっさんである。


「ふふふ、私、そういうお嬢様の言わないでいいことを言う性格は嫌いなのよね」


 ちょっと怒った声音でガンリリスがまたビームライフルを構えてレキを狙おうとする。


 これは少し厳しそうな戦闘になりそうだねとおっさん少女は思いながら、活路を見出すべく考えるのであった。

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[気になる点] 毎回好き勝手に振り回す静香が、流石にそろそろウザく感じてきたので、退場してくれるのだろうかと期待してる自分が居ます。
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