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第5話「脈アリ記念日」

 ケイビインとなるために近くの支店へと電話した。電話した結果面接は土曜日に行われることとなった。


  支店はここから車で30分行った近くの町にあるので車に乗らなければならない。バスだとお金がかかるので親に相談した結果働くということならと喜んで送ってくれるということになった。家事の上送迎してくれるなんて頭が上がらない。


 ちなみに、何故自分で運転しないのかというと以前親の車に乗ってドライブしている最中にコンクリートに軽くこすって修理に出す羽目になったからだった。何事も経験というが、車通勤で車に傷があるなんて同僚に見られたくない親からすると修理に出さないといけないので高すぎる授業料ということでできるだけ乗らないで欲しいと釘を刺されてしまったのだ! しかし、マイカーを買うのはいつになるのか


 …………少なくとも免許がゴールドになる方が早いことは確かだろう。


 そんなわけで朝10時、履歴書を買いに行こうとしたが昨日あんなに買い物客ばかりか店員からも注目を集めた手前バツが悪いので『中年探偵団』シリーズを読み始めていた。


 オレは学生時代の朝数分読書時間を設けるという制度を思い出し、ニートになってからは時間もあるので15~30分は読書をするようにしている。


 時間にかなり開きがあるのはまあお話の展開の都合である。佳境なら一気に読み進めたくなってしまうからだ!


  実をいうと行くときは1時間は行くのだけれど2週間借りることのできる図書館で1冊だけ借りてオレのペースだと1日15分読むと不思議と2週間後の返却期限日に読み終わるとバランスが良いのだが最近は崩れがちだ。


 今日は櫻井さんに勧めた手前西野さんの本を借りようと40分程は読んだだろうか? このシリーズは探偵も怪盗も色々と趣向を凝らした頭脳戦を繰り広げるので読み飽きることがない、このペースなら西野さんの本1冊追加で1週間に1冊ペースでもいけるかもしれない!


 そうオレが意気込んだ時だった、ポケットに入れていたスマホが「パイン! 」となった。


「何だろう? お父さんかお母さんのどちらかが忘れ物をしたのかな? 」


 オレは良く町内勤務の母の忘れ物を届けに職場まで愛車を漕いで届けることがあった。片道自転車で30分かかるのだがニートなのでその点は問題なしだ! しかしよく忘れ物をするので、オレが学校に通っていて家にいないときは忘れ物をどうしていたのか気になるのだが聞いたらいけない気がして聞き出せないでいた。


  ちなみに父の場合は町外で遠いためオレにはどうすることもできない。とはいえ父が忘れ物をしたのは1度もないので大丈夫だとは思う。つまり、実質忘れ物をするのは母1人というわけだが、万が一ということもあるので決めつけは良くない。


 しかし、メッセージが送られてきたのは母でもなければ父でもなく………………なんと櫻井さんからだった!


『修三君、スーパーに行って探しても見当たらなかったけど今日はお買い物しないの? 』


 頭を思い切りテーブルに打ち付けたい気分だった。なんということだろう、櫻井さんは同時刻に買い物に向っていたのだ! それをオレは仕事と趣味にかまけて彼女を放置してしまうとはなんたることだ! 先が思いやられる! ! しかし、悔やんでも仕方ないのでありのまま状況を説明することにした。


『ごめん、昨日変に目立っちゃったみたいだからあのときの店員さんとお客さんがいない時間に行こうかなって』


 正直に返信をする。櫻井さんも変に目立つのは嫌だろう。


『そうなんだ……そういえば今日の店員さん何かソワソワと店内を見渡してたかも……私も時間ずらそうかな。修三君は何時に行くの? 』


 何と、櫻井さんは既に。おのれ店員、何てことを! しかしこれは悪手だった、明確に櫻井さんから今度からが時間をずらすと言われてしまった。彼女と出会うチャンスは今日しかなかったというのか………………


 いいや、悔やんでも仕方がない観念してここは正直に同じ店員に当たらないであろうかつ人の少ない時間第2候補である『午後3時』と打ち送信する。すると2,3分で意外な返信が帰ってきた。


『午後3時かあ……じゃあ私も3時くらいにしようかなあ』


 どういう………………ことだ! ? ! ? ! ! ? ! ? ! ! ? ! ? ! ? ! ! ? ! ? ! ? ! ? 思わず「それじゃ意味ないよ! 」

 と送信したくなるのをグッと堪え冷静に考える。


 つまり彼女は………………オレと一緒に買い物をすることが嫌だというわけではなくむしろ望んでいる! ?


「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ! ! ! 」


 思わず叫んで天に向け拳を突きあげる。


 これはもしかして……脈アリ! ? 脈アリなのか! ? 少なくとも脈ナシの反応ではないだろう! ! ! この世に生まれて20数年、なんだろうこの気持ちは! こんな高揚感今まで味わったことはない! ! ! 今すぐオレが町に飛び出して踊り出せば音楽が流れ出し人が集まりパレードが始まるのではないか! そんな気持ちさえしてきた! !


 急いで『午後3時頃はあまり混んでいないしオススメだよ! 』と返信をする。


 ようし、今日はオレの生まれて初めての歴史に刻まれる「脈アリかもしれない記念日」だ! 今夜はトンカツだ! トンカツにしよう! !


 そう決定してしばらくの間、オレは1人で鼻歌を歌いながら家中を踊り狂っていた。


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