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第32話「2人の共同作業」

 櫻井さんとの宅飲み当日、オレは彼女と予算内で相談してカルーアミルクと牛乳、サングリアにブランデー、つまみ用として半額であったタスマニアビーフを購入した。


 タスマニアビーフの時は半額というのがあまりに衝撃的で「良い肉のようなのに半額! ? こういうことってあるのか」と不安になり辺りをキョロキョロと不審者のように見渡してしまい彼女に迷惑をかけてしまったかもしれない。


 とはいってもブランデーは飲むためのものではない。


「いくよ、櫻井さん」


 自宅の台所で左手に切り取られた既にこんがりと焼き色のついたタスマニアビーフが乗ったフライパン、右手にライターを持ったまま彼女に合図をする。

 

それを聞いて既に安全ピンを抜き消火器を持った彼女がホースをフライパンに向けながらこくりと頷く。


 そう、ブランデーは────フランベのために購入したのであった。


 IHであってもブランデーをかけたあとにライターで着火すればフランベは可能らしい。フランベというのはオレが料理を作るものとして一歩前進するために……彼女のトラウマの1つを払拭するためにも避けては通れない行為だった。


既にブランデーは一旦火を止めて入れ過ぎないことを意識して入れてある。あとは火をつけるだけだった。


 しかし、家が燃えたら大変なため彼女に消火器を構えていてもらい万が一に備えていたという訳だ! これぞ2人の共同作業というやつだ!


「3、2、1……イグニッション! 」


 掛け声とともにライターのスイッチを力強く押して点火する。ちなみに、「イグニッション」とは「点火」の意味で叫んだのだけれどTOEICの勉強ではなくゲームで叫んでいるのが格好良かったからつい影響されてしまったので正しいかどうかは分からない。


 ライターの火が勢いよくフライパンに燃え移りステーキを覆う。慌てて櫻井さんが消火器を構えた。


「櫻井さん、まだ……フライパンから火がでて家が燃えそうになったらお願い! 」


 フライパンから目を離さずに言う。


 それから数十秒後、ステーキに燃え移った火はそれ以上何かを燃やすわけでもなく鎮火した。


「「はあーっ! 」」


 2人して安堵のため息をこぼす。オレは肉を休ませるためにも火を止めた。


「やったね櫻井さん! 」


 消火器を床に置きホースと安全ピンを戻した彼女は満面の笑みを浮かべて「うん」と頷いた。




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