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ルーンゴーストⅡ『コルセニーの紋章』  作者: ゆめあき千路


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041:乙女は古代のお土産に心を動かされる

「これはどうしたんですか」

 プリンスはユニスの三つ編みされた髪を一本、手に取った。紐の青い色石を触っている。

「これはすべて、元の持ち主に返してください」

「きれいなのに、もらってはいけないの?」

「何も持ち帰らないでください。ここがやがて遺跡になる村なら、今回の時空の混乱現象を引き起こした時間軸の接点(ポイント)である可能性が高いんです。私達の行動による過去の変化は起こしたくないんです」

「さっき、女の子にリボンをあげちゃったけど」

「布製のリボンですか? それなら時間が経てば分解して残らないから、かまいませんよ」

 ユニスは三つ編みを解いた。青い石付き紐を少女達に返そうとしたが、少女達は大人の後ろに下がっていた。ユニスは紐を近くの四角い木の台に置いた。

 村長に従って門へ向かう。

 ある一軒の家の前を通った時だった。


「ああッ!! あそこに吊るしてあるの、(ディバイン)(ボーンズ)じゃないかッ!?」

 晶斗が叫んだ。

 その家は、大きく開け放した納屋みたいな作りで、中の作業場が見えるようになっていた。大きな(かま)のある作業場だ。入口横の軒先に、いろいろな白い刃物がぶら下げられている。どれも刃から柄まで白い。包丁や(なた)(おの)など、生活用の刃物だ。ここは鍛冶屋らしい。それも神の骨という特殊金属を扱う専門の。

「神の骨なら持っているでしょう。いいから、行きましょう」

「そうよ、あんな高価な物、もらっちゃだめよ」

 鍛冶屋に足を向けかけた晶斗の左腕をプリンスががっしり掴み、ユニスが晶斗の背中を押して、どんどん先へと進む。


 一行のすぐ横を、虫がブーンと音を立てて飛んでいった。


 ユニスはぐるんと首を回した。

「ああッ!! あれは幻の七色カブトムシ!? ルーンゴーストの市場流通価格で数百万円する化石の、生きているやつッ!!」

 虹色に光る虫の後を、ユニスはフラフラと付いて行きかけた。

「待ちなさい! 虫を捕まえて万が一にも帝国の生物進化史が変わったらどうする気ですかッ」

 プリンスが鋭くとがめ、晶斗はユニスの後ろ襟を掴んだ。

「アホか、絶滅した化石の本物を持って帰って、何て説明つけて売る気だよ?」

 晶斗はユニスの首を左腕を回すと、未練がましく虫の方へ手を伸ばしているユニスを引きずっていく。

 村の門を出る寸前、今度はプリンスが足を止めた。

 その視線の先には門柱に掛けられた板があった。

「これは!? まだ解読されていない、古代の謎の線刻文字の彫板では……?」

 板には複雑な紋様が刻まれている。似たような線刻文字をユニスも遺跡で見かけたことがあった。研究中の謎の古代文字とかいうやつだ。

「アンタはあれが欲しいんか。どうせ読めないんだろ」

「いえ、彼らに数節の意味だけでも解説してもらえば、今後の研究に役立つかと」

 プリンスが門柱の方へ体を向ける

 ユニスと晶斗は左右からガシッとプリンスの腕を掴んだ。

「だめよ、のんびり勉強なんかしていられないわ。日が変わる前に帰るのよッ」

 プリンスは門を出てからも、一度だけ首を伸ばして振り返っていた。


 時間軸の接点には、村長のおにいさんとおじさん二人が同行してくれた。

 村長達はゆっくり歩いてくれた。晶斗とプリンスは普通に歩いていたが、ユニスだけはそれでも小走りになった。途中で見かねた村長が、また肩の上にのせて運んであげようかと丁重に申し出てくれた。ユニスは丁寧に辞退した。

 村を出て、歩いて十五分ほどで、丘の頂にたどり着いた。

「ここに森の遺跡への直通路があります。非常時に備えて、村とは別の場所に作られた食料貯蔵庫で、あの古代理紋は、食料を保存するための護りだそうです」

 プリンスは丘の反対側から見下ろせる森を指差した。

「あのセビリスの紋章はこの人達が作ったということね」

「そのはずですが、彼らの理紋に対する意識は我我とは異なるようで、明解な答は得られませんでした。神神への認識も異なるようです。ここは、神話成立以前の時代なのかも知れません」

「あの人達が伝説の神神なの?」

「違う、と本人は言っていますが」

 プリンスは即答した。さっきから村長はユニス達の会話を聞いているだけではなしに、プリンスを通じて会話に参加しているらしい。

「神様じゃなくても、あの古代理紋の製作者は彼らなんだろ。俺達を襲ったサンソスの氷狼も彼らが作ったのか?」

「あれは番犬だそうです。食料を狙う獣用で、人には発動しないそうです。人間が来ても追い払うようにしてあると」

「人間は別の場所に存在しているのね」

「そうらしいですね。詳しくは教えてもらえません。彼らはここが私達にとっての過去であることも、タイムスリップの概念も理解しています。未来へ帰る私達に余計な情報を与えることを危惧しているのでしょうね」


 プリンスの話が途切れたところで、村長が声をかけてきた。手振りで、こちらへ付いてきなさい、と合図して歩いて行く。その姿が、不意にかき消えた。

 空間を歪めた近道用通路の入り口をくぐったのだ。

 ユニス達は村長の消えた方向へ進み、続いて通路の入口をくぐった。


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