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第62話「ポッキーゲーム」

 オレと櫻井さんはハロウィン当日に無事結ばれた。突然櫻井さんがあんなことをしたときは驚いたけれど嬉しかった。

 

 朝、布団の中で天井を見上げながらあのハロウィンのことを思い出す。

 

 あの時、脳内でパレードの音が鳴り響いたと思ったら何と本当にパレードが行われていたのでパレードを見て無事帰宅した。あれ以来、オレは櫻井さんとまたしたいと思うもなかなか言い出せず出来なかった。



 だが今日は違う!


 オレは勢いよく布団から飛び起きガッツポーズを作る。

 

 なぜなら今日はポッキーの日当日! この日ならば合法的に唇と唇を重ねることが出来るのだ! 作戦は至ってシンプル、櫻井さんを罰ゲーム有りのポッキーゲームに誘う。これだけだ!


 ポッキーゲームとは互いに1本のポッキーの端と端を加え交互に食べていき先に折ってしまった方が負けというゲームだ!


 このゲームに至っては今のオレに負けはない。故に勝ったら罰ゲームでそのままできてしまうのだ! 完璧な作戦だ!


 オレはいつもより力強く大地という床を踏みしめて台所へと向かった。


 それからいつものように出勤して櫻井さんと買い物をする。今晩の献立を決めて買い物をしているとお菓子コーナーに近い惣菜コーナーに差し掛かった。


 チャンスは今しかない! ここだ!


「そういえば櫻井さん、今日ってポッキーの日みたいだよ」


 お菓子コーナーのポッキーをみてさも今思いついたかのように言った。一晩練習した甲斐あって我ながら上手にさり気なく言えたと思う。


「ポッキーの日かあ、懐かしいなあ」


 それを聞いた櫻井さんも遠目にポッキーを眺める。


「せっかくだから一箱買おうかな」


 そう言うとオレは近付いて一箱取って買い物かごへと入れた。


「じゃあ私も買おうかな」


 彼女もオレに倣って買い物かごへと入れる。


 よし、第一段階は成功だ!

 

 オレは再びガッツポーズを作った。



「櫻井さん、ポッキーゲームをしようよ」


 数時間後、彼女の部屋にて勤務終了とともにバッグからポッキーの箱を取り出しながら提案をする。


「ポッキーゲームか~、面白そうだね」


 気のせいか一瞬フリーズした後彼女は笑いながら応じた。


「負けたほうが言うことを聞く罰ゲームアリでね」


「ば、罰ゲーム? うん、いいよ」


 何故か俯き頬を染めながら彼女は頷いた。


 まさか、勘付かれた? いいや大丈夫だ、平常心平常心。


「勝ったら何してもらおうかな~今度の勤務のときオレの代わりに櫻井さんが運転するとか」


 ブラフで思いついたことを言うと彼女はあたふたする。


「え、それは困るよ~」


「櫻井さん免許ないの? 」


「持っているけど……その……とにかく早くゲームやろう! 」


 そう言うと素早く自分が買ったポッキーの箱を開封して袋から1本取り出すと口に咥えた。


 櫻井さんにしては珍しい強引な話題の変更に追求したい気持ちに襲われるもそれも野暮だろうとチョコの部分を咥えた。


 オレがチョコの部分を咥えちゃったか、次があったらチョコの部分は櫻井さんに咥えてもらおう……あ!


 チョコの部分を自分が咥えた罪悪感に(さいな)まれていると重大なことに気付く、先攻を決めていなかったのだ! 一度咥えたのを離すのは好ましくないので何とか彼女にそれを伝えようとする。


「ふぁふふぁいふぁんふぇんふぉうふぉうふふ? 」


「ふぇ? 」


 オレが何を言っているのか分からないとばかりに彼女が首を傾げる。無理もないだろう。


 それからじゃんけんのジェスチャーにポッキーとオレを交互に指差すと通じたようで「お先にどうぞ」というように右掌をこちらに向けた。


 先攻有利なこのゲームでオレに先攻を譲るとは……甘いよ櫻井さん!


 オレはサクサクと彼女の唇を目掛けて一直線に食べ進める。既にチョコの部分は終わりに差し掛かっていた。


 このまま一気に進め先攻1キルだ! 櫻井さんの唇がすぐ目の前にある。このま……ま…………


 ふと脳裏に初めて櫻井さんとしたときのことを思い出す、あの柔らかい唇の感触、甘酢っぱい味……


 気が付くとオレはあと少しで触れるというギリギリのところで止まっていた。

  

 ええい、何をしているオレのバカ! へたれ!


 オレの自分への罵倒などお構いなしにオレが止まったのを見た彼女の唇が迫ってくる。もはやギリギリというところなのに彼女は止まる気配がない。心臓の鼓動が速くなり頬が熱くなる。


 このままでは、また櫻井さんの柔らかい唇が……唇が……


 そのまま、オレと櫻井さんの唇が重なり再び櫻井さんの柔らかい唇の感触が広がった。


「こういう場合ってどっちの勝ちになるのかな? 」


 数分後に離れた彼女が見つめながら尋ねる。


「こういう場合は……」


 言葉に詰まる。


 まさかまた櫻井さんからだなんて。オレは一体何をやっているんだ!


 無力感に襲われ挽回しようと頭を働かせ考えると1つ考えが浮かんだ。


「分からないからもう1回やろう! 」


 オレはそう言うと箱を開封しポッキーを取り出しチョコではないほうを咥えた。


 結局、この日はポッキー2箱分ゲームをしたけどこの日は決着がつかなかった。


次回、4月18日更新予定です。

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