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婚約破棄同士ですね。  作者: もっちりワーるど
20/50

企み -マリエッタ目線-

マリエッタが見ていました。

そこに自分が幸せになる要素はないのに。

でも、そうせずにはいられない彼女の想いがあったのかと。


何て図々しい女。

仕事中の彼を呼び出すなんて。




私は怒っていた。



クレールと婚約破棄をしてから、私は自分に仕える人間を使ってクレール達の周辺を探らせていた。

王宮での舞踏会で、仲良さ気に踊った2人。

悔しかった。

だって、その手を取って踊るのは私だったはずだから。

でもその後、まるで私の時のように、ラフィニアに会うことをしないクレール。

プレゼントだけを送って王宮に出ずっぱりだという。


そうよ。彼はどんな女でも、仕事を優先させる人。


安堵した。


きっと、ラフィニアも私のように怒ってクレールから離れる。

そしたら、私が彼にアプローチしてやる。

今度こそ必ず彼は戻ってくるのよ。

そう思っていた。



でも、違った。



舞踏会から1週間後、ラフィニアは兄と一緒に、政府庁舎へ行きクレールを呼び出したのだ。

侯爵の兄を利用するなんて。

ラフィニアという女は、意外に狡猾なのかもしれない。

そして、更に私をイラつかせたのは、その呼び出しに応じてクレールがラフィニアに会いに言った事だ。


私の時は、私がどんなに会いたいと思っても、彼は会いに来ることはなかった。

彼会いたさにプレゼントを要求したって、プレゼントしか送ってこなかった。

なのに、ラフィニアには会いに行くクレール。



私はなんだったの?



2人はその図書館でおち合い、カフェで仲睦まじげにお茶をしたという。


私は報告する間者を見る。

射抜くほど鋭い視線は怖かったのか、細かく震えている。

私が怖いの?

報告を聞く部屋の中、私は持っていた扇子を軋む程握りしめた。


どうやら2人は、明日も国立図書館で会う約束をしたらしい。


私もその様子を見に行くことにした。


突然、2人の前に現れたら彼らはどんな顔をするかしら。

明日が楽しみでならないわ。




~~~ 次の日 ~~~




私はキャロットオレンジでストライプ柄のアフタヌーンドレスに、お揃いのボンネットを被った。

目立つストロベリーブロンドの髪も、まとめ上げてある。

自分が一番魅力的に見える色、デザイン、シルエット。

完璧な私。


これでよし。


私は姿見で自分の姿を確認して、胸を張って頷いた。



私は自邸の馬車を使って、国立図書館へ到着した。

時間は丁度お昼を過ぎたあたり。

私は家の侍女と護衛を伴って、図書館へ入った。

館内は、図書館だけあって静かで人の足音がささやかに響くだけの空間だ。



「クレール様方は、学習スペースで会うと言ってらっしゃいました。」


「案内なさい。」



同行している侍女の言葉に顎を引き、指示すると侍女は前を歩き、護衛は私の後ろを歩く。

学習スペースと呼ばれる場所は、飴色の大型天板の机1台に椅子6脚を1セット、全部で8セットが均等に並べられている。

壁にはもちろん書架がずらっと収納されていて、興味がある人には唾涎物なんでしょう。

私は興味ないけど。

さて…ここに2人が来る。


いきなり出くわすのはどうかと思うから、どこかに隠れようと目線を巡らせて、人気のない本棚の陰に隠れることにした。

本棚に身体を預ける形で、学習スペースを覗く。

立ちっぱなしである。



……クレール達が来るまで、ずっとこのまま?疲れちゃうじゃない……。



隠れた後に気が付いて、途方にくれそうになったところで、クレールが両手いっぱいに本や資料を持ってやってきた。



クレール!!



先ほどの絶望はとたんにどこかへ行って、私はクレールを凝視し、とっさに背を向けた。

あまり見過ぎて、見つかってはまずい。


でも、久しぶりに見た彼は相変わらず優し気で、レッドブラウンの髪は急いできたのか少しはねていた。

以前、仕事帰りに私に会いに来たクレールも、ああいう風に髪の毛をはねさせていたっけ。

そういう時は大抵忙しく、ベッドで寝ずにソファーなどで寝てると言ってた。



…きっと忙しいんだ。



私は自分の顔を全部出さないように気を付けながら、クレールを観察した。

持ってきた資料や本を机にきちんと並べている。その並べ方、クレールの性格が出ていて、眉を顰めて下を向いた。



変わってないよ。ばか。


優しくて真面目で一生懸命な元婚約者。



痛まないはずの胸が痛んで、滲んでいく視界に、私は手で拭うと息を大きく吐いた。

泣いてる場合じゃない。

気持ちを立て直していると、学習スペースに高い足音がゆっくりと近づいてきた。

侍女を連れた若い女性。

若草色のアフタヌーンドレスを纏って、右手には小さめのケース鞄を持っていた。



侍女連れてるんだから、彼女に鞄を持たせればいいのに。

で、なんで侍女は日傘しか持ってないのよ。



私が首を傾げると、私の耳元で「彼女がラフィニア様です。」と侍女が教えてくれた。

私は、聞いた言葉に全身が固まるのが分かった。



彼女が


ラフィニア。



ミルクティー色の緩く巻かれた髪の毛は左サイドに流して、目は琥珀色。

色素の薄い彼女は砂糖菓子のようだ。その彼女に似合う若草色のドレス。

不釣り合いな鞄を持っているけど、雰囲気は柔らかくふんわりしている。



そして見てしまった。

ラフィニアが到着したときのクレールの顔。



あんな、嬉しそうに眩しいものを見るような顔、初めて見た。

生まれて14年。ずっと傍にいたのに。



驚きと言い表せない衝撃で、目を見開く。

口元に手を持っていき、クレール達を見つめていた。

報告を受けていた通り、ここからでは何を話しているのか分からないけど、顔を寄せ合い話をしている。

時折、ラフィニアが自前の羊皮紙に書き込む姿があった。

クレールがラフィニアに何か教えているらしい。



「爵位………領地 経営…の………」



クレールの漏れ聞こえる声から、自身の爵位や領地の話をしているらしい。

これは、私の次に婚約者なったラフィニアに、自分の領地などを教えているのかもしれない。

私は彼に直接教えてもらったことなんてなくて、家で専属の家庭教師に教わっていたのに。


肩を寄せ合い、持ってきていた資料を指さすクレール。その話を熱心に聞くラフィニア。

仲睦まじい2人の姿に、私は自分の手を握りしめた。



この感情は嫉妬より激しく暗い。

この感情は………?



自分の中に沸き起こった黒い感情に支配されそうになった時、また来場者が来たみたいだ。

暗く淀む目で見ると、次に来た人物はがっしりした男性だった。

確か、陸軍のフォード次期侯爵だったかしら。

私は、次にきた人物を注意深く観察した。


フォード次期侯爵はクレールとラフィニアが座る席の脇に立つと、自己紹介をして、そしてなにやら真面目な話をし始めた。



「軍事………火種………覚悟が……。」



やっぱりここからじゃよく聞こえない。

でも、軍事の話をしてるらしい。

覚悟ってなに?

ラフィニアに話している内容は、覚悟が必要なことなの?

しかも、何かの火種になるような………。



いいこと聞いた。



自然と口元は笑みを浮かべる。

いいこと思いついた。


社交界デビューはしてなくても、お母様についてお茶会への参加は出来る。


彼女への直接な危害は、リスクがありすぎる。

ここは女の戦い方をしようじゃないか。


まずはお茶会で、彼女の悪口を広めよう。

ない事ばかりじゃ広がらないから、少しの本当を混ぜて。

そうすれば面白いほど噂は広がっていく。


私は笑いだしそうな自身を抑えて、本棚に背を預けた。




クレールがラフィニアに特別感情を抱き始めてることに気が付き、心がどんどん沈んでいきます。

でも、ラフィニアへの嫌がらせが子供っぽい!w

これ(悪い噂)だけで済めばいいのですが………

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