10話 おっさんはこれからの事を考える
遥が目的のマテリアルを手に入れると拠点改造がアンロックされた。特に何かを作らなくてもアンロックされるようだ。
「最初に何を作ったほうが良いかな?」
クラフト担当のナインに問いかける。攻略サイトが無い以上、自分で判断して失敗するのを、恐れるおっさんであった。ちなみにレキぼでぃのままである。
「そうですね。まずはレキ様の身体を磨き上げるためジャグジーバスの作成を」
ナインが何か言ってきたがスルーすることにする。というか、このメイドたちは本当にサポートキャラなのだろうかと遥は本気で考え始めた。
まぁ、可愛いメイド達という時点でいるだけで良いとは思うのだが。
「ウェポンステーション作成っと」
ポチッとなと、おっさんだとわかる言い方をして遥は装備作成用ツールを作成した。
光り輝き装備作成用ツールが生み出される。それを見た遥は
「ボロいな」
と多少ガッカリして出てきたツールを見る。出てきたツールは木の机に色々な工具が置いてあるが、木の机は草臥れ果てた感じであり工具は使い古された錆も少し見える物であったからだ。
「仕方ありません。これは下級ですので。ただレベル30まではこのツールで様々な装備が作れますよ?」
ナインが淡々と教えてくれる。
「はぁ、まぁありがちだな」
溜息をついて作成一覧を表示させる。
だが、表示一覧を見た遥はテンションが上がってきた。
一覧はすごい量だったのだ。
「下級で50万もあるの?!」
これまでの内容から量はあるとは思ったがここまでとは想定外である。
しかしすぐにテンションは下がってきた。量の多さにテンションが上がったが、見ていくうちにその量の多さにウンザリしたのだ。さすがおっさん。面倒なのは嫌いなのである。説明書を読まないおっさんなのである。
「何かおすすめある?」
もはや部下に手間だけかかって面倒だからという理由で仕事をふるおっさん。
「肌に塗り込む香油が良いですね」
やはりサポートしてくれないなとナインの言葉をスルーして、ありがちな武器を遥は選んだ。
「鉄パイプにして付与は頑丈と念動効果1%アップと」
初めて装備を作成する遥。因みにツールを作る前に装備を作るのは勿体無いと命が懸かっているにもかかわらず今まで作っていなかったおっさんである。ガンパウダーはクリアまで使わないのだ。手持ちの弾丸で十分なのだ精神である。
ゴゴゴ〜といつもの光が出てきて、鉄パイプが出てくる。頑丈をつけないとすぐに壊れそうな細さであった。
「成功:鉄パイプ(H)頑丈、念動効果1%アップ」
「おぉ! ハイクオリティだよ!」
予想外な結果に喜ぶ遥。
「鉄パイプは低レベル武器です。レキ様のステータスならlv1とはいえできる可能性は高かったですね。おめでとうございます」
ニコリとナインが微笑む。
可愛いナインを見ておっさんも微笑む。
レキの体なので2人の可愛い女の子が微笑みあう姿がそこにはあった。
因みに作成できる装備は鉄パイプ以外にも勿論あった。鉄パイプにした理由は別に世紀末ヒャッハーをおっさんがやりたかったわけではない。銃刀法違反を恐れたのだ。
確かに遥の家の周りはゾンビしかいない。一見世界は崩壊したように見える。だが、まだたった24日しかたってないのだ。政府は存続していて、復興に入る準備中かもしれないのだ。24週間後には復興してるかもしれないのだ。そして抗体をもつキャリアのおばさんを見つけたりしているかもしれないのだ。
その場合、銃やら日本刀を振り回しているおっさん少女がいた場合、どうなるのか? 最低限どこから持ってきたのか問い詰められるだろう。
自分で作りました。こうゴゴゴ〜っていう感じで。と可愛く説明しても病院行きは確実だろう。刑務所に入れられるかもしれない。考え過ぎかもしれないが用心深い日本人たちである。シェルターとか空母に臨時政府がある可能性は極めて高い。今でもオーバースペックなレキぼでぃである。装備など無くても十分なので、社会的安全を考えて鉄パイプにしたのだった。
これがおっさんぼでぃしか無かったら、戦車の中で餓死するまでいた可能性の高い余裕綽々なおっさんであった。
「ご主人様! 次はビデオカメラかカメラを作りましょう!」
やはりサポートしてくれることは無いみたいだな。とハァハァ言いながら詰め寄って戯言を言うサクヤを見て遥は思った。
「続いて防具だな」
遥がそう言った途端に、
「スカートですね」
「スカートだな」
「スリングショットの水着ですね」
と大体同じ意見が三人から出た。最後の意見もスカートだったと思う。何か聞き間違えしたのだと思い込むことにしたおっさん。
ナインに聞いたところ、衝撃的な内容を教えてくれたから、スカートにすることにしたのだった。可愛いからという理由はさすがに2番目の優先順位となる。
装備はどんなに薄着でも、覆われていない肌の部分も装備の防御力が適用されるとのことだった。ビキニの女戦士もできてしまうのである。さすがに遥もえっちな水着を装備して外を出歩くようなことはしたくない。おっさん少女ではなく、おっさん痴女になってしまう。
「シャツ、スカート一式セット作成!」
おっさんな遥では、今時の女の子のセンスなどわからないので、無難にレシピにあった白シャツ青スカートの一式セットを選ぶのであった。
まぁ、昔からセンスが無かったおっさんではあったのだが。
靴下や靴も無難にまとめて装備したレキは可愛かった。鏡の前でクルクル回転したら、すごい似合いそうである。ただし中身がおっさんなので、遥はやめておいたが。
最低限の装備が揃ったおっさん少女。ようやく旅人の服と銅の剣を装備した感じである。ちょっと遠出ぐらいなら大丈夫な感じだ!
「作成リストには乗り物もありますが?」
とようやくサポートキャラっぽいことを言うナイン。
「いや、燃料消費系だろ? 勿体無いよ。レキぼでぃならそこらの車より速いし」
作るのを渋る遥。パワードスーツを手に入れても、燃料のコアを大量に取っても、勿体無い精神で全く使わない系のおっさんである。
作成一覧を閉じる遥。今日はここまでにしておく感じである。
因みにマテリアルは小が大量にあった。他にも素材は色々手に入れたのである。黒ゴブリンからもマテリアル以外にブラックマテリアルとか手に入れていた遥であるが、いつか使うからとマテリアル小以外使わなかったおっさんであった。
そして作成時はウェポンステーションの前で作成を念じるだけという簡単仕様であった。工具などは飾りであるようだ。
そして作成時も何それが幾つ必要ですと最初から表示されている簡単仕様。自由に素材を使用して作成してください系ではないのを、プラモもろくに作れないおっさんは心底安心したのであった。
「明日からはまたコンビニを探しますかね」
遥ぼでぃに戻して、遥はメイドたちに尋ねた。
「そうですね。コンビニなどたくさんあります。今日は最初のコンビニで心が折れて帰ってきてしまいましたものね」
おっさんぼでぃに戻したからだろうか。いつになく辛辣なサクヤさん。
「いや、先に拠点改造をアンロックしたかったんだよ」
と薄っぺらい嘘の言い訳を言う遥。
「ならば次はコンビニ以外にも、ゾンビや他のミュータントがいる場所を調べてみましょう」
サクヤの意見に聞き返す遥。
「場所わかるの? どこらへん?」
もしかしたら攻略サイト代わりにサクヤがなるかもしれないと期待して聞いてみる。
「いえ、私の知っている地域情報はご主人様と一緒です。これから居住地以外、駅前などを、探索したらどうでしょうか?」
そんなに上手くはいかないかと遥はガッカリするが同じ情報をサクヤが持つことに助かったと思った。
おっさんは同じ情報を得てもすぐにおっさん脳がフォーマットされるが、サクヤなら大丈夫だろう。これからはサクヤに探索済み地域情報は聞いていこうと、他人任せなおっさんであった。