063:銀の護符は闇に隠された秘密を語る①
ユニスは『セルレイ』に踏み込んだ。が、すぐにがっかりした。
守護聖都フェルゴモールで有数の豪華さを誇っていたクラブ『セルレイ』は、警察機動隊の突入と銃撃戦により、見る影もなく破壊されていた。
プリンスに案内され、壊れた椅子やテーブルを避けて奥へ行く。
バーカウンターに、古代理紋の護符が山のように積まれていた。
「何よ、これ。わたしにどうしろというの?」
ユニスは護符の山を前に、呆然と佇んだ。
プリンスは、警察官が新たに持ってきた護符を受け取り、護符の山の上に加えた。
「事前に言ったように、あなたには古代理紋の護符の始末をお願いします」
今夜も魔物狩人バシルの変装だ。それでも警察官はプリンスに丁寧に敬礼していく。プリンスの魔物狩人の変装は、警察関係者や理律省では暗黙の了解らしい。
ユニスが護符の山に対面する二時間前の、午前0時。プリンスとの約束を守り、晶斗と一緒に、指定された守護聖都フェルゴモールの隠れ家ホテルを訪れた。その次の移動先には、戦闘服を着込んで完全武装した男達が待機していた。
守護聖都フェルゴモールの警察機動隊二百二十五名。
これから始まるのは、警察と理律省の合同捜査だという。
プリンスと晶斗がいくら強くても、二人だけで百人以上いる武装した集団を一度に拘束するのは、さすがに無理だ。『コルセニーの使徒』は武装強盗団らしく、サイメス製の銃や爆発物を備えている銃や爆弾は、シェインよりも警官隊の機動力によって、物理的に押さえ込む必要があるのだ。
「ユニス、空間干渉機と武器にも対処できますか?」
店の外の隠れ場所で、プリンスに唐突に訊かれた。
ユニスは、首を横に振った。
「透視をしながら、この状態からシェインで潰すのは無理よ。シェインをこれ以上細かく枝分かれさせられないわ。侵入している分の護符を眠らせているだけで手いっぱいよ」
店は古代理紋のシェインに護られていた。
だが、ユニスはシェインの隙間を探り当てた。防御の内側へ潜り込んだ。そこからさらに、シェインを触手のように細かく枝別れさせ、髪の毛よりも細くした先端で、店内に数百個ある護符一つ一つに侵入した。
護符のシェインに同調し、1、2の3で『眠らせ』る。
小さな護符はユニスの波動によって微妙にシェインの作用を塗り変えられた。
今はユニスの支配下にある。いわば休眠状態だ。店内の護りは無効化された。
眠らせれば終わりではない。
護符を眠らせたユニスのシェインは子守歌のようなものだ。聞かせるのを止めれば、護符の機能はたちまち目覚めてしまう。一瞬たりとも気が抜けない。
「わかりました」
プリンスはユニスから離れ、機動隊の指揮官の方へ行った。
コルセニーの使徒には、護符に干渉できるシェイナーはいない。だが、感知できる程度の者はいる。護符の状態がおかしいのに気付き、焦り、仲間に伝えている。
パニックの始まりだ。
もう時間が無い。
プリンスは、指揮官と短く言葉を交わした。
命令は指揮官から下された。
「突入だ」
セルレイを取り囲んでいた機動隊が行動を開始する。
凄まじい爆音が響く中、周辺一帯の灯が消えた。




