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婚約破棄同士ですね。  作者: もっちりワーるど
26/50

拐われる ーラフィニア目線ー

ラフィニアとマリエッタが大変です。



目を覚ますと、知らない場所にいました。



私の頬には板張りの床の感触がします。

きっと寝かされている状態でしょう。ボーッと見た床は、埃が積もっています。

人の気配も感じません。きっと私一人なのでしょう。



頭が痛い…。



今までに感じたことがない、鈍痛が頭にあります。

口には何か布が巻かれていて声も出せず、足も腕も縛られているので、身動きが取れません。

私は一旦、目を閉じ心臓の鼓動に神経を向けました。

トクトクと自分の脈動を感じで、ほっとします。



大丈夫、まだ生きている。



私は落ち着きを取り戻し、自分がこうなるまでのことを、思い出すことにしました。



…確か、今日はサヴィニオン邸での夜会に出掛けました。

兄とクレール様は御用が出来て行ってしまって、私一人で大広間にいました。

そこで、マリエッタ=サヴィニオン様と初めてお会いしてお話をして、そして、彼女と一緒にクレール様を探そうと邸宅内を歩いていた時に………っ!



そうです。

先を歩くマリエッタ様が廊下を曲がったら急に、フラッと彼女の体が傾いたんです。

私は慌てて彼女を受け止めようと腕を広げました。すると、その腕をグッと引っ張られて、誰かに背後に回られてしまったんです。

驚いて咄嗟に声も出ないと、その誰かはすぐ、口と鼻に布を押し当ててきて………そこから記憶がありません。




…頭が痛いのは、あの時嗅がされた何かしらの薬品のせいでしょう。

まだ頭が痛いです。

痛みに眉を寄せていると、マリエッタ様のことを思い出しました。



いけないっ!マリエッタ様は?



私は自分が今いる場所にマリエッタ様がいないか確認しようと、身体を振りました。

もし、彼女も一緒に捕えられているとしたら、助けてあげなくてはいけません。

しかし、縛られた手足が私の動きを制限して、思うように動けません。



…なんで…

…なんで、私はこんなに不甲斐ないのでしょう。

同じように捕まっているかもしれない、彼女はさぞや怖い思いをしているというのに。

お兄様なら、こんな事にはならないはずで。



自分がこんなにも何も出来ないのだと思い知って、悔しさに目をぎゅっと瞑り身体を丸めました。

すると、



「うぅ……ん……」



私が足を動かしたら、足元から声がしました。

女性の声です。



「ふぁふぃふぇっほはふ?(マリエッタ様?)」



小声で言葉を発しますが、口を塞がれているので思ったような言葉が出せません。

私は体を揺らして寝返りを打つと、自分のドレスのスカートの方に、ストロベリーブロンドの髪の毛が見えます。マリエッタ様です。彼女は縛られた状態で倒れていました。

彼女がいる位置だと足が近いのですが、蹴って起こすわけにもいかず、必死に彼女の方へ体を動かしていくと、ようやく彼女の顔の方まで近づくことが出来ました。



「ふぁふぃふぇっははふ。(マリエッタ様)」



もう一度彼女を呼びます。

手が使えたらいいのですが、あいにく縛られていて動かせません。

目の前にいるマリエッタ様は意識がないようで、瞼を閉じていらっしゃいます。

彼女は私と同じように、口と手足、すべて縛られているようです。



「ふぁふぃふぇっほはふ。(マリエッタ様)」



今出来るのは、マリエッタ様が無事なのかどうか。

今見える範囲では怪我はされてないように思うのですが、まったく目を覚ましてくれません。

心配で眉を下げ、言葉にならない声で彼女を呼びます。



「ふぉふへふははひ。(起きてください)」


「うぅ……。]


「ふぁふぃふぇっほはは!(マリエッタ様)」



マリエッタ様がゆっくりとその目を開け、意識を取り戻してくれました。

しかし、まだ完全に戻ってきていないようで、虚ろな目をしていらっしゃいます。

私は、自分の口を縛る布をどうにか解いて、ちゃんと呼ばなければと首を必死に振ります。

が、やはり上手くいきません。

ただ、首を振ったせいで、私の結い上げた髪の一部が解けました。

その髪の毛を使って、首を振りパサパサと揺らすと、マリエッタ様の頬を優しく撫でました。

何度か首を振ってマリエッタ様を起こそうと動かすと、一瞬顔を顰めてぐっと目を見開きました。

瞬きを繰り返した両目は、しっかりと私を見て、



「ふぁふぃほへ!!(何これ!!)」



口を塞がれたマリエッタ様が声を上げました。

私と同じで言葉がうまく出ず、モゴモゴと首を振ったりしています。



「ふぁふぃふぉふふぇふぇふぁ?(大丈夫ですか?)」



彼女の無事を確認したくて、声を出しますが、やはり上手くいきません。

私の話が分からないのか、首を振っています。



「?」



私は、口の布ではなくて腕を縛っている縄をどうにか出来ないかと、腕を動かしてみました。

しかし、力を入れれば入れる程締まるようで、痛くて眉をぎゅっと瞑ってしまいます。

マリエッタ様も同じことを考えていらっしゃったようで、腕を解こうと必死で動かしているようです。

「マリエッタ様ばかりにさせてはっ!」と、私も再開したところで、私のドレスの裾に縫い付けているダイヤとパールを思い出しました。



ダイヤなら。



「ふぁふぃふぁふぇふ、ふぁふぃふぁ!(ダイヤですダイヤ!)」



私は自分の腰をぐっぐっと捻り、自分の裾と腰にあるダイヤに気づいてもらおうと動きました。

しかし、マリエッタ様には伝わらないのか、彼女の上半身が私のドレスの裾を転がっただけ。



「ふぁふぃふんふぉふぉ!!(何すんのよ!!)」



マリエッタ様は、急に動き出した私の行動が理解出来ず、怒っているのか、瞳が強く光ったようでした。

私はダイヤの事は諦めて、他に何かないかと、顎を床に立てて真正面を見ました。

何か、身体を縛るものを切るものがないか、暗い室内を床から見まわします。

すると少し先の方ですが、割れた瓶がありました。

私は、縛られた身体を左右に振り、もぞもぞと動き出すことに成功しました。

しかし、割れた瓶まであと少しと言うところで、右胸の上辺りに痛みが走りました。



「っ!」



目的の瓶に行きつくまでに、床に破片があったのでしょう。

ドレスで覆われていないデコルテ部分に小さな破片が刺さってしまったようでした。

それでも、直進して瓶まで来ると、口を塞ぐ布を切るよう、首を振りました。



「んんっ!!」



さっきの痛みよりも強いものを右耳の脇に感じましたが、それでも諦めず振ると、布がはらりと取れました



「はっ、はぁ…。マリエッタ様。」



私は自由になった口で声を発すると、マリエッタ様が「ふぁふぁふぃふぉ!!(私も!!)」と言っていらっしゃいます。



「今、そちらに参ります。ただ、口の布を解いても、声は上げないでください。ここがどこで、誰が私たちを襲ったのかもまだ分からないのです。…私たちが自由になったと、犯人にバレるのは自殺行為ですわ。よろしいでしょうか?」



そう聞くと、マリエッタ様はうんと首を動かされました。



私は、口に瓶のかけらを咥えて、また芋虫のようにもぞもぞとマリエッタ様のところに戻りました。

私は彼女の身体を反対に転がし向かせ、彼女の腕の縄を、咥えている瓶の欠片で切ろうと必死に首を動かしました。すると縄は次第に切れて、最後にブチッと切れました。

腕が自由になったマリエッタ様は、私が咥えていた瓶の欠片を受け取って、自分の足の縄も切り口の布を取りました。



「貴女の縄も切るわね。」



そういうと、私の腕の縄と足の縄を切ってくださいました。



「…私たちは、誘拐されてしまったのでしょうか。」



私は自由になった腕と足首を手で摩りながら、マリエッタ様を見ました。

マリエッタ様も私の隣に座り、手首を摩っていらっしゃいます。



「…私の屋敷内で誘拐なんて、ほぼ不可能よ。今夜は王女のシルビア様もいらっしゃる夜会だもの。今日は自領の衛兵だけでなく、城からも警備兵を派遣してもらっていたわ。外部のものがこんなこと出来るわけないでしょ。」


「では…内部の方でしょうか?」


「そうとしか思えないわ。」



マリエッタ様との話が途切れ、私は扉の方を見て耳を澄ませました。

もし、この部屋の外に、見張り又は犯人がいた場合、私たちの小声や物音に気が付いて扉を開けてくるはずです。



「………。」



しかし、入ってくる気配はありません。

私はホッと息をつき、これからの事を考え始めました。


私たちの事は、遅かれ早かれお兄様たちが知るでしょう。

きっと助けに来てくださるはずです。

なので、今私たちに出来ることは、お兄様たちが来られるまで、無事でいること。

私は顎に手を当て考えていると、私の頬に何かが触れました。



「へ?」


「貴女、怪我してるじゃない。さっきの破片で切ったんでしょ。」



そう心配顔で私を見て、傷口から流れる血をハンカチで拭いてくださいます。



「駄目ですわ、マリエッタ様。ハンカチがダメになってしまいます!」


「ハンカチはこういう時に使うって、前に家の者に教わったのよ。」



駄目ですと言って両手をわたわたと振っても、マリエッタ様はやめてくれず、申し訳ない気持ちで彼女の厚意に甘えました。

ここにこうしている時間も勿体ない気がして、私は真正面に座って私の傷を処置してくださっているマリエッタ様を見つめました。

マリエッタ様も私の視線に気づいてくださって、手を止めてくれました。



「マリエッタ様。私たちを襲った犯人に、お心当たりがありますか?」


「……私の家サヴィニオン家への反感は、大なり小なりあるでしょうね。でも、私個人はどうかしら…。気に入らないと思われてはいるだろうけど、誘拐という犯罪を犯してまで、私をどうこうしたいと思う人間に心当たりはないわ。貴女は?貴女はなさそうね。…なんていうか………相手が戦意喪失しそう……。」



私を上から下まで見て、苦笑されてしまいました。

…でも、私には心当たりが多々あります。



「私の家コンタージュ家も、他貴族や平民の方たちに大なり小なりの反感は持たれていると思います。…色々軍に関することもあるので。後、私個人ですと………。」



私の家は、マリエッタ様の家とはまた置かれている立場が違います。しかし、コンタージュの家の件で手を出してくるなら、王都ではなく、それこそ領地に帰る時の帰路に襲ってくるはずです。

そうなると私個人の怨恨になってきます。自分の事を考えて浮かんだのは、ダビニオン様でした。

しかし、私は彼の望むように婚約破棄をしました。何も問題はなかったはずです。

ただ、最後に呼び止めたダビニオン様は何か言いたそうな顔でした。

…しかし…私と話をするためにここまでするでしょうか…?

こんな大それたことをなさる方だとは、正直思えず、私は「私も、私自身には心当たりがありません。」とマリエッタ様に答えました。



「犯人にまったく心当たりがないのは、不気味ね。だけど、いつまでもここに居ても危ないだけでしょ?早く逃げましょ!」


「…犯人が分からないので、ここを出てはいけない気がするのですが。犯人が何人居て、ここがどこかも分かりませんし。」



まず逃げようと主張されるマリエッタ様に、私はどうもこの場所を離れてはいけない気もして、眉を下げました。



「って、そんなこと言ってたら、犯人がここに戻ってきちゃうかもしれないじゃない。」


「……そうですわね。では、私が前を歩きますので、マリエッタ様は私から絶対離れないでください。お約束してくださいね。」


「分かったわよ。」



不承不承と言った顔のマリエッタ様。

私は足音を立てないように、部屋に一つだけあるドアに耳を付けました。


シーンと静まっています。


私は、ゆっくりドアノブを回しました。

しかし、鍵が掛かっているのかドアノブを回して押しても開きません。

仕方がないので、自分の頭にあるピンに手を掛け、抜き取りました。

領にいた時、雨の日にお兄様とよく開錠遊びをしていた事を思い出します。

こんな時に役に立つなんて…。

私は自分のピンを鍵穴に差し込み、カチャカチャカツンカツンといじりました。

すると


カッチャン


と扉の鍵が開きました。



「すごーい!貴女凄いじゃない!」



小声ですが興奮したマリエッタ様が私の背中をさすっています。



「しーー!」



私はマリエッタ様を振り返り、人差し指を口に当てしーっとすると、マリエッタ様はご自身の口を両手で覆いました。

その様子を見届けて、私はドアノブも音を立てないように回し、扉を少し開け隙間から外を覗きました。


廊下がありました。

壁には3つの窓があり、月明かりでその廊下を照らしています。

床は傷んでいるのか、ボロボロな感じです。

人影は見えないのですが、廊下に出てしまうと身を隠す場所はなさそうです。



…廊下で誰かに出くわしたら、どうしましょう…。

何か身体を隠すものが必要です。

えっと、何でしたっけ。確か、本で読んだのです。

遠い異国では、身を隠す術があるって…えっと…布に絵が描いてあって…ほら、身体をすっぽりと覆える…。



私は一旦扉を閉めて、マリエッタ様を見ました。

マリエッタ様は不思議そうな顔で、私を見上げていらっしゃいます。



「どうしたのよ?誰もいなかったんでしょ?」



私は彼女に頷いてから、両手を胸の前で組みました。





「お布団が必要です!」







「………………………は?」





私、マリエッタ様のそんな顔、初めてみました。


夜はどんどん更けていきます。

私たちは無事に逃げることが出来るのでしょうか?





こんな時でも天然(ボケ?)を炸裂させるラフィニアさん。

彼女たちは無事に助かることは出来るのでしょうか…。

そして、犯人は誰…?

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