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「車の中で」

14話後の物語です。

 彼が車から降りて見えなくなった後、私は思わず彼が握ってくれた手を握り締める。


 修三君と手を握っちゃった……それに、あの言葉、必死に考えてくれたんだろうなあ


 そう分かっていながらも内容が内容だったのでそれを一生懸命に伝えようとしていたと考えると嬉しさと同時に笑いが込み上げてくる。


「上機嫌ですね、美里様」


 気が付くと赤信号で車は停車していたみたいで斎藤さんがハンドルに手をかけながらこちらをみていた。咄嗟に「はい」と答えると斎藤さんは朗らかに笑う。


「新しく服を購入された甲斐があって良かったですなあ」


 言われて私は昨日購入した水色の服に視線を落とす。彼の好きな水色の服というのは浅はかすぎただろうかと考えて余計に顔が熱くなってしまう。


「心配でしたが旦那様の考えた試練も克服されましたし美里様も良い人を見つけましたなあ」


 そんな私をみて上機嫌になったのか斎藤さんが付け足すも直ぐにハッとして口を紡ぐ。


「斎藤さん、お父さんの試練ってまさか……」


 お父さんが試練というなにかを用意していたなんて何も知らなかった。でも心当たりは一つあった。劇場での出来事、思えば斎藤さんがいないタイミングであんなことが起こったというのは出来すぎている。


「申し訳ございません。お父様に修三様のことを試すように言われあのような真似を……どうかこのことはご内密に」


 縋るように頼み込む、確かに斎藤さんの立場を思うと今のは相当な失言だもしかするとクビになってしまうかもしれない。でも日頃から斎藤さんにお世話になっている私にそのようなことをするつもりはなかった。


「お父さんには伝えませんよ」


 ありのまま考えていることを伝える。ただその瞬間少し悪い考えが浮かんで思わず口角が釣り上がる。


「でもその代わり、修三君のことは良く報告しておいてくださいね」


 そう伝えると斎藤さんは「畏まりました」と頭を下げた。



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