お城のお茶会 初めまして王女様 -ラフィニア目線-
目指せ食テロ。(←えっ?!)
何故でしょう、主人公の恋愛はどこいった?
広い庭園には白いパラソルの花が咲いています。
そして、緑は眩しく色鮮やかな花も誇らし気に咲いています。
ほほほ…
ふふふ…
そして、品のいい貴族の若い令嬢たちが、その間を優雅に歩き、時に数人で集まりお話をして楽しんでいます。
パラソルの下にはテーブルが設置されていて、綺麗なテーブルクロスが私たちが着席するのを今か今かと待っているようです。
みなさん素敵な方たちばかり。
同世代の華やかな女性をこんなに見ることが初めてで、私の足はゆっくりと歩みを止めてしまいました。
すると、
「あ、コンタージュ侯爵家のラフィニア様だわ。」
「確か、先日婚約破棄されたのよね。」
「なんでも、お相手の方が他の方を好きになってしまったとか。」
ヒソヒソ ヒソヒソ
何やら私の話でしょうか。
沢山の方に注目されることに慣れていない私は、頬に熱がこもりました。
赤くなってしまったであろう頬を両手で覆うと、また視線を感じます。
「泣いてしまうかしら?」
「でも、まだ王女様も王妃様もいらっしゃっていないのよ、泣くなんて貴族令嬢として相応しくないわ。」
ヒソヒソ ヒソヒソ
泣く?私が?どうして??
どうやら皆さんは私が泣いてしまうと思っているようです。
心配させてしまうなんて…でも、どうしてでしょう。
私が婚約破棄されたことも本当ですし、ダビニオン様に好きな方が出来たことも本当の事です。
どこに泣く要素があるのでしょう。
私は不思議に思い、熱が落ち着いた頬から手を外し、軽く首を傾げました。
すると。
「みなさん、お待たせ。」
「今日はとてもいい日になったわね。」
ワインレッド色のドレスを上品に着こなした王妃様と、落ち着いたローズピンクのドレスを着た王女様がいらっしゃっていた。
庭園にいるすべての者が、2人に敬意と尊敬を表し最上級の礼を送りました。
「楽にして。さぁ、お茶会を始めましょう。」
「みなさん、席へ御付になって。」
王妃様、王女様の声で私たちは礼を解き、自分たちの席に移動しました。
各テーブル6人着席のようです。
そして私の席は、最初に王女様がいらっしゃるテーブルです。
座られる席は私のお向かいの様ですが。
私たち貴族が席の前に立つのを見計らって、王妃様、王女様がテーブルの席に付き座るよう促してくださいました。
各テーブルには3段重ねのティースタンドが置かれており、その横にはそれぞれスコーンに塗るジャムやクリームが置かれています。
そしてよく見ると、使われている食器やシルバーはすべて蔓バラをモチーフにされています。
可愛くて上品です。素敵。
テーブル一つ一つに二人ずつメイドが付いているようで、私のテーブルにもメガネを掛けたオリーブ色の髪の毛メイドさんとそばかすが愛らしい赤毛メイドさんが待機していらっしゃいました。
「皆様、本日は楽しんでらしてね。」
そう王妃様がよく通る声でおっしゃり、お茶会は始まりました。
お茶会が始まると、待機していたメイドさんたちがテーブルの近くに設置してあるワゴンを使い、一斉にお茶を入れサーブし始めました。
私の席は、あのメガネのメイドさんが優雅な手つきでカップに注ぎ、そばかすをもつ赤毛のメイドさんがサーブしていきます。
配り終えると、次に、ティースタンドにあるサンドウィッチをサーブしてくれました。
タマゴサンド・ハムサンドの2種類の小さなサンドウィッチ。
とても美味しそうです。
私は、王女様が飲まれるのを待ってからティーカップに口を付けました。
オレンジの香りが広がる爽やかなお茶です。
このお茶はサンドウィッチの塩味を包み込む豊かなハーモニーです。
次にサーブされたのはスコーンです。
ミルク色のスコーンは割って一口大にちぎると、私は自分のところにあるジャムを塗りました。
ストロベリーにほのかに薔薇の香りがします。
そっとサーブされたお茶に口をつけると、茶葉がもつストレートな味わいです。
上質な茶葉です。
最後にサーブされたのは、ケーキ。いちごが天辺に乗ったミニショートケーキと、チョコレートでコーティングされたチョコレートケーキ、オレンジの輪切りが乗ったムースでしょうか。
3つもあります。
一つずつ口にして、頬が緩むことを止められません。
上品を意識しながらも、私がもつシルバーは止まりません。
ショートケーキは生クリームが軽くて甘く、いちごの酸味とよく合います。
チョコレートケーキはビターなチョコの膜が甘いココアスポンジを包み、中にある木苺のソースが素敵です。
オレンジムースの爽やかな味わい。軽いのに奥深く感じるのはホワイトチョコレートが隠し味で入っているのでしょう。
その3つのケーキを食べる合間に飲むお茶が、ミントを感じるフレーバーティー。
これなら永遠にケーキを食せてしまいそうです。
幸せなティータイムは、つつがなく終わるように感じました。
しかし、素敵なお茶会に胸をいっぱいになっていると視線を感じました。
私はティーカップから手を離し、視線を感じる方を見ると
じーーーーーーー
王女様がこちらを見ていらっしゃいました。
びっくりです。
少し釣り目のアーモンドの瞳がこちらを見ていらっしゃいます。
私は、ティースタンド越しという状況が失礼だと思いながらも王女様に笑い掛けました。
すると、なんと話しかけられてしまったのでした。
「ラフィニア様、兄上のゲイル様はお元気?」
「はい。お陰様で元気にしております。」
「今度、各領地の報告会があると聞いているわ。その後話をしたいと伝えてくれる?」
「あの…はい。お伝えいたします。」
私は城に行く馬車に乗り込む前、兄に言われた、“俺に関することを言われたら、答えはすべていいえと言うんだぞ。”という言葉を思い出し、この場合は“はい”でも構わないだろうと結論付けました。
「王女様。お聞きしてもよいでしょうか?」
「?えぇいいわよ。」
私はお茶で喉を潤した後、居住まいを正し、思い切って王女様に聞いてみることにしました。
「王女様は、兄をお好きなのでしょうか?」
「っ!」
「「「「「「「「 !!!!!! 」」」」」」」」
私の発言の瞬間、庭園で弾む会話が途切れたように思いました。
私は、何か粗相してしまったのではと、胸をドキドキさせ、慌てて席を立ちその場で膝を折り頭を下げました。
「も、申し訳ありません。私、失礼なことを言いました。」
すると、王女様が立った気配を感じ、心拍数が上がるのを感じました。
「失礼はないわ。私が聞いていいと言ったのだもの。」
優しいお言葉が降ってきて、私はホッと息を吐きました。
王女様に、「頭を上げて。」と言われて、顔を上げると王女様は少し気まずげにしています。
他のテーブルも私たちに注目しているようで、他の会話が聞こえません。
「私も気になるわ。シルビア。あなたが縁談を断っているのは、コンタージュ侯爵家のゲイル様のことが気に掛かるからなのかしら?」
落ち着いたよく通る声が聞こえ、振り向くと王妃様はカップをソーサーに戻し落ち着いた目で王女様を見ていらっしゃいました。
「…違います。私はゲイル様の政治的経済的手腕に惚れているだけで、そこに恋愛感情はありません。」
「……そう。だ、そうよ、ラフィニアさん。」
王妃様と王女様の母子の会話に、恐れ多くも頭を下げて是を表すことしかできませんでした。
しかし、この話は終わりとばかりに王女様が「みなさん、お茶会を続けましょう。」と言う声の裏で、王妃様の「そういうことにしておきましょう。」と声が聞こえた気がしたのは気のせいでしょうか?
~~~~ 後日談 ~~~~~
とある貴族の噂話。
貴族令嬢A「王女様がゲイル様をお好きなことは、みんな知っているけどね。」
貴族令嬢B「でも、下手に国で圧力掛けたら全体の国益に関わるから引っ張り込めないって、嘆いていらっしゃるって。」
貴族令嬢C「誰が?」
貴族令嬢B「王女様が。」
貴族令嬢A「でも、あんなに頭の切れる王女様が、恋には弱いなんて。同じ女として応援しちゃうわ。」
貴族令嬢B・C「「ですわ。」」
自国の王女:シルビア様は、今日も国民から愛されている。
ラフィニアちゃんより、お兄さんを狙う王女様が動きが早いっ汗
主人公たちはいつ再会するかしら…