震え止まぬ夜 -ラフィニア目線-
短めです。
助けられたラフィニアさん。
しかし……。
「ラフィニア、怪我を見せてください。」
月明かりが照らすバルコニー。
私を振り返ったのは、クレール様でした。
私は助けて…いただい…た?
先ほどまでここにいたダビニオン様は、バルコニーから身を投げてしまい。
だけど、そのバルコニーの下にいた方たちが助けてくださったようです。
ほっと息をついて、瞳を閉じるとどっと全身の力が抜けていきます。
どんなことがあっても、私の目の前で人が死ぬなんてみたくない。
私は、力の入らない身体をそのままに、床にへたり込んでしまいました。
すると、クレール様がゆっくりと私に近づき膝をつくと、私を覗き込みました。
私は顔を上げ、クレール様と見つめ合った瞬間、
ゾワっ
「っ!嫌っ!!!」
私の手が勝手に彼を拒み、クレール様を突き飛ばしていました。
突き飛ばされたクレール様は驚いた顔をしていて、私もこんな行動をした自分が信じられず、肩が震えました。
カタカタカタ…
すると、その震えは全身に伝わっていき、指が小刻みに震えています。心なしか自分の体温まで下がってしまったように思います。
…まるで、自分の身体が自分のモノではないように、肌が粟立っています。
「あの……私……あの…っ……。」
このままじゃクレール様に変に思われます。
助けていただいたのに、「ありがとう。」も言えていないのです。
私は震える身体を自分自身で抱きしめ、この得体のしれない想いを早く処理しようと抑え込もうとしました。
すると、
パサッ
「……え?」
「…貴女を助けきれなくて、ごめんなさい。」
顔を上げると、少し距離を取ったクレール様が片膝を着き、険しい顔をしていらっしゃいます。
私の肩には、彼のジャケット。
今の“ぱさ”は、これだったのですね。
私は頭を沢山振ります。
「………そんなことありません。貴方は来てくれましたわ。ありがとうございます、クレール様。」
震えそうになる声を必死に悟られまいと、お腹に力を入れようとします。
…私は上手く笑えているでしょうか?
私は掛けて頂いたジャケットの首元をぎゅっと握り、彼に心配かけまいと口角を上げます。
しかし、相変わらずドレスで隠れている足は震えていて。
目の前のクレール様は眉を下げ、口を数度開いては閉じてを繰り返しています。
そして、最後にすくっと立ち上がりました。
「…私が貴女を抱き上げて、送り届けたいです。ですが………ゲイルを呼びましょう。」
そういうと、彼はバルコニーから下に控えていた方に声を掛けています。
私はその様子を茫然と見ていることしか出来ませんでした。
するとすぐ、お兄様が私の元に来てくださいました。
走って私の元へ来てくれたお兄様。
お兄様を呼ぶ前に、お兄様に抱きしめられました。
「ラフィニアっ。」
「お兄様…っ。」
兄の体温を感じて、やっと落ち着いたのか、頭の中の冷静に考えるスイッチが切り替わったように思います。
私の顔を見て、顔を歪めるお兄様に私は口を開きました。
「お兄様。私の事よりマリエッタ様は!マリエッタ様はご無事なのですか?」
お兄様は私の言葉に一瞬驚きの顔をされましたが、優しく私の頭を撫でながら、微笑んでくださいました。
「彼女は無事だよ。彼女の名誉は守られた。間に合ってよかった。…ラフィニア。ごめん。俺がお前から離れたばかりに、こんな怖い思いをさせた。本当にごめん。」
私を腕から離し、両手を握ってしゃべる兄の声は懺悔にも聞こえて。
私は首を振り、お兄様の顔を覗き込みました。
「お兄様。お兄様が悪いわけではありません。私が至らなかったからですわ。」
「………お前は悪くないんだよ。もちろんマリエッタ嬢も。…もう力を抜いていい。次目を覚ます時には、お前は自分のベッドで心安らかに眠っているよ。おやすみ、ラフィニア。」
お兄様の力を抜いていい。という言葉を聞いて、私の中の最後の抵抗が事切れ、私はお兄様の胸の中で意識を手放してしまいました。
ラフィニアは、心に深い恐怖を刻んでしまいました。
マリエッタもきっとそうでしょう。
クレールは、傷ついたラフィニアに何も出来ないもどかしさを感じていることでしょう。




