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第37話「レストランでランチタイム」

「さてと……」


 正午、オレは櫻井さんと今度行く約束をしたレストランの前に立っていた。昔から立っている老舗のようだが古い「営業中」と記された木の看板以外の外装はそれを感じさせないファミリーレストランのようだった。


 我が町では現在多くの飲食店が閉店したという話を聞くがそのほとんどが聞いたことも行ったこともないようなのはともかくとしてその中でもまだ営業は続いているということはそれだけで味も良いということになるのではないだろうか。


 最後にここを訪れたのは記憶が正しければ幼稚園の運動会の時だ。あの時は確かお子様ランチを食べたっけ、それでおばあさんからロボットのおもちゃを……っと回想にふけっている場合ではない!

 

 オレは意を決して扉を押して店内へと入った。カランコロンと来店を知らせる心地いい音が響く。


店内に入るとまず目に入るのが食品サンプルだ。これをみるにどうやら人気はカツカレーとステーキらしい。回転寿司店ならともかくこの2つがメニューとして並べられているのはチェーン店に慣れたオレからすると新鮮だった。


「いらっしゃいませ、何名様ですか?」


 おばあさんの店員さんに迎えられ人数を尋ねられる。


「1人です」


 オレは学生時代、言い慣れていたように人差し指だけを立てて1人だと告げる。考えてみればここ最近は店に入らないのもそうだけれど櫻井さんと2人のことが多かった。


「もしかしたら相席をお願いするかもしれませんが、その時はご協力お願いします」


 席に座った後おばあさんが申し訳なさそうに言う。席は床と天井同様木製の長テーブルに木製の椅子が4つ並べられていた。最低でも4人席からということは確かに相席が必要になるだろう。オレは「はい」と首を縦に振る。


 でも、こう思っては失礼かもしれないが平日の昼間にそんな満員になるほど人が来るのだろうか? 辺りを見回すもお客さんはオレ以外にいなかった。


 メニューを開くと丼物から懐かしのお子様ランチまで確認できた。飲み物もメロンソーダアイスなどと豊富だ。


 さてどうしようか……


 オレは腕組みをして何を注文するべきか考える。


 今回来店した目的は櫻井さんとのここでのデートの下見だ、流石に夢の国の下見は無理だけれどこのレストランに至っては近場だからすることにした。お互い久しぶりに来店する体だけれど偶然を装いつつも美味しいものを紹介できれば彼女からも高得点だろう。


 そのためには多く注文しなければならないが……問題なのは胃袋だ。流石に全メニュー頼んで食べれるだけ味見して残して帰るなんて貴族プレイはそういう点では効率は良いのだろうけれどお金も料理を残すのは勿体なくてやる気にはならない。


 ならば…………身体もってくれよ!


「このカツカレーとステーキ、それとメロンソーダアイスください」


 店員さんを呼んで注文する。


 …………今のオレにはこれが限界だ。とりあえず櫻井さんの目にも止まるであろうこの店の看板メニューらしき料理だけは押さえておこう。ステーキはライスは別となるらしいし何とかなるだろう……多分。


 オレが注文を終えてそれを店員さんが厨房に伝えに言ったその時だった。


 カランカランカランカラン! という音とともに数人の男女のグループが店内に入ってきた。彼らは接客されてテーブルに案内される。


 すると案内が終わるか終わらないか分からないうちにまたもやカランカランカラン! と音が鳴り響いて男女のグループが入ってきた。


 何だ? 一体何が起こっているんだ?


 突然こんなに大勢の来客に驚きを隠せず辺りをキョロキョロと見渡す。店は既にオレのテーブル以外は椅子が人で埋まっていた。彼らを順番にみつめてあることに気が付いたオレは少し寂しくなり天井を見つめる。


 そっか、ランチタイムか……


 そう、彼らはグループごとに皆似たようなジャージのようなものを羽織り首から社員証らしきものを下げていた。


平日昼間の書き入れ時であるランチタイムがあろうことかニートだったオレには想像もつかなかったのだ!


 正社員って凄いなあ……


 談笑している彼らを眺めながらオレは必ず大学職員になって来年は主に学食だろうけれどこうやって職場の人とランチを共に出来るように頑張ろう


 と心に誓ったその時、カランカラン! と再び音がする。自然と相席になるのでどんな人だろうかと入り口に視線を移す。


「あっ! 」


 予想外の人物が来店したので思わず声に出す。


「えっ! ? 」


 彼女もオレに気が付き口を手で押さえていた。


 そうして、オレと櫻井さん(と斎藤さん)はしばらくの間店内でお互いを見つめあっていた。








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