025:釣れたのは時空の謎
「なあ、これって、ユニスがあの時間軸から彼女を誘拐して、一年後の今へ連れて来たってことにならないのかな?」
晶斗が言い終えぬうちに、晶斗の後ろ頭に、空中でシェインで結氷させた拳大の氷の塊がぶつかった。ユニスの得意技だ。
「人聞きの悪いことを言わないで。それに、もしそうなら、わたしが彼女を行方不明の運命から助けたと言ってよ」
晶斗は、頭から滑り落ちてきた氷塊を左手で受け止めた。ちょっと眺めてから、ポイと後ろに放り捨てた。
「で、残りの人達はどこにいた?」
「知らないわ。他の人は見なかったもの。でも、さっきと同じ事を繰り返し再現できるなら、わたしが全員をここへ連れてこられるかも」
「それが行方不明事件の原因だったりして」
「あら、永遠に行方不明なのと一年ぶりの帰還者と、どっちがマシな運命かしら?」
ユニスと晶斗のやりとりが気に入らないのか、アイミアが顔をしかめた。どうせまた、ユニスの態度が乙女にふさわしくないと思っているのだろう。
「二人とも、いい加減にしなさい。声が大き過ぎます」
ついにプリンスに怒られた。
すると、横になっていたロミが、むっくりと起き上がった。
「違うわ……一年前じゃなかった……」
ロミはサバイバルブランケットから青ざめた顔を出した。目が涙で潤んでいる。
「宰相閣下、さっきまで私がいたのは、もっと遠い、ずっと古い過去でした。年代測定では一万六千年以上前……いいえ、ひょっとしたら、数万年以上昔の、古代の世界だったんです」
ロミの告白に、場は静まり返った。
ユニスは意味が飲み込めると、ゾッと体が震えた。
改めてひどく現実的な恐怖に襲われた。
心臓が、早鐘のように打ち始める。
時空間の狭間へ迎えに来てくれた晶斗までは、ほんの数歩の距離だった。それは偶然の幸運で、一歩間違えれば、永遠に帰還のかなわぬ時空間の彼方へ取り残されていたかもしれないのだ。




