表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルーンゴーストⅡ『コルセニーの紋章』  作者: ゆめあき千路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/75

057:解けた時空間には気を付けよ

 結界、と言っても、境界線があるわけじゃない。ただ、外部からはその内側に入れない。近付いてもそこから先には進めない、目に見えない壁に囲まれた、一種の閉鎖された空間だ。

 その内側では男が二人、大型の銃を構えていた。


――どうだ、仕留めたか?

――いや、まだだ。生体反応が消えないどころか、増えてやがる。

――いったい、あっちには何人いやがるんだ?

――あの女ひとりじゃなかったのか。

――くそ、仲間が隠れていたとは!?

――早く取り戻さないと……。

 会話には焦りが感じられた。

 彼らはどこかに隠れているアイミアを探している。


「敵にシェイナーはいないわ。シェインの媒体にしている古代理紋の力も、シェインの装置を使って発動させているだけよ」 

 ユニスは透視した光景を伝え、透視の視線をずらして銀の菱形の護符に焦点を合わせた。

 古代理紋の複製品(レプリカ)は、黒いトランクケースの中央に嵌め込まれた紋章(エンブレム)のようだ。銀色の菱形には九つの白い貴石は嵌め込まれていない。だが、かつて目にしたセビリスの紋章と似ている紋様だ。そして、ユニスのシェインにそっくりなこの波長。

「間違いないわ、セビリスの紋章のレプリカよ」

 ユニスは、シェインの手を伸ばした。

 古代理紋に手が届く。両手でそれを握りしめる。手の中に破壊の意思を込めた瞬間、銀の紋章は爆発した。 

 パーンッ!

 

 振り向いた男達の顔が驚愕に歪む。

 

 空に響き渡った破裂音は、ユニス達にもはっきり聞こえた。

 直後、ゴオッ、と凄まじい突風が来た!

「キャッ!?」

 結界で圧縮されていた空気が解放された風だ。ユニスの長い髪は吹き上げられ、くしゃくしゃになった。

「ユニス!」

 プリンスの鋭い呼びかけに、ユニスは両手で髪を押さえながら顔を上げた。

「セビリスの紋章は破壊した。結界は解けたわ」

「よくやりました。晶斗!」

 プリンスへ、晶斗は頷いた。

「ああ、俺が行くから、援護してく……」


 左の方で、ガサガサと音がした。

晶斗とプリンスの手がガードナイフと剣に掛かる。

灌木の茂みが揺れて、黒いガードベストの護衛戦闘士(ガードファイター)が現れた。豊かな胸の目立つ長身の女だ。左の小脇に黒光りする自動小銃を抱えている。「アイミアさんッ」

 黒いサングラスを掛けているが間違いない。女護衛戦闘士アイミアは、ユニスの隣に滑り込んできた。

「ハーイッ、ユニス、おじゃまするわね、……と?」

 アイミアは体に付いた木の葉や草を払い落とし、左肩に落ちた長い黒髪を荒荒しい仕草で背後に振りやった。高い位置で一つにくくられた艶やかな黒髪は、ユニスの柔らかい金茶の髪とは異なってもつれもせず、サラサラと垂直に背に落ちた。


「助かったわ、バシル。こっちの人は、初対面でいいかしら」

 アイミアは黒いサングラスをはずして、晶斗に軽く会釈した。

「アイミア、こちらは東邦郡(オリエント)の晶斗です。ユニスと私はいつも通りで」

 プリンスのことは、お忍びの魔物狩人バシルではなくプリンスと呼ぶように。そして、プリンスとユニスへは、七星華乙女会の会長としての態度で相対せよということだ。


「あら、そうですの。ユニス、ご無沙汰だったわね」

 プリンスの許可を得たとばかり、アイミアは晶斗へも親しみを込めた微笑みを向けた。

「でも、こっちの彼とは初対面ね。プリンス公認ファンクラブ、七星華乙女会の総会長アイミア・リフレートよ……あら?」

 アイミアは晶斗の顔をしげしげと眺めた。なんだか釈然としない表情になる。

「変ね、実際に会うのは初めてなのに、そうじゃない気がするわ。記憶力はいい方なのよ。もしかして、守護聖都の護衛戦闘士の溜まり場で見かけたかしら?」

「いや、俺達は、守護聖都フェルゴモールでは会ったことはないね」

 晶斗が困惑気味に否定する。

「あ、そうよね。ユニスともしばらく会ってなかったし」

 アイミアはチラリとプリンスの方を窺い、何かに納得したように頷いた。

 ユニスはだんだん怖くなってきた。

「アイミアさん、どうしちゃったのッ!? まさか、記憶喪失?」

「また馬鹿なことを言い出すわね、あなたは。なんで私が記憶喪失なのよ。先月、乙女会の勧誘で会ったじゃないの」

 アイミアは左手を伸ばしてユニスの頭をくりくりとなぜた。アイミアにはいつも子供扱いされている。七星華乙女会の勧誘で会う時なら、全力で反抗もするが、今日はその気力がさっぱり湧かない。


「アイミアさんに会ったのが、今月はこれが初めてなのね。……ということは、時間軸が狂っちゃったんだわ。わたし、時空間の移動に失敗したんだわ」

 ユニスはガックリうなだれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ