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ルーンゴーストⅡ『コルセニーの紋章』  作者: ゆめあき千路


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039:古代村には巨人が住まう

 村の入り口は木製の門だった。ユニスの感覚では三階建ての家の屋根くらい高い。柱に使われている二本の大木は直径二メートルはありそうだ。

 家屋は平屋作りらしい。家と家との間隔がとても広い。ユニスなら隣の家まで歩いて五分はかかりそうな広い庭付きの邸宅サイズだ。

 煙の上がっている大きな(かまど)があった。炊事(すいじ)場だろう。掛けられた鍋や釜は大きすぎてユニスには大きな(たらい)か風呂桶みたいに見える。

 庭には洗濯物が干してあった。素朴な淡い色合いのシンプルなデザインのシャツやズボンやスカートらしき衣服が風に翻っている。

 わいわいがやがや、村のそこかしこから人が集まってくる。

 ユニスは巨人の肩から降りようとして身をよじった。

 巨人はすぐに下ろしてくれた。


 地面に立ったユニスは後悔した。みんな巨人だから、見上げなければ話が出来ない。すぐに首の後ろが痛くなった。

――こんにちは、初めまして。わたしはユニス。守護聖都から来たんだけど……。

「迷子?」「可哀想に」「***なのにね」「***から来たの?」「お家はどこ?」親しげに話しかけてきた。田舎の村人という純朴なイメージそのままの村人だ。ユニスを見ても取り立てて驚く様子は無い。

 ユニスはシェインを使えないから、村人からの一方通行だ。しかもユニスを連れて来てくれた人よりも通じにくい。ただ「フェルゴー」という単語だけは何度も出てきたのでよく聞き取れた。


「守護聖都フェルゴモールに関係ある言葉かしら。神神のフェルゴウン? 皇祖フェルギミウスに関わりのあること?」

 フェルゴウンは守護聖都フェルゴモールを作ったという神の名だ。フェルギミウスはその神の子孫だ。さらに時代は下ると、神の末裔は自らにフェルゴモアの尊称を冠した。それは、シャールーン帝国皇家をあらわす言葉となった。

 ユニスが「フェルゴー?」と疑問形で呟いたのを聞いて、

「フェルゴーは***だ。人間との*****でもある」

 やはり、単語の意味は不明だ。

 初めにユニスを見つけた巨人が優しく訊ねてくれた。

「どこで迷ったんだい?」

「森の中の遺跡です」

 ユニスは、遺跡を説明しようとして困った。

 この時代が過去なら、遺跡は古くはない。あの洞穴は古代人の氷蔵庫だった可能性があるとプリンスが言っていた。この巨人達が使っている場所かも知れない。

「古代理紋のある、いえ、冬に氷を貯蔵した場所で、えーと、わたしはそこで、時間と空間の歪みを超えてしまったらしいのです。そこには変わった理紋が刻まれたボードがあったの」

「こだいりもん?」

 聞き返してきた巨人の発音は正確だった。でも首を傾げている。

「……それは、***セビリス***かい?」

 彼ははっきり『セビリス』と発音した。空の一点を見つめ、しばらく沈黙する。

「ええ、そう。コルセニーの紋章だと思っていたら、じつはセビリスの紋章だったのよ。セビリスを知ってるの? 氷の女悪魔……じゃない、氷の女神のことよ」

 ユニスは記憶にある銀の菱形紋を思い浮かべた。

 巨人は微笑んだ。

「君がイメージしているセビリスの理紋とやらは、我々が食料の保存をする場所に取り付けた***だね。夏でも氷が溶けないように冷やすものだよ」

「あ、やっぱり、冷蔵庫なのね。おじさん、いえ、若いからあなたのことをおにいさんと呼ぶわ。プリンスにも似てるような気がするし。あなたはシェイナーなの?」


「君の言うシェイナーが我々*****に当てはまるのかわからないが、君のシェインは理解できる。我々の使う***に等しい力だ」

 主要な意味は通じている。このおにいさんとのやりとりが一番スムーズだ。ユニスと波長が合うタイプのシェイナーなのだろう。


「そう、たぶんそれよ、わたしはシェイナーなの。あ、でも、今はシェインが使えないけど。それで、わたしは元の時間と場所に戻りたいのです。それからはぐれた仲間にも会いたいの。ああ、でも、晶斗とプリンスがこの時間軸にいるとは限らないのよね、どうしょう……」

 ユニスはおろおろした。

 おにいさんは近くのおじさんに話しかけた。ユニスを残して離れていく。おにいさんとおじさんが離れたら、入れ替わりに少女達が寄って来た。身長はユニスの頭二つ分ほど高い。だが、体付き顔立ちの幼さから十代半ばと思える。

 何か話しかけられた。

 大人以上に意味が通じない。しかし、身振りと手振りで、何を言われているのかはだいたい解った。

 ユニスの髪に触っていいか。上着のレースに触ってもいいか。……と訊ねられている。普通に女の子らしい興味だ。

「うん、いいわよ、どうぞ!」


 ユニスは、少女達に突つかれている間に彼女らと周囲をゆっくり観察した。取り巻いている少女は十四人。その後ろで大人が見守っている。老若男女さまざまだ。ざっと三十人はいる。村の規模にしては人数が少ない。村人全員ではないからだろう。昼間は仕事のはずだ。彼らはユニスと少女達を優しい眼差しで見守っていた。


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