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第58話「開園」

 ハロウィン当日、オレと櫻井さんは早朝に町を出発して駐車場を調べ車を停め夢の国開園30分前に入り口前へと到着した。


「凄い人だね~」


 高校時代の制服に身を包んだ櫻井さんが集まっている人の数を見て可愛らしく驚いてみせる。女子高に通っていたらしいけどセーラー服とはデザイナーさんもよくわかっている! これで今日は念願の制服デートと言うやつ……になるはずだったのだけれど。オレはスーツ姿だった。


 というのもオレの制服は両親が今度知り合いの息子が同じ高校の生徒になるからと譲ってしまったのである! それを櫻井さんにも伝え考えに考えた結果『制服らしさとは上下の色が異なること』という結論に達したのでオレはスーツ姿と言っても上は紺でズボンはグレーとバラバラのなんちゃって制服みたいな服装になっている。幸い制服はブレザータイプだったので雰囲気は出ていると我ながら称賛する。


 しかし、スーツはスーツなので寝ぼけて間違えて着替えた社会人と女子高生というまずい案件のように思われたらどうしよう……


「ほら行こう、修三君! 」


 そんなオレの心配を他所に櫻井さんはオレの手を引きチケットブースの列の最後尾へと向かっていった。


「開園まで15分、だけどこの人の数じゃあ。櫻井さん車の中でずっと寝ないでナビゲートしてくれたから少しだけでも眠ってて」


 首尾よく当日券を購入した俺達は入場待機列の列に並ぶ。8時を迎えるも人の数からしばらくは列は動かないことだろう。万が一動いてもオレがおんぶをすれば問題ない。しかし彼女は首を縦には振らず代わりにオレの目を心配そうにのぞき込む。


「それを言ったら修三君だってずっと運転してくれてたんだから少し眠って欲しいな」


 櫻井さんがキッパリと言う。もしかしてオレが櫻井さんを心配しているみたいに心配してくれているのだろうか?


 だとしたらその気持ちは嬉しいのだけれどオレの『櫻井さんに休んでもらいかつオレは寝顔がみれてウィンウィン作戦』は失敗だ。彼女も折れないだろうからここはアトラクションの話をすることにしよう!


 こうしてオレ達が会話をしていると順番が来たのでチケットを電車の様に改札に通し子供のころ好きだった風車のような鉄の棒を押して中へ入る。すると既に競歩大会が始まっているのが目に入った。


 それもそのはず、夢の国ではアトラクションの待機列は勿論のこと皆が人気のどれか一つには乗れるようにという有難い配慮だろう。人気のアトラクション付近でファストパスという入場優先権が発行されるのだ! それは正に最高のプラチナチケット! 何と使うことで人気のアトラクションに待ち時間がそれほどかからずに乗ることが出来るのである!


 更にこのファストパスには幾つかルールがあるのだけれどその中でもこんな競歩大会が起きている理由は恐らく発行のルール!


 ファストパスは一度発行されると次の発行は『発行してから2時間後もしくはパスに記載されている利用時間を過ぎてから』このどちらか早い方が適用されるのである! 例えば8時30分にパスを取ってアトラクションが9時からならば2時間後の10時30分と9時の近い方、つまり9時に再びファストパスチケットが取れるのである!


 それに加えて走るのは禁止なのでこのような競歩大会が起こっているのだ! 昔は母が家族分の入場券を持ってパスを取りに行き父と2人で入り口付近で待つということをやったものだった。


 しかし今回は……


「みてみて修三君このカチューシャ可愛いね! 」


 今回は、その後の合流が困難という点もあってこの競歩には参加しないことにしてまずはショッピングを楽しむことにした。


「確かに可愛いね、似合うと思うよ」


 子供のようにはしゃぐ櫻井さんを眺める。今彼女が手にしているのは夢の国のマスコットキャラクターで厳密に言うと男性用なのだろうけれどそこは好みの問題だろう。


 すると彼女がどういうわけかオレにそのカチューシャを近づけた。


「うん、やっぱり修三君自分で似合うって言うだけあって似合うね~」


「! ? これオレ用なの? 」


「そうだよ、こうしたほうが雰囲気出るから。心配しないで私がお金出すから」


 呆然としているオレの手を取り櫻井さんは迷わずオレがつけるカチューシャの恋人のキャラクターのものを手を取るとレジへと向かっていった。


 こうして、オレ達のハロウィンデートが始まった。

次回4月10日更新予定です。

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