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2話 夢の中

まだプロローグです。じゃあ1つにまとめろよって感じですよね。すいません

 その日の夜、夢をみた。きっと慣れないものを目にしてしまったからだろう。


 4〜5歳くらいの俺と父親で外界を断つように周りが真っ白な壁で囲まれている部屋で遊んでいる夢だ。


 正確には一人、ブロックで遊んでいる俺を父親がそばでみている。


 小さい頃のことなので何もかもあまり覚えていないが実際に夢としてでてくるということはもしかしたら昔本当にあった出来事なのかもしれない。


 しかし、夢だとしても胸糞が悪いものだ。なんせ俺と母さんを捨てた父親が夢にでてきているのだから。それも父親は薄気味悪く俺をみて口角をあげている。


 まぁ、子供が無邪気に遊んでいる姿をみて微笑ましくて頰が緩むのは父親として当たり前のことなのかもしれないが……


 それにしても俺は飽きずにずっとブロックの様なものを何度もいじっている。

 少し自分で自分のことが悲しくなってしまう。


(俺よ、昔から友達がいなかったんじゃな。残念ながらそれから高校生までは確実に友達はできないぞ)


 まぁ、大抵自分の事は自分でやってきたし、友達って色々意外と難しいって本で読んだことあるから欲しいかと訊かれれば別段欲しいわけでもないのだが……


 それにしてもチャイルド北原君は本当に飽きずに遊んでいるな。そんなに楽しい遊びがこの部屋でできるわけでもあるまいに。


 この部屋にはたくさんの遊具、おもちゃやゲーム機などがあるわけでもないし、ましてや俺が好きだった仮○ライダーや○ルトラマン、アニメなどをみるテレビも存在しない。


 にもかかわらず、俺はずっと一人で遊び続けている。一体何がそんなに楽しいのかと小さい頃の自分に駆け寄ってみる。


 それを見た瞬間に息を呑むのと同時に思わず言葉がでた。実際には夢の中なので声は出るわけない筈だが、俺ははっきりと空気を伝って音を発したのだった。


「なんだ ?……これ?」


 小さい子供が遊ぶにはあまりに異質。いや、大人だってそんな事はしないはずだ。誰もが倫理的にそれがダメなことだと、いけないことだと理解している事を俺は平然と楽しそうにやっていた。


 人間の死体をばらばらにしていた。いや壊していた。俺がブロックだと思っていたものはドス黒く染まった肉片であり、それを小さな俺は潰したり刻んだり叩いたりしていた。


 骨を砕いていた。バラバラに飛び散ったそれらがそこら中にばらまかれている。目をくり抜いていた。しぼんでしまったそれに興味が失せたのか俺は今度は耳を引きちぎろうとしている。


 もはやそれは人間とは呼べないほどにそれぞれの臓器が露出し、血が滴っている。


「おいおい、夢だからってやりたい放題すぎるだろ」


 驚きのあまりその場で尻もちをついてしまう。これは悪い夢だ。そうに違いない。そうでなければ俺は今頃警察に捕まっているだろうし、父親がこんな姿の俺をみて止めに入らないわけがない。


 確かに父親は俺と母親を捨てたが、性格は優しく、誠実な男であったことを俺は覚えているからだ。それに無気力、無関心、無感動という言葉に限りなく近いこの俺がこんなことをするわけがない。他人に何を言われたり、やられようが一瞬むかついても気力が出なくて、無視してしまうような人間がそんな大胆な行動をこんな幼少の頃からできるはずがない。


 自分で自分がしない理由を考えられうる限り絞り出し、自分に言い聞かせる。そうだ、これはただの夢で現実ではないのだから。


 段々と落ち着きを取り戻していった俺は深呼吸をして、もう一度小さい自分に目を向ける。


 そこにはさっきまで夢中で動かしていた手をなぜか止め、じっと俺のことを凝視している自分の姿が映っていた。そこで俺はあることに気づく。


「……赤い眼 ?」


 その場の真っ白な風景に良く映える赤い眼は引き込まれるような力強さと尊さがあり、見事なまでに美しいように思えた。


 その赤い眼の別人であるかのような俺がゆっくりと近づいてきて耳元でこう優しく囁いたのだった


「次は(ぼく)の番だよ」


 それを聞いた瞬間毛が逆立つような恐怖を感じて、俺は目を覚ますのであった。










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